映画『ショーシャンクの空に』をラストまでネタバレ解説・考察!名作なのに「後味が悪い」理由はなぜ?

観たことはなくても、誰もが1度は『ショーシャンクの空に』というタイトルを耳にしたことがあるのではないでしょうか。本作は俳優たちの名演技や心にしみる名台詞などから、名作映画として知られています。 公開当時、興行的には振るわなかったものの、アカデミー賞では作品賞をはじめとする7部門にノミネート。そこから口コミで話題となり、今では映画史に残る傑作の1つとされるようになりました。そんな『ショーシャンクの空に』について、ネタバレあらすじから原作との違い、「後味が悪い」と言われる理由、名作である所以やキャストまで紹介していきましょう。
10秒でわかる『ショーシャンクの空に』のあらすじ【ネタバレなし】
銀行員のアンディは無実の罪で刑務所へ送られ、アフリカ系の囚人レッドと友情を育むことに。経理の知識を武器に仲間を増やし、少しずつ刑務官や所長にも取り入ります。困難や苦難にも負けずに立ち向かい、自身の冤罪を晴らすことを諦めませんでした。 そうしたアンディの姿から、どんな状況でも“希望を持ち続ける大切さ”を伝える作品です。
映画『ショーシャンクの空に』の結末までネタバレ解説!

【起】刑務所での新たな出会い

若くして銀行の副頭取を務めるアンディは、あるとき妻とその愛人を殺した容疑で逮捕されてしまいます。彼は無実を訴えるも終身刑を言い渡され、劣悪な環境のショーシャンク刑務所へ。 孤立していたアンディに声をかけたのは、調達屋のレッドでした。彼に趣味のための小さなロックハンマーを調達するよう依頼したアンディは、その後レッドと交流を重ね、ほかの受刑者たちとも知り合うようになります。
【承】刑務所に新たな風を吹かせるアンディ

あるときアンディは、屋根の修理作業中にハドリー主任刑務官の遺産相続問題を耳にします。彼は自身の知識を活かしてアドバイスをする代わりに、作業仲間にビールを振る舞ってもらうことに成功しました。 刑務官たちからも一目置かれるようになったアンディは、やがて図書係に配置換えになります。しかしそれは、ノートン所長をはじめとする刑務官たちが、彼に税務処理や資産運用をさせるためでした。アンディは彼らの期待に見事に応える一方で、図書室の環境を改善しようと奮闘します。 彼が州議会に根気強く要望を出しつづけた結果、倉庫同然だった図書室には多くの本が揃い、囚人たちが娯楽と教養を得る場となっていきました。
【転】新たな仲間・トミーの死
そのころノートン所長は、囚人たちの更生を図るという名目で野外作業をさせ始め、裏でピンハネや建業者からの賄賂を受け取るようになります。アンディは「ランドール・スティーブンス」という架空の人物の名義で、その多額の不正蓄財を見事に隠蔽していました。 その後、新たに入所した青年トミーは、明るい性格ですぐに周囲にとけ込み、アンディも彼を気に入ります。妻子のために更生したいと言う彼に、アンディは読み書きから勉強を教え、トミーは無事に高校卒業資格を獲得しました。 トミーはアンディの事情を知ると、彼の事件の真犯人に心当たりがあると言います。アンディはノートン所長に再審請求をしたいと申し込みますが、彼は優秀な経理担当であり、自身の不正蓄財を知っているアンディを自由にする気はありませんでした。
所長は彼を懲罰房に入れ、考え直すように迫ります。しかし1か月経ってもアンディが折れなかったため、冤罪の鍵を握るトミーが脱走を企てたように見せかけ、ハドリーに射殺させました。
【結】レッドへの伝言に込められたアンディの意図とは

