2019年6月21日更新

映画「ハンガー・ゲーム」シリーズをもっと楽しみたい人への徹底解説 なぜ日本での評価はイマイチ?

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大ヒットシリーズ「ハンガー・ゲーム」を徹底解説!その魅力と人気の秘密は何?

選ばれた少年少女が生き残りをかけて殺し合う“ハンガー・ゲーム”。そんな衝撃的なSFディストピア映画『ハンガー・ゲーム』が公開されたのは2012年。その翌年には早くも続編が、また翌年に最終章が二部作で製作され、世界中で大ヒットを記録しました。 主演を務めたジェニファー・ローレンスをスターダムに押し上げ、原作小説の人気をさらに高めた本シリーズ。海外では高い評価を受けた一方、日本ではいまいちヒットしなかったこともまだ記憶に新しいところ。 ここでは、シリーズの概要やキャラクターとキャストを紹介し、なぜ海外で高い人気を誇っているのか、日本で不発だった理由も考察していきます。

映画「ハンガー・ゲーム」シリーズ解説

映画「ハンガー・ゲーム」シリーズは、アメリカの作家スーザン・コリンズのヤングアダルト小説『ハンガー・ゲーム』三部作が原作。第1作『ハンガー・ゲーム』は2008年、第2作『ハンガー・ゲーム2 燃え広がる炎』は2009年、第3作『ハンガー・ゲーム マネシカケスの少女』は2010年に発表されています。 映画シリーズは、2012年の第1作『ハンガー・ゲーム』を皮切りに、毎年1本のペースで続編の『ハンガー・ゲーム2』、最終章の二部作『ハンガー・ゲーム FINAL: レジスタンス』と『ハンガー・ゲーム FINAL: レボリューション』が立て続けに公開されました。 文明が崩壊した後の世界を舞台に、中央集権国家「パネム」の首都キャピトルと統治・搾取される12地区の対立を描いた本シリーズ。“ハンガー・ゲーム”とは、各地区から12〜18歳の男女1人ずつをくじで選び、闘技場で最後の一人になるまで殺し合いをさせるという残酷極まりないもの。これは恐怖によって反乱の芽を摘むためのいわば“生贄”の儀式であり、キャピトルを治めるスノー大統領の指示のもと、その模様がテレビ中継されるのです。 シリーズを通して主人公の少女カットニスの視点で語られ、彼女がどのようにハンガー・ゲームを生き延び、いかにして対キャピトルへの反乱と革命の象徴となっていくかが描かれています。

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1作目『ハンガー・ゲーム』(2012)のあらすじ

スーザン・コリンズの小説『ハンガー・ゲーム』を映画化したシリーズ第1作で、日米ともに2012年に公開されています。 監督は『オーシャンズ8』のゲイリー・ロス、主人公カットニスを『世界にひとつのプレイブック』でアカデミー賞主演女優賞を受賞したジェニファー・ローレンスが演じました。

映画のあらすじ

スノー大統領が独裁を続ける国家パネム。かつて反旗を翻した12の地区は首都キャピトルの統治下にあり、公然と搾取が行われていました。 反乱の芽を摘み、恐怖とほんの少しの希望を植え付けるための“ハンガー・ゲーム”が年1回開かれ、12地区に住む少女カットニスは、くじで選ばれた妹プリムの代わりに衝動的に志願してしまうのです。

2作目『ハンガー・ゲーム2』(2013)のあらすじ

監督は『コンスタンティン』のフランシス・ローレンスが担当し、前作の主演キャストは続投して製作されたシリーズ第2作。 メインの新キャストとして『カポーティ』のフィリップ・シーモア・ホフマンと『スノーホワイト』のサム・クラフリンが参加しています。

映画のあらすじ【1作目のネタバレ注意】

第74回「ハンガー・ゲーム」の優勝者となったカットニスは、同じく生き延びた同郷のピータとともに故郷へ戻り、すぐに各地区を回る“凱旋ツアー”に出ることに。 台本を無視して心のまま演説をしたカットニスに対して聴衆たちは尊敬を示し、権力への抵抗を意味する“三つ指”のポーズを始め、ここから多くの地区に反乱の機運が高まっていきます。

