2017年12月9日更新

【あたその】期待と予想が裏切られまくる!『ゲット・アウト』は新感覚サプライズ・スリラー!

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あたそさんサムネ
©ciatr

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2017年のホラー映画No.1と名高い本作が、いよいよ公開!

全米初登場No.1大ヒットを記録!監督デビュー作にも関わらず、米映画レビューサイトで99%大絶賛された話題作『ゲット・アウト』が遂に日本に上陸し、10/27(金)より全国上映が決定している。 全国上映前の試写会にて、事前に本作を見てきたのだけれど、いやあ、凄い。テンポもよく、興奮が冷めないまま気が付けばエンディング。最後の最後まで展開が読めず、ずっと期待と予想を裏切られ続けた。 評判が評判なだけに気になってしまうかもしれないけれど、出来るだけ予告編を見ない状態で劇場に足を運んで欲しい。 今回は、結末まで全く予想ができなかった、映画『ゲット・アウト』の感想を紹介していく。

『ゲット・アウト』についてあらかじめ知っておきたい方はこちら!

【注意!】大幅なネタバレを含みます。映画鑑賞前の方で、ネタバレをご覧になりたくない方は自己判断をお願いいたします。

最後の最後まで気が抜けない!黒人差別をシニカルに描いたサスペンス映画!?

ゲット・アウト
© Universal Pictures

まず、あらすじを読んで、人種差別をひとつのテーマとして取り入れた、サスペンス・スリラー映画なのではないかと思う方も多いかもしれない。 ある意味では正しいけれど、観た後の印象はがらりと変わっているはず。お化けもゾンビも出て来ることはない。呪われたり、恨まれたりだってしない。でも、正真正銘のホラー映画。 冒頭から結末前15分まで、至るところに伏線が張り巡らされていて、ハラハラしながら夢中になって見入ってしまう。黒人の使用人2名の不自然な行動、不自然にクリスの体を触る家族、白人だけが集まるパーティー……。 まさか、自分の身体がひとつの商品としてオークションにかけられて、金銭と交換に白人たちに乗っ取られるなんて!映画を見ながら感じる違和感、そして不信感の正体が明かされ、全てが繋がった時、今まで感じたことのなかった恐怖がじわじわと襲う。 彼女の家族は、クリスを商品と見なしているのだから理解してくれるのは当然だし、白人たちも自分達の身体になるかもしれないのだから優しく接してくれて当然なのだ! もちろん映画だからあり得ない話であるけれど、この世で最も怖い存在は生身の人間だということを思い知るでしょう。心の中は一体どんなことを考えているのかわからない、全面的な肯定や優しさには裏がある、自分を利用しようと企んでいる人が周囲にいる……。 顔を見て、会話をしているだけでは絶対に分からない部分が他人には必ずある。だからこそ、恐ろしい。まるで、アメリカ版『世にも奇妙な物語』のようだった。

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監督は大人気コメディアン。シリアスなシーンの中にも絶妙な笑いが

ゲット・アウト
© Universal Pictures

人間の怖さを描いただけの作品なのか?というとそうではない。思わずフフッと笑えてしまうシーンもところどころに組み込まれている。 それもそのはず! 監督・脚本・制作を務めているのは、アメリカで大人気のコメディアンであるジョーダン・ピールだ。実は彼は黒人と白人のハーフであり、人種差別や政治をテーマにした風刺や笑いが大の得意だったりする。 コメディとホラー映画。一見正反対にも思えるが、彼のアイデンティティや今までの経験がほどよく生かされていることがよく分かる。シリアスの中にも笑えるシーンを盛り込んでくるのは流石だった!  笑いが起こるからこそ、映画全体を通じてテンポよく進んでいき、退屈することもシリアスなシーンが続くことによる疲労感を覚えることもなかった。

登場人物の中でも注目しておきたいのは、主人公・クリスの友人であるロッド。ホラー映画の似合わぬ愉快なキャラクターで、なんだか憎めない。 鑑賞中も、何度も彼に笑わされた。奇妙な彼女の家族や白人パーティーに対して、「セックス・スレイヴ(性奴隷だ)!」というセリフは、ズルい。 「ホラー映画」とジャンル分けされている作品とは思えないくらい、噴き出すように笑ってしまった。しかも、そこそこ正解しているというのも、映画を観た後におかしさを感じてしまう。

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自分の潜在的な差別意識が明らかになるのも、この映画の怖いところ

ゲット・アウト
© Universal Pictures

この映画の最大のキーポイントは、目には見えない差別意識が描かれていることだと思う。 例えば、「白人は、手足が長くていいな」「黒人は、筋肉の量が違うからな」「日本人は手先が器用で、優しいよね」という人種に対しての何気ない意識が、映画が進んでいくと同時に恐怖へと変化していく。 主人公のクリスが、恋人の実家に訪れたシーンなんて特にそうだ。黒人の使用人2人を雇い、未だに奴隷制が導入されている白人の一家。いくら使用人の働きぶりや性格に対して理解を示しているとしても、同じ黒人であれば不快感を覚えるだろう。アメリカ国内では、白人と黒人の溝はまだまだ根深いものなのかもしれない。 白人家族の中にいることによって感じる不安や緊張は、彼女の両親に会っているから? それとも被差別的な意識が働いているから? ……この場面では、どうしてもクリスに感情移入してしまう。 もちろん、差別は絶対にいけないことで、今のご時世において自ら積極的に人種差別をしていく人はいないだろう。でも、潜在的な差別意識というのは少なからず存在していて、自分の中にも眠っていることに、ハッと気づかされる。そこがまた怖い。 本国アメリカでは、昨年2016年に上映。思い返してみると、オバマ政権からトランプ政権に交代した頃だ。当時は、アメリカ全土でヘイトクライムが起き、人種差別が原因となる犯罪が起きていた。この時代背景や観客たちの心境の変化が、この映画の恐怖を更に増幅させ、大ヒットにもつながったのではないかと思う。

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エンディングはハッピーエンド? それとも……?

ゲット・アウト
© Universal Pictures

特に、ラスト15分の衝撃は、スクリーンに食い入るように見てしまった。 最後の最後のどんでん返し。家族に紹介してくれるくらい信頼関係を築いていた彼女が自分の身体目当てで近づいたことが発覚し、そして自分のことを殺そうと襲いかかってくる。ものとしか見なしておらず、人に抱く感情を何も持ってくれていなかったのだ。 結局、クリスは身体も心も無事で、彼女の家族たちが住む田舎から、脱出することができた。けれど、この結末はハッピーエンドなのだろうか? それともバットエンドなのだろうか? 私は、バットエンドだと思っている。自分の愛する人から実は愛されておらず、別の目的で近づいていた、と分かるだけで胸が苦しい。 そして更に、命すら狙い、恋人である自分を殺すことに全く躊躇がない。これをバットエンドと呼ばず、何をバットエンドと呼ぼうか! 命が助かったからそれでめでたし、なんてそんなことはないはず。 このエンディングについては、人によって捉え方の違いがありそうだ。様々な伏線が張られ、登場人物の心境の変化に影響していく。どの場面が、どのように繋がっているのか?  またこの動作の要因は一体なんだったのか? という伏線回収ができた瞬間に思わず「だからだったのか!」と声を出してしまいそうになるすっきり感が気持ちいい。 観終わった後は映画を鑑賞した人同士で「あのシーンはあそことつながっていたよね?」と言い合いたくなるはず。個人によって見え方や場面の理解度が全く異なり、議論を重ねたくなるのも、この映画の魅力なのかもしれない。