2017年7月6日更新

映画『ムーンライト』がより深く胸に焼きつく8のトリビア

このページにはプロモーションが含まれています
ムーンライト
(c)2016 A24 Distribution, LLC

AD

映画『ムーンライト』は切なくも純粋な愛を描く

前代未聞の発表ミスでも話題になった第89回アカデミー賞作品賞を始め、同助演男優賞、同脚色賞受賞の3部門を受賞、そしてゴールデン・グローブ賞映画部門作品賞(ドラマ部門)を獲得した映画『ムーンライト』。 黒人のゲイ映画という特異なテーマながら、そこに貫かれる切なくも純粋な愛と情感溢れる映像美は多くの人々の心に感動を呼び、全世界で大絶賛を浴びました。 今回はあらすじを駆け足で紹介した後に、『ムーンライト』をもっと楽しむための8つのトリビアを紹介します。きっと『ムーンライト』をもう一度見たくなってしまうでしょう!

映画『ムーンライト』あらすじ

映画『ムーンライト』は主人公シャロンの幼少期を描く“リトル”、 少年期の“シャロン”そして青年期の“ブラック”という3つの章からなっています。

リトル

『ムーンライト』
(c)2016 A24 Distribution, LLC
まずは第1部のあらすじを。マイアミの黒人貧困街の母子家庭に育つシャロン。母親はドラッグに溺れ、内気なシャロンはリトルのあだ名をつけられいじめっ子達の標的になってしまいます。 そしてクラスメートのケヴィンだけが友達だった彼は、ドラッグディーラーのホアンに出会います。父親のように接してくれるホアンに心を開くシャロン。 行き場のない彼にとってケヴィンとホアンだけが心を許せる存在なのでした。

シャロン

『ムーンライト』
(c)2016 A24 Distribution, LLC
第2部はティーンエイジャーになったシャロンが描かれていきます。彼は高校生になっても何も変わらずいじめられる日々を送っています。 そんなある晩月、光輝く浜辺でシャロンとケヴィンはお互いの心に触れるのですが、その次の日ある事件が発生します。

ブラック

『ムーンライト』
(c)2016 A24 Distribution, LLC
そして終幕となる第3部では、シャロンは大人になり、ブラックという名前でホアンと同じドラックディーラーとしてアトランタで暮らしている姿が映し出されます。 そして高校時代から会うことのなかったケヴィンからある日突然連絡があり、2人は再会することに。物語は加速していきます。

1.映像に色を足していく「カラーリスト」がいた

全編を通して惹きつけられる透明感のある映像美。なんとその美しい映像はカラーリストによって加工されたものだったのです!

色を引いて足す?

ムーンライト幼少期
(c)2016 A24 Distribution, LLC
黒人の肌を輝かせ、観客が太陽の光が降り注いでいるかのように感じさせたかったという撮影担当のラクストン。そのために、カラーリストのアレックス・ピッケルは撮影された映像を加工しコンストラストを極限に引き立たせ、光っている部分の色は抜いてプロジェクターの光が直接観客に反射するようにしたのだそう。 太陽の光や海がキラキラ光っているのがとても綺麗で本当に光が差しているように見えたのは、なんとプロジェクターの光の反射なのです。

美肌の秘訣はオイル!?

アンドレ・ホランド『ムーンライト』
(c)2016 A24 Distribution, LLC
黒人俳優の肌が輝くばかりに美しいのも、カラーリストのテクニックなのだとか。 撮影中、俳優達はオイルをスプレーしてカメラに肌が光って映るようにしていたそうです。そしてその光っている部分の色を抜いていきました。さらに黒い肌が綺麗なのは、特別なブルーを編集で足していたからなんだそう。 美しくブルーに輝く肌は『ムーンライト』の原案の戯曲『In Moonlight Black Boys Look Blue(月の光の下で、美しいブルーに輝く)』のタイトルへのオマージュなのかもしれません。シャロンとケヴィンが初めて心を通わせる、月の輝く海辺のシーンがその象徴ですね。

2.3人のシャロンは「目」で選ばれた

ムーンライト
(c)2016 A24 Distribution, LLC
本作の主人公である3人のシャロンはみんな、同じ目をしています。監督のバリー・ジェンキンスはキャスティングでとても苦労したそうです。 最初はスクリーン上でのシャロンとケヴィンの組み合わせでキャスティングしようとしましたが、それではうまくいかないとバリー・ジェンキンスは確信しました。そこで彼は同じ雰囲気や要素を持った俳優を探そうとしたそうです。
『ムーンライト』
(c)2016 A24 Distribution, LLC
その際にポイントとなったのは「目」。映画監督ウォルターマーチの著書『映画の瞬き』で語られていた「目は魂を見せる窓」という考えにバリー・ジェンキンスはインスピレーションを受け、同じ雰囲気を持つ目をした3人のシャロンを探しだしました。 そのような苦労もあり、映画本編ではかなり印象的に3人の目が描かれています。ぜひ映画館で体感してください!

3.バリー・ジェンキンス監督は本作で実は長編2作目!