3作目『ハンガー・ゲーム FINAL: レジスタンス』(2015)のあらすじ

フランシス・ローレンス監督以下、前作からのメインキャストも続投したシリーズ第3作。原作の最終章を二部作に分け、アメリカをはじめ海外では2014年に公開。日本では二部作を2015年6月と11月の同年に連続公開しました。 本作から『アリスのままで』のジュリアン・ムーアがメインキャストとして加わっています。

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映画のあらすじ【2作目のネタバレ注意】

カットニス暗殺を目論み、第75回「ハンガー・ゲーム」を記念大会として、過去の優勝者を出場者に選出したスノー大統領でしたが、逆に12地区の反乱が拡大。 そして競技場から密かにカットニスを救出したのは、キャピトルに滅ぼされたとされていた第13地区でした。

4作目『ハンガー・ゲーム FINAL: レボリューション』(2015)のあらすじ

前作から監督・スタッフ、メインキャストが続投して製作されたシリーズ完結作。 第3作では2014年2月に亡くなったプルターク役のフィリップ・シーモア・ホフマンに哀悼の意を捧げており、この完結作が遺作となりました。

映画のあらすじ【3作目のネタバレ注意】

地下組織としてキャピトルに反旗を翻した第13地区で、反乱と革命の象徴“マネシカケス”となったカットニス。キャピトルに囚われていたピータを救出するも、カットニスを憎んで殺すように洗脳されており、彼女は危うくピータに殺されかけます。 あまりの残酷さにスノー大統領への殺意を改めて感じたカットニスは、大統領暗殺のためキャピトルへ向かいます。

「ハンガー・ゲーム」シリーズのメインキャラ&キャスト解説

カットニス・エヴァディーン/ジェニファー・ローレンス

ジェニファー・ローレンス『ハンガー・ゲーム FINAL: レジスタンス』
© Lionsgate/zetaimage

本作の主人公カットニス・エヴァディーンを演じたのは、ジェニファー・ローレンスです。妹の身代わりとなってハンガー・ゲームに参加し、得意の弓矢と反抗心で生き残ります。しかしその反抗心が大規模な反乱を呼び起こし、意図せずパネム全土に革命の火を付けて、その象徴的存在となっていきます。 本シリーズで世界的な認知度を獲得したジェニファー・ローレンスは、まず2010年の主演作『ウィンターズ・ボーン』で注目された若手女優の一人。第1作『ハンガー・ゲーム』で主演を務めた2012年、『世界にひとつのプレイブック』の演技でアカデミー賞主演女優賞を受賞し、人気と実力を兼ね備えた若手女優として認められるようになりました。 しかし『ハンガー・ゲーム』1作目の出演料は、主人公を演じるハリウッド女優としては安価の50万ドル(約5,350万円)ほどだったとか。作品の成功で、シリーズ第2作ではジェニファーのギャラも1000万(約10億7,000万円)ドルと20倍に跳ね上がったといいます。また原作があまりにも人気作だったため、カットニスを演じることで人生が変わってしまうのではと最初は乗り気ではなかったようです。

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ピータ・メラーク/ジョシュ・ハッチャーソン

ジョシュ・ハッチャーソン『ハンガー・ゲーム』(2012)
© Lionsgate Photographer: Murray Close/zetaimage

カットニスとハンガー・ゲームに選ばれ、ともに戦って生き抜いたピータ・メラークを演じたのは、ジョシュ・ハッチャーソンです。カットニスに淡い恋心を抱いていたピータは常に彼女を守り、次第にカットニスの心の支えになっていきます。 ジョシュ・ハッチャーソンは、2003年の『アメリカン・スプレンダー』で映画デビューを飾ったアメリカ人俳優。以後コンスタントに映画出演を重ね、2008年と2012年には「センター・オブ・ジ・アース」シリーズで主人公ショーン役を演じました。 カットニスとピータを演じたジェニファーとジョシュは、二人ともアメリカ・ケンタッキー州出身です。ケンタッキー州は、田舎で貧しく、石炭採掘の土地柄などが第12地区の状況を彷彿とさせるといわれていました。

