2018年1月13日更新

大河な異世界冒険ファンタジー『十二国記』の壮大な物語を徹底解説!【あらすじ・キャラ】

数ある異世界冒険ファンタジーアニメの中でも、とくに骨太な作品として息の長い人気を博しているのが『十二国記』。小野不由美の原作が持つ魅力を存分に引き出したその傑作ぶりを、改めて検証してみましょう

アニメ『十二国記』、傑作大河ファンタジーのあらすじ・キャラクターを紹介

アニメ『十二国記』は、2002年から2003年にかけてNHK・BS2で放送されました。ホラー小説の名手、小野不由美が生んだ壮大な世界観を全45話で見事にアニメ化、まるで大河ドラマのような骨太な作品に仕上げられています。 原作となったのは、1991年から始まった小説のうち1994年までに発行された書籍6冊、4つの物語でした。主人公は、中嶋陽子という普通の女子高校生。彼女が突然放り込まれた異世界で苦闘しながら迷い学び、やがて一国の王として成長していく姿がドラマティックに描かれています。 1996年以降は2つの長編と短編5編が発表され、書き下ろし新作の発行も予定されています。アニメにも今後「続編」を期待したいところですが、今回はあらためてアニメ版『十二国記』の世界観について、キャラクターとストーリーの両面からじっくりご紹介しましょう。

物語の舞台はすぐそばにある異世界、モチーフは古代中国にあり

『十二国記』の舞台は、現実世界に次元を超えて隣接した異世界。紀元前700年後半から220年頃かけて、春秋戦国時代の中国をモチーフにしています。「虚海」と呼ばれる海に囲まれた地続きの8つの国と海を隔てた4つの島国が、まるで幾何学模様のように上下左右対称に並んだ世界です。 十二の国には十二人の王が存在します。王を選ぶのは天の意思。天帝(神)が任命した霊獣「麒麟」が「王気」と呼ばれるオーラを感じ取り、王を選ぶのです。王が優れていれば国は栄えますが、そうでない場合や王が不在の間は、国は天変地異や妖魔に襲われて土地は痩せ人心は荒廃してしまいます。 『十二国記』では、ヒロイン・陽子の物語とともに、国々で起こるさまざまな争乱や王たちの栄枯盛衰、そしてそこに生きる人々の暮らしなどが壮大なスケールで描かれていきます。 ここからはアニメ化された4つのエピソード、「月の影 影の海」「風の海 迷宮の岸」「風の万里 黎明の空」「東の海神 西の滄海」を、放送順に詳しく解説したいと思います。

景王・陽子、誕生の物語

「月の影 影の海」(第1話〜第14話)のあらすじ

中嶋陽子は、本音を隠し人と深く関わることを避け続けてきた、ごく普通の女子高校生。ある日、彼女のもとに奇妙な白髪の青年、景麒が現れます。彼と出会った直後、妖魔に襲われた陽子と杉本、浅野は半ば連れ去られるように異世界にやってきます。しかしここでも再び襲われたあげくに景麒とはぐれ、彼らだけが見知らぬ国に取り残されることに。 海の向こうの別世界からやってきた彼らは異世界の住人たちから「海客」と呼ばれ、蔑まれたり疎まれたり時には身売りされてしまいそうになったり。さまざまな困難と危機が、彼らにふりかかります。 杉本や浅野ともはぐれて激しく人間不信に陥った陽子は、妖魔との戦いで傷つき倒れます。それを救ったのが半獣の青年、楽俊と母親でした。楽俊は陽子に、異世界のさまざまな不思議を教えてくれます。たとえば赤子が「卵果」という木の実として生まれ、それを選んだ親に育てられることなど。 やがて陽子は楽俊とともに、海客にも門戸を開いている国「雁」へと旅立ちます。旅の途中、彼や旅芸人の一座の優しさに触れたことで、人を信じる心を取り戻す陽子。追っ手との戦いを通じて心の強さも身につけた彼女の前に、雁国の王と麒麟、延王・尚隆と延麒・六太が現れて驚くべき事実を告げます。 実は陽子が狙われ続けていたのは、彼女が慶国の新しい国王になる存在だったため。しかし陽子は王になる気概などなく元の世界に戻りたいと願います。それでも慶に生きる民を守るために、景王の座に就くことを決意。延王の助けを得て襲撃の首魁だった隣国の国王と対決し、慶国を牛耳っていた偽王の勢力を一掃します。 一度は対立しながらも再び仲間となった杉本は、ひとり現実世界へと戻ります。第十三話「終章」の「これが中嶋陽子の物語の始まりだった」という杉本のモノローグが、実はこの「月の影 影の海」のエピソードが壮大な叙事詩の幕開けにすぎないことを告げているのでした。

