映画『グレイテスト・ショーマン』はどこまで実話?違いはあるのか?団員一覧で解説!
『グレイテスト・ショーマン』作品概要・あらすじ【ネタバレなし】
タイトル | 『グレイテスト・ショーマン』 |
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公開日 | 2018年2月16日 |
上映時間 | 105分 |
監督 | マイケル・グレイシー |
キャスト | ヒュー・ジャックマン , ザック・エフロン , ミシェル・ウィリアムズ |
『グレイテスト・ショーマン』あらすじ
『グレイテスト・ショーマン』は、19世紀のアメリカに実在した興行師・P・T・バーナムの半生を描いた物語です。 妻子を幸せにすることを願う彼は、ある時、個性的な人々を集めた華やかなショーを思いつきます。その後、バーナムは全米を魅了するようなショーを作り上げることに成功しますが、彼の行く手には大きな波乱が待っていました。
『グレイテスト・ショーマン』は実話?映画との4つの違いを解説
『グレイテスト・ショーマン』はP・T・バーナムの伝記映画ですが、フィクションも交えて彼の半生が描かれています。 劇中で描かれた出来事は、史実とどう違うのでしょうか。ここでは気になる4つの違いを紹介します。
①火災の原因
映画では、フリークスたちと彼らを排斥しようとする差別主義者たちが衝突し、その混乱のなかで差別主義者の1人が建物に火をつけました。ジェームズ・ゴードンは、この人物はのちに逮捕されたとバーナムに報告しています。 実際にバーナムのアメリカ博物館は、1865年に家事で焼け落ちています。しかし原因は不明で、火元になるようなものは発見されなかったそうです。
②ジェニー・リンドとバーナムの関係
映画では、バーナムとジェニー・リンドは初めて会ったときからお互いに惹かれ合い、いい雰囲気のように見えました。しかしバーナムが彼女の誘いを断ったことで、「自分も金稼ぎの手段に過ぎない」と腹を立てたジェニーがアメリカ巡業から降板してしまいます。 最後の公演でジェニーはステージ上でバーナムにキスをし、それがスキャンダルになってしまいました。 しかし実際、彼女にはドイツ人のピアニストの夫がおり、バーナムとの恋愛関係はなかったといいます。彼女が降板したのは、バーナムの容赦ないツアー運営が原因だったそうです。
③アンとフィリップは架空の人物
本作でザック・エフロン演じるフィリップ・カーライルは、バーナムの成功の一助となりました。上流階級出身で劇作家として成功した彼は、ニューヨークの社交界に顔の効く存在で、「成り上がり」と蔑まれていたバーナムが上流階級に受け入れられる手助けをします。 しかしフィリップは架空の人物で、劇中で描かれた時期のバーナムにはビジネスパートナーと呼べる存在はいませんでした。 またゼンデイヤが演じたアンも架空の人物で、2人のロマンスは完全にフィクションです。
④バーナムは引退していない
本作では、バーナムがショーマンを引退して、フィリップに引き継ぎます。 しかし、実際にはバーナムはショーマンを続けます。1855年には一旦興行界から引退しますが、債権支払いを迫られたため1857年に復帰しているのです。 1871年には、「地上最大のショー」を設立します。その翌年、業界初のサーカス列車を立ち上げています。そして、1881年には、別のサーカスと合併して「バーナム・アンド・ベイリー・サーカス」とし、世界中を巡業しました。 バーナムの死後、サーカスは売却され、リングリング・ブラザーズ・アンド・バーナム・アンド・ベイリー・サーカスとなり、2017年まで興行を続けたようです。
【団員一覧】実在する人物との違いを解説!ヒゲ女のモデルは?
