2020年1月9日更新

【ネタバレ】『マリッジ・ストーリー』、離婚に揺れる夫婦を繊細に描いた良作を徹底解説!

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Netflixオリジナル映画『マリッジ・ストーリー』高評価の理由を考察!

アダム・ドライバー、スカーレット・ヨハンソン主演のNetflixオリジナル映画『マリッジ・ストーリー』は、演技部門をはじめとする各部門でアカデミー賞受賞が有力視されています。 子供がいる夫婦の離婚劇を描いた本作は、なぜそこまで評価されているのでしょうか。 本作のあらすじやキャスト、監督を紹介しながら、高評価の理由を考察していきます!

『マリッジ・ストーリー』のあらすじ

ニューヨークで前衛劇団の演出家として活動するチャーリーと、彼の劇団の看板女優であるニコールの夫婦。彼らはあることをきっかけに、離婚を決意します。 最初はふたりとも円満な協議離婚を希望していましたが、息子ヘンリーの親権を巡って対立してしまい、いつの間にか泥沼の離婚裁判へ。離婚に関するややこしい法制度や、親権を獲得するために相手の些細な欠点もあげつらう2人、本人たち以上に熱くなる弁護士たちなど、リアルな離婚事情を盛り込みながら、夫婦の揺れる心を繊細に描き出しています。 傷つけたくないのに傷つけ合うふたりは、「離婚」を通してなにを得ることができるのでしょうか。

実力派ぞろいのメインキャストを紹介!

アダム・ドライバー/チャーリー

アダム・ドライバー
©︎Dave Bedrosian/Future Image/WENN.com

離婚を決意した夫婦の夫、チャーリーはニューヨークで前衛劇団を主催する演出家です。才能にあふれ、野心家の彼は、劇団の運営に情熱を傾けるあまりニコールの気持ちに気が付かなかった部分が。それでも彼女に対する愛情がなくなったわけではなく、息子ヘンリーのことも大切に想っています。 チャーリーを演じるアダム・ドライバーは、2015年からスタートした「スター・ウォーズ」続三部作でカイロ・レンを演じ、世界的に知名度を上げました。多くの舞台への出演でキャリアを積んだ彼は、実力派として知られており、映画『フランシス・ハ』(2012年)や『ブラック・クランズマン』(2018年)など幅広い作品に出演しています。

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スカーレット・ヨハンソン/ニコール

スカーレット・ヨハンソン
OTTAVIA DA RE/SINTESI/SIPA/Newscom/Zeta Image

LAでショービズ一家の次女として生まれ、ティーン映画でブレイクしたニコール。しかし彼女はチャーリーと出会い、ニューヨークの舞台演劇の世界に飛び込みました。結婚して数年経ち、自分は夫のキャリアのために犠牲になったのでは、と考えていたニコールは、LAでのテレビシリーズ出演を機に離婚を決意します。 ニコールを演じるのは、スカーレット・ヨハンソン。彼女は『ゴースト・ワールド』(2001年)や『ロスト・イン・トランスレーション』(2003年)などのアート系映画から、MCU(マーベル・シネマティック・ユニバース)作品でのブラックウィドウ役などエンターテインメント大作まで幅広い出演作、確かな演技力で知られています。

ローラ・ダーン/ノラ・ファンショー

ローラ・ダーン
© Adriana M. Barraza/WENN/zetaimage

離婚裁判でニコールの弁護を担当するノラ・ファンショーは、抜け目のない敏腕弁護士。結婚生活で孤独や無力感を抱えていたニコールの気持ちをうまく引き出し、裁判を有利に進めようとします。 強気なノラを演じるのは、「ジュラシック・パーク」シリーズなどで知られるローラ・ダーン。そのほかにも『インランド・エンパイア』(2006年)や『わたしに会うまでの1600キロ』(2016年)など、数多くの作品に出演しています。 ダーンは本作で、第77回ゴールデングローブ賞映画部門助演女優賞を受賞しました。

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監督はノア・バームバック【『イカとクジラ』『フランシス・ハ』など】

