映画『何者』が就活生の心をえぐったワケ。映画から就活のリアルを徹底考察【ネタバレ注意】

2018年9月26日更新

現代の若者のリアルな就活事情を赤裸々に描いた映画『何者』。リアル過ぎる登場人物たちが抱える心の闇に就活生の心までえぐられてしまったワケとは?その先に見える現代日本の就職活動を考察します。

映画『何者』は下手なサスペンス・ホラーより怖い!【ネタバレ注意】

2016年に劇場公開された映画『何者』。大ヒットを記録した本作ですが、過酷な就職活動を経験してきた若者にとっては、下手なサスペンス・ホラー映画より怖いと言われています。 公開当時、「主演・佐藤健×監督・三浦大輔×音楽・中田ヤスタカ&米津玄師」「若手実力派俳優陣豪華競演」というオシャレ系ワードに誘われて観に行った若者たち。そんな彼らを、劇場を後にする頃には何とも言えないドロドロした感情で包み込み、震え上がらせたワケとは? そこにはリアル過ぎる現代日本の就活事情がありました。今回は、映画『何者』の登場人物に学ぶ就活生のリアル事情やそこから見えてくる現代日本の就活事情をひも解いていきます。

就活生のリアル過ぎる青春を描いた映画『何者』あらすじ

マンションの一室に集まった6人の男女。性格や将来の目標も違う彼らの共通点は、皆「大学生で就活生」であること。 彼らの1人、理香の発案で、理香の部屋を「就活対策本部」にして共に情報交換をしながら就活に励むことに。初めは和気あいあいと夢を語り合い助け合っていた6人ですが、次第に歪みが生じ始めます。 そして1人目の「内定者」が出た時、彼らの中に渦巻く妬み、裏切り、本音が爆発して……。人として最も価値があるのは誰なのか?そして、自分は一体「何者」なのか? 監督・三浦大輔×最旬若手実力派俳優陣×音楽・中田ヤスタカ&米津玄師で贈る超観察型サスペンス・エンターテインメントです。

現代の若者を7パターンに分類した主要キャスト紹介

二宮拓人/佐藤健

冷静分析系男子・二宮拓人を演じるのは佐藤健。映画『るろうに剣心』シリーズなどで見せる卓越した身体能力の持ち主ですが、ヒューマンドラマ系の作品もきちんと演じることができる俳優です。 佐藤が演じる拓人は、就活仲間には隠していますが、実は就職浪人二年目。他人のことは冷静に分析できるのに、自らの敗因にきちんと向き合うことができずにいるため、二年目でも内定を貰うことができません。

田名部瑞月/有村架純

地道素直系女子・田名部瑞月を演じるのは有村架純。主演映画『ビリギャル』の大ヒットやNHK朝の連続テレビ小説『ひよっこ』の主演、2017年も映画『関ケ原』『ナタラージュ』に出演が決まっています。 有村が演じる瑞月は、光太郎の元彼女で拓人の想い人です。家庭事情のため、夢を諦め手堅い就職先を探します。 そのため、フワフワと言い訳ばかりを並べる自分と正反対の隆良にカチンとくることも。

小早川理香/二階堂ふみ

意識高い系女子・小早川理香を演じるのは二階堂ふみ。映画『ヒミズ』『私の男』など難易度の高い役柄を次々に自分のものにしていく若手実力派女優の筆頭です。 二階堂が演じる理香は、分析力は拓人に勝るとも劣らないのに、頭が固過ぎるのとプライドが高いのが邪魔をして、周りが見えなくなっている不器用な女性。パッと見では、登場人物たちの中で一番闇が深そうにも見えます。

神谷光太郎/菅田将暉

天真爛漫系男子・神谷光太郎を演じるのは菅田将暉。2017年だけでこれから公開の作品も含めると映画『銀魂』など7本もの映画に出演する最旬な俳優。 菅田が演じる光太郎は大学時代に思いきり好きなことをやっていたため、人より遅れて就活をスタート。にも関わらず、あっさり内定を勝ち取ってしまう周囲からすれば強運の持ち主です。しかし、その裏には学生時代から秘めた想いが隠されており……。

