2021年8月20日更新

【ネタバレ】映画『メッセージ』驚愕の秘話!あらすじから考察まで徹底解説!

『メッセージ』 エイミー・アダムス
(c)『メッセージ』

世界的に注目を集めるドゥニ・ヴィルヌーヴ監督のSF映画『メッセージ』(2016年)の驚くべき秘話やトリビアを解説しました。ネタバレも含みますのでご注意ください!

謎・衝撃・感動!映画『メッセージ』を徹底解説

映画『メッセージ』はSF映画の金字塔『ブレードランナー』の続編、『ブレードランナー2049』を手がけているドゥニ・ヴィルヌーヴ監督による作品です。 作品の評価は群を抜いており、アカデミー作品賞、監督賞、脚色賞、録音賞、撮影賞、編集賞、美術賞にノミネートされ、そしてアカデミー音響編集賞を受賞しています。映画ファンの間でもレベルが違うと言われるほど注目を集めたこの作品。今回はそんな『メッセージ』について徹底的に解説していきましょう。 ※この記事はネタバレを含みます。未鑑賞の人は注意してください。

映画『メッセージ』のあらすじとネタバレ

『メッセージ』
© 2016 PARAMOUNT PICTURES. ALL RIGHTS RESERVED.

物語は、突如地上に現れた巨大な球体型宇宙船から始まります。主人公の言語学者・ルイーズは、米軍から依頼を受けて謎の知的生命体「ヘプタポッド」の言語を解読することになりました。彼らの言語は人間のものとは違い、動きのある絵画のような異質な言語です。 彼らは一体何を伝えようとしているのでしょうか。ルイーズは物理学者の男性、イアンとともにその謎を解き明かしていきます。彼らの「メッセージ」が明らかになると、そこには衝撃の事実と美しくも儚いドラマが見えてくるのです。

ルイーズはヘプタポッドが使用する言語の難解さに絶望していました。しかし調査を進めるにつれて、徐々にヘプタポッドの世界認識の仕方に気がついていきます。人類の時間概念は過去から未来に進むものです。一方、ヘプタポッドは過去・現在・未来を同一視して時間を認識しています。 ルイーズはヘプタポッドの時間の捉え方を学んでいくにつれて、時間がループしていく感覚を手にしました。そしてまだ存在していない自分の娘・ハンナの姿が幻として見えるようになるのです。彼女は若くして亡くなり、夫とは離婚することまでもが分かってしまいます。 しかしルイーズは最終的に、自身の運命を知っておきながら、夫となるイアンのプロポーズを受け入れました。明確に語られているわけではありませんが、その理由を考える上で知的生命体との出会いは外せないでしょう。 彼らは時間を自由に行き来する存在ですが、人類はそうではありません。彼女は現在を大切にしたいからこそ、自身の運命を受け入れたのだと考えられます。

複雑で難解な『メッセージ』を徹底解説!

『メッセージ』
©︎Paramount Pictures/Photofest/Zeta Image

映画『メッセージ』のSF映画としての魅力は、現在・過去・未来を行き来しているというストーリー構造にあるでしょう。作品での時間の流れは一般的な時間の捉え方とは異なっています。通常の人間は過去から現在、そして未来げと時間が流れますが、異星人は自由に別の時間へとアクセスすることが可能です。 また、ビジュアルとしてもインパクトが強い宇宙船にも作品へのこだわりが見られます。というのもの、映画に登場する宇宙船のモデルは、小惑星「エウノミア」です。監督は楕円形の卵のような形に脅威とミステリアスさを感じ、見事なデザインに仕上げました。 そしてこの宇宙船は地上から28フィート(約8.5メートル)のところで滞在しているのも印象的です。これは、人類ががどのようにコンタクトを取ってくるのかを試しているように見せる演出として描かれています。

原作『あなたの人生の物語』とは?

あなたの人生の物語

映画『メッセージ』の原作には、『あなたの人生の物語』(Story of Your Life)という作品があります。この作品は中国系のアメリカ人の作家、テッド・チャンによって1998年に書かれた作品です。彼の作品は少ないのですが、寡作ばかりであることで知られています。 映画『メッセージ』は原作の大筋を元に作られていますが、原作と全く同じストーリーではありません。そこにはいくつかの相違点が存在しています。 例えば、映画では知的生命体が使用する言語を元に謎を解き明かしていくという、言語学的なアプローチがメインでした。一方原作では、フェルマーの原理などの数学的なアプローチが登場し、学術的な表現が多く見受けられます。

