映画『関ヶ原』あらすじ&豪華キャスト一覧【なぜ「つまらない」と評価されているのか考察】
映画『関ヶ原』に豪華キャストが集結!作品はどう評価された?
司馬遼太郎の同名小説を、映画『駆込み女と駆出し男』などの原田眞人監督が、25年にもおよぶ構想の末に映画化した2017年公開の『関ヶ原』。 NHK大河ドラマを筆頭に、様々な媒体で取り上げられてきた「関ヶ原の戦い」を初めて真正面から、映画作品として描いた意欲作です。主演は岡田准一、有村架純や役所広司ら豪華キャストを迎え、「戦国エンタテインメント超大作」と銘打ったのですが……。 実は本作、興行成績に反して、評価には「つまらない」「駄作」という声も少なくありません。 この記事では、映画『関ヶ原』のあらすじやキャストとともに、映画の評価を紹介します。
映画『関ヶ原』あらすじ
石田三成は幼くして豊臣秀吉に才を認められ、小姓から大名へ取り立てられた後に、猛将と名を馳せた牢人・島左近(しまさこん)を家来としました。 伊賀の忍び・初芽も三成に仕え、2人は許されない恋を育みます。そんな中、秀吉の不調に乗じて、徳川家康が天下取りの「野望」を燃やし暗躍。彼は「正義」を信じる三成と折り合いが悪く、1598年に秀吉が死去すると、家康の影響力が急速に増していくのでした。 そして、西暦1600年10月21日。三成は決戦の地・関ヶ原に盟友、大谷刑部らと「西軍」として赴き、家康率いる「東軍」と相対することに!数で勝る「西軍」はなぜたった6時間で敗北したのか、隠された真実とは?初芽との恋の行方は……?
主演は岡田准一!映画のメインキャスト
石田三成/岡田准一
豊臣秀吉の忠実な家臣で、秀吉が病に伏せた途端、天下への野心を表面化していく徳川家康へ強い憎悪を抱くようになる石田三成。己の正義を貫き、最後まで戦った男を演じたのは、ジャニーズ所属の人気グループ「V6」の岡田准一です。 本業はアイドルでありながら、俳優としても実力を認められ、映画『永遠の0』(2013)などで多くの映画賞を受賞しています。 三成と言えば、小賢しく嫌味なイメージで描かれがちでしたが、義を重んじる故に不器用な“純粋すぎる”武将という新たな三成像を体現した岡田。撮影現場では”岡田”三成と呼ばれるハマりっぷりで、第41回日本アカデミー賞優秀主演男優賞を受賞しました。
初芽/有村架純
羽柴(豊臣)秀次の側室候補だった、最上家の駒姫お付きの忍び・初芽。駒姫の処刑後、度胸を買われて三成に仕えることになるくノ一を演じたのは有村架純です。 有村はNHK連続テレビ小説『あまちゃん』や映画『ビリギャル』(2013)などに出演し、可愛いだけでなく、演技もできる女優として知名度を上げました。近年では、ドラマ『いつかこの恋を思い出してきっと泣いてしまう』で月9初主演を果たし、その切ない演技が話題に。 原作の初芽は武家の「間者」でしたが、映画では伊賀の「忍び」に変更され、初の本格時代劇で殺陣などのアクションにも挑戦しました。
徳川家康/役所広司
徳川家康は秀吉の死後、その遺訓を無視し、三成を挑発。天下を取るために野望を燃やし、狡猾な一面も持つ戦国武将です。劣勢に見えた東軍を天才的な指揮で勝利に導き、歴史上の人物の中でも特に有名な彼を、名優・役所広司が演じました。 役所は原田組の常連で、2015年版『日本のいちばん長い日』などで主演を務めただけあり、原田監督との相性はぴったりです! 「泣かぬなら鳴くまで待とう時鳥」のように慎重で、臆病者とされてきた家康ですが、今回は老獪で狡猾な「古狸」のイメージに。役所が”善人”として振る舞うほどに、逆に”悪人”に見えてくると評価され、日本アカデミー賞優秀助演男優賞を受賞しました。
石田三成率いる“西軍”キャスト
島左近/平岳大
どんなことになってんのかな〜 pic.twitter.com/R6J8C4zuqZ
— 平 岳大 (@hira_takehiro) 2017年3月13日
小早川秀秋/東出昌大
直江兼続/松山ケンイチ
花野/中越典子
尼僧・妙善/壇蜜
家康率いる”東軍”キャスト
井伊直政/北村有起哉
蛇白/伊藤歩
福島正則/音尾琢真
先日観に来てくれた和田正人くんと私。
— Takuma Otoo/音尾琢真 (@otootakuma) December 27, 2016
本日も「スルース」14時と19時の2回です。 pic.twitter.com/0A8K5ZwzKs
黒田長政/和田正人
小学館ガガガ文庫「マイダスタッチ〜内閣府超常経済対策課〜」和田正人もタッチ! #マイダスタッチ #ガガガ文庫 #小学館 pic.twitter.com/xT8em6Z8h2
— 和田正人 (@daaaaaawaaaaaa) 2016年7月23日
映画を盛り上げたその他のキャスト
豊臣秀吉/滝藤賢一
北政所/キムラ緑子
松平忠吉/吉村界人
前田利家/西岡德馬
その他にも多くのキャストが登場!
