2019年8月30日更新

【ネタバレ】「ワンハリ」 徹底解説!タランティーノ新作を楽しむために知っておきたい時代背景や隠されたトリビアも紹介

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『ワンス・アポン・ア・タイム・イン・ハリウッド』

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『ワンス・アポン・ア・タイム・イン・ハリウッド』解説!「ワンハリ」を鑑賞する上で押さえておきたい時代背景も

2009年『イングロリアス・バスターズ』、2012年『ジャンゴ 繋がれざる者』、2015年『ヘイトフル・エイト』と直近で約3年置きに新作を発表してきたクエンティン・タランティーノ監督。周期的にそろそろ新作が発表されるのでは?という予想どおり、最新作『ワンス・アポン・ア・タイム・イン・ハリウッド』が2019年8月30日に日本公開されました。 今回は本作の気になるあらすじや豪華キャスト、解説、知れば作品をより楽しめるトリビアなど盛りだくさんの内容でお届けします。 ※この記事には、作品のネタバレ情報を含んでいます。未鑑賞の方はご注意ください!

「ワンハリ」のあらすじ

ブラッド・ピット『ワンス・アポン・ア・タイム・イン・ハリウッド』

舞台は1969年のロサンゼルス、ハリウッド。かつてのテレビの西部劇スターだったリック・ダルトンと長年彼のスタントを務めてきたクリフ・ブースは、映画界ではなかなか評価されず焦っていました。なんとかスターに返り咲こうと奮闘するリックでしたが、事態は思ってもいなかった方向に進んで行きます。 一方、リックの隣の家に引っ越してきたのは、人気女優のシャロン・テートと映画監督ロマン・ポランスキーの夫婦。彼らは裕福で贅沢な生活を謳歌していましたが……。

ディカプリオ、ブラピなど「ワンハリ」の豪華主要キャストを一挙に紹介!

レオナルド・ディカプリオ/リック・ダルトン

レオナルド・ディカプリオ
WENN.com

主人公である元西部劇スター、リック・ダルトンを演じるのはレオナルド・ディカプリオ。2012年のタランティーノ監督作『ジャンゴ 繋がれざる者』で悪役・カルヴィン・キャンディを熱演し、新境地を開いたディカプリオは、今回タランティーノとは二度目のタッグとなります。 ディカプリオが演じるダルトンは、1960年代から2018年に死去するまで活躍しつづけたバート・レイノルズにインスパイアされたキャラクターだとか。レイノルズは『さすらいのガンマン』(1966)に主演するなどタフガイのイメージで大人気を博しましたが、一時はプライベートのスキャンダルにより人気が低迷。その後、1997年の『ブギーナイツ』でアカデミー賞助演男優賞にノミネートされ、復活を果たした俳優です。

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ブラッド・ピット/クリフ・ブース

ブラッド・ピット
WENN.com

リックの長年の相棒でスタントマンであるクリフ・ブースを演じるのはブラッド・ピット。ディカプリオとは今回初共演となります。2009年の『イングロリアス・バスターズ』でアルド・レイン中尉を演じ、初めてタランティーノ監督とともに仕事をしました。ピットもディカプリオと同じく、今回二度目のタランティーノ映画出演です。 ブラッド・ピットが演じるクリフは長年バート・レイノルズのスタントマンを務めたハル・ニーダムをモデルにしています。 二大スターの初共演となる本作は、そのコンビネーションにも注目です。

マーゴット・ロビー/シャロン・テート

マーゴット・ロビー
Jennifer Graylock/Sipa USA/Newscom/Zeta Image

本作でシャロン・テート役を演じるのは、『スーサイド・スクワッド』のハーレイ・クイン役や『アイ,トーニャ 史上最大のスキャンダル』で知られるマーゴット・ロビーです。 タランティーノ作品初参加で往年の美人女優を演じるロビー。そのキュートさ、美しさに注目です。