宮本隆良/岡田将生

空想クリエイター系男子・宮本隆良を演じるのは岡田将生。映画『雷桜』『銀魂』など二枚目から三枚目まで幅広い役柄をこなせる実力派俳優です。 岡田が演じる隆良は、自らをキュレーターと名乗り「就活なんて格好悪い。」と断言。しかしフリーの仕事が上手くいかなくなると焦り始め、周囲に秘密で就活を始めるも、あっさりとバレてしまいます。

サワ先輩/山田孝之

達観先輩系男子・サワ先輩を演じるのは山田孝之。映画『ミロクローゼ』『闇金ウシジマくん』シリーズなど、シリアスからコメディーまで幅広くこなす型破りタイプの実力派俳優です。 山田演じるサワ先輩は、拓人にアドバイスをしますが、そこには自らも通ってきた道だというのがチラチラ垣間見えます。かつての自分を見ているような気持ちになっているのかも知れません。

『何者』は直木賞作家・朝井リョウが描いた小説

本作の原作は、最年少で直木賞を受賞した朝井リョウの同名小説。2017年現在28歳で少し前まで慶応義塾大学の学生だった朝井だからこそ描けるリアルな就活事情と心理描写が話題を呼び、多くの若者に支持されています。 デビュー作『桐島、部活やめるってよ』では、高校生の瑞々しい日常を切り取りながらも残酷なほどにリアルなスクールカーストを描いた朝井。本作では、朝井の持つリアルなえぐさが全開で描かれ、ドロドロのワンシチュエーション劇が繰り広げられています。 現代の若者の行動や思考パターンが7タイプに分類され、文字数も多くなく読みやすい原作なので、映画と併せて読むことをお薦めします。

これぞ就活!『何者』は大学の就活ガイダンスで見せるべき映画?

本作では、現代の就活において避けて通ることはできない局面とそれに対し登場人物たちが四苦八苦して乗り越えていく様がとてもリアルに描かれています。裏を返せば、これをやってはいけない!これは知っておくべき!という就活あるあるが満載なのです。 映画のネタバレとともに、ストーリー順に注目すべき“就活キーワード”をご紹介します。

Webテスト

「Webテスト」とは、自宅やテストセンターで受けることのできる入社試験の第一次選考のことを指します。かつては、就職先に出向いて受ける筆記試験が中心でしたが、現在は多くの企業がこのWebテストを採用しています。 主に大学3年の3月以降から受けることができるため、早い段階からの対策が必要です。内容は基礎学力などの能力テストと性格テストに分けられます。 拓人たちが受けている自宅でのWebテストは「電卓の使用が前提で入力形式の問題が多い」「1題ごとの制限時間があり、解けないと難易度が上がらない(高得点が出せない)」「出題範囲がシャッフルされて毎回違う」などの特徴があります。 もちろん一人で受けないと不正になるのですが、拓人と光太郎のように、友人と協力して行ったり、人脈を駆使して解答を貰ったりすることも。理香は瑞月と友人同士なので、瑞月に協力を仰げばいいものを、プライドが邪魔をして一人で解こうとして何度も落ちてしまいます。 Webテストで落ちてしまってはOB訪問をいくらこなしても、面接までたどり着くことすらできないのです。

合同企業説明会

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拓人のTwitterでの「合同説明会は有名企業だけでなく、マイナー企業も攻めるべし。」というつぶやき。間違いだらけの拓人ですが、この発言には頷いた就活経験者も多いのではないでしょうか。 また友人同士で行くと、大手企業などは長い列が出来ていることもあるので、一緒に見て回る=時間が無駄になってしまいます。100社近く受けなければならない可能性があるならば、自分が気になっている企業は大手、マイナー問わず、できるだけ多く回りたいですね。

数のトラップに要注意!

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就活用の名刺を作り、せっせとOB訪問に励む理香。「OB訪問20件達成!」とTwitterで呟き、OBたちとSNSで積極的に繋がろうと人脈作りに励みます。 しかし、理香の就活はなかなか実を結びません。その理由は、数のトラップにあります。 理香は数をこなしてステップアップした気持ちになっていますが、理香のように内定が出ずに100社以上を受けなければならないとなると、毎日2~3枚のエントリーシートを書かなければならないですし、面接試験も1日に2件あるなんてことも。 そうした毎日の中で知らず知らずの内に心が摩耗して、本命企業を前にした時には力が残っておらず、本領発揮ができなくなるのです。また数をこなし過ぎたせいで、自分が本当に求めているものが分からなくなってしまいました。 自分にとって今何が最も必要か。何に力を入れるべきか。その見極めが大切になってくるのではないでしょうか。

就職試験会場で知り合いとばったり!

