サム・ライミの8つのおかしな監督遍歴【カルト作品からスパイダーマンまで】

ハリウッドを代表するヒットメイカー映画監督サム・ライミ
1959年10月23日ミシガン州出身。少年時代から8ミリカメラで映画を作ることが好きで、大学を中退し友人らとルネッサンス・ピクチャーズを設立し自主映画を製作するところから、彼のキャリアは始まりました。 サム・ライミの手がける作品の幅はとても広く、『スパイダーマン』シリーズの監督として有名でありつつも「ホラー映画の巨匠」と呼ばれることも。マニアックな演出で定評のあるライミ監督の代表作8本を紹介します。
スプラッター・ホラーの金字塔『死霊のはらわた』【1981】

1981年に公開されたサム・ライミの長編デビュー作がこちら。低予算で作られた自主製作映画です。 テネシー州の森の中にある山小屋を訪れた5人の若者。不気味な「死者の書」と先住者の残したテープレコーダーを見つけたことから、森の中に宿る悪霊を解き放ってしまうことに。一人また一人と感染するかのように死霊と化して、主人公アッシュに襲いかかります。 吹き出る血飛沫や飛び散る脳髄は、グロさを通り越してもはや芸術の域に達しているとも言われている本作。ライミ監督の持ち味である疾走感あふれるカメラワークは、この頃からすでに見られました。続編として『死霊のはらわたII』(1987)、『キャプテン・スーパーマーケット』(1993)が作られており、この3部作はスプラッター映画の最高傑作と賞賛されカルト的な人気を誇っています。
大人のためのダークヒーロー『ダークマン』【1990】
『死霊のはらわた』シリーズや『XYZマーダーズ』(1985)でホラー映画ファンの心をガッチリ掴んだサム・ライミ監督が、次のテーマに選んだのは「ヒーロー物」。彼は大のアメコミ好きでもあったのです。 マフィアに襲撃され大火傷を負わされた科学者ペイトン。誰にでも変身可能な人工皮膚を身につけ、孤高のヒーロー「ダークマン」として蘇った彼は、復讐を遂げるためにマフィア一味と黒幕を追い詰めます。 ヘリコプターから吊るされたロープにつかまり空を舞うシーン、建設中の高層ビルの足場を使ったクライマックスの対決シーンなど、華麗で見ごたえのあるアクションシーンは『スパイダーマン』の原型とも言えるでしょう。痛快なヒーロー物でありつつも、主人公の苦悩と葛藤を描いた切ないエンディングにも注目してください。
大金を手にした人々の人生が崩壊する『シンプル・プラン』【1998】
スコット・スミスの同名小説を原作にサム・ライミ監督がメガホンを取ったサスペンス映画。 森の中に墜落した飛行機の中から440万ドルの現金を発見した3人の男。平凡で慎ましい生活を送ってきた彼らが大金を手にしたことから、欲に溺れ猜疑心に駆られ、人間として大切なものを失っていく様子が描かれます。一面の雪景色を舞台にライミ監督が挑んだ皮肉で荒涼とした人間ドラマです。
異色の感動野球映画『ラブ・オブ・ザ・ゲーム』【1999】
マイケル・シャーラの同名小説をサム・ライミ監督が映画化した本作。 20年間活躍してきたベテランピッチャーが、最後のマウンド上でこれまでの人生を回想する野球ドラマです。彼の恋人や仲間との思い出と最後の試合を並立して描いた感動作。 ライミ監督作品としては異色ともいえる本作ですが、スタジアムの臨場感や登場人物の心理描写など「押さえるところは押さえてる」感のある名作です。
占い師が主人公の切ないミステリー・ホラー『ギフト』【2000】
夫を亡くし3人の子供を女手一つで育てる主人公アニーの職業は占い師。ギフトと呼ばれる特殊能力を持つアニーは、とある失踪事件の捜査に協力したことから事件に巻き込まれていきます。 幻影的な映像美や恐怖感を煽る演出は、ホラー出身のサム・ライミ監督ならでは。ホラーと言っても『死霊のはらわた』のようなスプラッター・ホラーとは全く趣の異なる、切なく美しいミステリー・ホラーです。
歴史的ヒットを記録したアメコミ・ヒーロー映画『スパイダーマン』【2002】
もはや説明不要なほどのアメコミ界のスーパー・ヒーローの映画化がこちら。本作でサム・ライミの名を知った人も多いのではないでしょうか。 精巧なCGや華麗なアクションだけでなく、主人公ピーター・パーカーのヒーローとしての苦悩をきっちり描いた本シリーズ。3部作すべてが興行的成功を収めました。興行収入1億ドルを公開1週目のオープニング成績のみで達成した初めての作品です。 『スパイダーマン』シリーズによって、サム・ライミは一躍ハリウッドを代表するヒットメイカーとなりました。
再びホラー作品のメガホンを取った『スペル』【2009】
ローン支払いの延期を懇願する老婆を追い返した銀行の窓口係の主人公。老婆に逆恨みされ呪いの言葉をかけられたことから、さまざまな怪奇現象に襲われます。 一躍スター監督となったサム・ライミが、再びホラー作品のメガホンを取った本作。どことなくコメディ感すら漂う振り切れたホラーはライミ監督の得意技。彼のやりたい放題のホラー作品がまた見られるなんて、ファンは喜んでしまいます。 そして、彼のファンならデビュー作『死霊のはらわた』のラストシーンをお忘れではないですよね。彼ならではの意地悪なラストシーンのご注目。
サム・ライミとディズニーが組んだファンタジー作品『オズ はじまりの戦い』【2013】
サム・ライミ監督はついにディズニーからオファーを受けることに。スパイダーマンで主人公ピーターの親友ハリーを演じたジェームズ・フランコを主演に迎えたウォルト・ディズニー・ピクチャーズ製作のファンタジー・アドベンチャー映画がこちら。 1939年のミュージカル映画『オズの魔法使』の前日譚として、カンザスの奇術師オスカーが偉大なるオズの国の統治者となるまでを描きます。白黒とカラーの映像を使い分ける演出など『オズの魔法使』へのオマージュもたっぷり。子供から大人まで楽しめる王道ファンタジーとなりました。