2017年12月5日更新

『ブレードランナー2049』をネタバレ徹底解説!Kの正体とは、デッカードはレプリカントだった!?【レビュー】

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『ブレードランナー 2049』
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『ブレードランナー2049』を徹底ネタバレ解説します

前作『ブレードランナー』の30年後を描いた続編『ブレードランナー2049』。新たなブレードランナー、Kを主人公に迎えて物語が進んでいきます。前作の謎、そして今作で明らかになる真実とは!?デッカードがレプリカントなのか、そうでないのか、ネタバレを前提として今作を徹底的に解説したいと思います。

『ブレードランナー2049』話題にあがる「大停電」とは?

まず、今作の時系列をおさらいしましょう。前作『ブレードランナー』の舞台は2019年。それから今作の舞台である2049年の30年間を説明する前日譚から、歴史を振り返ります。 時は、2022年。製造から4年がたち、ロイ・バッティなどのネクサス6型のレプリカントは寿命を迎え、絶滅。タイレル社はそれを受けて、もっと寿命の長いレプリカントを製造します。それが、ネクサス8。『ブレードランナー2049』の冒頭でKに“解任”されるレプリカント、サッパー・モートンも同型です。彼はちょうどこの年に、ワカンサという惑星から脱走していました。 しかし、レプリカントの寿命が伸びたせいか、人間至上主義が過激になり、レプリカント狩りたる事件が起きるほどに。これが、「スキンジョブ(人間もどき)」という差別用語誕生の背景となっています。 そして、複数のレプリカントの計画によって「大停電」が引き起こされます。彼らは、政府に保管されている電子・動力データの破壊を目的としていました。彼らはそれをする事によって、人間になろうとしていたのです。 しかし、その「大停電」をきっかけにレプリカント製造が禁止となり、タイレル社は崩壊。その約10年後である2036年にウォレス社が飢饉から人々を救った功績を口実に、新たなレプリカントを作る事を要求するのでした。 この短編映画「ブラックアウト」では、本作『ブレードランナー2049』を上回るといっても過言ではないほど、レプリカントの心情が色濃く描かれているため、是非チェックしていただきたいです。

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レイチェルとデッカードのその後

今作でまず明かされるのは、『ブレードランナー』のラスト、レイチェルとデッカードのその後です。Kは農場で働いていた元脱走兵であるレプリカントのサッパー・モント宅の木のもとに埋まっていたケースを回収します。その中にあったのは、女性のレプリカントの白骨。骨に刻まれていたシリアル番号から、それがレイチェルである事が判明します。 しかし、その白骨の状態からレイチェルの死因が難産によるものだとわかりました。レプリカントが、子を産んだ。この事実がマダムやKを動揺させるのです。ディレクターズカット版の『ブレードランナー』では描かれていませんが、劇場公開版ではレイチェルとデッカードが車に乗って逃避するハッピーエンドが描かれています。彼らはその後、子供を出産し、レイチェルは帝王切開による合併症で亡くなったというわけです。

Kが始末したレプリカント、サッパー・モートンの正体

No Where To Run..... #bladerunner2049

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さて、今作の冒頭でブレードランナーであるKに解任される、レプリカントのサッパー・モートン。彼は先述のように22年に地球にやってきて、その後はウォレス社の農場で働いていました。実は彼、ワカンサでは衛生兵であり、レイチェルの出産に立ち会っていた事が明かされます。 難産だった彼女の帝王切開をして、彼女の命を助けようとしたのです。残念ながら、彼女はその後帝王切開による合併症で亡くなってしまいます。

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「61021」が意味する、レプリカントが見た「奇跡」と人類の脅威