アル・パチーノ/マーヴィン・シュワーツ

アル・パチーノ
WENN.com

本作の豪華なキャストのなかでも特に注目されるのが、ディカプリオ演じるリック・ダルトンの代理人・マーヴィン・シュワーツ役のアル・パチーノです。シュワーツは、リックに方向転換を促すことになります。 タランティーノ監督とともに仕事をするのは初めてとなるパチーノ。個性派監督のもとでの名演に期待が高まります。

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ブルース・リー、ポランスキー etc その他キャストを紹介

ダミアン・へりマン
©️FayesVision/WENN.com/zetaimage

カルト集団「マンソン・ファミリー」を率いて、数々の凶悪事件を起こした実在のカルト指導者チャールズ・マンソンを演じるのは、映画『ローン・レンジャー』(2013)などへの出演で知られるデイモン・ヘリマン(写真)。ヘリマンはNetflixオリジナルシリーズ『マインドハンター』のシーズン2でも、マンソンを演じています。 シャロン・テートの夫である映画監督ロマン・ポランスキー役には、本人と同じくポーランド出身の俳優ラファウ・ザヴィエルハが起用されました。ハリウッド映画初出演となるザヴィルは、第二のクリストフ・ヴァルツとなれるのでしょうか。

ダミアン・ルイス
©Sthanlee Mirador/Sipa USA/Newscom/Zeta Image

『大脱走』や『ブリット』、『パピヨン』で知られる往年のアクションスター、スティーブ・マックイーンを演じるのは、ダミアン・ルイス(写真)。テレビシリーズ『バンド・オブ・ブラザース』や『HOMELAND』などで知られ、2018年には『オーシャンズ8』にも出演したイギリスの俳優です。 『燃えよドラゴン』などで知られる伝説的アクションスター、ブルース・リーを演じるのは、アメリカジョージア州出身の俳優マイク・モーです。彼はテレビシリーズ『Empire 成功の代償』や、Netflixオリジナルシリーズ『インヒューマンズ』など、幅広い作品で活躍しています。

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高評価続出!カンヌでスタンディング・オベーションも

『ワンス・アポン・ア・タイム・イン・ハリウッド』カンヌ
©️Dave Bedrosian/Future Image/WENN.com/zetaimage

2019年5月21日(フランス現地時間)第72回カンヌ国際映画祭にて、本作のレッドカーペットイベントと公式上映が行われました。 タランティーノ監督をはじめ、ディカプリオやピット、ロビーらがレッドカーペットに登場するとフラッシュの嵐が。タランティーノは「映画はハリウッドの変化を表していて、劇中ではその黄金時代のことが語られている」と作品を説明。キャスト陣は本作に出演できたことに改めて感謝を述べ、その出来栄えに自信をのぞかせました。 公式上映後には、客席からスタンディング・オベーションが沸き起こり拍手は6分間もつづいたとか。その高評価は批評面でも顕著で、米大手映画レビューサイトRotten Tomatoesでは批評家からの評価で80%フレッシュを獲得。また、インターネット・ムービー・データベース(IMDb)でも星10個中8.1個と高評価を獲得しています。

「ワンハリ」を理解するために押さえておきたい時代背景

マンソン・ファミリーとベトナム戦争

本作の舞台は、映画産業華やかなりし1969年。時代背景として忘れてはいけないのが、ベトナム戦争です。 アメリカ国内でこの戦争に関する賛否は真っ二つに分かれており、反戦を訴える若者たち「ヒッピー」の活動が盛んになりました。平和主義で理想主義を掲げたヒッピーは自給自足の生活をしており、一般の人たちからは「働いていない」と白い目で見られていたようです。 なかにはドラッグを常用しているグループもあり、さらに疎んじられる存在に。 シャロン・テート殺人事件の犯人であるマンソン・ファミリーも、もともとはヒッピーのグループです。リーダーのチャールズ・マンソンのもとでカルト化し、本作のモチーフになっているシャロン・テート殺害事件のほかにも、数々の残忍な事件を起こしました。

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マカロニウェスタンとは?

