映画「キングコング」の歴史を初代から最新作までまるっと紹介
キングコングの映画の歴史を、現代まで全て振り返ります
『Godzilla ゴジラ』に始まる「モンスターユニバース」の一貫として、2017年に再び映像化されたキングコング。2020年にはついにゴジラと対決することになるコングは、長い歴史と共に姿を変えてきました。 本記事では記念すべき1作目が公開された1933年まで遡り、コング関連の全9作品について紹介します。
そもそも、キングコングとは?
キングコングとは、巨大な類人猿/ゴリラで、元々は南洋の髑髏島に住んでいました。1933年にアメリカで製作された特撮怪獣映画『キング・コング』、これが初めて世界にキングコングが現れた作品です。 髑髏島は恐竜が住む太古の生態系が残る島で、キングコングは原住民たちに神のように崇め恐れられていました。しかし都会から来た映画監督が、見世物興行に使おうとニューヨークへ連れて帰り、大騒動を起こすことになります。 見たこともない巨大生物だった初代コングは当時の観客の度肝を抜き、大ヒット作となりました。これ以降、続編映画やリメイク作品、亜流作品、ゲームのキャラクターなどに造り替えられて度々登場することになります。 ちなみにキングコングという名前の由来は、映画監督のメリアン・C・クーパーがポール・デュ・シャイユの『赤道アフリカの探検と冒険』という本の中で、「特別サイズ」「アフリカの森の王」と記載のあったゴリラに惹かれたことが発端となっています。
『キングコング』(1933)
すべてはここから、これぞ初代!
アメリカの映画監督カール・デナムは映画撮影のため、ニューヨークから地図にも載っていない南洋の島・髑髏島へ向かいます。主演女優のアン・ダロウは航海の間に船員のジャック・ドリスコルと親密な関係になりますが、島に到着するとアンは原住民たちに連れ去られてしまいました。 原住民が崇めているキングコングに生贄にされてしまうアン、そして助け出そうとするデナムとジャック。アンを必死で救おうとするジャックと、コングを興行に利用しようとするデナムの思惑が絡まり合う、スリリングな怪獣パニック映画です。 製作・監督はメリアン・C・クーパー、アーネスト・B・シェードザック、主演のアン役にフェイ・レイ、デナム役にロバート・アームストロング、ジャック役にブルース・キャボットがキャスティングされました。コングの映像はストップモーション・アニメーションで表現されています。 オリジナルの最大の見どころといえばやはり、物語のクライマックスでキングコングがアンを連れ去り、エンパイア・ステート・ビルディングによじ登るシーンでしょう。このシーンでは1930年代当時では最先端だった、空からの攻撃ができる飛行機によってコングを追い詰めています。
『コングの復讐』(1933)
キングコングの息子が登場!?
『キング・コング』の大ヒットを受けて同年に製作されたオリジナルの続編です。製作・監督・スタッフは前作からの続投で、前作のラストから1ヶ月後という設定で、映画監督カール・デナムの新たな航海を描いています。デナム役は前作に引き続き、ロバート・アームストロングが演じていました。 コングが暴れたせいで被害を受けたニューヨーク市民から賠償金を請求されたデナムは、原住民の宝が眠っていると聞き、再び髑髏島へ向かいます。そこでなんとコングの息子を助けて懐かれ、宝探しや恐竜との戦いで助けられることになるのですが……。 息子のリトルコングは「キコ」という愛称で呼ばれ、父親コングと比べると愛嬌もあり、大きな猿のような生物でした。また、この作品には『キングコング 髑髏島の巨神』に通じる大型恐竜や架空の竜などが登場しています。 この続編は前作と比べると評価・興行的には低調に終わりましたが、オリジナルでも特殊効果を務めたウィリス・オブライエンの続投で、ストップモーション・アニメーションの撮影が行われています。オブライエンは後続の多くの映画人に影響を与えた特殊効果の第一人者でした。
『キングコング対ゴジラ』(1962)
日本でも製作されたキングコング映画
「ゴジラ」シリーズで大ヒットを飛ばした東宝が、アメリカのRKO社とキングコングのキャラクター・ライセンス使用契約を結んで製作した提携作品です。監督は本多猪四郎、特撮は円谷英二のコンビで、高島忠夫と佐原健二が主演しています。 北極圏で眠っていたゴジラと、ソロモン諸島のファロ島で「巨大なる魔神」として原住民に恐れられているキングコングを対決させるという大胆なストーリー展開ですが、この作品がその後の「ゴジラ」シリーズの怪獣対決ものの方向性を決定づけたと言われています。また、5年契約のライセンス使用を活用するため、続編として1967年に『キングコングの逆襲』も製作されました。 東宝版コングは身長45メートルと、オリジナルのコングよりかなり巨大な設定になっています。また、100万ボルトの電流を受けて帯電体質になり電気エネルギーを発するという設定も加えられており、これらはゴジラと互角に戦うために創作されたものだったそうです。 RKO社からの注文により、顔立ちはオリジナルとは違った日本猿に近いものになり、体格もゴリラではなく猩々(しょうじょう)のようになったといいます。
『キングコングの逆襲』(1967)
キングコングがロボット版のコングと戦う!?
