虚淵玄、アニメ界における鬱展開のスペシャリストとは【うろぶっちゃーど】

2017年8月23日更新

今回はR-18ゲームから始まり、アニメ『魔法少女まどか☆マギカ』、特撮ドラマ『仮面ライダー鎧武』と躍進を続け、ついには日本を代表する作品『ゴジラ』のアニメ映画『GODZILLA』の脚本も執筆した新進気鋭の脚本家・虚淵玄をご紹介します。

鬱展開のスペシャリスト・虚淵玄

虚淵玄は1972年生まれのシナリオライターです。当初は小説家を目指していた虚淵ですが、90年代に普及したノベルゲームの表現力に感銘を受けてゲーム会社・ニトロプラスに入社し、同社のシナリオライターとしてのキャリアを開始しました。 その後は独特の作風と丁寧な構成、そして何より受け手の心を抉る衝撃的な鬱展開で評価を上げ、アニメ業界へ進出。アニメファンのみならず一般の視聴者をも惹きつける作品を発表し続け、実写ドラマの脚本も担当するようになりました。 本記事ではそんな鬱展開のスペシャリスト・虚淵玄を紹介します。

虚淵玄はデビュー当初から特異な切り口で異彩を放っていた!

虚淵玄のデビュー作は、ニトロプラスのブランドデビュー作であるR-18ゲーム『Phantom -PHANTOM OF INFERNO-』でした。卓越したミリタリー描写とアメリカの裏社会を舞台に繰り広げられる練りに練られたクライムアクションストーリーが特徴です。 通常、R-18ゲームではこれらの描写は好評に繋がりにくいのため、本作の発売当初の売上は伸び悩みました。しかし、本作はクオリティの高さに心酔したユーザーの口コミにより徐々に人気を高めていきます。この際、特に同業他社に激賞を受けました。 以降、虚淵玄はニトロプラスの諸作品でシナリオを手がけます。中でも『沙耶の唄』はエログロバイオレンスなストーリーにクトゥルフ神話を絡めた上で『火の鳥・復活編』(手塚治虫著)へのオマージュをベースにした純愛ストーリーを描くという特異なアプローチが話題を呼びました。

虚淵玄の名を業界に知らしめた著書『Fate/Zero』

ニトロプラスのシナリオライターとして活躍する傍ら、虚淵玄は奈須きのこ率いるヒットメーカー「TYPE-MOON」からコラボレーション企画を持ちかけられます。それはサブカルチャー業界で2000年代最大クラスのヒット作となった『Fate/stay night』のスピンオフ小説『Fate/Zero』の執筆でした。 本作は『Fate/Stay night』の中で過去の悲劇として語られた10年前の戦いを描いた作品です。本編との整合性を意識しつつ、虚淵玄が得意な鬱展開が「過去の悲劇」という立ち位置を活かして存分に繰り広げられ、読者に衝撃を与えました。 当初は同人誌として頒布されましたが、原作と本作の人気の高さから一般小説として再リリースされています。2011年にはアニメ化もされ、10年以上に渡る『Fate』シリーズの人気を支える屋台骨の1つです。

アニメファン以外にも受け入れられた出世作『魔法少女まどか☆マギカ』

『Fate/Zero』の執筆が完了した頃、虚淵玄は『Fate/Zero』に感銘を受けたアニメ業界関係者から複数のオファーを受けます。そのうちの1つに、魔法少女モノのオリジナルアニメーション企画がありました。 これは虚淵の他、『ひだまりスケッチ』で有名な蒼樹うめがキャラクター原案を担当し、監督には先鋭的かつ洗練された演出を売りとする新房昭之、制作は新進気鋭のアニメ会社・SHAFTが担当する大型企画としてスタートします。虚淵玄の代表作である『魔法少女まどか☆マギカ』です。 同作は虚淵の得意とする精緻で衝撃的なプロットと救いのない鬱屈とした魔法少女たちの運命、そしてその運命からの解放を描いています。自虐的に「鬱展開しか書けない」と語っていた虚淵玄は同作で初めて万感の拍手で迎えられる、鬱だけでは終わらないストーリーを完成させ、作品はアニメファンに留まらない広い注目をあつめることとなりました。

海外でも評判の高い虚淵。「UroButchered」という単語が誕生!