「月の影 影の海」(第1話〜第14話)の主な登場人物

中嶋陽子(声:久川綾)

現実世界に居場所がないと感じていた女子高校生。真っ赤な髪を除けばおとなしい印象の普通の少女です。突然現れた景麒と名乗る青年に連れられて異世界へ。実はもともと彼女は、異世界で生命を宿した「胎果」と呼ばれる存在でした。本来の顔立ちを取り戻すにつれて、勇猛果敢な一面が表れ始めます。

杉本優香(声:石津彩)

ファンタジーの世界に憧れ、異世界にこそ自分の居場所があると信じている陽子のクラスメイト。恋人の同級生、浅野郁也ともに「十二国」の世界を訪れ苦難の旅を続けますが、やがて自分こそが選ばれた存在だと思い込み、陽子を妬みつけ狙うようになります。利己的で好戦的なところは、陽子よりも異世界向きかもしれません。

景麒(声:子安武人)

王を選ぶために生まれた霊獣「麒麟」のひとり。普段は容姿端麗なイケメンですが、本来は角を持つ馬に似た姿をしています。十二の国の王にはそれぞれ十二人の麒麟がおり、使令と呼ばれる妖魔たちを使役するほか空を飛ぶ力も能力も持っています。慶の国の新たな王として陽子を連れてきたものの、自らは隣国の王に囚われてしまいます。

楽俊(声:鈴村健一)

異世界には普通の人間だけでなく「半獣」と呼ばれる人と獣、両方の姿を持つ人々が暮らしています。行き倒れていた陽子を助けた青年、楽俊は普段はネズミの姿。しかし学問好きで頭脳明晰、半獣を差別する巧国で生まれましたがより深く学びたいと願っています。人間不信になっていた陽子が変わるきっかけを作り、やがて親友として欠けがえのない存在になります。

延王・尚隆(声:相沢正輝)

雁国で陽子や楽俊たちを助けた王様。彼もまた胎果で、戦国時代の現実世界では瀬戸内の小国の首領でした。国が滅びた時に延麒・六太に天啓を見出され、異世界に渡ってから500年もの間、平和な治世を続けています。豪胆かつ優しさを併せ持ち、剣技にも秀でた強い王です。

延麒・六太(声:山口勝平)

やはり胎果で、現実世界では貧しい庶民の子供として生まれました。戦国時代に餓死寸前だったところを女怪に見いだされ、麒麟として蓬山で暮らすことに。十代前半の姿で非常に活動的。市井に出るだけでなく現実世界にもたびたび訪れています。ぶっきらぼうなようでいて実は思いやりのある少年です。

幼き霊獣の運命は?

「風の海 迷宮の岸」(第15話〜第21話)のあらすじ

陽子の時代よりも以前、慶ではなく戴国の物語。幼い麒麟が成長する物語が描かれています。 物語の始まりは現実世界。雪の降る夜、祖母のせっかんを受けて庭に出されていた10歳の少年・高里要が忽然と姿を消しました。その1年後、全裸で突然戻ってきた少年の周囲では不気味な出来事が起こり、生徒や教師たちも彼のことを気味悪く思っています。 実は高里は神隠しに合っている間、麒麟のひとり「泰麒」として異世界の霊山・蓬山で女仙たちによって大切に育てられていたのです。胎果として過ごしてきたために獣の姿になれないことを気に病みながらも、同じ麒麟である景麒や六太との交流に癒されます。 王としての天啓がどんなものなのかわからない泰麒は、強い覇気を持つ将軍・驍宗に魅了されます。そして彼と離れたくないがために、王として選んでしまいます。王気が感じられない者を王に選んでしまった過ちを悩み続けていましたが、延王の尽力によってその選択が間違いではなかったことを知ります。 ほどなくして驍宗は即位し、戴国に平穏が訪れたハズでした。しかし即位から1年も経たないうちに驍宗も泰麒も姿を消してしまいます。気にかけていた延麒は彼らが生きていることを信じて探し続けます。その一方で現実世界の高里は、彼のもとを訪れた杉本優香との会話の中で、自分が大切なものを忘れていることを認めるのでした。 本エピソードはもともと「十二国」の世界観が生まれるきっかけとなった最初の物語『魔性の子』につながるエピソードです。ここで原作者の小野不由美が構想していたさまざまな設定を知った編集者が、その世界を舞台としたファンタジーを書くことを勧めたところから『十二国記』のシリーズ化が始まったのだそうです。