先述の『キングコング対ゴジラ』の続編として製作された作品。映画全体が、主に悪の科学者と彼が生み出したロボットに対して、キングコングが正義の立場で立ち向かうという構造になっています。 国際手配をされている悪の科学者ドクター・フーは、一国の女工作員マダム・プラニアの頼みでロボット怪獣「メカニコング」を生み出します。目的は、北極に眠る究極の「核兵器素材」である放射性物質「エレメントX」の採掘でした。しかし、メカニコングは放射物質の影響を受けて、機能不全します。 時を同じくして、原子力潜水艦エクスプロアー号と司令官のネルソンは本物のキングコングに遭遇。コングが代わりに「エレメントX」の採掘をすれば……と考えたマダム・ピラニアは、コングが興味を示す女乗組員スーザンやネルソンを拉致し、コングをを脅迫するのですが……。 東宝の創立35周年記念作品として製作され、監督は再び本多猪四郎が、特撮は円谷英二が担当しました。ローズ・リーズン演じるネルソン司令官と、リンダ・ミラー演じるスーザン以外の主要キャストが日本人で構成されているのも特徴的です。
『キングコング』(1976)
ジェフ・ブリッジス、ジェシカ・ラング主演作
『タワーリング・インフェルノ』で有名なジョン・ギラーミン監督によるオリジナルのリメイク作品で、時代設定を現代に変えています。製作はディノ・デ・ラウレンティス、主演はジェフ・ブリッジスとジェシカ・ラングでした。 大筋のプロットはオリジナル同様で、映画監督デナムのキャラクターが石油会社に勤めるフレッド・ウィルソンに、船員ジャックを動物学者のジャック・プレスコットに、そして女優アン・ダロウはアン・ドワンと名を変えて設定されています。また、アンがコングに情を寄せる様子を描いたのは、オリジナルにはないものでした。 一番大きな変更点といえば、ラストのキングコングがよじ登るビルが、エンパイア・ステート・ビルディングからワールドトレードセンタービルになっていることです。しかし今は無きツインタワーで、キングコングがタワーからタワーへ飛び移るシーンは一番の見どころともいえるかもしれません。
『キングコング2』(1986)
続編!死んだと思われていたキングコングが生きていた
1976年版のヒットを受け、続編としてデ・ラウレンティス・エンターテイメント・グループが製作、ジョン・ギラーミン監督が続投した『キングコング2』。原題の『King Kong Lives』が示すように、前作でワールドトレードセンタービルから落ちたコングが生きていたという内容になっています。 コングを昏睡状態から生き返らせようとするエイミー・フランクリン博士をリンダ・ハミルトンが、ボルネオ島に住むハンク・ミッチェルをブライアン・カーウィンが演じています。ミッチェルが捕らえた雌のコングの輸血により昏睡状態だったキングコングの蘇生に成功しますが、雄と雌が出会ったことでコングの暴走が起こってしまいます。 歴代コング映画の中でも評価があまり芳しくない本作。しかし今までにない雌のレディコングの登場は珍しく、日本ではこの作品を原作にしたゲームソフト『キングコング2 怒りのメガトンパンチ』や『キングコング2 甦る伝説』が発売されています。
『キング・コング』(2005)
ピーター・ジャクソンがオリジナルのコング映画をリメイク
初代のオリジナル『キング・コング』を観て映画の仕事を目指したというピーター・ジャクソンの念願のリメイク作品。オリジナルへの愛とオマージュが随所にあふれています。 時代設定やプロットの大部分はオリジナルに沿ったものとなっている一方、キャラクターの練り直しが行われました。主人公の三人、デナムとジャックとアンはそれぞれの性格的な部分での改変があり、職業はジャックが脚本家に変更されています。キャストはデナムをジャック・ブラック、アンをナオミ・ワッツ、ジャックをエイドリアン・ブロディが演じています。 それまでの映画との一番の相違点は、アンがコングと心を通わせるシーンが盛り込まれていること。お互いが心惹かれ、アンはコングに手話を教えたりダンスを披露したりしています。そういったラブロマンス要素、ジャックとアンとコングの三角関係模様も描かれているのが新鮮でした。 またこの作品では髑髏島に数々の恐竜や巨大生物が生息しており、コングとのバトルも大きな見どころ。特にバスタトサウルス・レックスは雄と雌とその子3頭でコングとアンを襲い、スリリングな展開を見せています。
『キングコング 髑髏島の巨神』(2017)
「モンスターユニバース」にキングコングが参戦!
