佐倉杏子はアウトローで利己的な魔法少女?
『魔法少女まどか☆マギカ』に登場する魔法少女、佐倉杏子はポニーテールにまとめた赤い髪がトレードマークです。おかしやジャンクフードを食べながらゲーセンに入り浸っている彼女は、見滝原市の隣町・風見野からやってきました。 杏子は利己的な魔法少女として振る舞っています。その最たる例が得るもののない使い魔は狩らず、使い魔が餌とする人間を見殺しにして、魔力の供給源となるグリーフシードを落とす魔女になってから狩るという冷徹な行動理念です。 実力も高く、ヌンチャクがいくつも繋がったような多節棍としても使用できる槍と魔力で強化したスピードを活かした接近戦で魔法少女も魔女も薙ぎ払ってきました。 一見すると杏子は利己的でクレバー、アウトローな魔法少女に見えます。そんな杏子の本当の姿が描かれるのは、とある事実が発覚してからでした。本記事ではそんな佐倉杏子を徹底解説します! 物語の本質に関わる重大なネタバレを含んでおりますので、本編未視聴の方はご注意ください。
【ネタバレ注意】純粋なる杏子の願い、彼女の過去とは
「魔法少女は魔女の成れの果てである」という魔法少女の真実を知りふさぎ込む美樹さやかに、杏子は自分の過去を語り始めます。彼女は破門され信者が離れた教会の家の娘で、父のためにキュウべぇと契約しました。 契約の内容は父の話を聞いてほしいというもの。これが幻惑魔法となり、教会は魔法で集められた信者でごった返しました。しかし、このからくりが露見すると父親は杏子を魔女と断じ、絶望から杏子1人を残して一家心中してしまいます。 杏子は元から利己的だったわけではなく、1人で生き抜くために利己的にならざるを得なかったのです。グリーフシードを効率的に集めるために人を見殺しにするのも、魔法を使わなければ生活できないからでした。 いつも何か食べているのも、自ら望まない生き方によって生じるストレスを発散させるための行動です。自分の過去を語って以降、杏子は自分と同じく、他人のためにキュウべぇと契約したさやかを気にかけるようになります。
奇跡を願った少女の行末
杏子の励ましも虚しく、さやかは絶望の果てに「人魚の魔女」へと変化してしまいました。杏子は魔女となってしまったさやかを救うため、さやかの親友・まどかを連れて人魚の魔女の説得に挑みます。 しかし、人魚の魔女はまどかの言葉を全く聞き入れません。まどかをかばいながらの戦いで深手を負った杏子は、人魚の魔女がまどかを手に掛けようとした姿を見て、もはや人魚の魔女はさやかに戻れないと確信します。 遅まきながら杏子を追ってきたほむらにまどかを託した杏子は、最後の力を振り絞り、自爆魔法で人魚の魔女を仕留めます。「一緒にいてやる」と言いながらの自爆は、心中のようなせつなさも感じさせる劇的な最後でした。 テレビアニメのラストでは、まどかの願いによって新たに作られた世界で魔法少女として戦う姿が描かれました。しかし、新たな世界でも杏子はさやかと死に別れてしまい、後悔を露わにしています。
「叛逆の物語」で杏子の年齢が判明!