トミーの死から1か月後、ショックと憤りを感じながらも、アンディは再び不正経理を行うことを条件に懲罰房から出されます。しかし彼の様子はおかしく、レッドにメキシコの話をしたり、要領を得ない伝言を残したりします。 レッドはアンディが自殺を考えているのではないかと囚人仲間に相談し、嵐の晩、みんなは不安をつのらせていました。翌朝の点呼で、アンディが房から消えていることが発覚。刑務官たちも集まり中を調べると、壁に貼られた大きなポスターの裏に大穴が空いているのが見つかりました。
アンディは最初にレッドからロックハンマーを受け取ったときから、20年間来る日も来る日も壁に穴を開けつづけ、ついに脱獄したのです。 アンディはその足で「ランドール・スティーブンス」になりすまして、銀行から所長の不正蓄財を全額引き出しました。同時に新聞社に告発状を送り、メキシコに逃亡。彼の告発によってハドリーは逮捕され、絶望した所長は拳銃で自殺します。 その後、レッドは40年の刑務所生活を経て仮釈放に。外の世界での生活に不安を持っていた彼ですが、アンディの伝言を頼りにメキシコに向かいます。そして美しい海岸線で悠々自適の生活を送るアンディと再会し、喜びの抱擁を交わすのでした。
スティーブン・キングの小説版との違いを解説・考察!原作ラストでアンディはあの人物と再会しない?
本作は、『シャイニング』などのホラーを多く手がける作家、スティーブン・キングによる『ゴールデンボーイ―恐怖の四季 春夏編』の中の『刑務所の中のリタ・ヘイワース』を原作としています。小説版と映画では様々な違いがあるので、ここでは、小説版ではどのように描かれているのかを解説します。
『ショーシャンクの空に』は実話?
『ショーシャンクの空に』は実話ではないか、と言われることがありますが、実際にはフィクションです。ただ、スティーブン・キングによる原作小説には、モデルとなった人物がいます。 モデルとなったのは、フレッシュ・ウォーターという人物。彼は1956年に交通事故を起こして少年矯正施設に収容されますが、1959年に脱獄。その後、56年の逃亡生活のすえ79歳のときに再逮捕されました。アンディとは境遇が違いますが、長い逃亡生活という点からストーリーをひらめいたのではないでしょうか。 本作が実話なのではと言われはじめた理由は、映画の最後に「アレン・グリーンを偲んで」という文言がでてくるからです。 実はこのアレン・グリーンという人物は、フランク・ダラボン監督の古い親友でエージェントだった人だとか。しかし彼は映画の完成前に亡くなってしまったため、映画の最後に哀悼の意を捧げました。
原作と映画の違い①『フィガロの結婚』のレコード
「希望を持ちつづけることの大切さ」を打ち出した映画版では、アンディが『フィガロの結婚』のレコードを流したシーンも印象的な場面の1つです。 しかし、これは映画オリジナルのもの。また彼が流した第3幕 第10場「手紙の二重唱」は、「逢引の場所を指定する嘘の手紙を書いて策略を巡らす」という内容で、映画のラストを示唆しています。
原作と映画の違い②トミーは死んでいなかった?
映画では囚人仲間がたくさん登場しますが、原作にはアンディとレッド以外の囚人たちはあまり登場しません。しかしアンディの罪の鍵を握るトミーはしっかりと登場しています。しかも原作ではトミーは殺されていません。 彼はアンディの妻殺害事件について、別の刑務所で自分がその真犯人であると吹聴している人物と出会っていました。アンディはトミーに証言させるように刑務所長に直談判しますが、原作ではその後、トミーは証言しないことを条件に、別の刑務所に移されました。 そこは週末には妻や子どもと会うことができる刑務所でした。彼の選択を誰が責めることができるでしょうか。
原作と映画の違い③ラストシーン
映画のラストシーンでは、レッドとアンディの感動的な再会が描かれますが、これも実は映画オリジナルです。 実は原作では、2人は再会していません。原作はレッドが約束の場所でアンディの手紙を見つけ、彼のもとへと旅立とうとするところで終幕となります。つまり2人が再会する予感だけを残して小説は締めくくられているのです。 レッドは釈放を望みながら、外の世界でやっていけるのか不安に思っていました。しかし彼が少なくともアンディの居場所を知り、いざとなれば彼に会いに行けばいい、それまでに違うことをやってもいいと”自由に”考えられたのなら、映画とは違う素敵なエンディングですね。
『ショーシャンクの空に』はなぜ名作?作品に込められたメッセージを考察!