【サーカス団員一覧】
P・T・バーナム | 『グレイテスト・ショーマン』の主人公 実在の人物 キャスト:ヒュー・ジャックマン |
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レティ・ルッツ | 多毛症の女性 実在の人物(アニー・ジョーンズ) キャスト:キアラ・セトル |
アン・ウィーラー | 空中ブランコのパフォーマー 架空の人物 キャスト:ゼンデイヤ |
W・D・ウィーラー | 空中ブランコのパフォーマー 架空の人物 キャスト:ヤーヤ・アブドゥル=マティーン2世 |
親指トム将軍/チャールズ・ストラットン | 小人症の男性 実在の人物 キャスト:サム・ハンフリー |
リーズ卿 | 太った男 同様のパフォーマー多数 キャスト:ダニエル・エバーリッジ |
フランク・レンティーニ | 3本脚の男 実在の人物(バーナムとの関わりは不明) キャスト:ジョナサン・レダヴィド |
コンスタンティン王子 | 入れ墨男 実在の人物 キャスト:シャノン・ホルツァプフェル |
チャン&エン・ブンカー兄弟 | 結合双生児 実在の人物 キャスト:小森悠冊 , ダニエル・ソン |
ウォルター | 犬少年、多毛症の男性 実在の人物(フェドール・ジェフティチュー) キャスト:ルチアーノ・アクニャJr. |
アルビノツインズ | アルビノの姉妹 実在の人物(ルカシー・ファミリー(バーナムとの関わりは不明)) キャスト:ミッシー・パトロナリー&シェオアイフェ・コールマン |
ブロックヘッド | ピアス男 架空の人物 キャスト:テイラー・ジェームズ |
デビルボーイ | 頭に2本角のある男性 架空の人物 キャスト:ヴィンセント=オリバー・ノワジュー |
ストロングマン | 怪力男 同様のパフォーマー多数 キャスト:ティモシー・ハージェス |
タトゥーレディ | 全身にタトゥーのある女性 架空の人物 キャスト:チェルシー・キャソ |
オリエンタルマン | 東洋人の男性 同様のパフォーマー多数 キャスト:アレックス・ウォン |
ゴールデンボーイ | 金でメイクし、金の装飾をつけている青年 架空の人物 キャスト:ジュリアス・ルビオ |
ヴードゥーツインズ | ヴードゥー教の双子 架空の人物 キャスト:ディアンナ・ウォルターズ&ジェシカ・カストロ |
スネークダンサー | ヘビを使い踊る女性 同様のパフォーマー多数 キャスト:ナジラ・ジラム |
エジプションレディ | エジプトの女性 同様のパフォーマー多数 キャスト:クリスティーナ・ギラー |
オー・クランシー | アイルランドの巨人 実在の人物(サンディ・アレン(女性)) キャスト:ラデュー・スピングヘル |
人間大砲 | 大砲で打ち上げられる男性 同様のパフォーマー多数 キャスト:ケネス・チャン |
ジェフ・ハリス | ジャグラー 同様のパフォーマー多数 キャスト:ニック・ジャンツ |
ディン・ヤン | 中国人のアクロバットと剣のスペシャリスト 同様のパフォーマー多数 キャスト:ナターシャ・リュー・ボルディッツォ |
象の肌を持つ男 | 顔や身体に痣を持つ男性 架空の人物 キャスト:ジェレミー・ハドソン |
団員以外のキャラクター
チャリティ・バーナム | バーナムの妻 実在の人物 キャスト:ミシェル・ウィリアムズ |
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フィリップ・カーライル | バーナムのビジネスパートナー 架空の人物 キャスト:ザック・エフロン |
ジェニー・リンド | オペラ歌手 実在の人物 キャスト:レベッカ・ファーガソン |
ジェームズ・ゴードン | バーナムと対立する批評家 実在の人物 キャスト:ポール・スパークス |
P・T・バーナム
P・T・バーナムは19世紀のアメリカに実在した興行師です。 コネチカット州に生まれたバーナムは、1834年にニューヨークに移住。1841年に「バーナムのアメリカ博物館」をオープンさせ、人気を博します。その後、ジェニー・リンドの公演やサーカスなどさまざまな興行を成功させ、「地上最高のショーマン」と呼ばれるように。 バーナムは巧妙な宣伝で興行を大成功に導き、嘘で固めた彼の興行は「フェイク・テイメント」とも呼ばれました。 1855年には一旦興行界から引退しますが、債権支払いを迫られたため1857年に復帰しています。
レティ・ルッツ
レティ・ルッツのモデルとなっているのは、バーナムのサーカスに所属していたアニー・ジョーンズという多毛症の女性です。 生後わずか9ヶ月のときからバーナムのショーに出演しており、旧約聖書に登場する生まれたときに全身が毛皮のようだったとされるエサウにちなんで「エサウ・チャイルド」と呼ばれていました。 バーナムのサーカスのフリークス代表として活躍しましたが、「フリークス」という言葉を嫌い、その言葉を使わないようにと主張した人物でもあります。
親指トム将軍
親指トム将軍ことチャールズ・ストラットンは実在の人物です。 1838年に生まれた彼は、体重4.3kgの大きな赤ちゃんでしたが、6ヶ月のときに成長が止まり、4歳ごろのときの身長は67cm足らずだったそうです。 『グレイテスト・ショーマン』ではバーナムと出会ったとき、彼は22歳とされていましたが、実際は彼自身も年齢を偽っており、デビューした当時は4〜5歳の子どもだったようです。
