映画『ミリオンダラー・ベイビー』あらすじ・ネタバレ・キャスト【クリント・イーストウッド作品】

2017年7月6日更新

ボクシングを通した、老トレーナーとボクサー志望の女の強い絆を描き、アカデミー賞主要4部門を受賞したクリント・イーストウッド監督の大作『ミリオンダラー・ベイビー』。その魅力を徹底解説します。

クリント・イーストウッド監督作『ミリオンダラー・ベイビー』

アカデミー賞で作品、監督、主演女優賞(ヒラリー・スワンク)、助演男優賞(モーガン・フリーマン)の4部門を受賞した『ミリオンダラー・ベイビー』。

家族に見放された男と、家族愛に見放された女が、ボクシングを通じて強い絆で結ばれていく様を描いた、クリント・イーストウッド監督の傑作について解説します。

映画『ミリオンダラー・ベイビー』のあらすじ【ネタバレ注意】

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ロサンゼルスにある小さなボクシング・ジムを営む老トレーナーのフランキーの元にある日、31歳の女性マギーが訪れて弟子入りを志願します。「女性ボクサーはモノにならない」とフランキーは断るも、何度もジムに足を運ぶマギーの素質を見抜いた彼の親友エディの助言を受け、ついにトレーナーを引き受けることとします。

エディの言うとおり、マギーにはボクシングの才能がありました。トレーラーハウスで暮らし、荒れた家庭環境にあったマギーにとって、ボクシングでチャンピオンになる事は現状打破するために必須だったのです。フランキーの指導によりマギーは強くなり、デビュー戦では第1ラウンドでKO勝利を奪います。

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その後「モ・クシュラ」という刺繍入りのガウンをまとったマギーは連戦連勝を重ね、ついにアメリカにてWBA世界ウォルター級タイトルマッチを迎えることに。反則行為が得意のビリーを相手に、試合はマギーの優勢で進みます。ところがゴングが鳴ってインターバルとなった瞬間にビリーが放った反則パンチにより、マギーは頭部をイスで強打してしまうのでした。

マギーは脊椎骨を損傷し、呼吸もままならない全身麻痺状態となってしまいます。彼女の介護をせずに娘が稼いだ金で遊びまくる家族の代わりに、身の回りの世話をするフランキー。絶望したマギーはフランキーに尊厳死を求めますが拒否されます。

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ところがその夜、マギーが自殺を図ったことを知らされたフランキーは、意を決して病院へ行きます。フランキーはマギーに呼吸装置を外すことと、致死効果のある注射を点滴に打つことを告げ、そして彼女が知りたがっていた「モ・クシュラ」という言葉の意味を伝えるのでした…。

映画『ミリオンダラー・ベイビー』出演のキャスト

フランキー・ダン/クリント・イーストウッド

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小さなボクシング・ジムを経営するフランキー。疎遠になった娘との関係を取り戻そうとするも上手くいかない状態が続いている中、娘の存在を思わせるマギーが目の前に現れます。

フランキー役イーストウッドは、25本目となる本作をわずか37日間で撮了するという短期間で制作しました。2000年代以降は1年に1本のペースで作品を発表しており、2016年にも『ハドソン川の奇跡』で変わらぬ手腕を発揮しています。

マギー/ヒラリー・スワンク

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貧しい暮らしを打破したくてボクシングに打ち込むマギー。優しかった亡き父親の面影をフランキーに重ねつつ、彼の指導の下、めきめきと勝ち上がっていきます。

演じるヒラリー・スワンクは、1999年の『ボーイズ・ドント・クライ』での性同一性障害を持つ女性役でアカデミー主演女優賞を獲得した実力派。プロデューサーとしても『フリーダム・ライターズ』や『ディア・ブラザー』といった作品を手がけています。

エディ・“スクラップ”・デュプリス/モーガン・フリーマン

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フランキーのジムに住み込みで働く、彼の20年来の親友のエディ。ジムの雑用からトレーナーとあらゆることをこなしつつ、フランキーへの助言も授けます。