『ショーシャンクの空に』に込められたメッセージは、作中の名台詞「希望はいいものだ」で示されるように「希望の大切さ」、つまり「人間が”生きていく”ためには希望が必要だ」ということです。”生きていく”というのは、ただ体が死んでいないということではなく、人として尊厳を持って自由に生きることです。 アンディたちは刑務所の中で「自由」を求めて、そしてそれをきっと手にできると「希望」を持って暮らしていました。こうした「希望」は、アンディが刑務所に来て刑務官とうまく渡り合ったり、図書館を整備したりしたことがきっかけで、少しずつほかの囚人たちにも広がっていったのです。 「自由」やそれを求める「希望」、その大切さを『ショーシャンクの空に』は訴えているのです。
『ショーシャンクの空に』は「後味が悪い」?アンディは本当に冤罪なのか?
『ショーシャンクの空に』は高く評価されている作品ですが、なぜ「後味が悪い」と称されることが多いのでしょうか? ここでは、作中のアンディの発言や行動をもとに「後味が悪い」理由を解説します。
真犯人は誰?本当にアンディは冤罪なのか?
アンディが妻とその愛人を殺害したとされた理由の1つは、銃は6連発なのに死体から見つかった銃弾は8発だったことで、「6発撃ち終わったあと、さらに弾を込め直して2発撃つのは強い私怨によるもの」、つまり強盗が突発的に撃ったとは考えづらいというものでした。 たしかにそう考えるとアンディは怪しく見えます。彼が有罪か無罪か曖昧ではありますが、アンディは「どちらでも同じだ」と言っています。彼は自分が冤罪かどうかは関係なく、妻を死に追いやったのは自分だと思っているのです。 一方、原作ではアンディは本当に無罪のようです。トミーが真犯人を自称する人物の話をしたとき、アンディには心当たりがあるようでした。また警察の捜査のずさんさも描かれています。 監督のフランク・ダラボンはアンディが冤罪かどうか曖昧にすることで、どこかホラー作品のような不気味さを演出しているのです。
アンディの脱獄が美化されない
アンディの脱獄は、どんでん返しとも言える急展開で描かれます。しかし伏線はしっかりとあり、刑務所に来たばかりのアンディは、レッドに小さなハンマーとリタ・ヘイワースのポスターを調達してもらっていました。彼は最初から脱獄を計画しており、誰にも告げずにそれをやり遂げたのです。 多くの刑務所を舞台にした映画、さらに脱獄を計画する作品では、数名の囚人が仲間として役割分担をするものです。しかしアンディはたった1人でそれをやってのけ、周囲を驚かせます。これに爽快感を覚えた者もいるでしょうが、裏切られたと感じた者もいるでしょう。 しかもアンディは脱獄したあとの生活の準備まで周到に整えていました。これは彼がただの清廉潔白なだけの人物ではないことも感じさせます。
映画『ショーシャンクの空に』の登場人物・キャスト
アンディ・デュフレーン | ティム・ロビンス |
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レッド | モーガン・フリーマン |
ノートン刑務所長役 | ボブ・ガントン |
バイロン・ハドリー | クランシー・ブラウン |
トミー・ウィリアムズ | ギル・ベローズ |
ボグズ・ダイアモンド | マーク・ロルストン |
ブルックス・ヘイトレン | ジェームズ・ホイットモア |
アンディ・デュフレーン役/ティム・ロビンス

若くして銀行の副頭取を務めていたアンディ。しかし彼は、1947年に妻とその愛人を殺した罪で終身刑を課せられます。最初は周囲になじめずにいましたが、レッドとの出会いによってほかの囚人との交流も生まれ、なんとか刑務所での生活に希望を見出すようになります。 エリートから囚人へと転落人生を送ったアンディは、権力者に対してうまく立ち回る一方で、囚人仲間の生活の向上に尽力しました。 ティム・ロビンスは1958年10月16日生まれ。アメリカ、カリフォルニア州ウエストコビナ出身。『ショーシャンクの空に』が公開された翌年の1995年には、米エンパイア誌が選ぶ、「映画史において最もセクシーな俳優100人」に選ばれました。 主な出演作に『ザ・プレイヤー』(1992年)、『デッドマン・ウォーキング』(1995年)、『ミスティック・リバー』(2003年)、『宇宙戦争』(2005年)など。俳優以外にも映画監督・音楽家としても活躍中。2018年には『HERE AND NOW ~家族のカタチ~』、2019年には『ダーク・ウォーターズ 巨大企業が恐れた男』に出演し、変わらぬ存在感を見せつけています。
レッド役/モーガン・フリーマン

