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【ネタバレ】映画『メッセージ』の驚愕の秘話10選【着陸しない理由は?】

2017年7月6日更新

『プリズナーズ』や『ボーダーライン』などで世界的にも注目を集めるドゥニ・ヴィルヌーヴ監督。その最新SF作品『メッセージ』の驚くべき秘話やトリビアを10本選びました。ネタバレも含みますのでご注意ください!

映画『メッセージ』の驚愕のトリビア10選【ネタバレ注意!】

不朽の名作SF『ブレードランナー』の新作『ブレードランナー 2049』の監督に抜擢されたカナダのドゥニ・ヴィルヌーヴ監督。そんな大注目の監督による最新SF作品『メッセージ』が、日本でも2017年5月19日に公開されます。

この作品はすでに2016年9月1日にヴェネツィア国際映画祭でプレミア上映され、2016年11月11日には北米で公開されています。その革新性が評価され各映画賞にノミネート、第89回アカデミー賞では作品・監督・脚色賞など8部門にノミネートされ、音響編集賞を受賞しました。

評価は高い一方、原作を含めその難解性が取りざたされていますが、観る前や観た後に少しでも映画の概要やトリビアを知ればより楽しめるかもしれません。ここでは内容に踏み込んだ驚愕のトリビアをご紹介します。後半からはネタバレがあるのでご注意ください!

1.デザインに苦心したエイリアンの文字

映画『メッセージ』はエイミー・アダムス演じる言語学者ルイーズ・バンクス博士が、突如地球上に現れた謎の地球外生命体であるエイリアンとのコミュニケーションを試みる物語ですが、ドゥニ・ヴィルヌーヴ監督と脚本家のエリック・ハイセラーは、美しくも驚異を感じさせるエイリアン言語をこの作品に登場させました。

エイリアンの書き言葉である表義文字(セマグラム)をヴィジュアルで表現するために、製作スタッフたちは辞書まで作り、100字以上の異なる文字を参照できるようにしたそうです。劇中にはその中の71字が実際に使用されています。

このセマグラムを創り出したのは、モントリオールのアーティストであるマーティーン・バートランド。この作品の製作デザイナーのパトリス・バーメットの妻であるバートランドは、夫が数ヵ月もの間エイリアン文字に向き合って成果が得られない様子を見て、15字のデザインを描いて見せたそうです。

それが、にじんだインクやコーヒーのシミのような不思議な円形の文字でした。

2.エイミー・アダムスとジェレミー・レナーの関係性

『アメリカン・ハッスル』

主演の二人、バンクス博士を演じたエイミー・アダムスと数学者イアン・ドネリーを演じたジェレミー・レナーはこの作品で、2013年の『アメリカン・ハッスル』以来の共演を果たしています。トロント国際映画祭での会見ではお互いに「信頼、愛、尊敬の念」を抱いていると、相性の良さを見せていました。

また二人とも偶然にも、エイリアンの到来を扱ったアメコミ映画に出演しています。エイミー・アダムスは2013年の『マン・オブ・スティール』で新聞記者ロイス・レイン、ジェレミー・レナーは2012年の『アベンジャーズ』でホークアイを演じています。

3.異文化コミュニケーションの難しさ:カンガルーの話

ルイーズにエイリアンとのコミュニケーションを依頼するのが、フォレスト・ウィテカー演じるアメリカ軍のウェバー大佐です。ルイーズがウェバー大佐に異文化間でのコミュニケーションの難しさを語るために引き合いに出したのが、「カンガルー」という言葉の語源の逸話でした。

1770年にオーストラリア大陸に上陸したクック船長が現地のアボリジニと出会い、袋に赤ちゃんを入れて跳び回っている動物を指さして「あれはなんと呼ばれている?」と尋ねると、「カンガルー」と答えました。

そこからその動物はカンガルーと呼ばれるようになりましたが、実はアボリジニは自分の言葉で「カンガルー=あなたはなにを言っているのか?」と言っただけだったという逸話です。

原作ではこの話はルイーズが務める大学の講義で学生に話すことになっていますが、映画ではウェバー大佐に語った後、イアンにこれは単なるたとえ話だと伝えています。しかし実際、この話はこの物語のテーマを解く一つのポイントとなっています。

4.テッド・チャンの原作『あなたの人生の物語』とは?

『あなたの人生の物語』

1998年に発表されたテッド・チャンのSF短編集『あなたの人生の物語』の表題作が、映画『メッセージ』の原作となっています。映画タイトルの原題は『Arrival』で、実は試写会までは映画タイトルも原作の原題『Story of Your Life』でしたが、評判がよくなかったため変更されたそうです。

『あなたの人生の物語』は2000年にSF部門の権威ある賞「ネビュラ賞中長編小説部門」を受賞し、その画期的で難解な内容で話題を呼んだ作品です。テッド・チャンはこの物語を物理学、特にフェルマーの定理と変分原理によってプロットを組み立てたといいます。

フェルマーの定理とは、光は常に最短で時間的には最少となる経路を進むという原理です。数学では微分積分学でその数値を導き出します。この定理がこの物語の大きなテーマであり、理解するための大事なカギとなっています。

5.ヘプタポッドとは?名前はアボットとコステロ?

