映画『そして父になる』ネタバレあらすじ解説!結末の答えはどっち&タイトルの意味を徹底考察
2013年に公開された『そして父になる』は、『誰も知らない』や『ワンダフルライフ』、『海街diary』などでお馴染み、是枝裕和監督のオリジナル作品。昭和40年ごろに頻発していた赤ちゃん取り違え問題を参考に、取り違えられた両家の家族の苦悩を描いたヒューマンドラマです。 主演である福山雅治が父親役に初挑戦した事でも話題となり、興行収入は32億円を記録。さらに福山は日本人の受賞は26年ぶりとなるカンヌ国際映画祭審査員賞を受賞し、全世界で高評価を得た作品となりました。 今回はあらすじからラストのエンディングまで、ネタバレありでご紹介していきます。未鑑賞の方はご注意ください。
映画『そして父になる』あらすじ【ネタバレなし】
大手建設会社に勤める野々宮良多(福山雅治)とみどり(尾野真千子)夫妻は、6歳になる一人息子・慶多(二宮慶多)と3人で高級マンションで優雅な暮らしをしていました。しかしある日、慶多を出産した病院から連絡があり、出生時に取り違いが発生し慶多は実子ではないという事が判明。 実子は、小さな電気店を営む斎木家のもとでわんぱくに育つ琉晴(黄升炫)だという事が明かされました。取り違えという事実に混乱する両家でしたが、日本では血の繋がりを重要視するという事例に従い、子どもには「ミッションだ」と説明し徐々に実の両親のもとで生活をさせる事に……。 しかしこれまで共に過ごしてきた6年間は長く、そう簡単にはいきません。これまでの時間を取るか血縁を取るか……。そして最後には一つの結論に辿りつくのです。
映画『そして父になる』を全編ネタバレ解説!父親の選択の結末は

完璧な家族としての日常を積み重ねる良多
小学校受験に家族全員で臨んでいた野々宮家。父の良多は再開発プロジェクトのリーダーを務めるエリート建築家で、一人息子の慶多は母のみどりに似ておっとりした性格です。慶多が受験した私立小学校は良多の母校であり、父のようになりたいと言っていました。 そんなある日、慶多を出産した病院から連絡があり、「赤ちゃんの取り違え」があったと報告を受けます。昭和40年代に多発していたという取り違え事件。良多たちはDNA鑑定を受けることになります。
出生の取り違えを知らされることに
DNA鑑定の結果、慶多は2人の息子ではないことが判明。みどりは自分が母親なのになぜ違うことがわからなかったのかと悩みます。取り違えられた両家の両親が揃い、互いの息子の写真を見せあって確認することに。 慶多の本当の両親は斎木雄大・ゆかりの夫婦で、息子の名は琉晴といいました。病院側はこういうケースはほとんどの両親が「交換」を選ぶと言います。両家は一度全員で会ってみるという約束をしました。
血と育ちの間で揺れる家族
ショッピングモールで両家は顔合わせをすることに。初めて会った自分たちの本当の子・琉晴を見て、複雑な心境に陥る良多たち。斎木家は病院から慰謝料を取ることに言及し、良多は知り合いの弁護士に「両方の子どもを引き取りたい」と相談します。 弁護士を交えた4回目の会合で、病院側は「お泊り」のステップを提案。週末に斎木家へ泊ることを慶多に「これは強くなるためのミッションだ」と伝えました。斎木家は町の電気屋さんで、野々宮家とは真逆なアットホームな雰囲気。 一方野々宮家に泊まりに来た琉晴は豪華な食事に喜びますが、早速良多に箸の持ち方を直され、時間を気にしてソワソワしていました。みどりは帰ってきた慶多に「2人でどっか遠いとこ行っちゃおうか」とこぼします。 病院側を相手取った裁判が始まり、当時勤めていた看護師が「わざとやった」と告白。子育てにイライラしていたため、裕福な野々宮家を見て衝動的に取り換えたと証言しました。
良多は父親として向き合い直す
6年間の時間か血縁か、子どもを交換すべきか否か迷う両家でしたが、何回かのお泊りを経験するうちに実子に情が湧いてくるのを感じていきます。話し合いの末、なるべく早く元の家庭に戻すべきだという結論に達し、子どもたちを交換することに。 しかし大人が勝手に決めた決断に当人の子どもたちは納得できません。琉晴は新しい家庭環境に馴染めず、元の斎木家に家出をしてしまいます。一方慶多は賑やかな斎木家での新鮮な生活を楽しみつつもどこか寂しげな表情を浮かべていました。 これでよかったのだと自分に言い聞かせる良多でしたが、ある朝カメラをいじっていると、慶多が撮ったと思われる父・良多の写真がたくさんある事に気がつきます。内気であまり思った事を口にしない慶多でしたが、良多やみどりと離れたくないという気持ちを密かにカメラに残していたのです。 それを見た良多はこれまで一緒に過ごしてきた6年間を思い出し号泣。血の繋がりに固執してきた良多でしたが、これまで慶多が自分にしてくれた事を振り返り、大切なのは血の繋がりではないと考え直し慶多を迎えにいきます。しかし斎木家を訪れた良多を見て、慶多は家を飛び出してしまうのです。 良多が追いかけると慶多は初めて感情を表に出します。「パパなんかパパじゃない!」その声に良多は「できそこないだったけど、(これでも)パパだったんだよ。もうミッションなんか終わりだ」と慶多に伝え、共に斎木家に戻ったのでした。
【考察①】結末で良多はどっちを選んだ?

