2018年1月22日更新

古谷実は現代のピカソだ!映像化作品とともにその歴史を紐解く【ヒミズなど】

デビュー作『行け!稲中卓球部』で爆発的ヒットを記録して以降、大胆な作風の変化を遂げながらも第一線で活躍し続けているマンガ家・古谷実。そんな鬼才がこれまで生み出してきた作品の内、映像化された話題作、これから映像化されそうな人気作についてご紹介します。

ヒット作揃い!古谷実作品の変遷と狂気

古谷実というマンガ家は一筋縄ではいきません。 「稲中」という強烈なギャグマンガで脚光を浴びながら、その全てをかなぐり捨て『ヒミズ』というサスペンスホラーを生み出し、ついには大量殺人犯の半生までも描いてしまう劇的な変貌は、まるでキュビスム、シュルレアリスムを経てゲルニカへ辿り着いたパブロ・ピカソのようです。 今回、そんな古谷実作品の変遷と狂気を、映像化されたヒット作品を中心にご紹介します。

時代を震撼させた学園コメディ『行け!稲中卓球部』

稲豊中学校の男子卓球部に所属する部員の日常を描いたコメディ『行け!稲中卓球部』。連載されていた1990年代半ばには一大ブームを巻き起こすなど、古谷実作品では最大の知名度を誇る有名な作品です。 その魅力は圧倒的なギャグセンスで、表情、セリフ、間の全てが革命的。「陽キャを妬む陰キャの暴走」というフォーマットの確立など後世に及ぼした影響は大きく、「稲中」以前と以後とでは日本のギャグマンガが様変わりしたと言っても過言ではないでしょう。 1995年に深夜枠でテレビアニメ化されましたが、過激なネタやブラックユーモアがことごとくカットされ、魅力の大半が削られてしまいました。

ファンを困惑させたサスペンスホラー『ヒミズ』

「稲中」は一貫してギャグマンガでしたが、その作風は連載が進むにつれ変化しました。「普通って何?」など哲学的なテーマが増え、次作の『僕といっしょ』や『グリーンヒル』にも繋がって行きます。そしてその変遷の最中、突然変異のように生まれたのが『ヒミズ』という作品です。 親や環境に恵まれず孤立無援となり、ついには父親を殺害してしまい「オマケ人生」を歩むことになる中学生・住田の壊れゆく姿を描いた本作は、「稲中」の面影を追って読み始めた人達に崖から突き落とされたかのような衝撃を与えました。 2012年には園子温監督により実写映画化され、海外を中心に高評価を得る一方で、住田ら各キャラクターの性格、ラストの展開などが変更され物議を醸しました。原作は「絶望」を描き、映画は「希望」を描いた別作品と言えるのかも知れません。

冴えない中年の夢が詰まった『わにとかげぎす』

『ヒミズ』の次作に当たる『シガテラ』以降の古谷実作品は、「冴えない主人公が不釣り合いな美しい女性と恋仲になる裏側で、殺人事件などの非日常的な凶事が忍び寄る」というフォーマットで物語が展開されていきます。 『わにとかげぎす』もその一つで、生まれてから一度も友人や恋人を作ったことのない30代の主人公が抱える悲哀と、一人の女性との出会い人生の活路を見出した姿をユーモアたっぷりに描いた作品です。『ヒミズ』以降の作品の中では比較的明るく、読みやすいお話ですね。 2017年にテレビドラマ化され、「トランプのジョーカー」のような外見の主人公・富岡ゆうじを有田哲平(くりぃむしちゅー)が演じ、ハマリ役だと話題となりました。 原作では最終話に血を流し倒れている人物が誰なのかが不明瞭でしたが、このドラマでは「富岡がもし彼女と出会ってなかったら……というif世界の姿」として表現されていました。

過去最大の問題作『ヒメアノ~ル』

『わにとかげぎす』の次作として生み出された『ヒメアノ~ル』は過去最大の問題作となりました。物語のフォーマットは『シガテラ』や『わにとかげぎす』と同様ですが、本作で扱われた「裏側に潜む非日常的な凶事」は大量殺人。しかもかなり生々しく描かれています。 主人公やその友人が織り成す馬鹿馬鹿しくも楽しい「陽パート」と、絞殺に性的興奮を覚える殺人犯・森田の蛮行を描く「陰パート」は常に隣り合わせで、いつ主人公達が連続殺人に巻き込まれてもおかしくない状況で物語は進行します。 人間誰しも一つ間違えば闇に堕ちるかもしれない、飲み込まれてしまうかもしれないと『ヒミズ』以降の古谷実作品は訴え続けていましたが、本作はその集大成とも言える作品です。 2016年に公開された実写映画では、森田を奇しくも森田剛(V6)が演じています。原作の森田とはテイストが異なるものの、シリアルキラーとしての狂気は原作以上で、森田剛の役者としての凄味が感じられる映画になっています。

『シガテラ』映像化の可能性は?

ここからは「これから映像化されそうな古谷実作品」を紹介していきます。 『ヒミズ』の次作として2003年~2005年に連載された『シガテラ』は、文化庁メディア芸術祭・マンガ部門で審査委員会推薦作品に選出される話題作でしたが、2018年1月現在、映像化はされていません。 物語の基本的な流れは『わにとかげぎす』や『ヒメアノ~ル』と同じで、冴えない主人公・荻野優介が容姿端麗な女性・南雲ゆみと出会い恋仲となる一方で、周囲に起こる様々な非日常的な闇に翻弄されていく、というストーリーが単行本全6巻で描かれています。 もし実写化された場合は、荻野の同級生・村岡ハルエとのエピソードもぜひ映像化して欲しいですね。山中で全裸になる必要があるので、かなり難易度は高そうですが……。

「稲中」が実写化された場合のキャストを大胆予想

「稲中」の実写化も十分あり得ますが、原作をそのまま実写化となるとキャスティングの面でかなり難しそうです。そこで、アニメ『おそ松さん』のように大人になった稲中メンバー、すなわち「10年後の稲中」をイメージして、実写版のキャストを勝手に予想してみました。 前野役にはハジけた役をこなせて目元もちょっと似ている菅田将暉を推挙します。井沢役にはルックス面でイメージに近い柄本時生がハマりそうです。 作中後半で人生について悩んでいた竹田は、『陸王』で就活に苦しむ青年を熱演していた山﨑賢人が適任ではないでしょうか。ロン毛イケメンの木之下は、ロン毛が似合う三浦春馬がイメージに合致します。 小さくて丸っこい外見の田中は、『3月のライオン』で小太りの二海堂役を演じた染谷将太がピッタリ。ハーフでガッチリした体格の田辺は、同じくハーフで筋肉が凄い白濱亜嵐に演じて欲しいですね。 みなさんは誰にどのキャラを演じて欲しいですか?ぜひ自分ならではの稲中ワールドを作り上げてみてください。