漫画版『新世紀エヴァンゲリオン』ラストシーンを考察!アニメ版との大きな違いは?
漫画版『新世紀エヴァンゲリオン』を解説&考察!映画を観ただけじゃ「エヴァ」を知っているとは言えない?
貞本義行による漫画版『新世紀エヴァンゲリオン』は、1995年10月にテレビアニメ版が放送される前の1994年12月に連載が開始し、2014年に最終巻の14巻が刊行されました。一足先にエヴァの世界を世に送り出したのがいわゆる「貞本エヴァ」なのです。 とはいえ、実は漫画版はあくまでもテレビアニメ版のコミカライズであり、アニメとは違った設定や展開があるのが特徴。この記事では貞本エヴァを解説・考察し、見どころを紹介します。 ※本記事には、漫画『新世紀エヴァンゲリオン』のラストシーンのネタバレが含まれています。未読の方は注意してください。
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碇ゲンドウが人類補完計画に賛同した理由
漫画版のゲンドウは、大学で碇ユイと知り合い、結婚して六分儀ゲンドウから碇ゲンドウになります。ユイに近づいた目的は、彼女の才能とバックボーンである組織「ゼーレ」に入ること。ゼーレは「裏死海文書」に沿って「人類補完計画」を完遂することを目的としていました。 アダムからエヴァを創り出したネルフの前身組織「ゲヒルン」には、ユイとゲンドウ、そして赤木ナオコが集っていましたが、そこに冬月も加わることになる経緯が描かれています。この段階までのゲンドウはエヴァ創造の「E計画」を主目的にしていたようですが、ユイが事故で初号機に取り込まれて以来変わってしまい、新たな計画「アダム計画」と「人類補完計画」に着手。 ゼーレとは途中まで目的が同じですが、ゲンドウがゼーレの計画に賛同した理由は、最終的にユイと再会して1つになるため。そしてゲヒルンは解体され、全計画の遂行組織としてネルフが結成されたのです。
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ラストシーンのシンジに起こった大きな変化
漫画版とアニメ版の大きな違いは、その希望に満ちたラストシーン。東京の高校を受験するため、1人電車に乗る場面から始まります。以前のシンジは自分の将来のことも考えようとしない消極的な性格でしたが、新しい世界でのシンジは前はクラスで話もしなかった学友たちとも笑って別れを告げていました。 東京ではアスカやケンスケの生まれ変わりと思しき2人と出会います。アスカは電車から降りた時に偶然出会う少女、ケンスケは同じ高校を受ける受験生として登場しました。 ケンスケに「お互いがんばろう」と言われ、シンジも「がんばろう」と決意した顔を見せ、そして「自分の歩く道は自分の足で探すんだ」と力強く歩き出すのです。 また、最後のカットでシンジのカバンにミサトのペンダントが光り輝いていたのも、彼の「無限の未来」を象徴していました。
新幹線の車窓から見えた「遺跡」とは一体なに?
シンジが上京する途中、新幹線から外を見ていると、何やら十字架のオブジェのようなものが立っていました。シンジの近くに座る親子がそれを「遺跡」と呼んでいます。 よく見ると、オブジェは手を広げて立つ人型であり、胸と思われる部分には丸い穴が開いています。そういえば量産機との戦いの際、初号機はまるでキリストの磔のような形で量産機に空に引き上げられていました。 新世界での遺跡はおそらくエヴァ初号機かと思われますが、遺跡は1つではなく複数あるような描写もあり、それらはともにサードインパクトを引き起こした量産機なのかもしれません。それが「過去の遺跡」として存在する世界は、やはり「新しい世界」なのでしょう。
サードインパクト後の世界の描写が「冬」の理由
エヴァの世界では、セカンドインパクト後は地球の地軸が変動したことによって常に「夏」の気候となっていました。しかし漫画版のラストシーンは、雪が降る「冬」が舞台となっています。 セカンドインパクト後に生まれたシンジは夏しか知らず、ユイはシンジに雪を見せてあげたいと語っていました。 ラストシーンが冬である理由は、サードインパクト後の新世界がセカンドインパクト後の世界とは違うこと、そしてユイの願いが叶った世界であることを強調しているのではないでしょうか。
アニメ版『新世紀エヴァンゲリオン』との違いを解説
メインキャラクターの性格や設定が、アニメ版とはかなり違っていることも漫画版の魅力の1つ。その変化を比較すれば、アニメ版への理解がより深まるかもしれません。特にトウジの設定やカヲルの性格など大きく変わっている点は注目です。
碇シンジの性格が明るく活発に!
