『インフェルノ』あらすじ&ネタバレ解説 『ダ・ヴィンチ・コード』『天使と悪魔』続編の謎を解く鍵とは?
『ダ・ヴィンチ・コード』『天使と悪魔』の続編映画『インフェルノ』をネタバレ解説
ダン・ブラウンのミステリー小説で、宗教象徴学者ロバート・ラングドン教授を主人公としたシリーズの映画化第3作目『インフェルノ』が、2016年に公開されて大きな反響を呼びました。 2006年の『ダ・ヴィンチ・コード』、2009年の『天使と悪魔』に続く第3作目として製作され、ラングドン教授はシリーズを通してトム・ハンクスが演じています。監督は3作すべてをロン・ハワードが務めました。 ここではシリーズの概要やあらすじ・キャストなどを紹介し、『インフェルノ』の物語を解く鍵となるダンテの『神曲』についてネタバレありで解説していきます。
ラングドン教授シリーズを振り返り!原作との時系列の違いは?
ラングドン教授のシリーズで最初に映画化されたのは、2006年の『ダ・ヴィンチ・コード』。2009年に第2作目の『天使と悪魔』、2016年に第3作目として『インフェルノ』が製作されました。 しかし実はダン・ブラウンの原作は、まず『天使と悪魔』が2000年に、次に『ダ・ヴィンチ・コード』が2003年に刊行されているのです。『インフェルノ』は2013年に、その間の2009年には3作目の『ロスト・シンボル』が発表されました。こちらも映画化の話はありましたが、実現しませんでした。
つまり、映画化は原作の時系列通りではなく、2作目→1作目→4作目という順番で行われているのです。順序が逆になったため『天使と悪魔』は原作通りとはいかず、大幅に脚色が加えられました。 『ダ・ヴィンチ・コード』ではキリストの秘密が隠されたダ・ヴィンチの名画、『天使と悪魔』ではバチカンを舞台に秘密結社イルミナティが登場。宗教上デリケートな問題が取り上げられていたため、カトリック教会から批判されたことでも大きな話題となりました。
映画『インフェルノ』のあらすじ
『インフェルノ』のストーリーは、記憶喪失のロバート・ラングドン(トム・ハンクス)がイタリアの病院で目覚めるところから始まります。 ラングドンは記憶を取り戻す手助けをしたいシエナ・ブルークス博士(フェリシティ・ジョーンズ)とチームを組み、ウイルスを撒き散らそうと試みるマッドサイエンティストを止めるために得意の美術史や宗教図像解釈学を駆使します。 2人は、ダンテの長編叙事詩『神曲』<地獄篇>をめぐる世界滅亡へのカウントダウンに挑むのです。
インフェルノの意味とは?
タイトルの“インフェルノ”とは、中世イタリア・フィレンツェ出身の詩人ダンテによる叙事詩『神曲』に登場する「地獄(インフェルノ)」のこと。 この詩をモチーフに画家ボッティチェリが描いた作品「地獄の見取り図」が、謎を解く重要な“鍵”として使われています。『神曲』に傾倒するバートランド・ゾブリスト(ベン・フォスター)が思い描く“世界の終末”がここに描かれており、本作の世界観も表現しているようです。
映画『インフェルノ』のキャスト
主人公ロバート・ラングドン/トム・ハンクス
『ダ・ヴィンチ・コード』(2006)、『天使と悪魔』(2009)に引き続き、トム・ハンクスが記憶喪失のラングドン教授を演じます。 彼は自身が演じる役について、以下のようなコメントを残しています。「本当にかっこよくて、知的で、タフな男。僕は役者だからそんなかっこいい彼のことを、演じることができるんだ。かっこいい男のフリをするのが、俳優の仕事だからね。」
シエナ・ブルックス/フェリシティ・ジョーンズ
クリストフ・ブシャール/オマール・シー
ハリー・シムズ/イルファン・カーン
エリザベス・シンスキー/シセ・バベット・クヌッセン
バートランド・ゾブリスト/ベン・フォスター
物語を紐解く鍵はダンテの『神曲』
