ホラー漫画家・伊藤潤二の代表作まとめ！人気作品の魅力に迫る

『マニアック』や『コレクション』などアニメ化作品も多い漫画家・伊藤潤二。2023年には漫画界におけるカンヌとも言われる「アングレーム国際漫画祭」で特別栄誉賞を受賞しました。 本記事ではそんな伊藤潤二の漫画『富江』や『うずまき』など、代表作を解説します。家族や楳図かずおとの関係など、伊藤潤二自身についても解説するので、ぜひチェックしてください！

伊藤潤二は5歳頃から楳図かずおの作品を愛読しており、初めて買った漫画は楳図かずおの『おろち』というほどの大ファン。 ホラー漫画雑誌「ハロウィン」で「楳図賞」が創設されたと知り、楳図かずおに読んでもらいたい一心で、デビュー作となる『富江』を送りました。『富江』は見事に楳図かずお賞にて佳作入選し、漫画家としてデビューします。 楳図かずおが居なければ、伊藤潤二という漫画家は生まれなかったかもしれませんね。

伊藤潤二はイラストレーターの石黒亜矢子と結婚しており、2人の娘に恵まれています。伊藤潤二本人のTwitterでは子供と映画に行ったと過去に呟いており、家族の仲の良さが伺えますね。 また、猫を飼っていることでも有名で、『伊藤潤二のねこ日記 よん&むー』というエッセイコミックも出版しています。猫のかわいさをホラーテイストで描いており、思わず笑ってしまう一冊です。現在は、エッセイに描かれた猫とは別の「てんまる」と「とんいち」と暮らしています。

伊藤潤二作品の魅力は、圧倒的な画力とユーモアです。この2つがホラーに混ざることで、怖いながらも、キャラクターがかわいく思え、ページをめくる手が止まりません。画力とユーモアが伊藤潤二の持ち味を生んでいるといってもいいでしょう。 伊藤潤二の絵は細部までこだわって描いており、楳図かずおも「絵が上手」と賞賛するほど。その圧倒的な画力で生み出される女性キャラクターは魅力にあふれ、どの女性も品があり儚げな美女です。特に富江はその美しさから人気があり、多くのファンがいます。 一方、富江と同じくらい人気があるのが双一です。双一は陰湿なうえ根暗で、些細なことで人を呪います。ですが、いつも反撃にあうため、どこか憎めないかわいいキャラクターなのです。伊藤潤二のユーモアがなければ、双一は生み出されなかったでしょう。

ここでは、伊藤潤二の代表作や各作品のあらすじ、魅力について紹介します。 デビュー作『富江』や、呪術廻戦のオマージュとなった『うずまき』なども紹介するので、読んだことのない作品があったらチェックしてみてください。

富江は絶世の美少女。あらゆる男が富江の虜になります。ですが、男たちは次第に富江に殺意を抱くようになるのです。殺意に耐えきれなくなった男たちは富江を殺害するのですが、富江は何度殺されても蘇ります。しかも、富江はバラバラになった肉片から新たに増殖するのでした。 『富江』の魅力は、ミステリアスな富江の美しさです。富江はなぜ死なないのか、なぜ増殖するのか。その謎は作中では明らかにされていません。そんな富江の謎が、ミステリアスな美しさと恐怖を生み出しているのでしょう。 ただし、富江が美しいのは外見だけです。中身は高飛車で傲慢で、いつも男を振り回しています。現実にいたら典型的な嫌な女ですね。ですが、次第に、私たちも富江に惹かれていきます。富江は次にどんなことをしてくれるのか。そんな期待でページをめくる手が止まらないでしょう。

