2017年7月6日更新
映画『ムーンライト』あらすじ・キャスト【アカデミー賞受賞の話題作!】
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映画『ムーンライト』!タフな環境で成長する若者の人生を描く
11月に全米で公開された社会派ドラマ『ムーンライト』は独立系映画を対象にした映画賞ゴッサム・インディペンデント映画賞で作品賞と観客賞を受賞し、アカデミー賞を獲得した注目の作品です。
マイアミの貧困地域で生活するとある若者の成長を追った叙事詩的な今作。傷を負いながらも強くたくましく生きる青年の姿に多くの感動の声が寄せられています。今回は大注目の一本である本作のストーリー、キャストそして見どころや関連情報をまとめてご紹介します。
第89回アカデミー作品賞を受賞!
2017年アカデミー作品賞の大本命は史上最多タイとなる14部門にノミネートされたミュージカル映画『ラ・ラ・ランド』でした。ハリウッド賛歌のような作風、ノミネート数が多いほど作品賞を獲る可能性が高いことなどから、ほとんどの人が作品賞を獲ると予想。
そして、授賞式当日、作品賞の発表でプレゼンターが高らかに読み上げたのも『ラ・ラ・ランド』でした。しかし、スタッフが間違った紙をプレゼンターに渡すという前代未聞のハプニングが発生。第89回アカデミー作品賞の栄誉に輝いたのは『ムーンライト』だったのです。
その他にも、フアンを演じたマハーシャラ・アリが助演男優賞を受賞し、オスカーを獲得しています。
『ムーンライト』のパワフルなストーリー
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この映画は、マイアミの犯罪が多発する地域で暮らす黒人の少年シャロンの3つのライフステージ、つまり少年期、多感な10代、そして大人への一歩を踏み出す20代に焦点を当てて描いた三部構成になっています。
麻薬常習者の母親ポーラと二人で暮らすシャロンは、薬を手に入れることしか考えていない母親には育児放棄され、また学校では内気な性格と低い身長を理由にいじめられる日々を過ごしていました。シャロンはキューバ系の幼馴染ケビンが唯一の友人という孤独な少年時代を送ります。
そうして誰にも気にかけてもらえない少年の姿を見かねた地元の麻薬ディーラーのフアンは、心優しい恋人のテレサとともに彼に助けの手を差しのべます。彼らの家は、家では母親からの虐待、そして学校ではいじめに悩むシャロンにとって、唯一心の休まる場所となるのでした。
このような幼少時代を過ごしたシャロンには、成長しても多くの可能性が開かれているとは言えませんでした。10代の若者となった彼は貧困地域を抜け出すことも、いじめの連鎖を断ち切ることもできません。
そんな日々の中、彼は、ケビンに惹かれている自分に気づきますが、それは彼の暮らすコミュニティにおいては決して受け入れられない感情でした…。
『ムーンライト』の気になるキャストは?
有名な信頼できる俳優陣と無名の新星のコラボレーションが見所である『ムーンライト』のキャストをご紹介します!
シャロン/トレバンテ・ローズ
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本作の主人公であるシャロンの20代を演じるのは、アメリカの短距離走選手であり、最近は俳優活動にも積極的なトレバンテ・ローズです。ローズは大学生時代に南北アメリカ大陸のジュニア陸上選手権で400メートルリレーの選手として出場し、アメリカに金メダルをもたらしました。
2016年現在、彼はルイジアナ出身テキサス育ちの26歳。2012年に俳優のキャリアを始めたばかりですが演技力には定評があり、『ムーンライト』の演技でインディペンデント・スピリッツ・アワード賞にノミネートされました。本作が俳優としての活動の大きなブレークのきっかけとなることは間違いないでしょう。
テレビドラマでの活動も多く、現在世界中で大人気の『ウエストワールド』にもフロイド役として出演しています。
10代のシャロン/アシュトン・サンダース
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16歳のシャロンを演じるのはアシュトン・サンダース。2015年の伝記的音楽映画『ストレイト・アウタ・コンプトン』に脇役として出演しており、今作が主役デビュー作です。
驚くべきことに、サンダースは他の年齢のシャロンを演じる役者たち(ローズとヒバート)に会うことを監督から禁じられていたそうです。3人が初めて顔を合わせたのは、なんと映画が上映されたトロント国際映画祭においてでした。それでいてまとまりが取れてるのは見事ですね。
彼自身も子供の頃、役者を目指していたという理由でいじめにあったそう。リアルな体験が演技に生きています。
幼いシャロン/アレックス・ヒバート
