サイバーパンクの頂点『ニューロマンサー』は映画化されるのか?【傑作SF小説といえばこれ】

映像化が最も熱望されているSF小説『ニューロマンサー』

CGをはじめ撮影技術が飛躍的に発達し、映像化不可能とされてきた小説や漫画が次々と実写化されている現在。SFやファンタジー小説の映像化も、再現度は高まるばかりです。 そんな中で、昔から映画化が期待されていながらも実現されていない、ある小説をご存知でしょうか。世界中のSFファンを熱狂させたサイバーパンク小説の元祖、『ニューロマンサー』。 SFの世界に日々近づいていく現代だからこそ、映画化への期待はますます高まっています。 この記事では、『ニューロマンサー』の解説からサイバーパンクの基礎知識、気になる映画化の動向を紹介していきます。
『ニューロマンサー』とは

『ニューロマンサー』は、ウィリアム・ギブスンが1984年に発表したSF小説です。 テクノロジーが発達した現代では幅広く認知される電脳世界を、80年代というネット黎明期の時代に圧倒的な想像力で鮮やかに描写し、スピーディーでハードボイルドな展開とスタイリッシュな文体によって熱狂的なファンを生み出しました。 当時はマイナージャンルとされていたサイバーパンクの知名度を大きく押し上げた作品であり、発表されたから30年以上経過したも今も、同ジャンルを代表する小説とされています。 日本においても、黒丸尚による独特の翻訳で親しまれてきました。
ストーリー

ネットワークが世界中に広がり、人間が意識ごと電脳世界に入れる時代。物語は闇医者やヤクザが跋扈する街、千葉市(チバ・シティ)から始まります。 かつては伝説のハッカーの弟子だった主人公ケイスは、自身も一流のハッカーとして活躍していたものの、雇用主を裏切ったことで電脳世界に入れない身体にされてしまっていました。 落ちぶれた生活を送っていた彼でしたが、ある日アーミテジと名乗る謎の男に出会います。能力の復活と引き換えにケイスはアーミテジからの危険な依頼を引き受け、改造人間の女戦士モリイを相棒に、再び電脳世界へ入っていくのですが……。
『ニューロマンサー』がサイバーパンクの扉を開いた
![『狂い咲きサンダーロード コレクターズ・エディション』 [DVD]](https://images.ciatr.jp/2017/04/w_828/woUgrZhJ9APP6tkkis3jH1wVdoMdQsd9JdaVou5D.jpeg)
『ニューロマンサー』について説明してきましたが、まずサイバーパンクが何か分からない人もいるでしょう。 一概には説明することは難しいこのSFの傍系ジャンルですが、人体の改造や意識の拡張、人工知能などといった発達したテクノロジーが登場するものや、薄暗く退廃的な未来都市を舞台にしている作品などは、サイバーパンクとくくられている場合が多いです。 サイバーでありパンクであるということ。社会や経済(テクノロジー)・政治などを俯瞰する視点を持ち、かつ反抗・反体制的(カウンターカルチャー)な思想を纏ったドライなSFジャンルといっていいかもしれません。 また、『ニューロマンサー』や、一般的なサイバーパンクのイメージを作り上げた映画『ブレードランナー』には日本的な要素が登場し、東洋風のオリエンタルな世界が舞台となっているのも特徴。このことから、サイバーパンクと聞くとアジアを思い浮かべる人もいるとか。 塚本晋也監督や初期石井聰互(岳龍)監督の諸作品も名作なので、チェックしてみるのもいいかも。 さらに「人体への機械の埋め込み」といった手法に代表されるような人体改造的な概念を含んだ物語が多く、ファッション方面への影響も計り知れません。
作者のウィリアム・ギブスンってどんな人?

ウィリアム・ギブスンは1947年生まれの小説家で、『ニューロマンサー』をはじめとした「スプロール」シリーズで知られています。 同じくSF作家であるブルース・スターリングと並ぶ、サイバーパンクの先人です。 電脳世界を舞台とした作品のイメージが強いですが、それとは違ったテイストの近未来を描いたものや、スチームパンク小説でも高く評価されるなど、SFのサブジャンルを幅広く開拓してきました。 また、彼の短編を基にした映画『JM』では脚本を担当し、『X-ファイル』にも参加するなど、脚本家としての活動歴もあります。
衰えない圧倒的な影響力と評価
![マトリックス 特別版 [DVD]](https://images.ciatr.jp/2017/12/w_828/j5tU9Dw8VkQ0EPPymq1jR5EqswdDZlV89PxqYQZy.jpeg)
『ニューロマンサー』は発表当時から非常に高い評価を受け、ヒューゴー賞やネビュラ賞、フィリップ・K・ディック賞などの、権威ある数々の賞を獲得しました。 当然、後のSF作品にも絶大な影響を及ぼしていますが、その中でも有名なのが「攻殻機動隊」シリーズや、「マトリックス」シリーズへの影響です。 「攻殻機動隊」シリーズには本作のような電脳技術が登場しますし、第1作『マトリックス』に至っては元々本作の映像化作品として製作がスタートしたものだったそう。結局企画は変更されましたが、映画には本作の用語や似た設定が多く認められます。ちなみにギブスンも『マトリックス』を高く評価しているようですよ。
気になる映画化!撮影は2018年スタート?

評価も人気も高い『ニューロマンサー』。実はこれまで何度も映画化が企画されながらも、全て頓挫してしまっているのです。 そんな悲しい歴史を持つこの小説ですが、再び映画化プロジェクトがスタートしました! 気になる監督は、2016年に公開されヒットを記録した『デッドプール』の監督、ティム・ミラーだと予想されています。また、「X-メン」シリーズの脚本などに参加してきたサイモン・キンバーグが製作を務めるようです。 2018年のクランクインを目標としているようですが、今度こそ完成させてほしいですね。 映画化される前に、原作や今回紹介したサイバーパンク作品に触れておくことを強くお勧めします!