続編となる映画『魔法少女まどか☆マギカ [新編] 叛逆の物語』でも、引き続き魔法少女として登場しました。しかもさやかの家に居候し、見滝原中学校に通っているという、テレビとは大きく異なる環境に生きるキャラクターとなっています。 テレビ版では他のキャラクターと違い学校に通う描写がなかったため、杏子の年齢に関して諸説入り乱れる状況が続いていました。しかし本作では一貫して見滝原中学2年生として描かれているため、年齢は13歳から14歳というのが確定的になったのです。 物語中では謎を追うほむらのパートナーとして行動し、作中世界が現実ではないと知って現実での寂しさを吐露するなど全編に渡り活躍しています。 最終的にはテレビと違い命を落とすこともなく、同級生であり魔法少女仲間でもあるさやかと行動を共にする幸せそうな姿を見せ、ファンに深い感慨を与えました。
ファンからの通称は「あんこ」!かわいいキャラクターに込められた多面性
杏子は物語中盤で登場することもあり、宣伝等での露出が少ないキャラクターでしたが、名前を訓読みした「あんこ」の通称でファンに愛されているキャラクターです。人気の理由は、かわいいキャラクターに込められた多面性にあります。 他人を顧みない利己的な一面と、さやかを助けるために危険を顧みない情に厚い一面。ドライな性格と熱い心が同居する姿が、ファンの心をつかんで離しません。 多くのキャラクターと絡んだことも、多面性を描き出すのにプラスに作用しました。まどかとは人生の先輩と希望にすがる仲間として、ほむらとは利害の一致で共闘する相棒として手を組みます。 キャラクターとの関係性で特筆すべきは、やはり美樹さやかとの関係。当初は考えの違いによっていがみ合いますが、やがて杏子は破滅へと突き進むさやかを救うために奔走するという変化を見せます。 追えば追うほど魅力が増すキャラクター、それが佐倉杏子ではないでしょうか。
溢れ出る覚醒の資質!外伝作品に見る佐倉杏子
杏子は「まどか☆マギカ」シリーズの関連作品にも度々登場しています。そして、その度に新たな魅力を得ているのです。 放映直後に発売された『魔法少女おりこ☆マギカ』では、家族に先立たれた経験から、魔女に両親を食われた少女・千歳ゆまの面倒を見ることとなりました。乱暴ながら必要なことはきっちり世話し、教える姿が他人を放っておけない保護者的な一面として描かれています。 放映終了半年後に映像ソフト第五巻の特典として撮り下ろされたドラマCD「フェアウェル・ストーリー」では、巴マミの後輩という設定が加わりました。先輩の後ろをついていく後輩らしい姿から、一家離散を経て孤独な生き方を選ぶ変化の過程も必聴に値します。 杏子は様々な魅力に覚醒するポテンシャルを秘めたキャラクターなのです。
作中屈指の変身シーンバリエーションに注目!
魔法少女アニメにつきものなのが変身バンク。変身バンクとは普通の姿から魔法少女へ変身する際に挿入される映像のことで、「バンク」の言葉通り再使用を前提に丁寧な作画や手の込んだ表現をふんだんに用いて制作され、一種の様式美として愛される表現です。 「まどか☆マギカ」では映像の流用を極力避ける演出方針がとられ、原義的な意味での変身バンクは制作されませんでした。代わりに変身バンクを模した美麗な変身シーンが本編中で流れ、ファン注目のポイントになりました。 この変身シーンの数が魔法少女の中で一番多いのが杏子となっています。変身シーンは本編6話、本編9話、劇場総集編前編、後編、「叛逆の物語」の全部で5つです。 どれもバリエーションに富んでおり、必見のものばかりとなっています。
もしも杏子が魔女化したら?「武旦の魔女」
「まどか☆マギカ」の世界では、魔法少女はやがて魔女となる宿命です。杏子が魔女化するとどうなるのでしょうか? PlayStation Portable用ソフト『魔法少女まどか☆マギカ ポータブル』ではifシナリオとして、アニメ同様原作イヌカレーが制作した杏子の魔女が登場します。それが「武旦の魔女」です。 その性質は自棄で、霧の中を永遠にさまよい続ける魔女です。自身がまたがっている馬が何だったのかも思い出せません。 自棄は杏子の捨鉢な振る舞いを表し、霧の中をさまよう姿はさやかを救うために暗中模索した姿の比喩だと言われています。何だったのか思い出せない馬は、彼女の家族やかつての師匠であったマミや、ついに救うことのできなかったさやかを象徴しているのではないかと言われています。
佐倉杏子を演じた声優はYouTuberとしても活躍する野中藍!
今週分のラリルれを見終わったあとは、秋のふつおた祭りに参加しよう!「スポーツの秋」「芸術の秋」「読書の秋」どんな秋にしたいですか?
— 野中藍 ラリルれ、エブリバディ。 (@rarirurestn) October 13, 2017
rarirureev@gmail.comで、アナタのメールお待ちしてます。原稿締め切りの都合で、月曜日の朝までに送ってね♪ pic.twitter.com/F6Cvz22f6V
杏子の声優は野中藍。代表作に『宇宙のステルヴィア』(2003年)片瀬志麻役、『魔法先生ネギま!』(2004)近衛木乃香役などがあります。 柔和で朗らかな声質が特徴とされ、杏子役に起用された理由もいい子が悪党らしく振る舞っている雰囲気を出すためのものです。また、歌がうまくないと自称していることから、音痴という設定のあるキャラクターを担当することもあります。 2015年には自身の冠ラジオの後継番組として『野中藍 ラリルれ、エブリバディ。』がYouTube上で配信開始されました。同番組の初回動画でYouTuber宣言を行ったことから、YouTuber声優としても注目を集めています。 ヒールとしての一面とヒーローとしての一面、冷血漢としての一面と人情家としての一面。様々な魅力を持つ佐倉杏子の魅力にぜひ触れてみてください。