2020年1月9日更新

『クレイマー、クレイマー』をネタバレ解説。名作離婚劇の魅力とは【キャストたちの今も紹介】

『クレイマー、クレイマー』ダスティン・ホフマン、ジャスティン・ヘンリー
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1979年の映画『クレイマー、クレイマー』は、当時アメリカで社会問題になっていた離婚・親権争いを正面から描いた作品です。アカデミー賞作品賞、監督賞、主演男優賞をはじめ5部門に輝いた不朽の名作のキャストやあらすじ、そして名シーンを振り返ります。

目次

語り継がれる名作『クレイマー、クレイマー』

1979年公開の『クレイマー、クレイマー』は、名俳優ダスティン・ホフマンと大女優メリル・ストリープが共演した名作。当時のアメリカの社会問題を反映したストーリー展開や結末、音楽、子役をふくむキャスト全員の名演技など、すべてが高い評価を受けています。 今回はそんな名作映画『クレイマー、クレイマー』のあらすじからキャストの現在、映画史に残る名シーンの解説までお届けしましょう。 ※この記事には『クレイマー、クレイマー』の結末までのネタバレが含まれます。本編を未鑑賞で内容を知りたくない方はご注意ください!

『クレイマー、クレイマー』のあらすじ【ネタバレなし】

ニューヨークのマンハッタンで働くテッド・クレイマーは、高収入のエリート会社員。 役員への昇進話も持ち上がっていた彼ですが、あるとき妻のジョアンナが、息子のビリーを置いて家を出て行ってしまいます。家庭を顧みない夫だったテッドは、 慣れない家事や育児と仕事の両立に大苦戦。 一方これまであまり交流のなかった父親と過ごすことになったビリーは、かまってもらえない寂しさから、仕事を家に持ち帰ったテッドの邪魔をするような行動をくり返します。 最初はまったくかみ合わない父子でしたが、徐々に2人の絆は深まり、協力して生活できるようになりました。しかし、2人で暮らしはじめてから1年半が経ったころ、突然ジョアンナから連絡があり……。

キャラクター&キャスト一覧【現在の活躍も紹介!】

テッド・クレイマー/ダスティン・ホフマン

ダスティン・ホフマン
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テッドは家庭を顧みない、エリート会社員。ジョアンナが家を出る直前に、重役になれるかもしれない昇進の話がありました。ビリーをひとりで育てていくうちに、すっかりビリーが生きがいの人生になります。しかしそんな彼に対して、職場の風当たりは強くなっていきます。 1967年の『卒業』や『真夜中のカーボーイ』(1969年)、『大統領の陰謀』(1976年)などへの出演で、すでに実力派として知られていたダスティン・ホフマンがテッド役を好演。アカデミー賞主演男優賞を獲得しました。 その後も数々の作品に出演し、1988年には『レインマン』で再びアカデミー賞主演男優賞を受賞。『フック』(1991年)のようなファミリー映画から『ムーンライト・マイル』(2002年)などのドラマ映画、アニメーション映画「カンフー・パンダ」シリーズへの声の出演など、幅広いジャンルで活躍をつづけています。 2012年には、初監督作品『カルテット!人生のオペラハウス』がトロント国際映画祭で上映されました。

ジョアンナ・クレイマー/メリル・ストリープ

メリル・ストリープ
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テッドの妻ジョアンナは、家庭を顧みない夫との生活に疲れ、テッドとビリーの元を去りました。息子を愛してはいるものの、ひとりの人間として自立し、外で働きたいと考えていた彼女。カウンセリングを受け、自分を取り戻したジョアンナは再就職し、再びテッドとビリーの前に姿を現します。 ジョアンナを演じたメリル・ストリープも、本作の前年に公開された『ディア・ハンター』(1978年)でアカデミー賞助演女優賞にノミネートされており、すでに実力派として知られていました。本作でアカデミー賞助演女優賞を受賞した彼女は、1982年の『ソフィーの選択』でアカデミー賞主演女優賞を獲得。 その後も数多くの作品に出演し、『愛と哀しみの果て』(1985年)や『マディソン郡の橋』(1995年)、『プラダを着た悪魔』(2006年)、『マーガレット・サッチャー 鉄の女の涙』(2011年)などの作品で、2019年までにアカデミー賞に21回ノミネート、そのうち主演女優賞を2回、助演女優賞を1回受賞しています。 近年の出演作には、「マンマ・ミーア!」シリーズや『ペンタゴン・ペーパーズ/最高機密文書』(2017年)、『メリー・ポピンズ リターンズ』(2018年)、『ストーリー・オブ・マイ・ライフ/わたしの若草物語』(2019年)などがあります。