ヘプタポッドに関する解説/トリビア3選

デザインに苦心したエイリアンの文字

『メッセージ』
©︎Paramount Pictures/Photofest/Zeta Image

ドゥニ・ヴィルヌーヴ監督と脚本家のエリック・ハイセラーは、美しくも驚異を感じさせるエイリアン言語をこの作品に登場させました。 エイリアンの書き言葉である表義文字(セマグラム)をヴィジュアルで表現するために、製作スタッフたちは辞書まで作り、100字以上の異なる文字を参照できるようにしたそうです。劇中にはその中の71字が実際に使用されています。 このセマグラムを創り出したのは、モントリオールのアーティストであるマーティーン・バートランド。この作品の製作デザイナーのパトリス・バーメットの妻であるバートランドは、夫が数ヵ月もの間エイリアン文字に向き合って成果が得られない様子を見て、15字のデザインを描いて見せたそうです。 それが、にじんだインクやコーヒーのシミのような不思議な円形の文字でした。

ヘプタポッドの通称の由来

劇中でエイリアンとコミュニケーションを始めたルイーズとイアンは、関係者内では「ヘプタポッド(七本脚)」と呼ばれている2体のエイリアンたちを、「アボットとコステロ」と名付けます。 アボットとコステロというのは、1940年代から50年代に活躍したアメリカのお笑いコンビです。 バッド・アボットとルウ・コステロのコンビで35本ものシリーズ映画を製作し、1960年代には2人を主人公にしたテレビアニメも放映されました。 なぜイアンはこの名前を付けたのか特に劇中で言及はなさそうですが、アボットとコステロのやり取りの中で言葉の勘違いネタを使ったシーンがあるためではないかという解釈もあります。 しかし原作では2体のヘプタポッドはルイーズによって「フラッパーとラズベリー」と名付けられます。アボットとコステロは映画ならではの脚色のようですね。

宇宙船のモデルと着陸しない理由

『メッセージ』
©︎Paramount Pictures/Photofest/Zeta Image

ヘプタポッドの宇宙船のデザインは小惑星エウノミアから考えられたものだそうです。ヴィルヌーヴ監督は調査の間にエウノミアの「奇妙な卵のような不思議な形」にすっかり魅了され、その楕円形はきっと宇宙船に脅威とミステリアスな感覚をもたらしてくれるだろうと考えたそうです。 宇宙船は原作では「ルッキンググラス(姿見)」と呼ばれる双方向通信装置で、アメリカに9個、そして世界中に112個ものルッキンググラスが出現。映画では全世界で12個に数が減らされ、大きさも変更されてより深遠な意味を持たせる効果を生んでいます。 実は宇宙船は1度も着陸はしないのですが、その理由についてパトリス・バーメットが意味深な発言をしています。 12個の宇宙船が宇宙を旅し、終着地の28フィート(約8.5メートル)上空でデリケートな平衡状態のままとどまっているのは、手が届きそうで届かない距離で、地球の人々がどれほどの努力をしてどのようにコンタクトを取ってくるのかを試しているように見せる演出のようです。

『メッセージ』に関する解説/トリビア3選

ハンナの死は不可避の未来

この物語は時制に大きな謎を抱えています。ルイーズと娘のハンナとの思い出が語られる冒頭は、実は原作では未来形で書かれています。 つまり、まだ起こっていないことを語っていることになります。 そして原作ではハンナはロッククライミングの事故で、映画では不治の病で若くして亡くなることが早い段階でわかっています。 しかし、これが本当は「過去の思い出」ではないとしたら!?ここで先述のフェルマーの定理の登場です。 「光は必ず最短・最小の経路をたどる」ということは、光は進む方向を選ぶ前に最終目的地を知っていなければ、その最短距離を算出することはできないということ。 ハンナの死はルイーズの人生の中で避けられなかった過去ではなく、避けて通れない未来の出来事、目的地なのです。

名前が回文になっている?!

ルイーズの娘ハンナの英語表記は「Hannah」です。よく見ると、回文になっています。回文とは前から読んでも後ろから読んでも同じになる単語・文のこと。 このことは前項で書いたハンナとルイーズの思い出が未来の出来事であることと、かなり密接につながっています。原作の時制がハンナとのシーンを未来形、ヘプタポッドとのコミュニケーションを過去形、冒頭とラストのハンナを授かる節は現在形で書かれているのです。 つまり、この物語はなんと始まりが終わりであり、終わりこそが始まりであるという回文構造になっているのです!ついでにもう1つトリビアを。ハンナの父親になるイアンを演じているジェレミー・レナーの名の英語表記は「Jeremy Renner」であり、姓のレナーが回文になっています。これは偶然か必然か?

映画『メッセージ』を理解するには数学がカギ?

