2021年6月15日更新

天才作曲家ジョン・ウィリアムズの誰もが知る名曲10選!映画『ジョーズ』から「スター・ウォーズ」まで

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映画音楽の伝説ジョン・ウィリアムズとは?今なお親しまれる名曲を紹介

作曲家のジョン・ウィリアムズは、2021年6月現在まででアカデミー賞5回、グラミー賞25回、ゴールデン・グローブ賞4回などの受賞歴を誇る映画音楽の巨匠です。 彼はスティーブン・スピルバーグ監督作を筆頭に、世界中の誰もが知る映画音楽からオリンピックのテーマ曲まで、幅広く手がけてきました。ボストン・ポップス・オーケストラの名誉指揮者でもあり、アメリカ史上もっとも有名で、成功した作曲家といわれています。 映画音楽界の生ける伝説は、いかにしてその頂点に上り詰めたのでしょうか? この記事では、米アカデミー賞作曲賞あるいはグラミー賞を獲得し、誰もが知るところとなった映画の名曲を紹介するとともに、これまでの軌跡を追ってみました!

ジョン・ウィリアムズってどんな人?まずは経歴を振り返ろう

ジョン・ウィリアムズ
©Sony Music/Photofest/Zeta Image

ジョン・ウィリアムズは1932年2月8日生まれ、ニューヨーク州クイーンズの出身です。父がジャズ・パーカッショニスト(打楽器奏者)で、音楽一家に育ちました。 ロサンゼルス移住後、カリフォルニア大学ロサンゼルス校へ入学。著名なイタリア人作曲家、映画音楽家であるマリオ・カステルヌオーヴォ=テデスコに師事し、作曲を学んでいます。1952年から3年間は、空軍軍楽隊で兵役を務めました。 ニューヨークのジュリアード学院でピアノを学んだ後に、ジャズピアニストとしてデビュー。60年代前後からTVドラマや映画の音楽を手がけ、ハリウッドで頭角を現します。 そして1974年に若きスティーヴン・スピルバーグと出会い、彼の劇場用長編デビュー作『続・激突!カージャック』を作曲して以降、約30作品の音楽を担当することに。 スピルバーグは「彼こそが、映画制作者としての私の成功に最も意義のある貢献をしてくれた人物だ」と、最大の賛辞を送っています。 ここからは、ジョン・ウィリアムズが世に送り出してきた素晴らしい名曲を紹介していきましょう。

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『屋根の上のバイオリン弾き』(1971年)

『屋根の上のバイオリン弾き』
©︎United Artists/Photofest/Zeta Image

1964年にアメリカで初演された『屋根の上のバイオリン弾き』を、ノーマン・ジュイソン監督とトポル主演で映画化したミュージカル映画です。 楽曲は原作ミュージカルのものを流用しており、ウィリアムズは編曲として携わりました。 本作は第44回アカデミー賞で3冠を達成し、彼自身も編曲・歌曲賞で初のオスカーを受賞!しかしオリジナル楽曲での受賞ではなかったため、父から「(アレンジではなく)自分の音楽を書け」と怒られたと、のちに語っているようです。

『ジョーズ』(1975年)

『続・激突!カージャック』の翌年、『ジョーズ』で再びスピルバーグとタッグを組み、あの有名なテーマ曲を作曲しました。 正式には「メイン・タイトル(Main Title)」と名付けられており、コントラバスの重低音で繰り返す「デーデン」という2音は、迫り来る恐怖の代名詞に! また試写で観た鮫狩りの場面からは「この映画は海賊映画だ」と見抜き、同シーンにそれを思わせる音楽を付けています。 本作で第48回アカデミー賞作曲賞、グラミー賞を受賞し、名実ともに映画音楽の第1人者となったウィリアムズ。のちに公開される2作目『ジョーズ2』(1978年)まで関わりました。

「スター・ウォーズ」シリーズ(1978〜2019年)

スピルバーグを介してジョージ・ルーカス監督と出会い、シリーズ1作目『スター・ウォーズ』の音楽を手がけたのを機に、ウィリアムズはひとつの転換期を迎えました。 ルーカスは目新しいモチーフが多いため、曲は有名クラシックを使用したいと提案します。しかしウィリアムズは、19世紀のロマン派に基づく曲を書き下ろすと反論。30年代前後のハリウッド映画に見られる、チャンバラ劇風の交響曲を作ります。 主人公や反乱軍を象徴する「メイン・タイトル」、対をなす「帝国のマーチ」などが話題になり、第50回アカデミー作曲賞、グラミー賞を受賞。アメリカ映画協会は、“アメリカ映画史上最も記憶に残る映画音楽”に本作を挙げました。 「スター・ウォーズ」シリーズは2019年公開の第9作目で完結しますが、全作品を通して映画音楽を担当しています。

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『未知との遭遇』(1978年)