ビリー・クレイマー/ジャスティン・ヘンリー

ジャスティン・ヘンリー
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ビリーはテッドとジョアンナの一人で息子で、最初はジョアンナがいない寂しさと、テッドとのぎこちない生活に困惑するのですが、父の深い愛情たっぷりの日々を過ごすうちに、彼のことを大好きになります。 ビリーを演じたジャスティン・ヘンリーは1971年5月25日生まれ。本作で映画デビューを飾り、この年のアカデミー賞では当時の史上最年少8歳で助演男優賞にノミネートされました。 学業に専念する為、俳優業を一時休止していましたが、大学卒業後に復帰。2020年1月現在までに、映画・テレビドラマ・短編映画などで活躍しています。

マーガレット・フェルプス/ジェーン・アレクサンダー

ジェーン・アレクサンダー
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ジョアンナの親友マーガレットは、当初はテッドのことを嫌っていましたが、のちに彼の良き理解者になります。テッドとジョアンナの裁判を通して別れた夫への愛に気づいたマーガレットは、別れた夫と人生をやり直すことを決意します。 マーガレットを演じたジェーン・アレクサンダーは、1939年10月28日生まれ。ブロードウェイの舞台で活躍し、トニー賞の受賞経験もある実力派女優。本作でアカデミー助演女優賞を受賞し、他のキャスト同様高い評価を受けました。 その後も『サイダーハウス・ルール』(1999年)をはじめとする多数の映画に出演。テレビシリーズでも『THE BLACKLIST/ブラックリスト』(2013年〜2014年)、『グッド・ワイフ』(2011年〜2015年)、などで活躍しており、2020年にもテレビシリーズ『Tales from the Loop(原題)』に出演する予定です。

フィリス・バーナード/ジョベス・ウィリアムズ

ジョベス・ウィリアムズ
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ダスティン・ホフマン演じるテッドのガールフレンド、フィリス・バーナード役で映画デビューしたジョベス・ウィリアムズ。 女優として長いキャリアを誇る一方で監督業にも進出しており、1994年にはアカデミー賞の短編映画部門にノミネートされたこともある実力者です。 2009年以降、ウィリアムズは俳優の地位・待遇向上を目指す映画俳優組合の長も務めています。映画では2011年の『ザ・ビッグ・イヤー』に出演し、ジャック・ブラックやオーウェン・ウィルソンらと共演しました。

ジョン・ショネシー/ハワード・ダフ

ハワード・ダフ、ダスティン・ホフマン『クレイマー、クレイマー』
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テッドの弁護士であるジョン・ショネシーを演じたハワード・ダフは1913年生まれ。『クレイマー、クレイマー』が公開された時点で既に66歳でした。 戦後から活動を始めたダフの代表作は1948年の『裸の街』などがあり、そのほかに多くのテレビシリーズでも活躍。 本作以後も精力的に俳優活動をつづけましたが、1990年7月に心臓発作でこの世を去ります。享年76歳でした。

ジム・オコナー/ジョージ・コー

テッドが勤める広告代理店の社長ジム・オコナーを演じたのはジョージ・コーです。彼は、1975年から1986年にかけて、アメリカの人気コメディ番組『サタデーナイトライブ』の最初のキャストメンバーとして人気を獲得しました。 1990年代以降、『ザ・ホワイトハウス』(2001年〜2002年)や『グレイズ・アナトミー』、『BONES』、『スーパーナチュラル』など数多くのテレビシリーズに出演。また、テレビアニメシリーズ『スター・ウォーズ:クローン大戦』(2009年)や『アーチャー』(2009年〜2019年)などで声優としても活躍。 しかし2015年、長い闘病生活の末に86歳で亡くなりました。

