2017年7月6日更新

黒澤明監督の遺作脚本『黒き死の仮面』が中国で映画化!【2020年公開】

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黒澤明

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黒澤明の知る人ぞ知る遺作脚本『黒き死の仮面』が、中国で映画化決定!

黒澤明
1998年に他界するまで30作の監督作品を残し、世界中の映画人に多大な影響を与えてきた巨匠・黒澤明。1993年に公開された『まあだだよ』を最後に、ファンは残された数々の名作を鑑賞することでその偉業に触れてきました。 そして2017年3月1日、黒澤明が遺した遺作脚本である『黒き死の仮面』が、なんと中国で映画化され、2020年に公開予定であることが発表されました。 中国公開のタイトルは『黒色假面』。中国において最大の規模を誇る民営の映画製作グループである華誼兄弟伝媒集団が、映画会社の北京聯合工夫影業と組み、大きなプロジェクトとして5本の映画を制作するという「五行電影計画」の目玉です。監督やキャストなど詳細は未定ですが、現時点で明らかな情報をまとめてみます。

遺作脚本『黒き死の仮面』とは?

エドガー・アラン・ポー
『黒き死の仮面』は、黒澤明が1977年に執筆したとされ、映像化されることがなかった遺作脚本です。ベースになっているのは、推理作家エドガー・アラン・ポーの小説『赤死病の仮面』。 『赤死病の仮面』は、架空の疫病「赤死病」が蔓延した、とある国が舞台。「赤死病」を逃れるために城内に閉じこもり、臣下らと宴に興じる王の前に現れた仮面の人物によって死がもたされるという恐怖小説です。 黒澤明は、本原作をベースに、井手雅人と共同で『黒き死の仮面』を執筆したと言います。舞台を中世のロシアとし、架空の「赤死病」を実際の「ペスト(黒死病)」に置き換えたサスペンスタッチの物語を練り上げました。当時のソ連で撮影する計画だったとか。同脚本は、岩波書店刊『全集 黒澤明』の第七巻に収録されています。

『赤死病の仮面』自体はすでに2度映画化!

『赤死病の仮面』
エドガー・アラン・ポーの原作は、1964年に監督ロジャー・コーマン、撮影ニコラス・ローグ、主演ヴィンセント・プライスで、最初の映画化が実現しています。『赤死病の仮面』に、同じくポーの短編『飛び蛙』を組み合わせた物語でした。 1989年にはやはりコーマンによりリメイクが製作され、エイドリアン・ポールが主演を務めています。

「世界のクロサワ」と称賛される名匠・黒澤明

黒澤明
1943年の監督第1作目『姿三四郎』以来、1998年9月6日、脳卒中により88歳で亡くなるまで合計30作品を世に送り出した黒澤明。スティーヴン・スピルバーグ、ジョージ・ルーカス、フランシス・フォード・コッポラら映画界を代表する監督らが、黒澤から大きな影響を受けたと語っていることは有名です。 壮麗でダイナミックの映像、華麗な色彩、重厚な物語で世界を魅了し、とりわけ初期の『羅生門』や『七人の侍』、後期の『影武者』や『乱』など侍を主人公した作品、『生きる』や『赤ひげ』などヒューマン・ドラマは、傑作として映画史に刻まれています。 1951年に『羅生門』がヴェネチア国際映画祭金獅子賞を受賞したのを皮切りに、数々の作品が、カンヌ国際映画祭や米アカデミー賞など名だたる世界の映画祭で賞を受賞。1990年にはそのキャリアに対してアカデミー名誉賞、没後の1998年には国民栄誉賞が授与されました。

遺作監督作『まあだだよ』

『まあだだよ』
監督しての遺作映画は、1993年公開の『まあだだよ』。内田百閒の随筆をベースに、教師として働く百閒と教え子たちの交流を温かな雰囲気の中で描いた、黒澤作品としては異色の作品です。 主演は百閒役に松村達雄、その妻を香川京子が演じたほか、所ジョージの出演も話題になりました。黒澤明の監督50周年にして30作目に相当する記念碑的作品でしたが、奇しくも遺作となってしまいました。

黒澤明没後の映画化作品はこれまで2作

『雨あがる』
黒澤明没後に、その脚本が映画化された作品はこれまで2作品あります。2001年に小泉堯史監督が手掛けた『雨あがる』、2004年に熊井啓監督が手掛けた『海は見ていた』です。 中でも『雨あがる』は、山本周五郎の短編小説を原作に、黒澤が脚本を執筆し、療養生活に入ったため未完に終わった原稿を映画化したものです。 剣の達人でありながらお人よしの浪人の奮闘をユーモア満載で描いた時代劇で、主人公を寺尾聰が演じました。第24回日本アカデミー賞では、最優秀作品賞など8部門を独占しました。

『黒き死の仮面』を映画化する中国の華誼兄弟とは?

華誼兄弟伝媒株式有限公司(フアイ・ブラザーズ・メディア)は1994年に設立された、中国では最大級の民営映画グループです。 2015年には、米ハリウッドの映画製作会社であるSTXエンターテインメントとの提携を発表し、3年で18本以上の映画を配給するという大規模プロジェクトを始動。中国によるハリウッドへの投資の先鋒となっているグループの一つです。 CEOの王忠磊(ワン・チョンレイ)は、『黒き死の仮面』映画化に関し、以下の通りコメントを発表しています。
「日本の巨匠の作品に、中国の新世代の映画人のパワーを注ぎ込みたい」
公開は2020年とまだ先で、詳細も未定です。さらなる情報を期待して待ちましょう。