記憶を失ったラングドンが持っていた小型プロジェクターからは、「地獄の見取り図」に加筆されている映像が映し出されました。これがゾブリストの“遺書”であり、ウイルスの所在を示す鍵だと考えたラングドンは、シエナとともに暗号を解いていきます。 ダンテの『神曲』は「地獄篇」「煉獄篇」「天国篇」に分かれる3部構成の長編叙事詩で、イタリア文学の古典です。ダンテ自身が主人公となり、古代ローマの詩人ウェルギリウスとともに地獄から煉獄、そして天国へと死後の世界を遍歴する物語となっています。 ボッティチェリの「地獄の見取り図」は、このうちの「地獄」をイメージした作品で、最上部から最下部まで九圏に分かれている様子が詳細に描かれています。ゾブリストはこの見取り図にアルファベットを加筆しており、アナグラムとして読み解くとイタリア語で「CERCA TROVA(探して見出せ)」という意味に。次の手掛かりがヴェッキオ宮殿にあることを突き止めるのです。
【ネタバレ】映画『インフェルノ』の黒幕と、彼の思惑とは
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生化学者のバートランド・ゾブリストは大富豪でもあり、地球の人口爆発による“地獄”の未来を憂う人物。人口抑制をWHO(世界保健機構)に提言したり、講演で自らの主張を説いたりして啓蒙活動をしていましたが、ついに“インフェルノ”という殺人ウイルスを作り出して散布する計画を実行に移そうとします。 冒頭で追われていた人物が、このゾブリスト。追っていたのはゾブリストを危険人物として監視対象にしていたWHOの職員でした。塔から身を投げて自殺したゾブリストが、恋人に遺したのが「地獄の見取り図」の映像を写す小型プロジェクターだったのです。 しかも、その恋人とは実はラングドンに協力していたシエナ!彼女はゾブリストの意志を継いで、ウイルスの所在を突き止めたラングドンとWHO、そしてラングドンの命を狙っていた民間警備会社「危機総括大機構」を出し抜いてウイルスを拡散しようと行動を起こすのです。
【解説】WHOと大機構はなぜ対立していたのか?
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そもそもなぜ大機構がWHOと対立していたのかというと、ゾブリストが大機構の顧客だったからです。WHOに指名手配されたゾブリストは、ウイルス完成までに身柄を保護してもらうために大機構と契約していました。 しかし、ゾブリストから預かっていたビデオメッセージの内容を確認した大機構のシムズ総監は、人類の半分を滅亡に追い込む殺人ウイルスの散布をほのめかす内容に驚きます。そしてWHOの政府武装部隊を指揮するエリザベス・シンスキーと協力して、ウイルス散布を防ぐことを決めたのです。 ラングドンが大機構に狙われたのは、ゾブリストとの契約のもと、WHOがウイルスの謎を突き止めるのを防ぐためでした。ラングドンはWHOのシンスキーに協力を依頼されていたのですね。しかも実はこの2人、昔は恋仲だったのです。
映画『インフェルノ』が警告する人類の未来
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『インフェルノ』では、ラングドンたちが無事ウイルスの散布を防いで、ダンテのデスマスクもフィレンツェへ返されます。原作とは違い、シエナは悲しい結末を迎えますが、人類滅亡の危機は阻止されました。 しかしゾブリストが思い描いた人類の未来はあながち妄想ともいい切れず、人口爆発が引き起こす深刻な事態に対しては確かになんらかの手を打たなければ、人類の未来は明るいとはいえないのではないでしょうか。 ダンテが想像した地獄と、ボッティチェリが描いたインフェルノ。最下部の第九圏は最も重い罪である“裏切り”を行った者が、永遠に氷漬けとなる氷地獄です。ダンテが『神曲』で示した「人生における道徳的原則」は、現代にも共通するテーマとして心に刻むべきものなのかもしれません。