「風の海 迷宮の岸」(第15話〜第21話)の主な登場人物

高里要・泰麒(声:岡野浩介・釘宮理恵)

10歳から11歳まで神隠しに会った、寡黙な高校生。一切の記憶をなくしていますが、不思議な世界の絵画を描き続けています。実は彼も陽子と同じ胎果。しかも戴王を選ぶ麒麟「泰麒」としての宿命を背負っていたのでした。従属する女怪に連れられて生まれ故郷の蓬山に戻り、大切に育てられていました。

驍宗・泰王(声:藤原啓治)

泰麒が出会った、戴国禁軍(国王直属部隊)の将軍。穏やかな人柄と戦士としての激しさを兼ね備え、人望も厚い人物です。泰麒は当初、そのオーラに恐れを抱いていましたが、やがて彼を国王として選ぶことになります。

少女達の熱き邂逅

「風の万里 黎明の空」(第23話〜第39話)のあらすじ

紆余曲折を経て慶国の王となった陽子でしたが、政事の差配はもちろん官吏たちとの関係もうまくいきません。不甲斐なさに迷い苦しむ中で、国情を知るために身分を隠して庶民の生活する街へと下ることを決心します。 景麒が勧める謎めいた老人、遠甫のもとに身を寄せる陽子。その頃、仙籍を手に入れながらも執拗ないじめにあっていた鈴は、不運な身の上を嘆き続けていました。そして祥瓊もまた両親を殺害され屈辱的な日々を送っているのでした。 鈴と祥瓊はそれぞれの理由から景王に会うために、慶国を目指す旅に出発。鈴は旅先で出会った子供に心を開いていきます。しかし少年は街の権力者が乗る馬車に、無惨にも轢き殺されてしまいました。一方の祥瓊は道中、偶然出会った半獣の青年・楽俊にさまざまなことを学び、自らの心の狭さを省みます。 ふたりはやがて圧政を加える権力者たちへの反乱軍に加わり、運命的に出会います。さらに、そこにやってきたのが陽子。彼女もまた圧政の噂を知り、密かにその実態を調べていたのでした。身を寄せていた里家が権力者の一味に襲われて仲の良かった少女が殺され、老人がさらわれてしまったことから、陽子も身分を隠したまま、反乱軍に力を貸すことを決意します。 ついに始まった反乱の中で次第に追い詰められていく陽子たち。やがて3人の少女は本音をぶつけ合い、話し合える仲間になっていきます。陽子が王としての素性を明かしてもなお、その絆は固く結ばれたまま。反乱軍の命運が尽きようとしていたその時、ついに陽子の怒りが爆発します。 仲間たちを助け王としての威厳を取り戻した陽子は、この乱を通してさまざまな事実を学びました。そして過ちを犯した者たちを捕らえ罰し、正しい人材を適切な部署に配することを始めます。自らの目指す国のありようを見出した景王はふたりの親友を得て、新たな決意のもと慶国の民のために尽力することを誓うのでした。

「風の万里 黎明の空」(第23話〜第39話)の主な登場人物

景王・陽子(声:久川綾)

胎果として苦難の道を経て景王に即位したものの、自らの無知と決断力のなさに悩む日々を送るヒロイン。もっとも信頼がおけるハズの景麒との関係もギクシャクしています。自分の目で民衆の生活を見るために遠甫という謎めいた老人のもとに身を寄せますが、やがて暴政に苦しむ民衆の暴動に巻き込まれることになります。

大木鈴(声:若林直美)

海客の少女。生まれは明治20年ですが仙籍に入り、不老不死の身体になりました。しかし主人の仙女からは執拗ないじめを受け続け、自らの不運を呪っています。同年代の海客の少女が景王になったことを知り、救いを求めて慶国に向かったところで乱を画策する郎党と知り合い、力を貸すのでした。