『スター・ウォーズ』と同じ年には、スピルバーグのSF映画『未知との遭遇』にも携わり、音楽のプロデュースだけでなく指揮も担当しました。 最大のテーマである人類と宇宙人のコンタクトは、宇宙の光の洪水を思わせる壮大な音楽とともに、シンプルな音階手話で表現されます。有名な5音のモチーフは、数百におよぶ音列パターンから試行錯誤した結果、スピルバーグとウィリアムズが選んだそうです。 本作でグラミー賞を獲得したほか、第50回アカデミー賞作曲賞にもノミネートされましたが、こちらは『スター・ウォーズ』での楽曲で受賞しました。

『スーパーマン』(1979年)

リチャード・ドナー監督作『スーパーマン』は、特にテーマ曲の「マーチ」が有名です。 主部はスーパーマンの“フライング・テーマ”で、挿入歌として作曲された「キャン・ユー・リード・マイ・マインド」が中間部を担い、3部構成で演奏されます。 ウィリアムズはグラミー賞、および1979年度サターンSF映画賞音楽賞を受賞しました。主演のマーロン・ブランドも、「テーマ曲があるからかっこよく空を飛べるのであって、なければスーパーマンは落ちてしまう」と絶賛したのだとか。 続編からは参加を辞退しており、一部のシリーズ作品ではテーマ曲のみ使用されました。途中降板した監督のもと、第2作目を再編集した『スーパーマンII リチャード・ドナーCUT版』では、再び劇伴を描き下ろしています。

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『レイダース 失われたアーク《聖櫃》』(1981年)

スピルバーグ監督とルーカス製作総指揮による冒険映画の金字塔「インディ・ジョーンズ」シリーズでも、ウィリアムズが音楽を任されました。 第1作目「レイダース」の作曲に際し、スピルバーグはインディのテーマ曲候補だった2曲をどちらも気に入り、両方使いたいと提案。ウィリアムズは片方をメインテーマに、もう片方をブリッジ(間奏)として1つの主部に合成し、「マリオンのテーマ」を中間部に挿入しました。 そして生まれた「レイダース・マーチ」は、観客の冒険心をくすぐる楽曲として大人気になり、本作で第54回アカデミー作曲賞を受賞! 2022年にシリーズ第5作目が全米公開される予定ですが、ウィリアムズが関わるかどうかは不明です。

『E.T.』(1982年)

スピルバーグの自伝的ファンタジー『E.T.』では、第55回アカデミー賞で自身3度目となる作曲賞、グラミー賞を受賞しています。本作でもっとも有名な「地上の冒険」は、E.Tの“フライング・テーマ”でもあるテーマ曲と、ラストシーンの楽曲で構成された組曲。 エリオットがNASAから救出したE.Tを自転車に乗せ、空を飛ぶシーンなどで使用されています。 上記シーンのサントラ録音時、ウィリアムズの指揮と映像のテンポが合わず、スピルバーグが演奏に合わせてフィルムを編集し直したそうです。その際、彼がかけた「思い通りのテンポで自由に指揮して」という言葉からは、2人の絆と信頼の強さが感じられます。

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『シンドラーのリスト』(1993年)

『ジュラシック・パーク』とほぼ同時期に制作されながら、まったく異なる作品となった本作。ウィリアムズは本作で第66回アカデミー作曲賞、およびグラミー賞に輝きました。 彼は初めて映画を鑑賞した際、「この映画には私より優れた作曲家が必要ですよ」と、スピルバーグに断りを入れたそうです。それに対しスピルバーグは、「分かっています。でも、その作曲家はみんな故人なのです」と、殺し文句で応じました。 受諾したウィリアムズは、構想の段階で本編から姿を消したユダヤ人フィドラーに着想を得て、ヴァイオリンのソロによるテーマ曲を作曲。偉大なヴァイオリニストであるイツァーク・パールマンの演奏をボストン交響楽団が見事に支え、感傷的かつ哀愁的な曲に仕上がりました。

『プライベート・ライアン』(1998年)

『プライベート・ライアン』
© DREAMWORKS/PARAMOUNT PICTURES/zetaimage

『プライベート・ライアン』は第二次世界大戦下のノルマンディー上陸作戦で、1人の兵士の救出に向かった部隊の死闘を描き、第71回アカデミー賞で11部門にノミネートされました。 エンドロールで流れる「戦没者への讃歌」は、犠牲になった兵士たちを哀悼する楽曲。壮麗かつ感動的なレクイエム(鎮魂歌)は、墓所でのラストシーンを印象的なものにしました。 ウィリアムズはアカデミー作曲賞に輝き、この曲も吹奏楽などでたびたび演奏されています。

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「ハリー・ポッター」シリーズ(2001〜2011年)

2000年代に入ると、「ホーム・アローン」シリーズでタッグを組んだクリス・コロンバス監督に指名され、「ハリー・ポッター」シリーズの音楽を手がけはじめます。 普段は試写を観て作曲するそうですが、本作は家族の勧めでJ.K.ローリングの原作を読了していたため、即座にテーマ曲の制作に着手。主人公の相棒の名を冠し、第1作目冒頭から使用された「ヘドウィグのテーマ」は、作品の世界観を見事に表現しました。 第3作目の「アズカバンの囚人」では、第77回アカデミー作曲賞を獲得。次作でウィリアムズが降板した後も、テーマ曲はシリーズ通して使用されました。収録されたサントラの人気は、日本レコード協会からゴールドディスクに認定されるほど!

