『湯を沸かすほどの熱い愛』アカデミー賞ノミネートなるか【ラストネタバレも】

2017年10月31日更新

2016年に公開された映画『湯を沸かすほどの熱い愛』。潰れかけた銭湯を舞台に、余命宣告をされた「お母ちゃん」こと幸野双葉が、家族の絆を繋いでいく感動の人間ドラマです。本作のキャスト・見どころと米アカデミー賞にノミネートされるかを考察していきます。

映画『湯を沸かすほどの熱い愛』が米アカデミー賞日本代表作品に決定!

2016年に劇場公開され、ジワジワと上映館を増やし、ロングランヒットとなった映画『湯を沸かすほどの熱い愛』。自主映画『チチを撮りに』が第63回ベルリン国際映画祭に正式招待されるなど、国内外で14の賞に輝き、注目を集めている中野量太監督の商業映画デビュー作です。 主演に中野と同じ歳の宮沢りえを据え、日本の伝統文化である「銭湯」を舞台に、死にゆく母が家族を繋いでいく感動の人間ドラマを描き出しました。 今回は、映画『湯を沸かすほどの熱い愛』の見どころと、米アカデミー賞へノミネートされるかなどの注目ポイントを紹介していきます。

映画『湯を沸かすほどの熱い愛』あらすじ

銭湯を営む幸野家。しかし、父が1年前にフラリと失踪し銭湯は休業状態。 母・双葉は、それでも明るく強く、パートをしながら娘・安澄を育てていました。そんなある日突然、双葉は末期ガンで余命2ヵ月という宣告を受けます。 その日から双葉は「絶対にやっておくべきこと」リストを決め、次々と実行していきます。そんな双葉の行動は、それまで隠してきた家族の秘密を取り去ることになり、夫・一浩や安澄とぶつかり合いながらも、これまで以上に深く固い絆で結ばれていきます。 双葉の愛に応えるように、究極の愛を込めて双葉を葬りたいと願い始める幸野家。それは、笑いと涙と感動に溢れた想像もつかない驚きのラストへと繋がっていくのでした。

2018年米アカデミー賞へ日本代表作品として選出!

2017年9月、2017年度第90回米アカデミー賞日本代表作品として映画『湯を沸かすほどの熱い愛』が出品されることが決定しました。英タイトルは『Her Love Boils Bathwater』。 本作がノミネートされれば、米アカデミー賞外国語映画賞部門でのノミネートは、2008年の映画『おくりびと』以来、実に9年ぶりの快挙となります。2010年の映画『告白』も、ノミネートに進む前の最終選考(ショートリスト)までは進みましたが、惜しくもノミネートはならず。 それ以降は、映画『舟を編む』『そこのみにて光輝く』『百円の恋』など名作揃いの日本代表作品たちでしたが、いずれも最終選考に進む前に落選しています。 映画『湯を沸かすほどの熱い愛』が代表に決まった理由としては、中野監督の国内外での評価と将来性、さらには『おくりびと』と同じく、“人の死”と“家族の絆”という万国共通のテーマ、日本の伝統文化を扱っていることなどが考えられます。 ちなみに、『おくりびと』にも銭湯のシーンがあり、同じ「銭湯」繋がりでノミネートされたら嬉しいですね。 外国語映画賞の出品国数は年々増加しており、2017年度は過去最多の92ヵ国が出品しています。2008年に『おくりびと』が受賞した年の出品国数は67ヵ国だったので、2017年度は例年にも増して熾烈な戦いが予想されます。

『湯を沸かすほどの熱い愛』主演キャストは宮沢りえ

主人公・幸野双葉

宮沢りえ
(C)2016「湯を沸かすほどの熱い愛」製作委員会

幸野家の大黒柱の幸野双葉。ステージ4の末期ガンで余命2ヵ月を宣告されてしまう双葉ですが、「絶対にやっておくべきこと」リストを決め、早速取り掛かります。 まず、行方不明の夫を連れ戻し、銭湯を再開。娘・安澄にいじめに対抗できるだけの精神力と勇気を身につけさせます。 次に、安澄の生みの親に安澄を会わせるべく、夫が連れてきてきた幼子・鮎子も連れて女3人で最後の旅に出ます。最後に、双葉自身が彼女を捨てた母親との再会を試みますが、母親の心無い言葉を聞き、断念。 しかし、双葉が繋いだ家族の絆は強固なものへと成長しており、入院先で弱った双葉を家族全員で元気づける様子を見た双葉は、「もっと生きたい、死にたくない。」と誰にも見られないように悔し涙を流します。

演じているのは宮沢りえ

本作の主人公・幸野双葉を演じているのは宮沢りえ。宮沢は年1本ペースで映画に出演しており、作品を大切に選んでいる印象があります。 商業映画デビューとなる中野の作品を選んだ理由は「脚本がとても素晴らしく、この役を他の女優さんがやったなら嫉妬するだろうな。」と思ったからだそうですが「商業映画を撮ったことがない中野監督の作品に自分が出ると知って周りを驚かせたい。」といういたずら心もあったそうです。 末期ガンで段々とやせ細っていく双葉を演じるにあたり、中野は、元々痩せ体型の宮沢に一旦太ってもらい、その後、頬がこけるほど痩せるという指示を出しました。それに対しに宮沢は「5日間ちょうだい。」と言い、見事にやってのけたそうです。 華奢な見た目からは想像もつかない姉御肌で気合いの入った演技派女優の実力を見せつけました。宮沢が今後、どんな役柄を選んでいくのか、ますます楽しみですね。