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幼い頃のシャロンは、今作が映画初出演となるアレックス・ヒバートが熱演します。彼に関する情報はまだまだ少ないのですが、批評家の中にはフアン役のマハーシャラ・アリと並んで、この映画で最高の演技を見せているのがヒバートであるという人もいます。
ケビン/アンドレ・ホランド
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シャロンの幼い頃からの友人ケビンを演じるのは、1979年生まれのアンドレ・ホランド。彼はもともと舞台俳優出身で、11歳の頃から様々なミュージカルに出演してきたベテランです。ニューヨーク大学で美術の博士号をも取得しています。
2008年の『セントアンナの奇跡』やアン・ハサウェイ主演の『ブライダル・ウォーズ』に出演した彼は、アカデミー作品賞候補作の『グローリー/明日への行進』で黒人政治家のアンドリュー・ヤングを好演し、数々の映画賞にノミネートされました。
ホランドがケビンのキャラクターで最も魅力的だと感じる部分は、ケビンが「男性であるとはどういうことか」を常に問い続けている点だと言います。
僕が育ったアメリカ南部のアラバマ州には、常に「男はタフであるべきだ」とか「男は感情を露わにしてはいけない」といったプレッシャーがある。僕が俳優になろうとするのはこう言った「男性性」に反するものであったから、乗り越えるのには力が必要だった。だからこそケビンの役は、僕に強く響いてきたんだ。引用:esquire.com
フアン/マハーシャラ・アリ
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保護者のいないシャロンにとっての父親代わりとなるドラッグディーラー、フアンを演じるのはマハーシャラ・アリ。ちなみに「マハーシャラ」というのは愛称であり、本名は「マハーシャラルハズバズ」と言います。長い名前ですが、聖書にも登場する歴史の深い名前なのです。
テレビドラマへの出演からキャリアを開始したアリの映画初出演作は2008年の『ベンジャミン・バトン 数奇な人生』。ここでの演技が注目された彼は活動の幅を広げ、最近では『ハンガー・ゲーム』シリーズにボッグズ大佐役として出演。大人気政治テレビドラマ『ハウス・オブ・カード』のレミー役も彼です。
本作の演技でニューヨーク映画批評家協会賞の助演男優賞を受賞。世界各国の批評家からも彼の演技を賞賛する声が集まっています。『ムーンライト』の脚本を読んだアリは、感動のあまり大泣きしたのだとか。
とても大きな衝撃を受けたよ。脚本を読んだ時、あまりの美しさに何回も泣いてしまった。決して楽に読み流せる脚本ではなかったけど、登場人物それぞれに深く共感することができた。この映画の脚本は、とても人間的で暖かく感じられたよ。引用:eonline.com
テレサ/ジャネール・モネイ
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居場所のないシャロンを暖かく受け入れる女性テレサを演じるのは、ソウル・R&B歌手として有名なジャネール・モネイ。彼女は今まで声優や自分自身の役を演じた経験はありますが、本格的な演技は今回が初めて!しかしそうとは思えない素晴らしい演技を見せてくれています。
歌手としての彼女の活動は非常に幅広いもので、とても短くまとめることはできません。アメリカのバンド、「ファン.」の大ヒット曲『We Are Young』にゲストボーカルとして参加したことにより、日本でも有名になりました。また人気コスメブランド「Covergirl」の広告塔も務めた経験があります。
黒人に対する警察の暴力行動が問題となる中で、モナイも活発な政治活動を続けています。彼女がこの『ムーンライト』に出演したのも、この映画の訴えるものに彼女が共感したからなのです。
ポーラ/ナオミ・ハリス
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麻薬中毒者であり息子のシャロンに暴力を振るう母親ポーラは、イギリス出身の女優ナオミ・ハリスが熱演します。ダニー・ボイル監督の『28日後...』でヒロインを務めて注目を集め、ハリウッド進出後は『パイレーツ・オブ・カリビアン』シリーズでティア・ダルマ役や、『007』シリーズでイヴ・マネーペニー役などを務め活躍中です!
彼女は貧しい麻薬中毒者、という黒人女性を典型化したような役を演じることに初めは抵抗があったと言います。しかし監督のバリー・ジェンキンスの以下の言葉に動かされてこの困難な役を引き受けました。
またコカイン中毒者の役か…と思うかもしれないけど、悲しいことに、ポーラの物語は僕の母親の物語でもあるんだ。(原作者の)タレル・マクラニーの母親の物語でもある。この事実をなかったことにはできないんだ。中毒に苦しむ人々を無視することなんてできないだろう?我々は思いやりをもって、彼らの真実を伝えなければならない。
この力強い作品『ムーンライト』の監督は一体誰?