刑務所でアンディの親友となったレッド。彼はほかの囚人たちから依頼を受け、ありとあらゆる物を外部から手に入れてくる「調達屋」として一目置かれる人物です。仮釈放を望んでいるものの、外の世界での生活に不安を抱いてもいます。 思慮深く、優しいため「調達屋」としてだけでなく、人としても人望を集める人物です。 演じたモーガン・フリーマンは1937年6月1日生まれで、アメリカ・テネシー州メンフィス出身。独特の声と醸し出す静かな雰囲気で、近年のアメリカ映画史において、最もポピュラーで、かつ尊敬されている俳優のうちの1人です。 刑務所の庭でレッドが野球ボールを投げながら交わすアンディとの最初の会話のシーンでは一言も文句を漏らすことなく、9時間ボールを投げ続け、翌日は腕を包帯で吊って撮影所に現れたそう。 彼は本作でアカデミー賞に3度目のノミネート。 『セブン』(1995年)、『ベン・ハー』(2016年)など、数々の映画に出演しているほか、ナレーションも多く手がけています。ティム・ロビンスの出演していた『宇宙戦争』(2005年)にもナレーターとして出演していました。
ノートン刑務所長役/ボブ・ガントン
サミュエル・ノートンは、ショーシャンク刑務所の所長です。厳しい規律で刑務所を管理し、部下である刑務官たちの囚人への暴力も容認。一方で、敬虔なクリスチャンでもあります。元銀行員のアンディに節税のアドバイスを受け、彼に裏金の処理を任せるようになりました。 そんなノートン所長は自分に都合の悪いことは隠蔽し、トミーを殺害させるなど、卑劣な人物です。 演じるのは、1945年11月15日生まれのボブ・ガントン。アメリカ、カリフォルニア州サンタモニカ出身。『エビータ』『スウィーニー・トッド』などの舞台出演でトニー賞を受賞。たくさんの映画にも出演する一方で、『デスパレートな妻たち』、『24』などといったテレビドラマシリーズにも多く出演しています。アメリカドラマ・映画の名脇役とも言える存在です。
バイロン・ハドリー役/クランシー・ブラウン
ショーシャンク刑務所の主任刑務官バイロン・ハドリー。彼は囚人を死亡させたり半殺しにしたりと、非常に暴力的な性格の人物です。 兄の遺産の大半を税金で取られることを嘆いていた彼は、アンディからその対策を聞き、見返りに彼と一緒に作業をしていた囚人たちにビールを用意します。ほかの刑務官にもアンディを紹介し、彼は刑務官たちの間でも一目置かれるようになりました。 ハドリーを演じるクランシー・ブラウンは、1959年1月5日生まれ、オハイオ州出身。俳優のほかに、声優としても活躍しており、『スポンジ・ボブ』(1999年〜)のユージーン・H・カーニ役などで知られています。
トミー・ウィリアムズ役/ギル・ベローズ
アンディの刑期中にショーシャンク刑務所に新たに入所してくるはトミーは、ロック好きでおしゃべりな若者です。陽気で憎めない性格。13歳のころから何度も刑務所に出入りしており、読み書きができませんでしたが、アンディに教えてもらい高卒資格を取得しました。アンディが有罪となった事件の真相を知る人物です。 トミー役のギル・ベローズは、1967年6月28日生まれ、カナダのバンクーバー出身です。ドラマ『アリー my Love』のビリー・トーマス役などで知られています。
ボグズ・ダイアモンド役/マーク・ロルストン
ボグズは囚人たちのなかでもリーダー格で、2年にわたってアンディにレイプと暴行をくり返していました。しかし、所長をはじめとする所員が節税のためにアンディを頼るようになったことから、ハドリーに半殺しにされてしまいます。 演じつマーク・ロルストンは、1956年12月7日生まれのボルチモア出身です。『エイリアン2』(1986年)や『リーサル・ウェポン2』(1989年)、『ソウ5』(2008年)などに出演しています。
監督はフランク・ダラボン

監督はフランク・ダラボン。数多くの脚本・制作に関わる一方で、これが最初の長編映画監督作品となりました。 本作以降も、『グリーンマイル』(1999年)や『ミスト』(2007年)など、スティーブン・キング原作の映画を手がけています。
ナレーションのインスピレーションはマフィア映画の名作から
フランク・ダラボン監督は、この映画の撮影中、毎週日曜、マーティン・スコセッシ監督によるマフィア映画の名作『グッドフェローズ』(1990年)を観ていました。 時間の経過を見せるためのボイスオーバーによるナレーションは、この映画にインスパイアされたのだそうです。
映画『ショーシャンクの空に』の感想・評価
冤罪で理不尽な刑務所生活を送る主人公が、どうしてここまで希望を捨てずにいられるんだろうか。と思っていたら最後に「なるほど、そういうことか〜!」となる。名言とか、感動するとか以前にストーリーがテンポよくて面白い。キャラクターも悪いやつも含めて魅力的。個人的にはブルックスがとても切なくて、環境が変わるっていうのは怖いことだし、それに耐えられないこともあるんだろうなと考えてしまった。
あまりにも有名な作品なので、見る前からハードル上がっていたと思うけど、予想以上に面白かった!希望を失わずに生きていくことの大切さは、刑務所の中じゃなくても同じだと思う。ちょいちょい辛い出来事も起こるんだけど、みんなでビール飲んだり音楽かけたり、アンディは普通の生活をしようとしてたんだろうな。レッドの語りで淡々と進むので、最後のどんでん返しですごく盛り上がる。あれ伏線だったのか!
名作映画『ショーシャンクの空に』の原作との違いやキャスト情報はチェック必須!
希望の大切さを観る者に訴えかけ、多くの人の心を震わせる『ショーシャンクの空に』。「感動作」としてだけでなく、意外な結末にも驚かされます。また数多くの名言、名台詞も時代を超えて観客の心を掴んできました。 世界中で愛される名作映画、さまざまな考察も楽しめる作品なので、1度観た人も再見してみてはいかがでしょうか。