1960年代後半から70年代前半にかけて数多く制作されたマカロニウェスタン。イタリアで制作された西部劇であるこのジャンルは、英語では「スパゲッティウェスタン」と呼ぶのが一般的です。 イタリアの映画監督セルジオ・コルブッチが初めて制作してから急速に広がったこれらの作品群は、アメリカのものとは大きく違っていました。アメリカでは善人が主人公で清々しいストーリーのものがメインでしたが、マカロニウェスタンの主人公は暴力的で、ほかの登場人物も基本的にアウトローです。 その後、ハリウッドのプロダクションが制作費を安く抑えるため、駆け出しや落ち目の俳優を起用して、イタリアで撮影を行うスタイルも増えました。そんなマカロニウェスタンに出演していた俳優のなかには、クリント・イーストウッドやバート・レイノルズなど、のちにハリウッドの大物になる人物もいました。

テレビ俳優と映画俳優

アメリカのショービズ界の特徴のひとつに、テレビ俳優と映画俳優が明確に分かれているというものがあります。どれだけテレビで成功しても、映画で主演を張ることは難しいのです。 本作のリックもテレビ業界では大スターでしたが、映画俳優としてのキャリアを築くのに苦労します。

「ワンハリ」徹底解説 実話と寓話の境界とは【ネタバレ注意】

ハリウッド俳優たちの盛衰

レオナルド・ディカプリオ『ワンス・アポン・ア・タイム・イン・ハリウッド』

本作のメインストーリーであるリック(ディカプリオ)とクリフ(ピット)は、実在の人物をモデルにしているとはいえ、架空のキャラクターで彼らの物語もまたフィクションです。彼らはハリウッドで働く俳優の栄光と転落を経験します。

しかし、本作で描かれる“元スター”リックの悲嘆にはリアリティがあります。一時は人々からちやほやされていましたが、いまやテレビシリーズで一話限りのゲスト出演の仕事しかなく、しかも悪役ばかり。以前の当たり役のイメージから抜けられず、若い俳優の人気を上げるために利用される存在になってしまいました。 そんな俳優の姿に、私たちも見覚えがあると思います。 一方でマーゴット・ロビー演じるシャロン・テートは、仕事も私生活も絶好調。これからさらに知名度が上がっていくことが約束された若手女優です。彼女はかつてリックたちが経験したであろう贅沢な生活を送っていますが、自分の成功や人気に執着する気持ちはリックと同じであることが映画館のシーンからわかります。

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“相棒”との格差

レオナルド・ディカプリオ、ブラッド・ピット『ワンス・アポン・ア・タイム・イン・ハリウッド』

俳優のリックと彼のスタントマンであるクリフは、相棒であり親友です。リックのキャリアはクリフなしには成立しなかったはずですが、彼らの間には明確な格差がありました。

儲かっていたときに一等地に大きな家を買ったリックとは対象的に、クリフはトレーラー暮らし。車も古くてボロボロです。 ここから、俳優とスタントマンでギャラが大きく違ったことが想像できます。俳優はドラマや映画の顔となれば紛れもないスターですが、彼ら以上に危険な仕事をこなしているスタントマンにはそれほどの金額は支払われていなかったのではないでしょうか。 それでもクリフは文句ひとつ言わず、落ち目のリックについていきます。リックは横柄な態度を取ることもありますが、自分のスタントができるのはクリフしかいないと信頼していました。

ラストにはタランティーノの願望が詰まっている?

マーゴット・ロビー『ワンス・アポン・ア・タイム・イン・ハリウッド』

本作でもっとも実際の事件と違うのはクライマックス。マンソン・ファミリーのメンバーたちが押し入った、かつて「テリー」という人物が住んでいた家は、リックの家だということです。 映画序盤で、マンソンはターゲットであるテリーがもうそこには住んでいないことを知りましたが、それでもなぜか「今いる住人を皆殺しにしろ」と4人に命令しました。そのうちひとりは、怖気づいて家に踏み込む前に逃げてしまい、残った3人で命令を実行することに。 しかしリック宅に押し入った彼らは、そこにいたクリフによって返り討ちにされてしまいます。本作では、シャロン・テートは死ななかったのです。 このシャロン・テート殺人事件はハリウッドの黄金期を終わらせたといわれており、この結末はタランティーノの願望なのかもしれません。 そして事件の収拾がついたあと、リックはテート宅に招かれます。彼女と親しくなることは、リックにとっては起死回生のチャンス。しかし、エンドロール中にはリックがタバコのCMを撮影するシーンがあり、彼がスターに返り咲いたかはわかりません。