ノア・バームバック
©Dennis Van Tine/Future Image/WENN.com

本作の監督は『イカとクジラ』(2005年)や『フランシス・ハ』(2012年)、『ヤング・アダルト・ニューヨーク』(2016年)などで知られるノア・バームバックです。 前述の作品でもリアリティのある悲喜劇を描いてきたバームバックは、本作でもその手腕を発揮。いいときもあれば悪いときもある人生を、絶妙なバランスで表現しています。日常の延長線上にある「離婚」を淡々と、しかし人間味のある滑稽さや感情的なドラマチックさを織り交ぜて描いた本作は、まさに彼の真骨頂といえるでしょう。

【ネタバレ注意】『マリッジ・ストーリー』はなぜ高評価を獲得できたのか

あまりにもリアルな離婚にまつわる争いと夫婦の葛藤

本作では、離婚にまつわる法的な手続きや弁護士のアグレッシブな争いなどが非常にリアルに描かれています。 監督であるバームバック、出演者のヨハンソン、ダーンは離婚経験者で、それぞれの実体験が本作に活かされているそうです。ダーンが演じたノラのキャラクターは、ヨハンソンとダーンの離婚裁判を担当した実在の弁護士を参考にしているとか。 また、知らないと驚くようなアメリカの法制度もしっかりと盛り込まれています。州によって弁護士資格が違ったり、居住地と裁判を起こした場所が違えば裁判、特に親権獲得を有利にすすめるために転居が必要とされたりすることもあるとか。さらに、相手が相談した弁護士には依頼ができないため、相手の選択肢を減らすために、わざと複数の弁護士と面談することもあるというのが驚きです。 しかし、本作で特にリアリティがあるのは、離婚の理由が「“もう愛していないから”ではない」ということ。愛があっても別れを決意する2人は、当初は円満に離婚しようとしますが、弁護士など周囲の反応に流されて、望まない傷つけ合いになだれ込んでいくのです。

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夫婦双方の視点を平等に取り入れた演出

これまで「離婚」をテーマにした作品は、夫婦どちらかに重点を置いて描かれたものが多くありました。たとえば、アカデミー賞作品賞を受賞した『クレイマー、クレイマー』(1979年)は、離婚を機に、これまであまり交流のなかった父と子を中心に描かれています。 しかし本作は、妻と夫、子供の母と父の両方の視点を同じ分量で取り入れています。離婚は夫婦2人の問題であり、多くの場合どちらか片方に完全に非があるということはないのだと感じさせます。 また、彼ら夫婦にとって離婚は避けられない選択であり、決して積極的に離婚したいわけではないということも強く訴えかけてきます。

主演2人の長回し口論シーン

『マリッジ・ストーリー』スカーレット・ヨハンソン、アダム・ドライバー
© Supplied by LMK/zetaimage

本作の最大の見せ場は、主演の2人による口論シーンです。お互いに気遣いながら離婚裁判を進めてきた2人が、ついに爆発し、お互いを責め合うこのシーンは、長回し(カットなし)で撮影されました。長回しならではの、舞台劇を思わせる迫力があります。 感情的になり、これまで言えなかったこと、あえて言わなかったこと、そして実際は思ってもいないことまで口にしてしまうチャーリーとニコール。追い詰められた2人のぶつかり合いは、ドラマチックで悲しく、しかしお互いにまだ確かな愛情があるという作品の根幹を強く感じることができるでしょう。 また、このシーンの真実味を支えるアダム・ドライバーとスカーレット・ヨハンソンの演技は圧巻。アカデミー賞候補として期待が高まっているのも頷ける、名シーン・名演技です。

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日常としての離婚劇『マリッジ・ストーリー』

お互いに対する愛情、子供に対する愛情は変わらないものの、自分自身の変化によって離婚を選ばざるを得なかった夫婦を描いた『マリッジ・ストーリー』。本作は、変わらないはずだった日常の延長線上にある「離婚」という出来事、夫婦2人の問題に他人が介入してくる違和感、そして愛がありながらも別れを選んだ2人の揺れる心を繊細に描き出しています。 監督の持ち味を存分に活かした演出、キャストの実力を見せつける演技など、見どころ満載の作品です。