映画『バトルシップ』ネタバレ・艦船まとめ！【実はボードゲームが原案だった！？】

ピーター・バーグがメガホンを取ったSF映画『バトルシップ』(2012)はド派手なアクションと迫力の映像が受けて世界中で大ヒットを記録しました。 14カ国が参加した合同演習中のハワイ近海に宇宙からの謎の物体が落下。調査に向かったアメリカ海軍のミサイル駆逐艦2隻と海上自衛隊のイージス護衛艦1隻が、宇宙人との死闘を繰り広げます。 この記事では、イージス護衛艦の艦長役で浅野忠信が出演したことでも話題になった本作の魅力をネタバレありで徹底解説します。

無職の青年アレックスは海軍に所属する兄のストーンから酒場で説教を受けていました。隣の席の女性サムがチキンブリトーをオーダーするも時間が遅いからと断られてしまいます。それを見たアレックスは、店主にオーダーを通すように交渉しますがむげもなく断られうまくいきませんでした。 激昂したアレックスは閉店後のスーパーに忍び込んでブリトーを盗もうとするも、あえなく逮捕。 弟に呆れ返ったストーンは、アレックスを海軍に入隊させ鍛え直すことを決意します。 数年後、アレックスは駆逐艦ジョン・ポール・ジョーンズの乗組員として勤務。ブリトーがきっかけで知り合ったサムと順調に交際し結婚を考えていました。しかしサムの父親のシェーン提督は、アレックスのことを快く思っていないようです。 14カ国の海軍が参加するハワイでの合同演習の前日、アメリカと日本による各軍対抗サッカー大会決勝戦が行われていました。 出場していたアレックスは、日本の海上自衛隊員のナガタとトラブルを起こし、試合でも負けてしまいます。さらに試合後にもナガタと大喧嘩し、シェーン提督からの信頼を完全に失ってしまいました。

そんな折宇宙から謎の物体が飛来し、太平洋オアフ島近辺に落下。そして、アレックスの乗っていた駆逐艦は宇宙人の攻撃を受け、ほとんどの上官たちが犠牲となってしまうのです。 突如として指揮を取る立場となったアレックスはいがみ合っていたナガタとも手を組み、未知なる生命体に挑みます。

本作の主人公アレックスはアメリカ海軍大尉で、ミサイル駆逐艦ジョン・ポール・ジョーンズに乗艦する海軍将校です。 もともとは無職でしたが、兄のストーンから説教を受け兄と同じ海軍に所属することに。教養深く頭脳明晰なため出世が早い一方で、衝動的で感情的な性格のためトラブルを起こしやすい人物です。 演じるテイラー・キッチュは1981年生まれカナダ出身の俳優。ホッケー選手になる夢を断念した後に俳優を目指し2002年にニューヨークに移住しました。就労ビザがなかなか降りず、一時は地下鉄の駅でホームレス生活を送るほどの苦労をしたそうです。 その後、2006年から放送されたTVドラマ『フライデー・ナイト・ライツ』でのフットボール部の問題児役、『ウルヴァリン: X-MEN ZERO』(2009)で主人公を助けるガンビット役を好演しました。 2012年のSFアクション映画『ジョン・カーター』では、惜しげも無く鍛えられた肉体を披露しています。

海上自衛隊一等海佐ユウジ・ナガタは、護衛艦みょうこうの艦長である日本人です。宇宙人にみょうこうを撃沈させられた際にアレックスに命を救われます。それがきっかけとなり、二人はパートナーに。 演じるのは、1973年生まれの俳優の浅野忠信。1988年に『3年B組金八先生』の生徒役を演じ、俳優のキャリアをスタートさせました。 1996年、青山真治がメガホンをとった『Helpless』で初主演をつとめたのち、活動の場を海外へも広げることに。 ウォン・カーウァイ監督『wkw/tk/1996@/7’55”hk.net(原題)』(1996)やクリストファー・ドイル監督の『孔雀』(1999)の主演で、国際的に注目を浴びました。 その他の代表作は、報道写真家、一ノ瀬泰造を演じた『地雷を踏んだらサヨウナラ』(2001)やチンギス・ハーンの生涯を描いた『モンゴル』(2008)など。

アレックスの兄ストーンはアメリカ海軍中佐。無職のアレックスに海軍に入ることを勧めた人物です。 弟とは異なり真面目なエリートであるため、弟がたびたびトラブルを起こすことに頭を痛めています。宇宙人からの集中攻撃でサンプソンを撃沈させられ、戦死しました。 演じるアレクサンダー・スカルスガルドは、1976年生まれスウェーデン出身です。 『グッド・ウィル・ハンティング/旅立ち』(1998)などで知られる俳優ステラン・スカルスガルドを父に持つ彼は、活動の場をスウェーデンのみならず国外へも広げ、2009年にはレディー・ガガの「パパラッチ」のPVにも出演しています。