祥瓊 (声:桑島法子)

かつて芳国を統べていた王の娘。圧政に対する反乱によって両親は殺され、貧しい里家に引き取られます。その後、恭国に連れられて行ったもののプライドが高いため自らの処遇に満足できず、王宮の宝物を盗んで逃げ出してしまうことに。景王・陽子を妬みあわよくばその地位を奪うつもりで慶国に向かいます。

迷い、そして決意

「東の海神 西の滄海」(第41話〜第45話)のあらすじ

陽子の物語からは少し離れ、延王・尚隆と延麒・六太が遭遇した悲劇的な事件の顛末が描かれます。六太が出会った妖魔に育てられたという不思議な少年・更夜が、十二国の世界が抱える矛盾の象徴として登場します。 延王が即位して以来、少しずつ復興に向かっている雁国。しかし政治体制は未だに不安定なままでした。延麒・六太は延王の破天荒ぶりに時にあきれながらも、口は悪いが優秀な官吏たちとともにその差配を見守っています。 そんな六太の前に、青年の姿に成長した更夜が現れます。彼は自らが仕える元州候の息子・斡由の命令で、六太を連れ去りに来たのでした。斡由が六太を軟禁したのは、民のために治水を認めてもらう手段として。しかし次第に、その裏に隠された利己的な目的が明らかになっていきます。 麒麟が選んだ者を王として認められないと、斡由は全権を地方の官に移譲することを要求し始めます。人の血が流れ命が奪われる戦いを何よりも嫌う六太はなんとか内乱を抑えようとしますが、斡由はたくさんの兵を集め、尚隆は逆賊として彼の討伐を決心します。 激戦の末、内乱は平定されました。尚隆は自らの手で、斡由の命を奪います。去っていく更夜に六太は、人も妖魔もともに暮らせるような国を作る、と約束。延王・尚隆と延麒・六太はその言葉を胸に、それから500年以上に渡って豊かな国を作り上げてきました。いつの日か、更夜に再会する日を信じながら。

「東の海神 西の滄海」(第41話〜第45話)の主な登場人物

延王・尚隆(声:相沢正輝)

王座に就いてから約20年を経た頃の尚隆が登場。もともとやることなすこと破天荒なところが持ち味のひとつですが、一方で緻密な計算で政略を練り上げる緻密さも持っています。六太に対してはいつもぶっきらぼう。けれど実はとても大切に思っています。

延麒・六太(声:山口勝平)

初めは国王という存在そのものに嫌悪感を抱いていましたが、尚隆と出会ったことで麒麟としての責務をまっとうする決心をしました。姿は少年であちこち飛び回るのが大好き。それでも麒麟らしく慈悲深く、大人びた一面も持っています。

更夜(声:石田彰)

親に捨てられ妖魔に育てられた少年。六太に出会う前は名前すら持っていませんでした。素直でおとなしい印象の少年でしたが、十数年後にふたたび、精悍な青年として六太の前に姿を現します。自分のように捨てられる子どものいない誰もが幸せに暮らせる国を夢見て、斡由に理想を託そうとしています。

斡由(声:大倉正章)

雁国の一部、元州を治める州候の息子です。情に厚く理想を語る有能な青年ですが、世間知らずがたまにきず。更夜を育て、自らの野望のために利用します。

アニメ『十二国記』続編熱望!第2シーズンは「黄昏の岸 暁の天」?

長編小説ではアニメ化された4つのエピソードに続き、恭国の新王が誕生するまでの物語を描いた「図南の翼」と、陽子が泰国の危機に立ち向かう「黄昏の岸 暁の天」がすでに刊行されています。 2001年発行の短編集「華胥の幽夢」からは、「書簡」と「乗月」のふたつのエピソードが、長編ストーリーの合間にはさみこまれる形でアニメ化されました。2014年頃からは新作刊行の予定が明らかにされていますが、小野不由美の体調不良もあり完成は2018年以降となりそうです。 アニメは、景王・陽子の王制の地盤がやっと固まり始めたところで終わっています。その後の慶国の変化が、やはり気になるところ。まずは「黄昏の岸 暁の天」が第2シーズンとしてアニメ化されることを、期待しましょう。