フランク・レンティーニ
3本脚の男として知られるフランク・レンティーニも実在の人物です。 1889年にイタリアで生まれた彼は結合双生児の異形と考えられており、普通の大きさの脚3本とそのうち1つの膝に未発達の4本目の脚がありました。 8歳のときにアメリカに渡った彼は、数々のサーカスに出演し有名に。のちにバーナム・アンド・ベイリーにも参加していましたが、1891年に死去したバーナムと1897年に渡米した彼に面識があったかは定かではありません。
チャン&エン・ブンカー兄弟
タイ出身のチャン&エン・ブンカー兄弟は、結合双生児の俗称「シャム双生児」の語源となった人物として有名です。 1811年に生まれた彼らは、胸部と腹部の中心部分が結合していました。1829年にスコットランドの商人に買い取られ、サーカスの見世物としてヨーロッパを巡業していたそうです。 1831年に独立した彼らは、自分たちでショーマネージメントを行い大成功。しかし南北戦争によって財産を失い、1950年代にバーナムのサーカスと契約しました。
ウォルター
「犬少年」と呼ばれたウォルターは、フェドール・ジェフティチューをモデルとしています。 彼は「狼男症候群」とも呼ばれる多毛症で、ひげだけでなく全身が毛で覆われていました。「犬面少年ジョジョ」として人気を博した彼は、吠えたり唸り声をあげたりするパフォーマンスを行っていましたが、実際は3ヶ国語を流暢に話す知的な人物だったそうです。
アンは障がいを持っていた?なぜサーカスにいるのか
ゼンデイヤ演じるアン・ウィーラーは身体的障害は持っていません。しかし、有色人種であるために差別されていました。 本作でも、アンがフィリップと手を繋ごうとしてためらわれるシーンや、彼の両親がアンを侮辱するシーンが描かれています。当時は、黒人女性は使用人の仕事をしているケースが多かったようです。そのため、フィリップの両親にアンが「メイド」と呼ばれたと考えられます。 アンは、他のフリークスたちと同じように世間から差別されていたため、サーカスに所属していたのではないでしょうか。
バーナムにりんごを渡した人は誰?
映画冒頭、青年期の貧困に苦しんでいたバーナムが見知らぬ女性からりんごを渡されるシーンがあります。その女性の顔は特徴的で、歩き方も独特でした。バーナムにりんごを渡したのは、通りすがりのフリークスだったのです。 このときバーナムは、世間から差別されているフリークスこそが、人間らしい、やさしい心を持っていることを知りました。その後、事業に失敗し再び経済的に危機に陥ったバーナムはそのことを思い出し、フリークスたちを集めて、彼らを表舞台に引き上げることを思いついたのです。
『グレイテスト・ショーマン』のテーマ!伝えたいこととは?

『グレイテスト・ショーマン』は、大ヒットとなった劇中歌「ディス・イズ・ミー」に象徴されるとおり、人と違うことを受け入れ、賛美することをテーマにしています。 “普通の”人と違うことで疎まれ、蔑まれ、隠れて暮らしていたフリークスたちは、バーナムに見出され、サーカスという「家族」を得ることで自分の居場所を見つけました。さらに現代でも身近な問題として、本作では黒人差別についても描かれています。 現代の私たちも人と違うことで悩んだり、嫌な思いをさせられたりすることもあるのではないでしょうか。しかし違いを受け入れて祝福することが、どんな人にも必要なのです。 最後にジェームズ・ゴードンが言った「人間性の祝祭」という言葉が本作のテーマを端的に言い表しています。
大ヒット曲「This Is Me」は『ラ・ラ・ランド』の作曲家たちが担当!
ミュージカル映画の重要な要素は、なんと言っても楽曲です。 本作の楽曲を手掛けるのは、2016年に公開され、アカデミー賞作品賞を受賞するなど大きな話題を呼んだ『ラ・ラ・ランド』の楽曲を担当したベンジ・パセックとジャスティン・ポールが担当しています。 作中でキアラ・セトルが歌う「This Is Me」は大ヒットしました。この曲は、アカデミー賞主題歌賞にノミネート、ゴールデングローブ賞で最優秀主題歌賞を受賞しています。
スタッフに『美女と野獣』『LOGAN』の監督たちが集結!
本作の監督を務めたのは、マイケル・グレイシー。2025年に公開される『BETTER MAN/ベター・マン』でもメガホンを握り、期待されています! 脚本には、映画『美女と野獣』『ドリームガールズ』の監督ビル・コンドンが参加し、製作総指揮には映画『LOGAN ローガン』の監督ジェームズ・マンゴールドが名を連ねています。
オンリーワンを描くミュージカル映画『グレイテスト・ショーマン』実在する興行師の半生
ヒュー・ジャックマンら豪華なキャストで注目され、劇中歌「ディス・イズ・ミー」が大人気となった『グレイテスト・ショーマン』。 P・T・バーナムについては、金儲けのためにフリークスを利用したという否定的な意見も当然ありますが、一方で彼らを日の当たる場所に導いたのも事実です。 人との違いを受け入れ祝福するミュージカルを、ぜひ体験してみてください。