ゲイル・ホーソーン/リアム・ヘムズワース

リアム・ヘムズワース
©JIM RUYMEN/UPI/Newscom/Zeta Image

第12区出身で、カットニスの狩仲間であり恋人だったゲイル・ホーソーンを演じたのは、リアム・ヘムズワースです。第12区に残りカットニスの家族を守ってきたゲイルですが、キャピトルによる大爆撃で故郷を失い、第13区で兵士として反乱の戦いに加わります。 リアム・ヘムズワースはオーストラリア出身の俳優で、兄は同じく俳優のルーク・ヘムズワースとクリス・ヘムズワースです。映画デビューは2009年の『ノウイング』で、本シリーズで名が知られるようになりました。2016年には『インデペンデンス・デイ:リサージェンス』で主演を務めています。 リアムとジェニファーは元々ブロンドだった髪を、貧しい地区の住人という役柄に合わせて茶色に染めたそうです。ジョシュも元はブルネットでしたが、逆にブロンドに染めています。

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ヘイミッチ・アバーナシー/ウディ・ハレルソン

ウディ・ハレルソン
©FayesVision/WENN.com

カットニスとピータの教育係で、過去のハンガー・ゲームの優勝者ヘイミッチ・アバーナシーを演じたのは、個性派俳優のウディ・ハレルソン。アル中でほぼ素面の時がないヘイミッチですが、強気なカットニスを気に入り、いつも気にかけてハンガー・ゲームでの勝ち方を的確に指導していきます。 変人・悪役といった役柄が印象的なウディ・ハレルソン。頭角を現したのは1994年の『ナチュラル・ボーン・キラーズ』で、それ以降も癖のある役で多数映画に出演。1996年の『ラリー・フリント』ではアカデミー賞主演男優賞、2017年の『スリー・ビルボード』では同助演男優賞にノミネートされた実力派でもあります。 ヘイミッチを演じたウディ・ハレルソンは、肉や魚を一切食べないベジタリアン(完全菜食主義者)のため、作中でもヘイミッチはフルーツと野菜、飲み物以外を口にしていません。

コリオラヌス・スノー大統領/ドナルド・サザーランド

パネムを統べるキャピトルの大統領スノーを演じたのは、ベテラン俳優のドナルド・サザーランド。反乱を抑えるためにハンガー・ゲームを毎年決行してきましたが、反抗的なカットニスに異常な敵意を見せ、反乱軍の象徴となってからも度々暗殺を目論みます。 ドナルド・サザーランドは1935年生まれ、カナダ出身の俳優です。そのキャリアは長く、映画デビューは1963年。『スペース カウボーイ』や『ヒューマン・トラフィック』など多くの作品に出演している名脇役として知られ、長年の功績から2011年にハリウッドの殿堂「ウォーク・オブ・フェイム」入りし、2017年にはアカデミー賞で名誉賞を受賞しました。 テレビドラマ「24 -TWENTY FOUR-」シリーズで有名なキーファー・サザーランドを息子に持ち、自身も1960年代から活躍するベテラン俳優ですが、スノー大統領役をゲットするためにゲイリー・ロス監督にわざわざ手紙を書いて「この役がやりたい!」とねだったそうです。

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海外では高評価&大ヒット!日本ではなぜ不発?

海外では軒並み大ヒットし、高評価を得ている「ハンガー・ゲーム」シリーズ。まず原作が高い人気を誇る小説シリーズであることは、ヒットの大きな要因です。そしてメインテーマが権力に反抗する革命を描いたものであり、一部の富裕層が富を独占している経済格差が深刻な国では共感を得やすかったのかもしれません。 また、テイラー・スウィフトやロードといったティーンに大人気の歌手たちが、こぞって本シリーズに楽曲提供していることもヒットの一因。リアリティ番組に馴染みのあるアメリカでは、ハンガー・ゲームが準備される工程にも興味がわきます。しかし、日本ではこのどれもが当てはまらない!