史実「関ヶ原の戦い」と司馬遼太郎による原作小説を解説
慶長5年9月15日(西暦1600年10月21日)に、三成率いる「西軍」(約10万)と家康率いる「東軍」(約7万)が、美濃国(岐阜県)関ヶ原で激突した「関ヶ原の戦い」。 戦国史上最大の合戦の発端は、上杉景勝の家老・直江兼続が、西笑承兌(さいしょうじょうたい)に宛てた書簡「直江状」でした。この書簡が挑発的な内容であったことから、家康はその内容に激怒し、後の合戦に繋がる「会津征伐」を決意したようです。 豊臣政権も盤石ではなく、秀吉の死後、家康は諸大名を糾合して三成と対立。西軍の多くが家康の巧みな根回しにより陣を動かず、秀吉の養子であった小早川秀秋の裏切りもあって、三成は惨敗します。三成は処刑され、秀吉の三男・秀頼は60万石の大名に転落、徳川の覇権が確立しました。 日本を二分し、国の行く末を決めた戦い、”天下分け目の戦い”とも呼ばれてきました。
原作は歴史小説の大家・司馬遼太郎の代表作の一つ『関ヶ原』
司馬遼太郎の歴史小説『関ヶ原』は、「週刊サンケイ」誌上で1964年~1966年にかけて連載され、書籍の累計部数は590万部を突破しました。 石田三成と徳川家康周辺の人間模様と謀略戦を軸に、各地の有力大名の内情も交えつつ、マルチな視点で天下分け目の戦いに至るまでを描きます。ほぼ史実に基づきますが、後世に語り継がれる過程で脚色された「通説」を取り入れており、現代では見直された事実も。 特に三成と恋に落ちる初芽については、1974年発売の文庫版下巻の解説で架空の女性だと明記されているため、史実通りではありません。
評価には「駄作」「つまらない」との声も!?原因は早口?
映画『関ヶ原』は濃密な人間ドラマを描き、京都・東本願寺、姫路城など各地の国宝級・歴史的建造物で大々的なロケを行っています。総勢3000人規模のエキストラに、のべ400頭に及ぶ騎馬や鉄砲隊が入り乱れる大迫力の合戦シーンが見どころでした。 もちろん、それらは評価を得ているのですが、厳しい意見も目立ちました。 特に多いのが、原作未読、史実を知らない観客に優しくない、という指摘です。原作3巻分の内容を2時間に収めるためか、短いカット割りで次から次へ話が進み、膨大な登場人物たちの事情が交錯するにもかかわらず、字幕などによる解説はほぼありません。
原作既読。さすがにサクサク進む。思ってたよりよかった。とにかくセリフが聞き取りづらいので字幕が欲しい。
三成カッコよすぎの、司馬遼太郎原作(未読)映画。 原田監督特有のテンポの良い編集は今作でも健在。 もともと史実として結果の判っている題材を扱っている「〜あさま山荘」、「〜いちばん長い日」が直近の原田作品にはあるが、それらと違うのは視点の数。 前二作は対立する一方に寄り添い、他方にはあまり重点を置かない構成だったが、関ヶ原は家康と三成の2人に焦点を定め、その周りで翻弄される人間模様が描かれる。権謀術数渦巻く群像劇故、誰が何を言っているのか、誰のことを言っているのか、早い台詞回しとカットの切り返しで一瞬見失うと取り戻すのに必死になる。 また、その情報の洪水の中、更に周到で計算づくの家康に対し、仁や義で豊臣家を守ろうとする三成の姿は、話が進むにつれてどんどん痛々しさを増してゆく。劇中で家康(役所広司)が、「ワシが時間をかけて三成を育てた」と言うように、打つ手打つ手が最終的に家康に絡め取られてゆく。だからだろう。たまに見せる妙に人間臭い挿話にグッと気持ちを持っていかれてしまう。 クライマックスの合戦シーンは流石の迫力。(若干小競り合いの積み重ねに見えなくもないが)前半で溜め込んだ諸将の鬱憤はここで爆発。戦場にまで持ち込まれた感情や情報のもつれが三成を追い詰める。(ここまでくると、流石に余裕綽々の家康が憎たらしく思えてくる。) 最後に、やはり戦の陰には女あり、なんだなと。 2017.08.28 TOHOシネマズベイシティ
頼りは台詞ですが、全編通してとにかく早口で、ほとんど聞き取れないとの声も!役者の熱量は素晴らしいのに、他の音と重なって聞こえないシーンもあり……。一部の観客は”置いていかれた”状態になり、「つまらない」=「駄作」と評価されました。 一方で、歴史・原作ファンからは「オリジナルの忍者描写は良いが、そのせいで本来の見せ場が省略された」などの指摘もあるようです。
映画『関ヶ原』は興行的には大ヒット!なぜ厳しい声がある?
「#関ヶ原」(@sekigaharamovie)の原田眞人監督と監督のご子息で、同作の編集を務め、優秀編集賞を受賞された原田遊人さんに喜びのコメントをいただきました。#日本アカデミー賞 pic.twitter.com/ALooFhInTd
— 日本アカデミー賞協会 (@japanacademy) March 2, 2018
興行面での評価を見ると、興行収入は24.0億円を記録。2018年の第41回日本アカデミー賞では最優秀賞こそ逃すも、優秀作品賞を獲得しました。 その他に、監督賞、撮影賞、美術賞含む最多タイ計10部門で優秀賞を受賞し、「失敗」とは言えない成績でした。ではなぜ、厳しい声があるのでしょうか?理由はやはり、「豪華キャストで国民的ベストセラーを初映画化!」などの前評判が高すぎたことかもしれません。 原田監督は『クライマーズ・ハイ』(2008)も評価が高く、『日本のいちばん長い日』で第39回日本アカデミー賞の優秀監督賞、優秀脚本賞を受賞。ブルーリボン賞、日刊スポーツ映画大賞といった大きな賞をいくつも受賞してきました。そんな監督が映画化を熱望した、となれば自然とハードルは上がっていきます。 俳優自身のファンや、普段歴史にあまり興味のない層からの期待値が高かったことも、厳しい評価に繋がったと言えるでしょうね。