本作のラストは、結局両家がどうしたのか明確な答えを示していません。血の繋がりか、過ごした時間か?その答えは観る側に委ねられており、どちらが正解かというものはないのかもしれません。 本作はその答えを追求するものではなく、家庭を顧みず仕事に没頭していた良多が「子どもの取り違え」という問題に直面して初めて子どもと向き合い、そして「父」となっていく過程を描いた物語。父親としての良多の心の変化、大人たちが勝手に決めた事への子どもたちの反発心、そしていろいろな家族の形というものを感じられる映画だといえるでしょう。 帰ってきた良多と慶多をみんなで斎木家に迎え入れたラストシーンは、今後両家が交流を続けていくのでは?という想像を膨らませるものでもありました。おそらくあの後、慶多は野々宮家に、琉晴は斎木家に戻ったのかもしれません。真逆なタイプの両家が互いに学ぶこともあり、すぐに「親になる」ことは難しくても時間をかけて関係性を築いていく可能性が見いだせる結末になっています。
【考察②】『そして父になる』は実話?モデルは
劇中でも病院側が言及していましたが、昭和40年代に「赤ちゃん取り違え事件」が頻発。病院での出産が一般的になった時代で、管理体制に不備が多発したことやベビーブームだったことが背景にあるようです。その中に、昭和46年に沖縄で起きた取り違え事件がありました。 この事件は2002年にノンフィクション『ねじれた絆 赤ちゃん取り違え事件の十七年』として出版。2013年には実録ドラマ『ねじれた絆~赤ちゃん取り違え事件 42年の真実~』が放送されました。 『そして父になる』はこの時代に起きた取り違え事件をモチーフとして、家族の葛藤にスポットを当てて描いています。
【考察③】映画のタイトルの真意は?
『そして父になる』というタイトルには、野々宮良多の父親としての成長が示されていました。仕事ばかりで家庭を顧みなかった良多が、赤ちゃん取り違え事件を通して子どもとの絆を再確認し、子どもと一緒に成長することで「父になる」過程を描いています。 母親が出産を通して「母になる」のに対し、父親が本当の意味で「父になる」のは子どもと一緒に過ごす時間であり、共に培う体験や愛情によって“後天的に”獲得するものであるというメッセージなのです。
映画『そして父になる』キャスト一覧!
登場人物相関図
CHARACTER RELATIONSHIP MAP
野々宮良多役/福山雅治