『ブレードランナー 2049』
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サッパー宅付近にあった木の根元に「61021」という数字が彫ってありました。Kはそれを見つけて、形相を変えます。彼は瞬時にそれが「誕生日」だとわかりました。何故なら、自分自身の記憶の中にある、宝物でもある「木馬のおもちゃ」の裏に印字されている数字と一致したからです。彼はそこで、2021年の6月10日生まれの子供をデータから探していきます。 この数字は、レプリカントの子供が誕生した日付。人類にあって彼らにないはずだった生殖機能でしたが、この数字、そして子供の存在はレプリカントが人類と同等の生物である事を証明するものになります。勿論、人類至上主義の考えをもつ人間にとっては脅威となるわけです。そのため、警部補はこの事態を一刻も早くなかった事にするべく、Kにこれに関する全ての事物を抹殺するよう依頼しました。

Kはデッカードとレイチェルの息子なのか

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ここで、K及び我々が抱く仮説が一つ、浮かび上がります。つまり、Kはデッカードとレイチェルの息子なのかという事。K自身さえ、もしやと思うわけなのですがまだ信じません。彼は今まで、自分自身がレプリカントであるという自覚を持って生きて来たわけですから、そう簡単に受け入れられませんね。 そこで、彼はレプリカントの“記憶”を製造者アナ・ステリン博士の元へ向かい、自分の「木馬のおもちゃ」の記憶を見てもらうことに。一作目ではレイチェルが、エルドン・タイレルの姪の記憶を授かっていましたが、2049年では誰かに起きた実際の記憶を、レプリカントに移植するのは禁止されています。 そして、アナ・ステリンは「木馬のおもちゃ」の記憶を見て、それが本物であり自分にとっても特別な記憶だから思わず涙を流します。 その様子を見て、Kは自分が息子なのだと確信。しかし、それは間違いで実はアナ・ステリンこそデッカードとレイチェルの娘だったのです。

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Kだけじゃない。全てのレプリカントが、「魂」のある“産まれた存在”になりたかった

デッカードは娘にデータの改ざんや細工を教えたと、後にKに話します。更に、アナ・ステリン(レプリカントの子供)の存在を隠し通していた、レプリカントのレジスタンス・リーダーはKに「娘が本物の子供で、お前は目くらましのために作られたコピーのレプリカントだ」と、告げます。 残酷な真実を突きつけられたKは、言葉を失い、狼狽します。しかし、その様子を見てリーダーは「自分だと思った?ここの誰しもが、自分だといいと思うの」と彼に言うのです。 今作は、普遍的にレプリカントと人間の違いとは何なのか、つまり“人間の定義”とは何なのかを、我々に考えさせます。2015年の映画『エクス・マキナ』でも問題提起された、AIに身体を持たせ感情を持つ事があれば、それと人間との差異は何なのかという問いと同じです。 『ブレードランナー』に登場したロイもそう、彼らは死を恐れ生を求めていただけなのです。レプリカントを思うと、人間の我々は同情するでしょう。「可哀想」だとか、「人間ってひどい」だとか。それこそ、今シリーズ最大のパラドックスなのです。

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ホログラムのジョイを『her/世界でひとつの彼女』と一緒に紐解く

『ブレードランナー 2049』
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更に、今作で注目すべき登場人物はホログラムのジョイです。彼女はKにとって、唯一の心の拠り所であるヴァーチャルな恋人。甘い言葉を囁く事はできても、お互い触れることはできません。彼女が雨に打たれて、それを感じ、濡れるシーンがありますがあれもあくまで、映像。そうしてジョイは、Kなどのレプリカントのように自分も「本物」になりたがっていました。 さて、彼女は2014年の映画『her/世界でひとつの彼女』でスカーレット・ヨハンソンが声優を務めたサマンサに類似するキャラクターです。サマンサはジョイと比べて、音声のみというAi(人口知能)でした。 しかし、この2人は同じように実体を持つ男を愛し、最終的に精神的のみならず肉体的にも愛されたいという願望が芽生えます。ジョイが娼婦を雇い、彼女に自分を重ねてKに迫ったのと同じように、サマンサも生身の女の子に頼んで自分の肉体となり、セオドアと愛し合おうとしました。 最終的に、ジョイはデリートされれば完全消滅する、つまり人間の女と同じように“死ぬ”事ができる状態でKと共に、デッカードを探しに行きます。そこで彼女はラヴによって殺されてしまいました。 『ブレードランナー』そして『ブレードランナー2049』という作品は、人間以外のレプリカントやホログラム(人工知能)が、死に直面して生を求める事が印象的です。我々は、死ぬ事を考えてこそ、生きる事に実直になるのではないでしょうか。