『魔法少女まどか☆マギカ』の人気は海外に波及し、虚淵玄の名前も世界のアニメファンに知られるようになりました。ゲームや小説に比べ、アニメはローカライズされやすく手にも取りやすいのです。 海外のアニメファン・サブカルチャーファンは初めて触れる虚淵玄の作風に衝撃を受け、「UroButchered(うろぶっちゃーど)」という単語を生み出しました。「Urobuchi(虚淵)」と「Butcher(虐殺者)」をあわせて出来たこの単語の意味はズバリ、「虚淵玄が描く凄惨な展開」。 あまりにもピンポイントな意味でありながら、海外アニメファンの間では広く知られた単語です。虚淵が如何に海外アニメファンに衝撃を与え、存在感を発揮したかが伺いしれる単語となっています。

子ども向け実写作品を虚淵玄が初担当!『仮面ライダー鎧武』

『魔法少女まどか☆マギカ』の話題・人気が一般に波及した結果、虚淵玄に想像だにしない依頼が舞い込みました。『平成仮面ライダー』シリーズの脚本です。 2000年から開始された『平成仮面ライダー』シリーズは、硬軟織り交ぜた作風と毎年大人をもうならせるテーマを主軸に子どもから大人まで幅広く愛される人気シリーズ。代表的な作品に、ドラマとしての圧倒的な完成度が子供だけでなく大人の心までをも掴んだ『仮面ライダークウガ』や、13人の仮面ライダーによる殺し合いが大きな議論を呼んだ『仮面ライダー龍騎』などがあります。 虚淵自身が『仮面ライダー』シリーズのファンであったため、彼はこの大役を引き受けます。完成した『仮面ライダー鎧武』は『平成仮面ライダー』シリーズ初期の作風を意識した展開と、世界を襲う超自然災害による恐怖、そしてドラマを盛り上げる伏線の数々が一年にわたって冴え渡る傑作となりました。

『アルドノア・ゼロ』ではストーリー原案に挑戦!

『魔法少女まどか☆マギカ』の大成功を受け、虚淵玄の元には『仮面ライダー鎧武』以外にも多数の依頼が舞い込みます。放映期間が一年に渡る『仮面ライダー鎧武』の脚本執筆は多大な労力を必要とするため、虚淵がすべての依頼に脚本やシリーズ構成として携わることは不可能でした。 そのため、2014年放送の『アルドノア・ゼロ』で虚淵玄はストーリーの原案と初期3話の脚本のみを担当する手法を取りました。同作はアポロ計画で古代文明の遺跡が発見された架空の歴史を舞台に、宇宙規模の戦いが勃発するロボットアニメです。 虚淵の原案を元に『アルドノア・ゼロ』を完成させたのは『喰霊-零-』で数々のサプライズを仕掛け視聴者を魅了した監督・あおきえいとシリーズ構成・高山カツヒコのコンビ。2人は虚淵が用意したスケールの大きい世界観を存分に活かし、最後まで予想がつかない斬新な構成で視聴者を魅了しました。

新作『GODZILLA』で虚淵玄はさらなる飛躍を遂げられるか

2017年、虚淵にとって最大の転換期が訪れます。アニメ映画『GODZILLA』シリーズの脚本を担当することとなったのです。同作は劇場映画3作からなる大長編で、全編の脚本を虚淵が執筆しています。 「ゴジラ」シリーズは、1954年に第1作『ゴジラ』が公開されました。同作は日本国内で大人気を獲得するとともに、新撮シーンを多数加えた海外版『怪獣王ゴジラ』も世界的大ヒットを飛ばします。翌年の『ゴジラの逆襲』以降継続的に新作が発表され、大人から子どもまで、世界各国の人々を魅了し続けているシリーズです。 特に2016年の『シン・ゴジラ』は大衆に受け入れられ、日本アカデミー賞作品賞を受賞。同時に世界的にもパニック映画として高い評価を受けました。 シリーズ次作にあたる『GODZILLA』とその脚本を担当する虚淵にも、老若男女を問わない面白さとクオリティが求められ、期待されています。

虚淵玄の躍進から目が離せない!

サブカルチャーの極北、R-18ゲームでキャリアをスタートさせた虚淵は、『魔法少女まどか☆マギカ』で日本国内の大人たちに受け入れられました。更に虚淵は『仮面ライダー鎧武』で日本中の子どもからも好評を得ることに成功し、その地位を確固たるものにします。 すでにアニメや特撮といったサブカルチャー業界では唯一無二の存在感を発揮している虚淵は、ついに『GODZILLA』でメインカルチャーへと殴り込みをかけるのです。果たして、虚淵玄のシナリオ技術は、世界中の人々に衝撃を届けられるのでしょうか? 新進気鋭のシナリオライター・虚淵玄のさらなる躍進に期待しましょう!