『ワンス・アポン・ア・タイム・イン・ハリウッド』のトリビア

オープニングからふたりの友情が感じられる

本作は、レオナルド・ディカプリオとブラッド・ピットの共演が話題になりました。また、ふたりが親友を演じるということも、注目を集めた要因かもしれません。

本作のオープニングクレジットでは、車の運転席と助手席に座っているリック(ディカプリオ)とクリフ(ピット)の後ろ姿が映されます。しかし、よく見てみるとディカプリオの背中にピットの名前が、ピットの背中にディカプリオの名前が映し出されるのです。 2人がまるで、一心同体であるような効果を狙った演出です。

タランティーノ作品常連俳優や実際のシャロン・テートを知る人物がカメオ出演

タランティーノは自身の作品で同じ俳優を何度も起用することで知られていますが、本作も例外ではありません。

かつてリックが出演し、大人気を博したテレビ西部劇『賞金稼ぎの掟』でリックの馬を引いている人物に見覚えがあると思った人もいるのではないでしょうか。彼は『レザボア・ドッグス』(1992)でMr. ブロンド役を務めたマイケル・マドセン。彼はこの他にも「キル・ビル」シリーズ、『ヘイトフル・エイト』(2015)などに出演しています。

実在の人物にちなんだサウンドトラック

本作には、シャロン・テート以外にも実在の人物がもとになったキャラクターが多く登場しますが、彼らにちなんだ楽曲もサウンドトラックに使われています。

マンソン・ファミリーの少女たちは、実際にチャールズ・マンソンが作った『I'll Never Say Never To Always』を歌っています。 また、プレイボーイ・マンションでのパーティのシーンでは、当時一世を風靡したママス&パパスの楽曲が使われており、メンバーのミシェル・フィリップス役でレベッカ・リッテンハウス、ママ・キャス役でレイチェル・レッドリーフが出演しています。

本作にはマイク・モー演じるブルース・リーも登場しますが、彼にちなんだ楽曲がエンドロールで流れます。

本作のブルース・リーは、DCコミックを原作としたテレビシリーズ『グリーン・ホーネット』の撮影のためスタジオにいました。リーはヒーロー、グリーン・ホーネットのサイドキックであるカトー役で当時人気を獲得していたのです。 エンドロールでは、テレビシリーズ『怪鳥人間バットマン』のテーマ曲が流れます。リーは、同役で「バットマン」にも出演していたからです。

タランティーノの過去作からあれもこれも……!

エンドロール中にリックはタバコのCMを撮影していましたが、その銘柄は「レッド・アップル」でした。『ハルプ・フィクション』(1994)、「キル・ビル」シリーズ、そして『ヘイトフル・エイト』(2015)で登場しています。 また、リックとクリフが車で走っているシーンでは、『パルプ・フィクション』に登場した架空のハンバーガー店「カフナ・バーガー」の看板が写っています。

期待の新作『ワンス・アポン・ア・タイム・イン・ハリウッド』は2019年8月30日公開!

レオナルド・ディカプリオ『ワンス・アポン・ア・タイム・イン・ハリウッド』

実際の事件に絡めながら、ハリウッドの黄金期を描く本作。レオナルド・ディカプリオとブラッド・ピットという2大スターの初共演でも注目を集めています。 タランティーノは本作についてカンヌでの会見で、旧知のスタッフに脚本を読んでもらったときのことを明かしました。「これまでの8本がすべて詰まったような9本目だ、と言われた。自分でもまさにそうだと思う」と語っており、ファンの期待は高まるばかり。 豪華キャスト出演で送るタランティーノからのLA、ハリウッドに対するラブレター『ワンス・アポン・ア・タイム・イン・ハリウッド』は2019年8月30日全国ロードショーです!