『ムーンライト』ではアカデミー作品賞、脚本賞、助演男優賞の三部門をはじめ、ゴールデングローブ賞作品賞(ドラマ部門)など数々の賞に輝いたジェンキンス監督ですが、なんと長編映画は今回で2作目となります。 第1作長編映画デビュー作の『メディシン・フォー・メランコリー(原題)』(2008年)では多くの映画祭で好評を得て、インディペンデント・スピリット・アワードでは初長編作品賞にノミネートされています。

4. シャロンの母親が麻薬中毒者であった理由とは?

ナオミ・ハリス『ムーンライト』
(c)2016 A24 Distribution, LLC
『ムーンライト』の原案となっているタレル・アルヴィン・マクレイニーの戯曲『イン・ムーンライト・ブラック・ボーイズ・ルック・ブルー』 はマクレイニーの母がエイズで亡くなった経験を元にした半自伝的なものです。 マクレイニーと偶然にも同じ町で育ち同じ学校出身というジェンキンズ監督の母親もマクレイニーの母と同様薬物依存に苦しみました。シャロンの母親はジェキンズとマクレイニー、双方の麻薬中毒の母がもとになっているのです。

5.映画『ムーンライト』の撮影期間はたった25日間だった!

マハーシャラ・アリ『ムーンライト』
(c)2016 A24 Distribution, LLC
映画化まで3年半を費やした『ムーンライト』ですが、その全撮影期間はなんとたったの25日間。その理由は予算の関係上25日で撮り終えなければならなかったからだそうです。ちなみにバリー・ジェンキンス監督の前作『メディシン・フォー・メランコリー(原題)』は15日で撮り終えたとのこと。 そのあまりに短すぎる撮影日程では、シャロンの母親ポーラを演じたナオミ・ハリスはリハーサル無しで全てのシーンをわずか3日間で撮影。大人なったケヴィンを演じたアンドレ・ホーランドは彼のシーンを5日間で撮影。 シャロンを演じる3人は、ジェンキンス監督がそれぞれがお互いに影響されず各々の個性を尊重したかったからという理由から、顔を会わせることはなく2週間の間に別々に撮影したそうです。

6.映画『ムーンライト』はウォン・カーウァイに影響を受けている!?

バリー・ジェンキンス監督は、『恋する惑星』、『ブエノスアイレス』、『花様年華』等で知られる香港映画界の名匠ウォン・カーウァイ監督に強く影響を受けているということを公言しています。 まだ学生の頃初めてカーウィ監督の『恋する惑星』を見て衝撃を受け、こんな映画を作りたい!と思ったのだそう。 カーウァイ監督はその情感の深さと魅力的な映像美に定評があり、映像からあふれ出る深みのある情感は見る人の心を魅了します。確かに『ムーンライト』のシーンには、『ムーンライト』と同じく同性愛がテーマの『ブエノスアイレス』、『欲望の翼』、『花様年華』に強く影響を受け、その情感あふれるシーンが見られます。

7.シャロンの母親・ポーラを演じたナオミ・ハリスはyoutubeで役作りをした!?

シャロンの薬物中毒の母・ポーラを演じるのは映画『007 スペクター』で颯爽としたボンドガールのペニーを演じているナオミ・ハリス。 ハリスは最初この役のオファーを受けた時、本人が禁酒主義であること、そして女優を始めるにあたって肯定的な役のみをすると決めていたため、かなり落胆しました。しかしながらこの母親役がジェンキンス監督自身の母親をモデルにしているということからその役を引き受けることにしたそうです。 なんとハリスは一ヶ月間、薬物中毒について調べ、薬物中毒者たちのビデオをYouTubeで見て役作りをしました。息子シャロンに意地悪である理由や、彼女が薬物に依存してしまった理由などを彼女なりに解釈し「ポーラ」という役を作り上げたそうです。

8.映画『ムーンライト』の製作を担当したプランB

ブラッドピット
低予算で作られたインディペンデント映画『ムーンライト』の製作を担当したのはあのブラット・ピットのプランBエンターテイメント。

プランBの幹部たちは早くからジェンキンス監督に注目?

『ムーンライト』
(c)2016 A24 Distribution, LLC
プランBはブラッド・ピットらが2002年に設立した映画制作会社です。2006年からはブラッド・ピットが所有者となり、代表を務めています。 当初、映画『ムーンライト』の制作費用調達を模索していたジェンキンス監督に対し、脚本を読んだプランBエンターテイメントは資金を提供しました。 そして映画『メディシン・フォー・メランコリー』以来ジェンキンス監督の才能に惹かれていたというプランBエンターテイメントの共同社長であるプロデューサー、デデ・ガードナーとジェレミー・クライナーが製作を担当することになったのです。

映画『それでも夜は明ける』も手掛けた!

『それでも夜は明ける』[DVD]
プランBエンターテイメントはアカデミー賞作品賞に輝いた2013年の映画『それでも夜は明ける』の製作も担当しました。難しいテーマを取り扱いながらも、その可能性を見抜きアカデミー賞に見事導いたことで評価されました。

無名俳優+超低予算でアカデミー賞受賞の快挙を達成!

『ムーンライト』
(c)2016 A24 Distribution, LLC
今回は主人公のシャロン役の俳優たちが全くの無名の上に超低予算にもかかわらず、アカデミー賞作品賞作品賞を含め3部門の賞に続きゴールデングローブ賞も受賞する快挙を成し遂げたブラッド・ピットのプランBエンターテイメント。 ブラット・ピット率いるプランBエンターテイメントの今後にも期待です!