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ある広告会社の筆記試験を受けに行った拓人は偶然、瑞月と鉢合わせます。しかも、その会場にはなんと就活に否定的だった隆良の姿も。 帰り道、拓人と瑞月がラーメン屋さんで和んでいると、広告会社に走っていく理香の姿まで目撃します。皆揃って自分の受ける会社をオープンにしておらず、ばったり会ってしまったというわけです。 拓人はその後、別会社でのグループ・ディスカッションでも理香と同じグループになってしまいます。これは、お互い「ここは受けるつもりはない。」なんて言っていたなら、恥ずかしいことこの上ないですよね。 しかもディスカッションは理香の独壇場となってしまい、拓人は発言できずに終わってしまいます。これは、日本人が小さい頃から自分の意見や考えを表現する教育不足で、ディスカッション慣れしていないことが多く影響しているよう思えます。 対して、留学経験のある理香は、その経験をしっかり生かせたと言えるでしょう。

SNSができないと就活のスタートラインにも立てない!

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「現代の若者は選択肢が多くて恵まれているなど。」と上の世代に言われていますが、Twitter、Instagram、LINEと情報過多の時代で、何を選択すれば良いのか、選択肢が多過ぎて難しくなっています。 瑞月の内定先のように誰もが認める大手優良企業でも、理香はネット検索をして「ブラック企業だ。」という情報を見て安心します。このように、自分が信じたい情報のみを、誰に知られることなくピックアップしてしまう危険性もあります。 とは言え、就活生は常に最新の就活情報を手に入れておかないといけないのも事実です。2017年にある会社が倒産した際も、就活生のコミュニティーサイトでは「この会社は危ない。」とそれ以前から話題になっていたそうです。 その情報をきちんと取得できていない人は内定を鵜呑みにしてしまい、多数の内定取り消し者が出てしまったのが、記憶に新しいところです。 その後の再内定先の呼びかけも、TwitterなどのSNSを使って各会社が行ったため、内定取り消しに落ち込んでいてベッドの中にいた人たちは、再内定のチャンスすら失ってしまったというわけなのです。最新の情報が最短で手に入るSNSの、メリットとデメリットがよくわかる就活にまつわる事件でした。

就活でわかる自分の価値と真の友人

人は「進学、結婚、出産」など、人生の岐路に立たされた時に誰が真の友人がわかるといいます。「就活」も人生において、とても大きな岐路です。 劇中、瑞月が隆良の甘さを指摘し、本音をぶつけたことで、隆良は自らの空想モラトリアムの世界から脱し大人への一歩を踏み出します。拓人もまた、理香に自身のTwitterの裏アカウントのことを非難され、互いに友人の内定先がブラック企業かどうかを願っていることで言い争いになります。 その中で、理香の「痛いと笑われても、ダサくて格好悪い自分を理想の自分に近づけるしかないのだ。」という本音を聞く拓人。理香の言葉で自らが「@NANIMONO」という観察者になることで自身の現状から逃げていることに気付かされます。 お互いにダサくて格好悪い自分を見せ本音で語り合ったことで、相手の人生を大きな影響を与え合った拓人と理香、瑞月と隆良。彼らは案外、真の友人になれるのかも知れません。 甘い言葉ではなく厳しい言葉で自分を律してくれ、ダサくて格好悪い自分に向き合ってくれる友人こそ、生涯において何よりも大切なのではないでしょうか。

映画『何者』は現代の若者のあがきを描いていた

自分ときちんと見つめ合って律しても、それで内定が取れるわけではないし、内定が取れて会社に入っても「何者」かになれるとは限りません。 色々な情報を精査しなければならない現代だからこそ、「考えろ、考え続けることをやめるな。」と7人の若者たちの生き様に言われているような気がする作品です。