(C)2017「全員死刑」製作委員会

映画『全員死刑』が最高過ぎて頭がおかしくなりそう【southpumpkin】

2017年11月21日更新

映画『全員死刑』を鑑賞し、感化され不良魂に火をつけたライターのsouthpumpkin。発狂の淵に立たされた不良ライターは無事レビューを終えることができるのか。

映画『全員死刑』のレビュー記事を読む前に

全員死刑
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2017年公開の映画『全員死刑』のレビュー記事です。悪人だらけの映画に燃え上がったライターのsouthpumpkinは直後に小林勇貴監督の著書『実録・不良映画術』を読破。見事エセ不良に生まれ変わったのです。この記事は文体も大きく影響を受けてしまったために、一部読みにくい点や気分を害される表現等ございますがご容赦ください。 記事では映画の内容にも触れていますので、まだ映画をご覧になっていない方はお気をつけください。

こんな記事読んでる暇あるんなら『全員死刑』観ときゃいいんだよボケ

この映画はサイコーだ。観ろ。以上。 で、終わっていいっすか?とciatr編集部に聞いたら、ニコニコしながら包丁振り回して発狂されたので色々書いていこうと思います。編集部感謝しろよコラ。 資産家一家を全員殺したヤクザの一家が全員死刑になった実在の事件に迫った『我が一家全員死刑』を原作とする本作。この映画は加害者となるヤクザ家族、特に間宮祥太朗演じる次男を中心に展開していく。映画は血と暴力で埋め尽くされバイオレンス・エンターテイメントとして超面白いんだけど、観終わった後には少し切ない気分にもなる。その辺りの話をする。

殺していい人間なんていないんだけど

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この映画がヤバいのは、被害者たちを気味悪く描いて「こいつら殺されて当然かもな」なんて錯覚させてしまうところ。予告編にもあるYouTuberの男の首を絞めてしまうシーンはその代表例だ。大量のカレーをビニールプールに溜めてその中に浸かるYouTuber。こいつが超ウザいので、思わず「ぶっ殺(さら)え!」と主人公を応援してしまう。 多分だけどこのシーンは三池崇史『DEAD OR ALIVE 犯罪者』のオマージュだと思うな。この映画だとカレーじゃなくてアレなんだけど(笑)。

加害者家族から溢れ出すいい家族感

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映画を徹底的に加害者目線として描いたことによって、加害者家族が極悪非道であることを忘れてしまう瞬間がある。アットホームな雰囲気が溢れ出しているのだ。 人を殺した後に家族みんなでコンビニに行き「何かいる?」「あいつが吸ってたタバコなんだっけ」など家族をお互いに思いやる気持ちを感じる名シーンもある。しかし次シーンの終わりではコンビニの店員に不良な絡みをし、こいつらがやっぱり悪い奴らなことを示す。俺はこの辺りから、どうしようもないアホに肩入れしていることを自覚した。 同じく加害者家族を描いた映画として『マーダーライドショー2 デビルズ・リジェクト』がある。この映画にも人を殺すことをなんとも思わない家族がでてくる。破滅に向かって突っ込んでいくラストシーンを涙なしには観られない映画だ。『全員死刑』の一家も狂気じみたラストに突っ込んでいく。主人公である次男を除いて。

主人公が見たもの

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この家族における次男は鉄砲玉のような存在。対して父、母、長男は実行に移す時は常に日和る。実際に手を下す役割を次男に任せ、それに応えるように結果を残す次男。そうして次男には“何か”が見えてしまうのだ。 監督の小林勇貴は自身の著書「実録・不良映画術」では以下のように述べている。 >「変なものが話しかけてくる」というのが_(中略)、ずっと続けていく描写のひとつとなりました_。 主人公が見た「変なもの」は主人公が常時やっているクスリのせいなのか、それとも罪を重ねたことによるオカルト的な何かなのか。映画の中ではボンヤリしているが、その両方なんじゃねえかな。

反社会的社会への反抗

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主人公が拳銃を手にするシーン。少し前のシーンではコメディで利用されていたアイテムが、主人公のトリガとなる。主人公に「変なもの」が乗り移ったようになるが、俺にはむしろ「変なもの」によって主人公が解放された、という風に見える。 社会に反抗した青年たちは自由を求めて不良となる。好き放題できるのかと思えば、そうではない。不良には不良の社会があり、それはもしかすると昼間の社会よりも狂っている。上の人に呼ばれたら何が何でも行く。先輩に頼まれたらどんな手段でもやる。組織のために。 これは深作欣二らが暴力団にカメラを向け、東映で撮った映画たちの多くが採用したテーマだ。スケールは違えど、そうした反社会的社会は今なお青年たちによって引き継がれている。

解放された主人公の切なさ

『全員死刑』の主人公は家族という組織の中で常に使われる側の人間だった。そんな主人公が反社会的社会から解放され、初めて牙を向いたのが拳銃のシーンなんじゃねえかな?最初から反社会的社会に反抗したキャラクターといえば『狂い咲きサンダーロード』の仁さんに他ならない。俺はあの時の主人公に仁さんの姿を重ねて目頭が熱くなった。 ラストシーン、全てを悟ったかのようにタバコを吸う主人公。彼もまた他の奴らと同じように死刑なのである。本当の反抗に辿り着いたのにもったいねえよなあ。俺が冒頭で書いた少し切ない気分っていうのはこういうこと。

ごちゃごちゃ考えなくても『全員死刑』は最高

監督のやりたいこと全部盛り込んだんじゃねえかなと思うほど、映画は創意工夫に溢れて一瞬で終わる。上みたいなクソみたいな御託を並べなくても純粋に色々かっこいい。キーアイテムである車が夜の工業地帯を駆けるシーンはマジでヤバい。意表を突いた音楽を使ってやろう、とする心意気はやはり東映のヤクザ映画を思わせる。「全部チャラにしちゃえ〜〜〜!」はたまらん。 映画が駆け抜けて、最後にほんのり切なさを残して終わる。最高だ。観なきゃ殺(さら)うぞコラ。