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『ブレードランナー2049』から考えて、デッカードはレプリカントなのか

『ブレードランナー 2049』 ハリソン・フォード
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ズバリ、この疑問に尽きるのです。ウォレスは捕らえたデッカードに対して、興味深い事を話していました。それは彼もまたレプリカントなのではないか、という事。 彼がレプリカントではないと考えられるのは、仮に彼がそうだったとしても寿命を迎えているはずだからです。当時のタイレル社の技術では延命は不可能でした(『ブレードランナー』参照)。  しかし、もし彼がレイチェルと同様、生殖機能を持ち、尚かつネクサス6の後に作られたレプリカントであったら。そして彼の記憶は、実在したデッカード刑事のものを使用していれば。 年老いた“ただの”男が、あのような環境で長らく暮らすには少し無理がありませんか?彼がレプリカントだと考えると、寿命が長い事と『ブレードランナー2049』において、放射能が強い辺鄙な地域で長い間隠れて一人暮らしをする事も可能です。 ウォレスがデッカードに言った通り、彼がレイチェルに一目惚れして夢中になることは、最初からそうなるように設定されていて、それ故にレイチェルが生殖機能を持つレプリカントとして設計されていたとすれば、全てが仕組まれていたシナリオだったという事になりますね。 しかし、我々にはまだ考える余地が沢山残されているでしょう。

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なんと、リドリー・スコット監督が大胆発言!「デッカードはレプリカントだよ」

しかし!驚くべきことに、11月4日に公開されたThe Hollywood Reporterによるインタビュー動画では、『ブレードランナー』を監督し、今作をプロデュースしたリドリー・スコット本人が「デッカードはレプリカントだよ」と、ためらう事なく即答! 彼は動画内で、一作目で鑑賞者に如何のようにしてデッカードがレプリカントであるかを伝えようかと試行錯誤した事を告白。そのために、あのユニコーンの夢の描写や折り紙を手に取る描写等を入れたそうです。 そして更に、監督は「『ブレードランナー2049』では、デッカードがレプリカントでないと話しがなりたたないんだ」とさえも言及し、2049に登場した彼がレプリカントである事をハッキリと公言しています。

『ブレードランナー2049』ラストの意味

A new civilization begins now. #BladeRunner2049

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今作のラストで自分がレプリカントである事を改めて自覚したKは、雪を手に取り、致命傷を負いながら研究所の入り口の階段に横たわります。そこで、全身に降り注ぐ雪を感じるのでした。 『ブレードランナー』でラストに人間であるデッカードの命を救う決断をしたレプリカント、ロイ・バッティは作中、次のような言葉を残しています。 「お前ら人間には信じられぬものをおれは見てきた。オリオン座の近くで燃えた宇宙船や、タンホイザー・ゲートのオーロラ。そういう思い出もやがて消える。時がくれば涙のように雨のように。その時がきた」 Kが致命傷から生き延びるのか、そのまま死に果ててしまうのか、我々にはわかりません。しかし雪は、まるで雨のようにKの顔に降り注ぎ、彼の顔を濡らすでしょう。

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『ブレードランナー2049』続編で、レプリカントと人類の戦争が始まる?

『ブレードランナー 2049』
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さて、今作はデッカードの救出とデッカードの娘を見つけ出して幕を閉じました。しかし、それと同時にレプリカントが人類に対して、反乱を起こそうとしている事が明らかになっています。エンドア・ウォレスとの決着も着いていません。続編では、ついにレプリカントと人類が全面的に戦争を起こすのではないでしょうか。 その時、あなたはどちらの味方をしますか?