樋口真嗣、『シン・ゴジラ』をヒットへ導いた監督に迫る

2017年5月11日更新 1071view

映画『シン・ゴジラ』を大ヒットに導いた立役者の一人だと言っても過言ではない樋口真嗣監督。日本を代表するクリエイターの一人として多くの作品に携わってきた彼のキャリアと魅力に迫ってみます。

『シン・ゴジラ』を大ヒットさせた樋口真嗣

『シン・ゴジラ』 DVD

2016年の日本映画界を代表する記録的大ヒットとなった『シン・ゴジラ』。東宝ゴジラシリーズの29作目にあたりながら、これまでとは全く違うゴジラの姿とストーリー展開が、ある種の驚きをもって受け入れられたことは記憶に新しいでしょう。

その立役者となったのが、総監督・脚本をつとめた庵野秀明と、監督・特技監督をつとめた樋口真嗣のコンビであることに間違いありません。今回は、その中でも樋口真嗣監督にスポットを当て、そのキャリアに迫ります。

樋口真嗣のプロフィール

樋口真嗣は1965年9月22日生まれ、東京都新宿区出身です。茨城県古河市で育ち、県立古河第三高等学校卒業後の1984年、映画業界に入ります。最初は、シリーズ16作目の映画『ゴジラ』において、怪獣造形に関わる雑用仕事でした。

同年には、自主製作映画『八岐之大蛇の逆襲』で庵野秀明と知り合い、庵野らが設立したガイナックスに参加。その後は複数の制作会社を渡り歩きながら、着実にキャリアを重ねていきました。

ちなみに『八岐之大蛇の逆襲』ではすでに特技監督をつとめ、同年のSFアニメ映画『王立宇宙軍 オネアミスの翼』では助監督をつとめています。

特撮映画で一躍その名を知られることに

『ガメラ 大怪獣空中決戦』

樋口真嗣の名を一躍有名にしたのは、やはり特技監督を担当した1995年の映画 『ガメラ 大怪獣空中決戦』です。東宝のゴジラシリーズに対し、こちらは大映の平成ガメラシリーズ第1作目にあたり、ガメラ誕生30周年記念作品との位置づけでした。

太平洋上の謎の環礁から目覚めたガメラと自衛隊の戦いが描かれ、公開後シリーズ化が決定。とりわけプロからの評価が非常に高く、キネマ旬報ベストテンに特撮怪獣映画としては初めてランキングしました。

樋口真嗣は、本作で第19回日本アカデミー賞の特殊技術賞や第17回ヨコハマ映画祭の技術賞など複数の賞を受賞し、その名が広く知られるところとなりました。

庵野秀明との仕事

映画界に入った若い頃から親交があった樋口真嗣と庵野秀明。1990年から91年にかけて放送されたNHKのテレビアニメ『ふしぎの海のナディア』では、総監督を庵野、後期の監督を樋口がつとめています。

その後、複数の作品で一緒に仕事をしていますが、意外な異色作としては、庵野が監督をつとめ樋口が友情特殊技術の名のもと参加した映画『ラブ&ポップ』などがあります。女子高生の援助交際を描いた作品です。

そしてもちろん、2人の仕事で触れないわけにいかないのは、日本が誇る伝説のアニメ『新世紀エヴァンゲリオン』でしょう。

『新世紀エヴァンゲリオン』、そして主人公・碇シンジとの関係

『新世紀エヴァンゲリオン』

同作が、1995年10月から翌年3月まで全26話が放送されたとき、樋口真嗣は一部の絵コンテや脚本を担当していただけでしたが、その後の劇場版シリーズにおいてはさらに大きな役割を担うことになります。

2007年の『ヱヴァンゲリヲン新劇場版:序』では画コンテ、2009年の『同:破』では画コンテのみならずイメージボードと脚本協力、2012年の『同:Q』では、さらにデザインワークスやアニメーションマテリアルなども担当しました。

また、『新世紀エヴァンゲリオン』の主人公・碇シンジの名は、樋口真嗣の名に由来することは知る人ぞ知る有名な話です。

小説家・福井晴敏の原作を映画化した『ローレライ』

『ローレライ』

樋口真嗣のキャリアを語る上で、庵野秀明の他、もう一人忘れてはならないのが小説家の福井晴敏です。1998年に『Twelve Y. O.』で第44回江戸川乱歩賞を受賞しデビューした福井晴敏。翌年に発表した『亡国のイージス』は、第53回日本推理作家協会賞、日本冒険小説協会大賞、大藪春彦賞などを独占し、直木賞候補にもなりました。

『亡国のイージス』に感動した樋口が、映画に元になる作品を直接依頼。そして出来上がった映画が『ローレライ』であり、樋口が監督をつとめました。

物語は、第二次世界大戦末期、原爆投下を阻止しようと独自の作戦を決行する潜水艦の乗組員達の姿を描いています。

樋口真嗣は、福井晴敏著作の装丁を担当

『震災後』

『ローレライ』でのコラボレーション以後、福井作品の装丁の幾つかを樋口真嗣が担当しています。例えば『震災後』など、さすが樋口らしい世界観が展開しています。

2人は、好きな映画が『日本沈没』『新幹線大爆破』『太陽を盗んだ男』であるという点が共通しており、対談集もリリースするほど趣味が一致しているようです。

大作映画『進撃の巨人 ATTACK ON TITAN』を監督

『進撃の巨人 ATTACK ON TITAN』

世界中に多くのファンを持つ諫山創による大人気漫画『進撃の巨人』。圧巻の力を持つ巨人たちと人間のバトルを描いた作品で、様々なマルチメディア展開をみせています。大きな評判を呼んだアニメ作品に続き、満を持して2015年に前後二部作で公開された実写映画版の監督を手掛けたのが樋口真嗣です。

主要キャストはエレンを三浦春馬、シキシマを長谷川博己、ミカサを水原希子が演じたほか、脚本の一部を映画評論家の町山智浩が担当したことも話題になりました。

当初は、中島哲也が監督をつとめる予定でしたが、様々な紆余曲折を経たのち、ようやく樋口真嗣に落ち着いたという経緯があります。

実は俳優として幾つかの作品に出演している樋口真嗣

『インターミッション』

実は、樋口真嗣が俳優として複数の作品にカメオ的な出演をしていることはあまり知られていません。

古くは、1992年の映画『ゴジラvsモスラ』において、名古屋テレビ塔内のシーンに出演。2001年の映画『リリイ・シュシュのすべて』では、秋葉原で高校生に絡まれる男の役柄で登場しました。

2013年に公開された『インターミッション』は、閉館した実在の映画館「銀座シネパトス」を舞台に、そこに集う様々な観客たちの人間模様を描いた作品であり、多くの豪華キャストが出演しました。樋口真嗣はヒグボマーという役名で登場します。

映画に携わる者の一人として、映画愛あふれる作品に共感したようです。出演するだけでなく、積極的にトークショーなどに参加しプロモーションに一役買っています。

そして、樋口真嗣監督自身による最新作の情報はまだ伝わっていません。『シン・ゴジラ』の大ヒットのあと、今度はどんな作品を手掛けるのかに注目が集まっています。