演じるモーガン・フリーマンは1960年代から俳優として活躍する大物俳優で、本作でアカデミー助演男優賞を受賞しました。イーストウッドが監督した『インビクタス/負けざる者たち』ではネルソン・マンデラ役で主演し、プロデューサーも務めています。

『ミリオンダラー・ベイビー』の見どころ・関連情報

マギーがフランキーにトレーナーを頼んだ理由

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出典: cloudpix.co

フランキーはボクサーの出血を止める優れた“カットマン”と呼ばれています。これは、完全に止血しないと試合が再開できず、それができないとTKO負けしてしまうというボクシングのルールに則っているからです。

女性ボクサー専門のトレーナーがいるにもかかわらず、マギーがフランキーにトレーナーを依頼したのも、彼のカットマンとしての技術を見越してのことです。

「モ・クシュラ」という言葉の意味

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フランキーがマギーに授けるガウンに記された「モ・クシュラ」という言葉は、“愛する人よ、お前は私の血”という意味のゲール語です。これはフランキーがアイリッシュ(アイルランド系)アメリカンであることを示唆しています。

そしてマギーもアイリッシュの血を引いていることから、アイルランドを象徴する色「緑」のガウンをまとっているのです。もっともマギー本人にはその自覚が薄いため、「モ・クシュラ」の意味が分からないのですが。

ラストシーンの解釈【ネタバレ注意】

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フランキーがマギーに「永遠の眠り」を授けた直後、ジムにはエディだけがいます。これは、フランキーもマギーの後を追ったのではという見方があります。しかし一方で、フランキーとエディが懇意にしていた食堂も映るので、その後もフランキーは生き続けたという解釈もできます。

『ミリオンダラー・ベイビー』への感想・評価は【ネタバレ注意】

映画のテーマは尊厳死

obaover 生きる伝説イーストウッドの名作。 そして大好きな女優ヒラリー・スワンクの名演。 前半はロッキーを見てるかの様な、ボクシング選手の成長・栄光を掴む映画。 後半は尊厳死というテーマで人間の死生観を問う映画。フランキーの判断の是非が世界中で波紋を呼ぶことになる。 尊厳死という壮大かつ難儀なテーマを後半1時間で描き、それを無理矢理結びつけることもなく、前半の流れから自然である点。 登場人物の心情を証明の当て方一つで表している点。 感動しました。号泣です。

鬼才イーストウッドの細かい演出に感動

southpumpkin クリント・イーストウッド監督作品だと一二を争うほどにビビビと来ました。よくあるボクシングのサクセスストーリーを折り返し地点とし、見るも無残な後半が待ち構えています。医学的、倫理的論争も多かったと聞きますが、それを差し引いても傑作でしょう。驚くほどに丁寧な心情の揺れ動きが描かれています。当然それは後半やラストシーンなどにも集中していますが、前半のボクシングサクセスストーリーにもしっかりと存在しています。男が女の面倒を見ることになるまでの心の変遷なども全く無理がなくすごく自然です。更にその前半部には後半に効いてくる様々な伏線が存在しているので素晴らしい。 ラストシーン直前、イーストウッドとモーガン・フリーマンがロッカールームで会話するシーン。顔とその他限定的な部分にしか光が当てられていないシーンがすごく印象に残りました。『グラン・トリノ』の揺れるライトのシーンと言い、イーストウッドの光の使い方は抜群の巧さを感じますね。

低予算、短期間撮影とは思えないほどの傑作!

sajoudolphin 低予算、1ヶ月と少しの期間で製作されたためか場面は必要最低限のセットで構成されていて無駄がない。そしてそのシンプルさに比例するように演者の表情、セリフ回し、伏線が際立っていると感じた。ボクシングという動の部分と、主人公がトレーナーと心を通いあわせる静の部分のバランスも良い。