2017年7月6日更新

【世界のクロサワ】有名監督揃い!今更聞けない、黒澤明から影響を受けた監督たち

このページにはプロモーションが含まれています
黒澤明『用心棒』(1961)
© Toho Company Ltd./zetaimage

AD

名だたる監督たちに多大なる影響を与えた「世界のクロサワ」

88歳の生涯の間に30本の監督作を発表し、ヴェネツィア国際映画祭金獅子賞、カンヌ国際映画祭グランプリなどの栄誉に輝く、「世界のクロサワ」こと黒澤明。当然ながら世界各国の映画監督に多大な影響を及ぼしています。 ここでは、スティーヴン・スピルバーグ、ジョージ・ルーカス、マーティン・スコセッシといった錚々たる面々が、いかに黒澤作品の影響下にあったかを紐解いていきましょう。

スティーヴン・スピルバーグ

おそらく世界で最も有名な映画監督として名前が挙がるのが、『ジョーズ』、『E.T.』、『インディ・ジョーンズ』シリーズのスティーヴン・スピルバーグ。彼は映画を撮影する直前に必ず観る作品として、『素晴らしき哉、人生!』、『アラビアのロレンス』などと並んで『七人の侍』を挙げています。そして黒澤の28本目の作品『夢』では、資金不足に苦しんでいた彼を助けるべくプロデューサーを務めています。

好きor影響を受けた作品:『天国と地獄』、『影武者』

演出方法においても黒澤映画を模倣しており、全編モノクロの『シンドラーのリスト』で唯一少女の服を赤くしたシーンは『天国と地獄』を、『戦火の馬』での第一次大戦での騎兵部隊の戦闘シーンでは『影武者』をそれぞれオマージュとして捧げています。

ジョージ・ルーカス

『スター・ウォーズ』シリーズの生みの親で、スピルバーグやフランシス・フォード・コッポラなどとも若い頃から友人だったジョージ・ルーカス。彼は映画の勉強をしていた学生時代に『生きる』を観て以来、黒澤映画に心酔しました。

AD

好きor影響を受けた作品:『七人の侍』、『隠し砦の三悪人』

『スター・ウォーズ』のプロットや、劇中に登場するドロイド(ロボット)のC-3PO、R2-D2のモデルが黒澤の『隠し砦の三悪人』が元というのは今ではかなり有名でしょう。ほかにもシリーズに登場する重要キャラクターのヨーダの振る舞いは、『七人の侍』での志村喬演じる勘兵衛のそれをモデルにしています。

フランシス・フォード・コッポラ

『ゴッドファーザー』トリロジーや『地獄の黙示録』でアカデミー賞やカンヌ国際映画祭でグランプリを獲得するなどの実績を持つフランシス・フォード・コッポラ。彼と黒澤を結びつける大きなエピソードと言えば、資金難により製作が危ぶまれていた黒澤の『影武者』を、コッポラとジョージ・ルーカスが20世紀フォックスにかけ合って製作にゴーサインを出させたことでしょう。

好きor影響を受けた作品:『悪い奴ほどよく眠る』

コッポラもまた自身の作品に黒澤の影響を受けているとされており、『ゴッドファーザー』1作目での冒頭が結婚式のシーンから始まるのは、『悪い奴ほどよく眠る』を参考にした節があります。

マーティン・スコセッシ

『タクシードライバー』や『レイジング・ブル』、『ディパーテッド』などで知られるマーティン・スコセッシも、学生時代に日本映画を多数観て映画作家を目指した一人で、その中には当然黒澤映画も含まれていました。盟友のスティーヴン・スピルバーグがプロデューサーを務めた『夢』では画家のゴッホ役を演じていますが、これは黒澤直々のオファーを受け実現したものです。

AD

好きor影響を受けた作品:『生きる』、『七人の侍』、『天国と地獄』

フィルム映画の復元と保存をライフワークにしているスコセッシだけに、『羅生門』をはじめとする過去の黒澤映画の復元にも尽力しています。そんな彼は「映画監督志望者が観るべき39本の外国映画」として、黒澤の『生きる』、『七人の侍』、『天国と地獄』を挙げ、なかでも『天国と地獄』のリメイク化を長く希望していました。