アレックスと兄のストーンの上官で恋人サムの父であるシェーン提督。上官としてアレックスの才能は認めていますが、娘サムとの結婚は認めることができません。 演じるリーアム・ニーソンは1952年生まれ、北アイルランド出身、アイルランド国立劇場のアビー・シアターの舞台俳優としてキャリアをスタートさせました。 スティーヴン・スピルバーグ監督の映画『シンドラーのリスト』(1993)でオスカー・シンドラーを演じ、アカデミー主演男優賞にノミネート。『スター・ウォーズ エピソード1/ファントム・メナス』(1999)でのクワイ＝ガン・ジン役や『バットマン ビギンズ』(2005)のヴィラン・ヘンリー・デュカード役などで有名です。

アレックスの部下の女性海軍兵コーラはアレックスと共に戦艦内に侵入した宇宙人と戦います。 レイクス兵曹を演じるのは、本作が映画初出演のR&Bの歌姫リアーナ。彼女は本作への出演に向けて、元海軍将校の女性から武器の取り扱い方やアクションなど、1か月間みっちりトレーニングを受けたそうです。 そんな彼女は2018年公開が予定されている『オーシャンズ11』(2011)の女性版リブート『オーシャンズ8』への出演が決定しています。

映画『バトルシップ』の中で印象的な使われ方をする食べ物が存在します。 冒頭でアレックスがサムと恋に落ちるきっかけとなったのもチキンブリトーならば、ラストにシェーン提督がアレックスをランチに誘う際にもチキンブリトーが登場しました。 まさにチキンブリトーから始まりチキンブリトーに終わる本作。 実際に本作を見終えた観客からは「ストーリーの内容以上にチキンブリトーばかりが頭に残ってしまった」「チキンブリトーが食べたくなった」などのツッコミが続出しました。 しかし、もしもアレックスがチキンブリトーを盗まなければ、彼は海軍に入隊しておらず、地球を救うこともできなかったかもしれません。 そう考えるとチキンブリトーが地球を救ったと言っても過言ではないでしょう。

謎の飛行隊近くを航行していたアレックス、ストーン、ナガタがそれぞれ乗り込む３隻の駆逐艦が、調査を命じられました。 アレックスが恐る恐るその物体に触れると、突如エネルギーを放出。オアフ島と３隻の駆逐艦を閉じ込めるバリアが張られ、味方の船は中に入れなくなりました。 アレックス、ストーン、ナガタらの前に、3隻の宇宙船があらわれます。威嚇発砲したストーンでしたが、宇宙船から攻撃を受け撃沈してしまいます。アレックスの艦でも上官が全滅し、彼が指揮官を任されます。やがてナガタの乗る艦も撃沈。アレックスはナガタたちを救助し、いったん戦闘をやめて退避します。 一方で、軍の診療施設に勤めるサムと患者の傷痍軍人ミックは、宇宙人がすでに上陸し宇宙交信用の施設を占拠しようとしていることに気づき、施設へと向かいます。施設の研究員キャルは、すでに施設が占拠されたことを告げると逃げ出してしまいました。 回収された宇宙人の死体を見たアレックスとナガタ。宇宙人は突如暴れだし、駆逐艦の中に別の宇宙人が乗り込んできました。協力して艦内から宇宙人を排除することに成功したアレックスたち。 バリア内の限られた範囲の海の上で、自分たちの艦の位置を知られないようにしつつ宇宙船の場所を探らなければなりません。

ナガタは津波観測用のブイを使って敵艦の位置を把握し、攻撃することを提案。宇宙船をこちらの優位な場所に誘い込んで攻撃する作戦により、敵艦3隻すべてを撃沈するまであと一歩のところでしたが、逆襲されてしまいます。 絶望したナガタたちに対し、アレックスは退官した戦艦ミズーリを使っての攻撃を提案。ミズーリの操船方法を知る退役軍人たちの力を借り、巨大な砲撃塔を持つ敵の指令旗艦にあえて近づき不意打ちをくらわせ、相手の攻撃が始まったらすぐに退避することを繰り返すという作戦をとります。 そうして応酬を繰り返すうちにやがてバリアが解かれため、シェーン提督は援軍を送るよう司令を出しました。 サムとミッチは、宇宙人が占拠する施設に到着。機材を破壊して宇宙との交信を中断させますが、戦闘員たちに襲われ格闘になります。逃げ出したキャルも戻ってきて加勢したことで、無事施設から脱出することができました。 その時アレックスは、サムたちが無事脱出したことを信じ最後に残った砲弾で施設を砲撃し爆破。援軍が駆けつけ、宇宙人の上陸を防ぐことに成功したのです。 こうして地球の平和は守られ、アレックスらは式典でシェーン提督から授与を受けます。アレックスの功績を認める一方で、サムとの結婚を許可してほしいと請われると、きっぱりと断るシェーン提督。 がっかりするアレックスに、提督はランチにブリトーを食べに行かないかと誘うのでした。