『アボットとコステロ』

劇中でエイリアンとコミュニケーションを始めたルイーズとイアンは、関係者内では「ヘプタポッド(七本脚)」と呼ばれている2体のエイリアンたちを、「アボットとコステロ」と名付けます。

アボットとコステロというのは、1940年代から50年代に活躍したアメリカのお笑いコンビです。

バッド・アボットとルウ・コステロのコンビで35本ものシリーズ映画を製作し、1960年代には二人を主人公にしたテレビアニメも放映されました。なぜイアンはこの名前を付けたのか特に劇中で言及はなさそうですが、アボットとコステロのやり取りの中で言葉の勘違いネタを使ったシーンがあるためではないかという解釈もあります。

しかし原作では2体のヘプタポッドはルイーズによって「フラッパーとラズベリー」と名付けられます。アボットとコステロは映画ならではの脚色のようですね。

6.ヨハン・ヨハンソンによる映画音楽は事前に作られていた?

『メッセージ』サントラ

劇中音楽を担当したヨハン・ヨハンソンは、映画の撮影が始まる前にスコアのレコーディングを始めたといいます。どうやらドゥニ・ヴィルヌーヴ監督は音楽を元にしながら映画制作がしたいようですが、なかなかに不思議な制作順序です。

また、ヨハン・ヨハンソンはドゥニ・ヴィルヌーヴ監督作品『プリズナーズ』『ボーダーライン』と本作、そして次回作の『ブレードランナー 2049』の音楽も担当しています。ヴィルヌーヴ監督にとってかなり信頼のあるコンポーザーといってよさそうですね。

サウンドトラックには収録されていませんが、物語を締めくくる場面には現代音楽家のマックス・リヒターによる「オン・ザ・ネイチャー・オブ・デイライト」が印象的に使われています。この楽曲は2012年の『ディス/コネクト』や2010年の『シャッター アイランド』でも使用されていました。

7.宇宙船の形と出現数、そして着陸しない理由

ヘプタポッドの宇宙船のデザインは小惑星エウノミアから考えられたものだそうです。ヴィルヌーヴ監督は調査の間にエウノミアの「奇妙な卵のような不思議な形」にすっかり魅了され、その楕円形はきっと宇宙船に脅威とミステリアスな感覚をもたらしてくれるだろうと考えたそうです。

宇宙船は原作では「ルッキンググラス(姿見)」と呼ばれる双方向通信装置で、アメリカに9個、そして世界中に112個ものルッキンググラスが出現。映画では全世界で12個に数が減らされ、大きさも変更されてより深遠な意味を持たせる効果を生んでいます。

実は宇宙船は一度も着陸はしないのですが、その理由についてパトリス・バーメットが意味深な発言をしています。

12個の宇宙船が宇宙を旅し、終着地の28フィート(約8.5メートル)上空でデリケートな平衡状態のままとどまっているのは、手が届きそうで届かない距離で、地球の人々がどれほどの努力をしてどのようにコンタクトを取ってくるのかを試しているように見せる演出のようです。

8.ハンナの死は避けられなかった過去?

この物語は時制に大きな謎を抱えています。ルイーズと娘のハンナとの思い出が語られる冒頭は、実は原作では未来形で書かれています。つまり、まだ起こっていないことを語っていることになります。

そして原作ではハンナはロッククライミングの事故で、映画では不治の病で若くして亡くなることが早い段階でわかっています。しかし、これが本当は「過去の思い出」ではないとしたら!?ここで先述のフェルマーの定理の登場です。

「光は必ず最短・最小の経路をたどる」ということは、光は進む方向を選ぶ前に最終目的地を知っていなければ、その最短距離を算出することはできないということ。ハンナの死はルイーズの人生の中で避けられなかった過去ではなく、避けて通れない未来の出来事、目的地なのです。

9.名前が回文になっている?!

ルイーズの娘ハンナの英語表記は「Hannah」です。よく見ると、回文になっています。回文とは前から読んでも後ろから読んでも同じになる単語・文のこと。

このことは前項で書いたハンナとルイーズの思い出が未来の出来事であることと、かなり密接につながっています。原作の時制がハンナとのシーンを未来形、ヘプタポッドとのコミュニケーションを過去形、冒頭とラストのハンナを授かる節は現在形で書かれているのです。

つまり、この物語はなんと始まりが終わりであり、終わりこそが始まりであるという回文構造になっているのです!ついでにもう一つトリビアを。ハンナの父親になるイアンを演じているジェレミー・レナーの名の英語表記は「Jeremy Renner」であり、姓のレナーが回文になっています。これは偶然か必然か?

10.映画『メッセージ』を理解するには数学がカギ?

映画『メッセージ』でルイーズが付けているイヤリングがオウムガイの殻によく似ています。オウムガイは触手を持つ古代の生きた化石で、よく数学の「黄金比」を連想させるものですが、劇中ではその黄金比計算に出現するフィボナッチ数列や、永遠に続く超越数「円周率=π(パイ)」について言及されます。

これらは「宇宙」を理解するために必要なカギだと考えられています。

ドゥニ・ヴィルヌーヴ監督と脚本チームは、この作品の科学的観念が正確かどうか確かにするために、できるだけの努力をしたようです。科学者・技術改革者として著名なスティーブン・ウルフラムと彼の息子クリストファーが作中のすべての専門用語や画像、描写などを監修し、信頼できるものであるとを保証しています。

またエイリアンの言語が変換されるシーンで、プログラミング言語のコードの行がアニメーションで表されます。スティーブン・ウルフラムは自身のブログで、このコードは「ウルフラム言語」で書かれていると語っており、実際劇中で変換する様子が描かれています。