ガイナックス、「エヴァ」「グレンラガン」を産んだアニメスタジオとは
1990年代に社会現象を巻き起こしたアニメ『新世紀エヴァンゲリオン』を生み出した制作会社として知られるガイナックス。 2000年代に入ってからも、「エヴァ」とは打って変わって王道を描いたロボットアニメ『天元突破グレンラガン』、『パンティ&ストッキングwithガーターベルト』などアニメファンを唸らせる傑作アニメーションを世に送り出してきました。 今回は一時代を築いたガイナックスの作品と、現在のアニメ業界にも及ぶ影響を振り返ります。
1980年代前半~:ガイナックスは学生による同人制作集団からはじまった!
今日はバニーの日だそうですね!80年代のバニーをUPします!(^^)! #バニーの日 #バニーガール pic.twitter.com/rXhmg13yNE
— ガイナックス(GAINAX 公式) (@GAINAXNET) August 2, 2017
『新世紀エヴァンゲリオン』を生み出した当時のガイナックスには、2016年の『シン・ゴジラ』のヒットも記憶に新しい庵野秀明監督を筆頭に、多くの才能が集まっていました。 その前身となったのは、1980年代に大阪芸術大学に在籍していた庵野秀明、山賀博之(後のガイナックス社長)や、アニメ評論家の岡田斗司夫らを中心に結成された「DAICON FILM」。今でいうところの同人サークルです。 1981年の日本SF大会で公開された彼らのフィルム『DAICON 3』はアニメ業界はもちろんのこと、アマチュアながらアニメ雑誌が取り上げるほどの話題となり、庵野秀明と山賀博之が『超時空要塞マクロス』に参加するきっかけとなりました。 さらに1983年に再び作られたアニメーション『DAICON 4』は、特撮・映画・アニメといったさまざまなエンタメ作品のパロディが詰まった傑作でした。2005年のテレビドラマ『電車男』のOPでパロディされ、2007年のアニメ『月面兎兵器ミーナ』にまで繋がっています。
1980年代後半~:劇場アニメ『王立宇宙軍 オネアミスの翼』でガイナックス設立へ
岡田斗司夫が企画した『王立宇宙軍 オネアミスの翼』制作にあたって、DAICON FILM設立メンバーに『エヴァンゲリヲン新劇場版:Q』監督の前田真宏、『サマーウォーズ』や「エヴァ」シリーズのキャラクターデザインを担当した貞本義行を加え、ガイナックスが設立されます。 これだけの才能が集まった理由を岡田斗司夫は、当時は実力があっても上に行けないアニメ業界の状況によるものと語っていますが、それにしても驚きのメンバーです。 ガイナックスとして1作目となった『王立宇宙軍 オネアミスの翼』は興行的には振るわなかったものの、クライマックスのロケット打ち上げシーンは、手描きアニメーションの到達点として今でも語られています。
1990年代~:『新世紀エヴァンゲリオン』が爆発的なヒットを記録
1989年のSFロボットアニメの傑作『トップとねらえ!』、NHKで放送された1990年の『ふしぎの海のナディア』を経て、ガイナックスは1995年についに『新世紀エヴァンゲリオン』を世に送り出します。 アニメに限らず後のエンターテイメントに多大な影響を及ぼした本作は当時の世相と連動し、たちまち社会現象を巻き起こしました。本作のヒットでガイナックスと庵野秀明の名前も一躍有名になります。 話が前後しますが、1992年にはガイナックスを退社した前田真宏や村濱章司らがゴンゾを設立しました。こちらも『LAST EXILE』、『ストライクウィッチーズ』などヒット作を次々と生み出していきます。その後、同人時代の『DAICON 4』から端を発したアニメ『月面兎兵器ミーナ』をゴンゾが手掛けるのもこうした経緯があるようです。
2000年代~:『天元突破グレンラガン』がヒット!庵野秀明はスタジオ・カラー設立へ
2006年「ヱヴァンゲリヲン新劇場版」シリーズ制作に伴い、庵野秀明はスタジオ・カラーを設立します。グッズやパチンコ人気も根強い「エヴァ」シリーズの版権とともに、鶴巻和哉や摩砂雪といった主力スタッフも移籍することとなり、ガイナックスにとっても大きな出来事となりました。 ですが、2007年には「エヴァ」時代は動画マンだった今石洋之が監督を務めた『天元突破グレンラガン』を制作。王道回帰したロボットものは視聴者を熱狂させ、劇場版も制作されるほどの人気を獲得しました。2000年代のガイナックスの代表作といえるでしょう。
知る人ぞ知る名作『パンティ&ストッキングwithガーターベルト』
『天元突破グレンラガン』でブレイクした今石洋之が、2010年に監督した『パンティ&ストッキングwithガーターベルト』は知る人ぞ知る名作です。 ポップなデザインとハイテンションな作画でカオスな世界観を描き、大人こそ楽しめるアニメ作品になっています。商業的な成功を考慮したとは思えない「パンスト」のような尖ったアニメ作品は、近年では特に出会えることは少ないこともあり、アニメファンなら必見でしょう! そんな今石監督は2011年にトリガーを設立、『天元突破グレンラガン』のスタッフの多くが移籍することに……。ガイナックスから新たな才能が出てくることを願うばかりです。
現在のガイナックスはオワコンなのか!?2018年は……
謹賀新年 今年もよろしくお願いいたします。 pic.twitter.com/nZMTDIeMDG
— ガイナックス(GAINAX 公式) (@GAINAXNET) January 2, 2018
ゴンゾ、カラー、トリガーといったアニメ会社の原点であり、数多くの才能を育て上げてきたガイナックス。2016年には庵野秀明の訴訟騒動もニュースになり、資金繰りも厳しそうですが……。 2018年はカナダのファンタジア映画祭でアニメーション部門銅賞を受賞するなど、海外でもカルト的な人気を誇る『FLCL』の続編の公開が控えています。新年のあいさつにあえて『王立宇宙軍 オネアミスの翼』を持ってくるあたり、傑作を世に打ち上げる気概も十分ではないでしょうか。 主題歌は前作に引き続きthe pillows、監督には「踊る大捜査線」シリーズの本広克行も加わるとのこと。大いに期待して待ちましょう!