アニメではことあるごとに傷つき、思い悩むナイーブな少年だった碇シンジですが、漫画では少年漫画の主人公的な心の強さ、激しさが見られるようになっています。 アニメでも親友だった鈴原トウジとは、漫画でもお互いにいじりあったりする気の置けない仲が強調され、渚カヲルに激高すると「前歯全部へし折ってやる!」という名言を放っています。
渚カヲルの性格・出番ともに変化
アニメでは超然としており完璧然としていた渚カヲルですが、漫画版はというと良くも悪くも純粋無垢、初登場の時は行き場のない子猫を絞め殺そうとしてシンジと激しい言い争いをしました。 その後も漫画の渚カヲルと碇シンジは、アニメが運命的な出会いとするなら、こちらの2人はぶつかり合いながら親睦を深めていくという、さながら悪友から親友へとステップアップしていくような関係でした。 渚カヲルはアニメではかなり出番が少ないキャラクターでしたが、漫画ではキャラクターの描写が増え、感情が人間のように変化する少年となっています。
碇ゲンドウの性格もアニメ版とは変化
テレビアニメ版から大きく変わった点として、終盤で判明するゲンドウのシンジへの愛憎入り交じった思いがあります。 漫画版ではあらゆる生命の源である「アダムの卵」を飲み込んだゲンドウが、エヴァに乗らずにATフィールドを展開し、NERVを襲撃した戦略自衛隊を生身で撃破するという人間離れした活躍をします。 しかしそれ以上に衝撃的なのが、ゲンドウがシンジに語った息子への妬み。妻の碇ユイを深く愛していたゲンドウは、息子が生まれたことで愛情がシンジに向くことに妬ましさを抱いていたことを本人に告白します。 ユイの愛情を奪った憎む存在だと息子に告げたゲンドウの姿には、テレビアニメにあったシンジへの接し方がわからない不器用な父親像はありませんでした。
マリの人物像が深く掘り下げられている
漫画版の大きな特徴の1つが、エクストラステージ「夏色のエデン」として最終話の次にマリの番外編があること。この話は真希波マリが主人公となっており、その人物像が深く掘り下げられています。 マリは1998年の京都で碇ユイと同じ大学の学生として登場。16歳で2年飛び級して入学した天才ですが、それ以上の人材としてユイに嫉妬と憧れを抱いていました。実はその感情は好意であり、最後にユイからメガネをプレゼントされています。 「シン・エヴァンゲリオン劇場版」でのマリの行動原理が、実はこの話にあったのではないかとも思える重要な番外編です。
鈴原トウジがエヴァ起動実験で死亡
碇シンジの親友である鈴原トウジ。フォースチルドレンとしてエヴァ参号機のパイロットになりますが、起動実験でエヴァに寄生された使徒に乗っ取られてしまいます。 アニメ版でも漫画版でも相手がトウジと知ると、シンジは戦うことを拒否しますが、ゲンドウの指示によって起動したダミープラグによって初号機はシンジの意思を無視して参号機を破壊します。 これによってアニメはトウジが大怪我を負うだけで済みましたが、漫画ではそのままトウジは死亡。学校が数少ない憩いの場だったシンジですが、親友と学友を失う結果になります。
アスカVS量産型エヴァシーンもアニメとは違った展開
『新世紀エヴァンゲリオン Air/まごころを、君に』でNERVに戦略自衛隊が襲撃してきた時、碇シンジは初号機が凍結されていたことに絶望して、周りの人々が必死に戦い死んでいるのをよそにうずくまっていました。 惣流・アスカ・ラングレーも量産型エヴァとの戦いに追い詰められてから、エヴァ弐号機に母がいるのを知って覚醒しますが、あえなく量産型エヴァに捕食されます。 しかし漫画版では、碇シンジが動いてくれと強く呼びかけたことで初号機が起動を開始。追い詰められたアスカを助けに参上します。これはテレビアニメではなかった展開であり、碇シンジの大きな成長の証明となっています。 漫画『新世紀エヴァンゲリオン』は色々なキャラクターが別のアプローチで描かれているので、読めばアニメの見方が大きく変わることでしょう。
漫画版『新世紀エヴァンゲリオン』は希望あるエンディング!
テレビアニメ版・旧劇場版をコミカライズした貞本義行による漫画版『新世紀エヴァンゲリオン』。アニメ版とはまったく違う希望あるエンディングは、アニメ版を観て謎が深まってしまった視聴者の思考を補完してくれるのではないでしょうか。 キャラクターや設定にも微妙な違いがあり、その差を比較することでアニメ版の理解も深まります。「シン・エヴァ」にも通じる部分があるので、観た後には漫画版もぜひ!