映画『メッセージ』でルイーズが付けているイヤリングがオウムガイの殻によく似ています。オウムガイは触手を持つ古代の生きた化石で、よく数学の「黄金比」を連想させるものですが、劇中ではその黄金比計算に出現するフィボナッチ数列や、永遠に続く超越数「円周率=π(パイ)」について言及されます。 これらは「宇宙」を理解するために必要なカギだと考えられています。 ドゥニ・ヴィルヌーヴ監督と脚本チームは、この作品の科学的観念が正確かどうか確かにするために、できるだけの努力をしたようです。科学者・技術改革者として著名なスティーブン・ウルフラムと彼の息子クリストファーが作中のすべての専門用語や画像、描写などを監修し、信頼できるものであるとを保証しています。 またエイリアンの言語が変換されるシーンで、プログラミング言語のコードの行がアニメーションで表されます。スティーブン・ウルフラムは自身のブログで、このコードは「ウルフラム言語」で書かれていると語っており、実際劇中で変換する様子が描かれています。

キャスト・製作陣

言語学者ルイーズ・バンクス役/エイミー・アダムス

エイミー・アダムス (z)
©️WENN.com

エイミー・アダムスはその自信と気転で問題を解決しチームを引っ張っていく頼れるキャラクター、ルイーズを等身大の演技で見事に演じています。ルイーズは問題解決のため他国との情報共有に積極的な姿勢を見せますが、共同戦線を維持するためにこの機を利用しようとする権力者たちと意見が衝突していまいます。 エイミーは本作の他に2013年公開の映画『マン・オブ・スティール』、2016年にはアメリカ公開『美しきスリラー』に出演。また、2年連続でゴールデングローブ賞を受賞した実力派女優です。

物理学者イアン・ドネリー役/ジェレミー・レナー

ジェレミー・レナー
©︎Mario Mitsis/WENN.com

ルイーズと一緒に宇宙船の現場モンタナへ連れて行かれるイアン・ドネリーを演じるのはジェレミー・レナーです。エイリアンとのコンタクトを助ける物理学者を熱演します。 2012年公開の『アベンジャーズ』、2015年『アベンジャーズ/エイジ・オブ・ウルトロン』などマーベル映画でおなじみのジェレミー。

エイミー・アダムスとジェレミー・レナーの関係性

主演の2人、バンクス博士を演じたエイミー・アダムスと数学者イアン・ドネリーを演じたジェレミー・レナーはこの作品で、2013年の『アメリカン・ハッスル』以来の共演を果たしています。トロント国際映画祭での会見ではお互いに「信頼、愛、尊敬の念」を抱いていると、相性の良さを見せていました。 また2人とも偶然にも、エイリアンの到来を扱ったアメコミ映画に出演しています。エイミー・アダムスは2013年の『マン・オブ・スティール』で新聞記者ロイス・レイン、ジェレミー・レナーは2012年の『アベンジャーズ』でホークアイを演じています。

監督/ドゥニ・ヴィルヌーヴ

ドゥニ・ヴィルヌーヴ
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本作でメガホンを取るのは、1967年10月3日生まれカナダケベック州の監督ドゥニ・ヴィルニーヴです。ヴィルニーヴが注目されるようになったのは、2010年公開、アカデミー外国語映画賞にノミネートされた『灼熱の魂』でした。 その後は、ヒュー・ジャックマン主演のサスペンス映画『プリズーナーズ』、メキシコ麻薬カルテルを緊迫感いっぱいに描いた『ボーダーライン』を発表。エンターテイント性が高いだけではなく、どこか一癖ある映画作家です。 さらに、名作SF映画の続編『ブレードランナー 2049』の監督に抜擢されるなど、一層目が離せなくなること間違いなしの人物。そんな彼を本作で主演を務めたエイミー・アダムスが絶賛していて、映画『メッセージ』の魅力はヴィルニーヴだと語るほどです。

劇伴/ヨハン・ヨハンソン

劇中音楽を担当したヨハン・ヨハンソンは、映画の撮影が始まる前にスコアのレコーディングを始めたといいます。 どうやらドゥニ・ヴィルヌーヴ監督は音楽を元にしながら映画制作がしたいようですが、なかなかに不思議な制作順序です。 また、ヨハン・ヨハンソンはドゥニ・ヴィルヌーヴ監督作品『プリズナーズ』『ボーダーライン』と本作、そして次回作の『ブレードランナー 2049』の音楽も担当しています。ヴィルヌーヴ監督にとってかなり信頼のあるコンポーザーといってよさそうですね。 サウンドトラックには収録されていませんが、物語を締めくくる場面には現代音楽家のマックス・リヒターによる「オン・ザ・ネイチャー・オブ・デイライト」が印象的に使われています。この楽曲は2012年の『ディス/コネクト』や2010年の『シャッター アイランド』でも使用されていました。

映画『メッセージ』は考察すると止まらない

『メッセージ』は言語学者のルイーズが、突如登場した知的生命体「ヘプタポッド」の謎を解き明かしていく物語です。ヘプタポッドは人類とは違う時間感覚を持っており、彼らのメッセージからは衝撃の事実と美しくも儚いドラマが見えてきます。 本作は考察すればするほど面白くなる作品です。ぜひ1度見返してみてください。