呪われた土地・黒渦町では「うずまき」に関する怪奇現象が多発します。ある者は渦のように変異し、ある者は背中に渦を巻いたカタツムリになってしいました。主人公・五島桐絵と桐絵の恋人・斎藤秀一は脅威から逃れようと、駆け落ちしようします。 そんな『うずまき』の魅力は、グロテスクながらもどこか美しいところです。人がカタツムリに変化したり、渦を巻く謎の怪物に変異してしまったら、通常恐ろしいと思うでしょう。ですが、伊藤潤二の圧倒的な画力によって、変異してしまった怪物でもグロテスクながらも美しいと感じてしまいます。 それに、シュールなところも本作の魅力のひとつです。なんと作中では、カタツムリに変異した人を学校で飼うのです。しかも、挙げ句の果てにはカタツムリを食べてしまいます。「そんなことある？」というシュールさには、思わずクスッと笑ってしまいますね。

沖縄旅行に行った華織と忠の前に腐乱臭を放つ謎の足の生えた魚が現れます。その魚は陸へと上陸し、人へ攻撃を始めました。しかも、次第に日本全土へ範囲を拡大し──。 足の生えた謎の魚が襲ってくるという奇抜な発想は、伊藤潤二ならでは。未知なる生物によって世界が滅ぼされそうになるのは、さながらゾンビ映画のような恐怖ですね。

主人公・森中和子のもとに、和子の親友でアイドル・藤野輝美が自殺したと連絡が入りました。やがて、輝美と同じように自殺する人が続出していきます。そんななか、和子は輝美の恋人・晋也の元へ行くと、巨大な生首の輝美と、輝美に誘われるように自殺する晋也の姿を目にするのです。 謎の巨大な生首の気球、その存在はなんなのか、どこからきたのかは語られません。だからこそ、未知に対する恐怖が浮き彫りになります。

おしゃべりだった夕子が突然無口になってしまいます。喋っても呂律が回っておらず、うまく喋れません。次第に悪化していき、ついに学校に来なくなってしまいました。利恵は心配して夕子の自宅を訪れるのですが……。 なめくじという気持ち悪い生き物に変化するグロテスクさと、ユーモアあふれるナレーションがうまく融合しています。怖いと思うのに、ついつい読むのを止められない作品です。

男手ひとつで息子・友樹を育てる園原。園原が住む場所には毎週土曜日にアイスクリームバスがきて、バスの中で子どもにアイスを振る舞っています。友樹もバスに乗るのですが、バスは子ども限定で大人は乗れません。怪しんだ園原がバスの中を覗き込むと──。 アイスクリームバスというシュールなバスですが、その正体を知った時にゾッとしてしまいます。アイスを売る青年もミステリアスな美青年で、富江のような魅力を感じてしまいますね。

主人公・唯の家は焼肉屋を経営しており、いつも家の中が油ぎっています。兄は油を飲む癖があり、ニキビができて、学校でいじめを受けてしまいました。兄は家に引きこもり、次第に暴力を振るうようになります。兄の暴力にさらされる唯を守ろうとして、父親が兄をフライパンで殴るのですが……。 家の中の脂度を感じられる唯は、心の中で脂度がどのくらいあるのか唱えています。脂度が次第に上がっていき、100％になったらどうなるのかと、迫りくる恐怖を感じる作品です。

そんな伊藤潤二作品が2023年1月にNetflix独占配信でアニメ化しました！ 伊藤潤二『マニアック』では、大人気の『富江』や『双一シリーズ』をはじめ、今回紹介した『アイスクリームバス』、『首吊り気球』が配信されています。伊藤潤二の世界をどう描いているのかが気になりますね。

2018年には『伊藤潤二傑作集』および『魔の断片』に収録されている作品から、伊藤潤二『コレクション』がアニメ化しました！ こちらも人気作品の『富江』や『双一シリーズ』のほか、今回紹介した『なめくじ少女』、『グリセリド』もアニメ化しています。

漫画家・伊藤潤二の代表作やアニメ化情報について解説しました！ ホラーとユーモアのこの絶妙なバランスは、奇才な伊藤潤二にしか描けない世界です。一度この不思議な伊藤潤二ワールドを味わうと、他の伊藤潤二作品も読まなければ気がすみません。これからの活躍も楽しみですね。