『バトルシップ』のクライマックスは、退役した戦艦ミズーリを用い、敵の不意をついた一斉射撃。作戦が失敗し、すべての武器を失い絶望するナガタに、アレックスは長らく使われていない戦艦ミズーリを使って攻撃を行うよう提案。退役軍人たちの力を借り、長らく使われていない戦艦ミズーリを眠りから覚まします。 1941年に起工され、太平洋戦争中に活躍したミズーリは太平洋戦争での日本の降伏調印式場にもなりました。 朝鮮戦争を終えた1955年に一度退役。1984年に再就役することになったミズーリは湾岸戦争を経験し、1991年の旧ソ連崩壊による冷戦終結とともに再退役しました。 1999年からは、ハワイ州パールハーバーで記念艦として保存されています。

アレックスが乗艦しているミサイル駆逐艦ジョン・ポール・ジョーンズ。ハワイ近郊に降下 した物体の謎を調査するため派遣された3隻の駆逐艦のうちの1隻です。 艦名になったジョン・ポール・ジョーンズは、アメリカ独立戦争時代の大陸海軍の指揮官。敵に降伏を勧告されても「まだ戦いは始まってすらいない」と答えるなど、海軍の敢闘精神を示した英雄的存在です。

ジョン・ポール・ジョーンズの姉妹艦で、本作内ではアレックスの兄ストーンが艦長を努めています。 実際のサンプソンは2007年から就役。2014年にエアアジア8501便が墜落した際には、捜索のためジャワ海に派遣されました。

シェーン提督が乗艦している原子力空母ロナルド・レーガン。各国の海軍が参加する合同演習の指揮艦となります。 実際のロナルド・レーガンは2003年に就役。アメリカ国外では唯一横須賀海軍施設を母港とし、2011年の東日本大震災の際には支援活動のために出動しました。

ナガタ一佐が艦長を務める海上自衛隊イージス護衛艦。ジョン・ポール・ジョーンズとサンプソンと共にハワイ近海の調査に派遣されます。 本作内ではみょうこうの名が何度も出てきますが、実際に映されている艦はこんごう型ではなくあたご型をしています。おそらく2010年の合同演習に参加した護衛艦あたごを登場させたかったものの、海外の人にとってはあたごよりみょうこうのほうが聞き取りやすいから名前として採用されたのかもしれません。

本作の冒頭に映るのは、パールハーバーの港に停泊している護衛艦きりしま。 サッカーの応援シーンに写っている護衛艦乗組員たちは、実際のきりしまの乗組員たちです。 偶然にも本作の撮影時期に、弾道ミサイル迎撃試験のためにパールハーバーに寄港していた彼らに、エキストラ出演してもらったとのこと。 演技初心者とは思えない自然でノリの良い彼らの盛り上がりに、スタッフも驚いていたそうです。

『バトルシップ』の見所といえば、自分たちの艦の位置を知られないようにしつつ相手の艦の場所を探る、宇宙船とのスリリングな頭脳戦。 実はこの設定はアメリカの人気ボードゲームが原案だったのです。

二人のプレイヤーがそれぞれ自分の紙に5×5のマス目を書き、戦艦(W)、巡洋艦(C)、潜水艦(S)を配置。どのマスにどの艦を配置したかは相手には秘密にします。 交互に「このマスを攻撃する」と相手に告げ、攻撃していきます。そこに相手の艦があれば命中です。戦艦が3回、駆逐艦が2回、潜水艦は1回の命中で沈没します。 命中しなくても1マス以内に相手の艦があった場合、相手は「巡洋艦が水しぶき」というふうに申告してくれます。それをヒントに相手がどのマスに艦を配置しているか予想しましょう。 攻撃は艦から1マスまでしか届かないので、相手に自分の艦がどこにいるかのヒントを与えることにもなります。 攻撃の代わりに移動を選択することもできます。東西南北(上下左右)なら何マスでも移動できるので「潜水艦を北に3マス」というふうに相手に申告しましょう。 相手に艦の位置を知られそうになって逃げたいときや、逆に相手の艦の位置の目星がつき近付いて攻撃したいときには、移動を選択するのが良いでしょう。 紙とペンがあればできる単純なゲームですが、やり始めると大人でも意外とハマってしまうゲームです。

その後1982年にアルゼンチンの雑誌にルールを若干改変した海戦ゲームが掲載され大ヒット。 さらにアメリカの玩具メーカーがボードゲームとして売り出したのが「レーダー作戦ゲーム」。日本でもタカラ社から発売されました。 マス目が10×10にかわり、艦の種類も空母と駆逐艦が加わり5種類に。さらにそれぞれの艦は大きさが異なり、大きい空母ほど攻撃を受けやすくなるなど、若干変更されていますが基本的なルールは一緒です。