ジョン・ウィリアムズにまつわるトリビアを紹介

皇太子の結婚の儀のために曲を作ったことがある

1993年のボストン・ポップス日本ツアーに際し、徳仁天皇陛下(当時は皇太子)の結婚の儀のために、「雅の鐘(Sound the Bells!)」という曲も作っています。 その原形となったのは、管楽器と打楽器のために作曲した「鐘よ高鳴れ!」。ウィリアムズが日本の寺院で聞いた鐘の音にインスピレーションを受けた曲です。皇太子夫妻に捧げるべく管弦楽曲に編曲され、タイトルも変更されました。

アカデミー賞ノミネートの記録保持者

ウィリアムズは1967年、『哀愁の花びら』ではじめて米アカデミー賞にノミネートされ、『チップス先生さようなら』(1969年)で2回目のノミネートを果たしました。 2021年6月現在、アカデミー賞作曲部門でのノミネート数は計45回!歌曲賞も合わせたトータルの回数は何と52回で、いずれの記録も現役の映画人では最多の記録となります。 ただし故人を含めた場合、史上最高記録はウォルト・ディズニーの59回です。

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オリンピックの音楽も手がけたことがある

1983年夏のロサンゼルスオリンピック、通称「ロス五輪」のための「オリンピックファンファーレとテーマ」を書き下ろし、翌年にグラミー賞を獲得しました。 オリンピックの代表的なテーマであり、アスリートの栄光を祝福する壮麗なナンバーです。開幕を告げるトランペットがとにかくかっこいい!と、当時話題になりました。その後も、1996年夏のアトランタ、2002年冬のソルトレークシティで楽曲を作曲。 1988年夏のソウルでもNBCテレビに中継テーマ曲を提供しており、アメリカ人が思う「オリンピック音楽」といえば、ジョン・ウィリアムズになるのかもしれません。

「スカイウォーカーの夜明け」にカメオ出演

『スター・ウォーズ/スカイウォーカーの夜明け』
© Supplied by LMK/zetaimage

2019年に公開された「スター・ウォーズ」シリーズの完結編「スカイウォーカーの夜明け」では、J.J.エイブラムス監督や脚本家のクリス・テリオらとともにカメオ出演し、往年のファンを驚かせました。 ウィリアムズが演じたのは、惑星キジーミにある怪しげな酒場のバーテンダー。レイたちと店を訪れたC-3POに話しかけられ、不機嫌そうにしている男性が彼です。役名のオマ・トレス(Oma Tres)は、芸術関係の巨匠を意味する「マエストロ」(maestro)のアナグラムなのだとか!

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作曲オフィスはハリウッドでもっとも静かな部屋

ウィリアムズのオフィスは、ユニバーサル・スタジオ内のバックロット(野外撮影所)で、スピルバーグの制作会社が所有する複合施設の一画にあります。 そのバンガロー式住宅には、90年前に製造されたスタインウェイのグランド・ピアノが置かれ、それに向かって独りで作曲をするそうです。作曲時の相棒は、ひと掴みほどの鉛筆の束と五線紙、読み古されたロバート・フロストとウィリアム・ワーズワースの詩集たち。 昔ながらのやり方を追求したメロディー探しに、機械の音が介入することはありません。 2012年発行のロサンゼルス・タイムズ紙は、「ハリウッドで最も静かな部屋とは、ジョン・ウィリアムズが作曲を行うオフィスかもしれない」と称していました。

ジョン・ウィリアムズが映画音楽に与えた功績は計り知れない!

2016年6月9日、アメリカ映画協会はジョン・ウィリアムズという天才を讃え、長きに渡る同賞の歴史において初めて“作曲家に”永年功労賞を授与しました。 映画音楽の低迷期と言われた70年代、彗星のごとく現れその価値を取り戻したウィリアムズ。彼の楽曲は聴くだけで、作品や劇中シーンを想起させる魅力があります。 映画音楽が持つ力を知らしめたのはもちろん、自らオーケストラを指揮しオリジナルの音源やスコアを広く普及させたという点も、彼の大きな功績ではないでしょうか。 永年功労賞の授賞式でプレゼンターを務めた名匠スピルバーグも、彼の音楽と出会っていなければあるいは……と考えると、感慨深いものがありますね。