夫・浩一には実力派俳優のオダギリジョー

幸野一浩

ある日、突然フラリと出掛けたまま帰ってこなくなってしまった幸野家の父・幸野一浩。一見、チャランポランに見えますが、情が深く優しい性格。 それ故に昔付き合っていた女性の娘が自分の子どもだと押し付けられ、帰るに帰れなくなっていたのでした。幸野家に戻ってからは銭湯を再開。 双葉のために何ができるか一生懸命考えた末に、双葉のエジプトでピラミッドを見たいという願いを思ってもみない形で叶え、「あとは俺に任せろ。」と男気を見せます。

演じているのはオダギリジョー

幸野一浩を演じているのは、風来坊のダメンズを演じさせたら右に出る者はいないオダギリジョー。 本作は中野監督が「商業デビュー作なのでこれでもかとやり切りました。」と話したように、前半に細かな伏線が多く散りばめられており、後半でその全てを回収する見事な作りになっています。 オダギリも「こんなに練られた脚本は見たことがない。」と出演を即決したそうです。本作では憎めない三枚目をリアルに演じ切ったオダギリ。 2017年の出演映画『エルネスト』『南瓜とマヨネーズ』では、二枚目の格好良いオダギリが観られるので、見比べてみると面白いかも知れません。

安澄を好演した杉咲花が日本アカデミー賞でW受賞!

幸野安澄

幸野家の一人娘の幸野安澄(あずみ)。安澄は高校で深刻ないじめを受けており、不登校になりかけていたところを双葉に「逃げちゃダメ。」と諭されます。 母娘の壮絶な言い合いの末、勇気を出し高校へ行き、教師やいじめっ子に対し自分の意志を貫き通します。実は、安澄は双葉の実子ではなく、幼い頃に事情があり実母に捨てられているのですが、双葉の計らいにより、実母と再会を果たします。 安澄は様々な困難を短期間に乗り越え、いよいよ入院し衰弱した双葉を支えるまでに成長を果たします。

演じているのは杉咲花

幸野安澄を演じているのは、杉咲花。本作のクランクイン前に中野から「まず家族になってほしい。」という指示があり、宮沢と鮎子役の伊東蒼の3人で毎日メールと写真を送り合い、本当の親子のような関係性を作っていきました。 二人は今でも「お母ちゃん」「花」と呼び合い、相談する中なのだそうです。杉咲は2012年頃から頭角を現し出し、2015年に出演した映画『トイレのピエタ』で4つの新人賞を受賞。 本作でも第40回日本アカデミー賞をはじめとした多くの賞を受賞しました。2017年には映画『メアリと魔女の花』の主演声優に抜擢され、第22回釜山国際映画祭でフェイス・オブ・アジア賞を受賞するなど、大躍進中の若手実力派女優です。

個性豊かなキャストが『湯を沸かすほどの熱い愛』を盛り上げる!

本作には他にも、個性豊かで味のあるキャストが集結しました。 双葉たちが旅先で出会うヒッチハイカー・向井拓海を松坂桃李、一浩の元同棲相手の娘・片瀬鮎子を伊東蒼、安澄の実母・君江を篠原ゆき子、双葉が母親探しを依頼する探偵・滝本を駿河太郎が演じています。

第40回日本アカデミー賞で快挙を達成!

本作は、国内の11の賞レースで、作品賞や主演・助演女優賞を獲得しました。特に、2016年度第40回日本アカデミー賞では優秀作品賞を含む6部門にノミネート。 その中でも、宮沢が最優秀主演女優賞受賞、杉咲が新人俳優賞・最優秀助演女優賞をW受賞するという快挙を成し遂げています。劇中、港で双葉と安澄が激しく思いをぶつけ合うシーンでは、互いの顔が映っていない時でも、それぞれが迫真の演技を見せていたそう。 宮沢が「受賞出来たのは彼女の演技を目の当たりにした表情が認められた。花のおかげです。」と言えば、杉咲も「(宮沢が)カメラに映っていない時でもすごい熱量で受けとめてくださって、それに救われました。」と応え、互いを讃え合いました。

『湯を沸かすほどの熱い愛』のタイトルに納得!意表をつくラストに唸る【ネタバレあり】

『湯を沸かすほどの熱い愛』というタイトルだけ聞くと、物凄く激しい熱量を感じますが、タイトルの意味がわかるラストには、とても優しい心温まる結末が待っています。 幸野家を立て直した双葉は、家族の愛に見守られて亡くなります。色とりどりの花々に包まれた双葉の遺体は霊柩車で運ばれて行くはずが・・・・・・、滝本の協力を得て銭湯「幸の湯」に置かれたまま。 幸野家の面々は、双葉の遺体を燃やした火で銭湯の湯を沸かし、一裕、安澄、鮎子、君江で仲良く湯に浸かります。家族皆で「あったかいね。」と双葉の愛を噛みしめ、見上げた先の「幸の湯」の煙突には、双葉の大好きな赤色の煙がモクモクと上がっているのでした。 この全く予想がつかないのに、ストンと納得と驚きを得るラストと、すべてのシーンから湧き上がる愛と愛のぶつかり合いが、海外の人々にどう受け入れられるのか?こちらも全く予想がつかない分、楽しみです。

『湯を沸かすほどの熱い愛』の中野監督「6回は観て欲しい!」

本作について中野監督は「6回は観て欲しい。」と発言しています。本作に出てくる女性キャラクターは双葉も安澄も鮎子も滝本の一人娘も、皆、幼い頃に実母とそれぞれの事情で別れています。 他にも、前半の双葉と安澄の「好きな色」についての会話が後半の重要なキーワードになっていたり、食卓のカニや安澄の手話が後半に活きてきて、感動を誘います。 観るたびに新しい発見と感動がある緻密な映画『湯を沸かすほどの熱い愛』。日本から世界へ、最高の愛を込めて送り出しましょう!