再開発プロジェクトを進める大手建築会社のエリート社員。家の事や息子の育児は妻みどりに任せきりで、家族よりも仕事に没頭するタイプです。 息子の慶多が自分とは違い、社会の競争とは無縁な優しい性格の持ち主であることに不満を感じており、子どもの取り違えが発覚した際には「やっぱりな」と自分の子ではなかった事に妙に納得しています。 本作で初めて父親役に挑戦した福山雅治(1969年2月6日生)。本作公開の2年後、2015年には女優の吹石一恵との結婚で世間を大いに賑わせました。
野々宮みどり役/尾野真千子

みどりは良多の自己中心的な考えに苛立ちつつも、中々口を出せない典型的な専業主婦です。6年間育ててきた息子が実は他人の子だという事にとまどい、“交換”することに抵抗を感じていましたが、お試し期間で実のわが子と対面すると次第に情が湧いてくるのを自身でも感じていました。 妻みどり役を演じたのは奈良県の田舎町で育った女優・尾野真千子(1981年11月4日生)です。本作で第37回日本アカデミー賞優秀主演女優賞を受賞しましたが、真木よう子演じる斎木ゆかりの肝っ玉母さんのような役柄の方が合うのでは?と演じる真木と話し合っていたそうです。
斎木雄大役/リリー・フランキー

雄大は家族や子どもとの時間を大切にする、良多とは正反対な父親です。小さな電気店を営み、貧しいながらも大家族で賑やかに暮らしています。 取り違えが発覚した際には病院側に賠償金を払わせようなどとヘラヘラしていましたが、良多の「どちらもうちで育てても良い」という身勝手な発言を聞いた際には、父親らしく良多に一喝するシーンも見られました。演じたのは、俳優の他にも司会者や執筆家などマルチな才能を持つリリー・フランキーです。
斎木ゆかり役/真木よう子

ゆかりは3人の子どもを育てるしっかりした肝っ玉母さん。野々宮夫妻のような良多が主導権を握る亭主関白タイプとは違い、斎木家はゆかりが主導権を握っているようです。 真木よう子(1982年10月15日生)は中学卒業と同時に、仲代達矢主宰の俳優養成所「無名塾」に入所し芸能界入り。その後女優としてのキャリアを徐々に積み重ね、2014年には『さよなら渓谷』で日本アカデミー賞最優秀女優賞と、今作で最優秀助演女優賞をダブル受賞する快挙を成し遂げました。
野々宮慶多役(けいた)/二宮慶多
良多とみどりの元で6年間育てられた一人息子。エリートタイプの良多と違い、おっとりした優しい性格のため、良多からは度々怒られています。“交換”で斎木家に泊まった際には賑やかな家庭への憧れもあってか、楽しそうな表情も見せますがやはり良多とみどりの元へ帰りたいという想いがどんどん強くなっていきます。 そんな複雑な心境の役柄を見事に演じたのが子役の二宮慶多(2006年8月13日生)です。愛媛県出身で、ドラマ『半沢直樹』や『BORDER』など民放連続ドラマに多数出演。そのほかデビュー年から9歳までの3年間で計6作もの映画に出演した売れっ子子役です。
斎木琉晴役(りゅうせい)/黄升炫
雄大とゆかりの間で6年間育てられた野々宮夫妻の実子。斎木家では伸び伸びと育てられた琉晴でしたが、“交換”で野々宮家に泊まった際には決まりごとが多い事に嫌気が差し、斎木家に戻ってしまいます。 琉晴役に抜擢された黄升炫(2005年6月18日生)はファン・ショウゲンと読みます。中国人のような名前ですが東京都出身とのこと。 今作では子どもたちに台本は用意されず、シーンごとに気持ちを説明されただけであとはアドリブだったそうです。しかしそうは見えないしっかりとした大人顔負けの演技を披露しています。
吉田羊がちょい役で出演していた?!