クリント・イーストウッド

俳優のみならず、今や映画監督として第一線で活躍するクリント・イーストウッド。彼の映画俳優としての出世作となった『荒野の用心棒』は、黒澤の『用心棒』の無断リメイク作だったことから、「クロサワは自分の映画人生の原点を生んでくれた」としています。

好きor影響を受けた作品:『用心棒』

『荒野の用心棒』は後年、黒澤サイドから盗作だとして訴訟沙汰になりましたが、製作時に台本を読んだイーストウッドは、すぐにこれが『用心棒』が元ネタだと察しました。そして黒澤の『夢』がカンヌ国際映画祭で上映された際、イーストウッドは会場入りした黒澤の前に現れて抱き着き、「あなた無しでは今の私はなかった」と感謝の言葉を送っています。

ピーター・ジャクソン

スプラッター・ホラーの旗手として映画界に入り、『ロード・オブ・ザ・リング』トリロジーや『キング・コング』(2005年版)といった超大作の監督を手掛けるようになったピーター・ジャクソン。生来のオタク気質な性格もあり、過去のクラシック作へのオマージュも盛り込んだ作風も特徴です。

AD

好きor影響を受けた作品:『七人の侍』

ジャクソンの代表作となった『ロード・オブ・ザ・リング』トリロジーの第2作『ロード・オブ・ザ・リング/二つの塔』での合戦シーンでのエルフ族のレゴラスの弓さばきは、『七人の侍』のクライマックスの戦闘シーンでの勘兵衛を模倣しています。

宮崎駿

アニメーション映画監督として、国内外でフォロワーを生んでいる宮崎駿。両者は1993年に対談を行っており、その際に宮崎は、黒澤自身が描く絵コンテのあまりの出来栄えに、自身も絵コンテを描く側として驚嘆もしています。一方の黒澤は、『となりのトトロ』以来、宮崎映画のファンになったと語っています。

好きor影響を受けた作品:『夢』、『蜘蛛巣城』

宮崎は『夢』や『蜘蛛巣城』などが好きな黒澤映画だと明かしており、自身の作品づくりに生かしています。例えば、『夢』での田舎の描写やラストの川のシーンに感銘を受けたり、『蜘蛛巣城』の冒頭シーンを『ハウルの動く城』で模倣しているなど、その影響下が見て取れます。

北野武

1989年の『その男、凶暴につき』で鮮烈な映画監督デビューを果たした北野武。黒澤とは1993年に対談をしており、その際に「(対談時点まで製作された)北野映画は全部観ていて、余計な説明がないのが好き」と称賛の言葉を貰っています。また、北野が『HANA-BI』でヴェネツィア国際映画祭金獅子賞を受賞した際、お祝いとして絵画と手紙を送っています。

AD

好きor影響を受けた作品:『羅生門』、『蜘蛛巣城』、『デルス・ウザーラ』

北野自身が過去に挙げていた好きな黒澤映画として『羅生門』、『蜘蛛巣城』、『デルス・ウザーラ』があります。なかでも『デルス・ウザーラ』は最高傑作と評しており、作品全体のカラーが自身が撮る映画に似ているところがあると語っています。

時代を超えてフォロワーを生み出す黒澤映画

2017年には『七人の侍』の西部劇版『荒野の七人』のリメイクにあたる『マグニフィセント・セブン』が公開されたり、『用心棒』が再度ハリウッドでリメイクされるのではという報道が一部であったりと、21世紀に入っても黒澤映画の影響下は衰えを知りません。 ルーカスのようにプロットを活かして別作品にしたり、スピルバーグのように一部シーンにオマージュを捧げて引用したりと、あらゆる形で映画界に生き続ける黒澤明監督作品。黒澤映画を少しでも観ておけば今後、新たな黒澤フォロワーたちによる新たな共通点が発見できるかもしれません。