2017年10月15日更新

傑作鬱アニメ『無限のリヴァイアス』の世界観を徹底解説!【2017年Blu-ray発売】

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無限のリヴァイアス

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『無限のリヴァイアス』、サンライズの傑作鬱アニメを徹底解説!

1999年から2000年にかけて2クールで放送された『無限のリヴァイアス』は「ガンダム」シリーズで知られる制作会社サンライズによるアニメです。宇宙を舞台にロボットや戦艦も登場するものの、それまでのサンライズのイメージと異なるハードな世界観は多くの視聴者を虜にしました。 2017年10月27日には待望のBlu-rayBOXが発売。全話新規HDリマスター化されるとともに、新たにオーディオコメンタリーが加わり、描き下ろし収納BOXも付属する豪華版です。 今回は傑作鬱アニメとしても名高い『無限のリヴァイアス』の魅力を改めて振り返ります。

『無限のリヴァイアス』のあらすじ

2225年、過去に発生した「ゲドゥルト」と呼ばれる太陽フレアによって地球の南半球は飲み込まれ、17億もの人の命が奪われました。16歳の相場昂治は航宙士になるために、犬猿の仲の弟・裕希、幼馴染の蓬仙あおいとともに衛星軌道上の航宙士養成所リーベ・デルタを訪れます。 そんな昂治たちを乗せたリーベ・デルタは何者かの襲撃により制御不能に陥り、死の世界であるゲドゥルトの海へ沈んでいきます。教官たちがつぎつぎと殉職していく中、ゲドゥルト内を潜航可能な黒のリヴァイアスが起動し、少年少女たち487人だけが非難することに成功しました。 ですが絶望的な状況は、艦の指揮権と物資をめぐる少年少女たちの争いを引き起こし、昂治たちもその渦中へと巻き込まれていきます。さらには救助に来るはずの起動保安庁から攻撃を受け、艦内は次第に秩序を失い始めーー。

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ロボット物らしからぬ陰鬱かつ骨太な人間ドラマが見どころ

本作ではジュール・ヴェルヌの『十五少年漂流記』やウィリアム・ゴールディングの『蝿の王』をモチーフに、頼るべき大人を失い、極限状態へと陥った少年少女たちの人間関係と指揮権をめぐる政治的ドラマが描かれています。 愛憎入り混じった男女関係や、人類史を模したような政権の移り変わりなどその中身は濃厚。死人が続出するため一般的に鬱アニメとされていますが、「鬱」のひとくくりで扱うにはもったいないほど見どころの多い作品です。 主人公・昂治はヒロイックな才能やカリスマ性を持っているわけでもなく、ひたすら辛い状況に翻弄されていくというのも他のロボットアニメとは一線を画しているといえます。

『無限のリヴァイアス』の登場人物たち

相場昂治(あいばこうじ) / CV白鳥哲

本作の主人公。第ニ種航宙士免許取得のために地球から来た16歳の少年。 母親と弟・裕希と三人暮らしで、幼いころから弟の面倒を見ていましたが、昂治が右肩を負傷した3年前の大げんか以来、険悪な関係に。成績・実技ともに平均的で、誰とでも仲良くなれる社交性を生かして一連の騒動に関わっていきます。

相場裕希(あいばゆうき) / CV保志総一朗

昂治より一つ下の15歳の弟。 兄とは違って頭脳・体力・操縦技術に優れる天才肌。性格には難があり、一匹狼として立ち回ることが多いです。持ち前のルックスで女性にもモテますが、密かに気になっているあおいは昂治を気にかけており、兄弟が衝突する原因のひとつになっています。

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蓬仙あおい(ほうせんあおい) / CV桑島法子

本作のメインヒロインを務める16歳の少女。 相場兄弟とは幼馴染で、世話好きな性格もあって二人の関係を気にかけています。昂治のことが好きなものの、恋愛感情に疎く最後まで自分の気持ちに気づきません。さみしがりやな一面もあり、友人に突き放され辛い状況に陥って行きます。

『無限のリヴァイアス』に登場するその他の重要なキャラクター

尾瀬イクミ(おぜいくみ) / CV関智一

昂治の親友で、訓練ではパートナーを務めた少年。 能力・リーダーシップに優れる好青年ですが、思いを寄せていたこずえが暴行された事件をきっかけに暴力に満ちた独裁政権を立ち上げ、それを止めようとある行動まで取ってしまいます。過去には実の姉カオリとの関係や、物語が進むにつれて抱えていた闇が徐々に明らかになっていきます。

ファイナ・S・篠崎(しのざき) / CV愛河里花子

天王星圏チタニアの出身で、首相の孫娘。 一時は昂治と恋仲になる美少女ですが、実際は天王星圏の宗教・聖母アルネの教えに熱心に帰依しています。彼女は「過去を断ち切る」という教えのもと、救いのない状況下でアルネの教えを布教し、一つの勢力を形成していきます。