オリジナルのリメイク版ではなく、いわゆるスピンオフ作品として位置する本作は、舞台を髑髏島(スカル・アイランド)に絞ったサバイバル・アクションとなっています。そしてやはり髑髏島には超巨大生物たちがたくさん潜んでいるようです! 未知の生物を調査するために髑髏島に上陸したカメラマン、学者、軍人からなる調査隊は、自然を破壊したことで髑髏島の守護神・キングコングの怒りをかってしまいます。島に棲む未知の巨大生物たちからも逃れなくてはならなくなった調査隊の運命は……? 監督はアニメ・漫画・ゲームなどの日本サブカルチャーをこよなく愛するジョーダン・ヴォート・ロバーツ、メインキャストはトム・ヒドルストン、サミュエル・L・ジャクソン、ブリー・ラーソンで、製作は『パシフィック・リム』、『Godzilla ゴジラ』のレジェンダリー・ピクチャーズです。 この作品を「モンスターバース」としてシリーズ化する意向を示しているレジェンダリー・ピクチャーズ。ゴジラとキングコングの共演を予定している『ゴジラvsコング(原題)』が2020年に製作されることも発表されています。
最新作『ゴジラvsコング(原題)』が2020年公開予定
『キングコング 髑髏島の巨神』に続く、2019年公開作『ゴジラ:キングオブモンスターズ』。その続編にあたるのが、この『ゴジラvsコング(原題)』となっています 2020年全米公開予定の本作の詳細なあらすじは明かされていませんが、怪獣たちが地球を闊歩する時代、絶滅に瀕した人類の未来を巡ってゴジラとコングが戦うというストーリーです。特務研究機関のモナークが、タイタンの起源について探る中、ふたつの生物を地球上から消し去ろうとする人々が対抗する、という背景もあるようです。 監督を務めるのは、Netflixオリジナル作品『デスノート/Death Note』のアダム・ウィンガード。脚本は「パイレーツ・オブ・カリビアン」シリーズのテリー・ロッシオとなっています。軍隊のリーダーである主人公を演じるのは、俳優一家の長男アレクサンダー・スカルスガルド。 他に『ゴジラ:キングオブモンスターズ』から、エマ博士の娘を演じるミリー・ボビー・ブラウンや、彼女の父である研究者を演じるカイル・チャンドラーが出演決定となっています。「髑髏島の巨神」で生還した主人公演じるトム・ヒドルストンやヒロインを演じたブリー・ラーソンの続投に関しては、まだ発表されていません。
キングコングは最強の存在となるか?今後もコング映画に期待!
これまで、キングコングが登場する全9作品と共に歴史について振り返ってきました。基本的にコングは全良な存在であり、崇められる存在であり、心優しい美女に弱いという共通点があるようですね。 2020年には、1962年に日本で製作された『キングコング対ゴジラ』以来のマッチがハリウッド版で行われます。「モンスターユニバース」の他作品を復習した上で、その勝敗はどうなるのか考えてみるのも良いかもしれません。