映画史に残る名シーンを解説【ネタバレ注意!】

アイスクリーム事件:両親の離婚に直面した幼い子供の気持ち

『クレイマー、クレイマー』ダスティン・ホフマン、ジャスティン・ヘンリー
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ある日テッドは、アイスクリームを買って家に帰ってきます。そのとき彼は「アイスは夕食の後」と言ったにも関わらず、夕食には手を付けず冷蔵庫からアイスクリームを取り出すビリー。それを見たテッドは激怒し、息子をベッドに投げ飛ばしました。 その後ビリーは、「僕が悪い子だからママは出ていったの?」「パパもいつか僕を捨てるの?」と泣き出してしまいます。幼い彼は両親の離婚は自分のせいだと考えて心を痛めていたのです。そのことに気づいたテッドは離婚はビリーのせいではないこと、そして自分はビリーをとても愛していることを優しく言って聞かせるのでした。 実は、両親の離婚の原因は自分なのではないか、と考える子供は多いようです。離婚と親権争いをテーマにした本作で、子供であるビリーの気持ちを描き、テッドに親としての自覚を芽生えさせたこのシーンは非常に涙を誘います。

メリル・ストリープの涙の名演技

メリル・ストリープ演じるジョアンナは、家庭を顧みないテッドに耐えかねて、息子ビリーを置いて家を出ていきました。しかしその1年半後、彼女はビリーの親権を取り戻そうと裁判を起こします。 ここでジョアンナが涙ながらに息子には母親が必要であると訴えるシーンは、その抑制された演技でリアリティが際立ちます。社会に出て働くことを望み、テッドのもとを去った彼女ですが、その理由はいつかビリーを引き取るためだったのかもしれません。いまや安定した職に就いたジョアンナは、ひとりでもビリーを育てていける自信を手に入れたのではないでしょうか。 しかし、一度は元夫のもとに息子を置き去りにしたことに罪悪感も覚えている様子です。目に涙を浮かべながらも、決して感情的にならないジョアンナの姿に、母の強さを感じます。

フレンチトーストに見る父と子の絆

ジョアンナが出ていった直後、テッドが初めてビリーに作った朝食はフレンチトーストでした。しかし、料理などしたこともなかった彼は、ビリーの忠告も聞かずマグカップを使ってフレンチトーストを作り、黒焦げにしてしまいます。 このシーンで彼がこれまでいかに息子をないがしろにし、家事も全くしてこなかったことがはっきりとわかります。しかしビリーとともに暮らすうち、テッドは少しずつ家事を覚え、息子との絆を育んでいきました。 そして2人で過ごす最後の朝、テッドとビリーは一緒にフレンチトーストを作ります。会話をしながら美味しそうなフレンチトーストを焼いた父子。最初のフレンチトーストとはまったく違う出来栄えに、父親としてのテッドの成長や、これまでの2人の生活、そしてその愛を見て取ることができる名シーンです。

解釈が別れるラストシーン

『クレイマー・クレイマー』
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ジョアンナは、ビリーを取り戻そうと、テッドから親権を奪還する裁判を起こします。

裁判に負けてしまったテッドは、ビリーと最後の朝食を済ませ、ジョアンナが迎えに来るのを待っていました。しかしそのとき彼女から電話があり、テッドと2人で話したいとマンションのロビーに呼び出されます。そこでジョアンナは「ビリーはあなたといるべき」と言い、「息子に彼の家はここだと話してきてもいい?」と尋ねます。 裁判で父子の様子を見たジョアンナはいまの2人の関係がうまくいっていることを知りました。親権は取り戻したものの、1年半も息子に寂しい思いをさせ、今度はせっかく仲良くなった父親と引き離すことが、はたしてビリーのためになるのか真剣に考えた結果の決断だったのでしょう。 感極まったテッドはジョアンナにハグをし、エレベーターで部屋に向かう彼女を笑顔で見送りました。 映画はここで幕を閉じますが、この後この家族にはなにが起こるのでしょう。観る人によって解釈が別れるラストシーンも、『クレイマー、クレイマー』が名作たる所以といわれています。

離婚劇の代名詞『クレイマー、クレイマー』の色褪せない魅力

主演のダスティン・ホフマンやメリル・ストリープをはじめ、実力派俳優たちたちが集結し、その演技も高く評価された『クレイマー、クレイマー』。アカデミー賞5部門受賞も納得の名作です。 当時アメリカで社会問題となった離婚、そして親権争いを真正面から描いた本作には、子供を思う親の愛や子供が親を思う気持ち、親子の絆、そして親としての成長が描かれています。離婚を通してこれまでの自分や子供と向き合い、より良い関係を築こうと努力するストーリーは、時代を超えて観客の胸を揺さぶります。