エアーズ・ブルー / CV檜山修之

土星圏ハイぺリオン出身の少年で、不良集団のリーダー。 喧嘩において無類の強さを誇り、暴力を正義とするチーム・ブルーを率いています。チームを使ってリヴァイアスを制圧し、2代目の艦長として君臨しますが、その後失脚。そのとき助けられた昂治に恩を返すなど忠義には厚い人物です。

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よく出てくるけどわかりにくい! 『無限のリヴァイアス』を読み解くためのキーワード

ゲドゥルト(ゲドゥルトの海) / シアー

太陽系をほぼ覆いつくしているコロナフレアのこと。ゲドゥルトの内部は高音・高圧であり、深部まで潜航すると重力によって押しつぶされてしまうという死の世界。 その深さに応じてシアー1~シアー7に分けられ、数字が大きいほど過酷な環境となっています。

ヴァイア / ヴァイア艦

ゲドゥルトの海に生息する知能を持った生物をヴァイアと呼びます。その形態は微小なものから、スペースイカと名付けられた巨大生物までさまざまです。 そういったヴァイアを取り込み、ゲドゥルト内も航行可能にした艦がヴァイア艦であり、昂治たちが乗っている黒のリヴァイアスを含めて全6隻存在します。リヴァイアスと交戦した青のインプルス、灰のゲシュペンストもそのうちの1隻です。

スフィクス(S-fix)

各ヴァイア艦とヴァイタル・ガーダーを制御するために各艦に1体ずつ存在する個体。乗組員や艦長たちとリンクすることで操縦を可能にしていますが、バックヤードと呼ばれるフィードバックの影響で好戦的になったり、情緒不安定になる悪影響を及ぼすことがあります。 リヴァイアスでの一連の暴動はこのバックヤードの影響だという説もささやかれています。

それぞれの思惑が交差するリヴァイアス艦内の政権の移り変わり

第1次ツヴァイ政権 / 艦長-ルクスン・北条

本作は人間関係とともに艦内の政権の移り変わりに注目するとより面白さが増します。まず最初に支配するのがツヴァイ政権。ツヴァイは上位クラスのエリートたちで、最初の艦長を務めるルクスン・北条や3代目艦長の才女ユイリィ・バハナなどリヴァイアスの中心として活躍します。 乱れる秩序を是正し、基礎的な制度を整えたのはこのツヴァイ政権といえるでしょう。

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ブルー政権 / 艦長-エアーズ・ブルー

ツヴァイが隠ぺいした情報を名目に、武力で艦を掌握したのがブルー率いるチームブルーです。艦の兵装ヴァイダル・ガーダーを実践投入し、仕事をすると付与されるポイント制を導入するなどの政策を実行しました。

第2次ツヴァイ政権 / 艦長-ユイリィ・バハナ

暴動によりブルーが追放され、民主主義的に選ばれたユイリィ・バハナが第2次ツヴァイ政権の中心となります。暴動の影響もあり治安が悪化し、さらに戦闘で犠牲者を出した責任を問われ、ユイリィ自ら艦長を辞めることになります。

尾瀬イクミ政権 / 艦長-尾瀬イクミ

暴力が跋扈する艦内に憤慨したイクミはヴァイタル・ガーダーを占拠し、独裁政権を立ち上げました。その後、過度なランク制を強いるなど迷走し、最後は昂治の説得を受けてゲシュペンストに投降することになります。

『無限のリヴァイアス』最終話、彼らが再び目指す目的地は……

リヴァイアスの流浪の旅は8ヵ月にも及びました。最終話ではその後日談となるエピソード、そしてリヴァイアスと昂治たちの新たな旅立ちが描かれています。 リヴァイアスの再搭乗を決意した乗組員たち。懐かしい顔ぶれが続々と集まりますが、ファイナの姿だけ見当たりません。そんな中、次なる目的地を託された昂治が選んだのは天王星のチタニアでした。チタニアはファイナの出身地であり、昂治はファイナに「会いたい、話し合いたい」と願っているのでした。

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『無限のリヴァイアス』と『機動戦士ガンダムSEED』との共通点

『無限のリヴァイアス』は原案・矢立肇、キャラクターデザイン・平井久司など『機動戦士ガンダムSEED』とは多くの共通点があります。 キャストには昂治役の白鳥哲、裕希役の保志総一朗、あおい役の桑島法子も名を連ねています。本作では裕希はあおいを密かに思っていましたが、結局あおいは昂治と結ばれました。 一方、『機動戦士ガンダムSEED』ではキラ・ヤマト(CV保志総一朗)が、サイ・アーガイル(CV白鳥哲)の恋人フレイ・アルスター(CV桑島法子)を奪う略奪愛的な関係性に!何とも皮肉の効いた展開は、知っているとより面白いですね。 辛い展開も多いだけに『無限のリヴァイアス』を最後まで観るのは中々にエネルギーがいりますが、BD化の機会にぜひ観直したいところです。最近のアニメ・漫画では『進撃の巨人』や『魔法少女まどかマギカ』の大ヒットをはじめ、厳しい世界を描くのもトレンドなので、その文脈を改めてたどるのも面白いのではないでしょうか。