良多が休日出勤している社内で、*チームに食事の号令をかけている女性・波留奈を演じているのが吉田羊**です。良多の元カノという設定のようですが、時間の関係上カットされ、ちょい役での出演となってしまいました。 うしろ姿で画面の方は向かず、台詞も少ししかないので気づかなかった方も多いでしょう。今作ではほんの少しの共演でしたが、その後共演した映画『SCOOP!』ではその際のリベンジを果たす為出演を決めた、と舞台挨拶で語っています。
海外でも高く評価されている是枝監督とは

是枝裕和(1962年6月6日生)は東京都練馬区に生まれ、早稲田大学卒業後番組制作会社に入社しADとしてドキュメンタリー番組の演出などを手掛けていました。 1995年の映画『幻の光』で監督デビューした後、映画『誰も知らない』や『ワンダフルライフ』など、手掛けた作品が次々と映画祭の賞を受賞していった事から、国内外で高く評価されています。 そして今作『そして父になる』では過去最多となる14もの映画賞を受賞し監督としての確かな地位を確立した是枝監督は、2018年公開の映画『万引き家族』でカンヌ映画祭の最高賞パルムドールを受賞しました。『万引き家族』でも、引き続き「家族」をテーマに問題提起をし続けています。
スティーヴン・スピルバーグが惚れ込んだ!アメリカでリメイクが決定!
本作がドリームワークスによってハリウッドリメイクが決定いたしました! その報を受けて急遽渡米した是枝監督はカンヌ国際映画祭で審査員長を務めたスティーブン・スピルバーグと再会しました!!#そして父になる pic.twitter.com/hBfYT8CE9y
— 映画『そして父になる』公式アカウント (@soshitechichi) September 29, 2013
カンヌ国際映画祭で今作を見て惚れ込んだというスティーヴン・スピルバーグが是枝監督と対談。その結果、アメリカの映画会社ドリームワークスで今作をリメイクする事が決定しました。 これまで『ジュラシック・パーク』シリーズや『インディ・ジョーンズ』シリーズ、『ジョーズ』や『プライベート・ライアン』など数々の名作を世に打ち出してきた巨匠スティーヴン・スピルバーグ。 彼が作るリメイク版はどんな作品になるのか、そしてどんな俳優陣がキャスティングされるのか、とても期待が高まっています。
映画『そして父になる』感想・評価まとめ
『そして父になる』の感想には、鑑賞後も泣けるような重いテーマでありつつ、是枝裕和監督ならでは物語で芸術性が高いというものがありました。「自分の子どもが本当の子ではなかったらと思うとゾッとする」、「タイトルの意味がわかった瞬間にグッとくる」など自分事にように感じる人も。 さすがはカンヌ受賞作品、低評価は少なく、「感動した」、「グッときた」という声が多くありました。主人公・良多の変化は視聴者にも分かりやすく伝わり、観終わった後「そして父になる」というタイトルを改めて噛み締めた方も多いようです。 ラストがラストなだけに、人それぞれ感じ方は違うものになる作品でした。あなたならどんな選択を決断しますか?
『そして父になる』他、新生児取り違え事問題に切り込んだ作品
本作のように、新生児取り違え問題をテーマにした作品は、これまでいくつか作られてきました。以下の記事では、『そして父になる』の参考文献となった『ねじれた絆』など6作品をご紹介しています。
この問題に直面したとき、あなたならどうしますか?
是枝裕和監督作『そして父になる』、いま改めて鑑賞を!

赤ちゃん取り違え事件を通して父親として成長する物語『そして父になる』。2026年5月29日公開の是枝裕和監督の最新作『箱の中の羊』のテーマとも近しいようなので、未鑑賞の方はぜひこの機会に視聴してみてはいかがでしょうか?