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『ムーンライト』を監督したのは、本作が2作目の監督作品となる若手監督のバリー・ジェンキンスです。ジェンキンスは物語の舞台と同じマイアミ出身。
12歳の時に父親を亡くし母親にも見捨てられた彼は、劣悪な環境の中で血縁関係のない女性に育てられます。まさに今作の主人公と同じ環境。本作は彼の自伝的な作品であるとも言えるのです。映画の撮影も、ジェンキンスが実際若い頃に暮らした地区で行われました。
世界でもっとも影響力のある人物に!
先日、TIME誌選出の世界でもっとも影響のある100人の1人に、ジェンキンス監督が選ばれました。本作発表前はほぼ無名の存在でしたが、今やその影響力は計り知れません。
あのブラピがプロデュースした!?
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本作の製作総指揮を務めたのはなんとあのブラッド・ピット!『ムーンライト』はブラピが設立した映画会社「プランB」によって製作されました。この「プランB」という会社、アカデミー作品賞受賞作『それでも夜は明ける』の製作を担当した会社でもあります。
『それでも夜は明ける』はもともとパラマウント・ピクチャーズで作られる予定でしたが、「黒人の奴隷映画は売れない」と考えた同社が政策を放棄したところを、プランBが拾い上げて作り上げた大作。このように、プランBはハリウッドにおける黒人の立場を推進する先進的な会社なのです。
海外メディアが語る、『ムーンライト』が素晴らしい理由!
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11月に全米公開された『ムーンライト』。海外メディアからは早くも賞賛の声が続々と上がっています!本作が素晴らしい理由は何なのか…様々な記事から評価を集めてみました。
ホワイトウォッシュされていない
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ここ数年問題になっているのが映画業界のホワイトウォッシュ(映画界が白人中心の世界であり、黒人やアジア系といった人種が十分に活躍できていないこと)が、この映画にはありません。『ムーンライト』はマイアミに生きる黒人コミュニティをありのままに描いた作品なのです。
「男性であること」を問う!LGBTの世界にリアルな切り込み
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アメリカではついに同性婚が合法化されましたが、LGBTの人たちが日々直面する問題がなくなったわけではありません。周囲の仲間から強制される「男(女)とはこうあるべき」といった暗黙のルールもその一つ。『ムーンライト』はそんな現実に鋭い切り込みを入れます。
また「グリークラブに所属するような、女の子らしい白人」という典型的なゲイの姿ではなく、痛いほどにリアルな同性愛の姿を見せつけます。
演技がとにかく素晴らしい!
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『ムーンライト』の俳優陣は早速各地の映画賞を総なめにしていますが、それも頷けること。
ナオミ・ハリス演じるコカイン中毒者、ローズとホランドが熱演する複雑な関係にある友人どうしの姿はもちろんのこと、女優デビューを果たしたジャネール・モナイもまた、自然で素朴なテレサ役を好演しています。
アカデミー賞幻のスピーチ!?
2017年前代未聞のハプニングが起きたアカデミー賞で、作品賞を受賞した映画『ムーンライト』。
受賞後、バリー・ジェンキンスは淡々とスピーチを終えていましたが、実は授賞式では披露されることのなかったスピーチ原稿を用意していたそうです。
その原稿には、貧困や薬物中毒の母親など厳しい家庭環境で育ってきた自分自身がシャロンであると書かれ、どんなに厳しい環境であっても決して夢を諦めないで欲しいと力強くエールを送る感動的な内容になっていました。
ウォン・カーウァイ作品へのオマージュが隠されていた!
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監督のバリー・ジェンキンスによると、本作は1997年ウォン・カーウァイがカンヌ映画祭監督賞を受賞した映画『ブエノスアイレス』にオマージュを捧げていると言います。
30代のシャロンがケヴィンに会うために車で旅立つシーンに使用されていた楽曲は同作のオープニングに使用されていた曲と同じです。またシャロンとケヴィンが抱き合うシーンの構図も『ブエノスアイレス』を意識したものでした。
また新たな賞を受賞
アカデミー作品賞受賞でも話題の『ムーンライト』にGLAAD長編映画賞というまた新たな栄冠が送られることになりました。LGBT団体が主催するこの賞はレズビアンやゲイなどマイノリティの人々を公平に描いた作品に贈られる栄誉ある賞です。
『ムーンライト』の公開日が繰り上げに!公開館数も拡大!
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話題作『ムーンライト』は2017年4月28日に公開が予定されていましたが、この度アカデミー賞作品賞を始めとする3冠に輝き、話題性が高まったことから公開日の繰り上げが行われました。
映画は2017年3月31日より、公開規模を大幅に拡大し全国でロードショーとなります。