日本での原作の認知度の低さ

「ハンガー・ゲーム」シリーズは全世界で大ヒットしましたが、なぜか日本では興行収入が2億~4億円程度にとどまりました。「ハリー・ポッター」や「ロード・オブ・ザ・リング」などの人気シリーズが軒並み100億円を記録している日本で、興行収入2~4億円は不発と言っていいでしょう。 その理由は一体何なのでしょうか。一番の原因は、おそらく日本での原作の認知度の低さかもしれません。 第1作『ハンガー・ゲーム』の公開前には、原作の日本版は発行されておらず、ほとんど認知されていませんでした。公開に合わせて出版されましたが、時すでに遅し。 また「ハンガー・ゲーム」シリーズは“ヤングアダルト小説”というジャンルで、ティーン向けのいわゆる“ライトノベル”。若い層が観るものとしては日本ではむしろ漫画原作の映画が人気で、認知度の低かった本シリーズは劇場に足を運んでもらうことがまず難しかったのではないでしょうか。

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“ハリウッド版バトル・ロワイアル”という間違った前知識

第1作公開前から話題になっていたのが、深作欣二監督の映画『バトル・ロワイアル』(2000)との類似性。確かに「強制的に集められたティーンエイジャーたちが生き残りをかけて殺しあうゲーム」というプロットが似通っています。 しかし実際に観てみると、似ているのはそのプロットだけ。公式が宣伝した煽り文句ではなかったにしても、“ハリウッド版バトルロワイアル”だと思って観に行った観客は、「全然違う」と感じてがっかりしたのも仕方ないことでしょう。

リアリティ番組と市民革命の土壌のない日本

ジェニファー・ローレンス『ハンガー・ゲーム FINAL: レボリューション』
© Lionsgate/zetaimage

『ハンガー・ゲーム』の特異性といえば、ゲームがまるでリアリティ番組のように全国民にテレビ中継されてライブで“観戦”されていること。アメリカのように有名人のリアリティ番組が当たり前に放映されている国柄では普通に受け入れられる特性ですが、日本ではあまりピンと来ないシチュエーションです。 そしてもう一つ気になったのが、市民による反乱と革命がメインテーマになっている点。香港の政治的な抗議運動や軍事政権下のタイなどでは、劇中に度々登場する抵抗の意志を示す“三本指を立てるジェスチャー”が行われ、その影響力がニュースにもなりました。 しかし日本では現在、全国民を巻き込むような市民革命が起こることもなく、カットニスたちに共感できる土壌が育っていないのも、要因の一つかもしれません。

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『ハンガー・ゲーム』のテーマパークがドバイに完成!

実は『ハンガー・ゲーム』のテーマパークが、「モーションゲート・ドバイ」としてドバイにオープンしています。 ここには『ハンガー・ゲーム』のライオンズゲートの他にも、『カンフーパンダ』のドリームワークスや『ゴーストバスターズ』のソニー・ピクチャーズの3社が手がけるアトラクションが勢ぞろい。『ハンガー・ゲーム』のアトラクションは、「キャピトル・ブレット・トレイン」というジェットコースターが人気です。 他にもアメリカのアトランタ州アバトロン・パークに2019年完成を目指して『ハンガー・ゲーム』のテーマパークが建設中で、さらに中国に屋内型、韓国には屋外型のテーマパークが作られる予定。アバトロンは「ハンガー・ゲーム」シリーズのロケ地としても有名で、ファンにとっては絶対に訪れたい場所になるでしょう。

前日譚の製作も発表!まだ終わらない「ハンガー・ゲーム」シリーズ

2012年から2015年にかけて三部作(全4作)が公開されて完結した「ハンガー・ゲーム」シリーズ。世界中で大ヒットし、各地でテーマパークが作られるなどまだまだ興奮の余韻冷めやらぬ状況です。 そんな中、原作者のスーザン・コリンズが『ハンガー・ゲーム』の前日譚となる小説と、その映画制作が進行中であることを明かしました。どうやら第1作より64年前の“暗黒時代”のパネムが描かれるようです。 本シリーズを製作するライオンズゲートはドバイを皮切りに本格的にテーマパーク事業に乗り出しており、「ハンガー・ゲーム」シリーズは看板フランチャイズとしてこの先もまだ続いていくようですね。