2018年1月26日更新

朝ドラ『ひよっこ』は脚本家・岡田惠和の粘り勝ち!新たなヒロイン像を打ち立てヒット作に【ネタバレ注意】

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有村架純『ひよっこ』

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癒し系・NHK朝の連続テレビ小説『ひよっこ』【ネタバレ注意】

2017年4月から9月にかけてNHKで放送された朝の連続テレビ小説『ひよっこ』。 ヒロインに有村架純を起用し、茨城県の農家で育った主人公・谷田部みね子が主人公です。家族や学校、友情などさまざまな愛に支えられ成長していく「故郷編」、家の事情で東京へ就職し、高度経済成長期真っ只中を、たくましく生きていく「東京編」の2部構成で放送されました。 昭和39年~43年にかけての、その時代に生きる人々の4年間に丁寧に寄り添った物語は、みね子と同じでマイペースだけれど着実にファンを増やしていき、平均視聴率は20.4%、最終回視聴率は21.4%(関東)と有終の美を飾りました。 今回は『ひよっこ』のヒットの理由をネタバレありで考察していきます。

ヒロイン・有村架純をNHKが逆指名!

NHK朝の連続テレビ小説(以下、朝ドラ)は新人女優の登竜門と言われており、これまでオーディションを勝ち抜きヒロインに選ばれた数々の若手女優がブレイクをしてきました。しかし、第96回シリーズである『ひよっこ』では、NHK側が若手最旬女優の有村架純を逆指名。 NHKからの逆指名は朝ドラ『花子とアン』の吉高由里子に続き2人目で、有村には、2013年の朝ドラ『あまちゃん』でヒロインの母親の青春時代を演じ、その後一気にブレイクしたという経緯がありました。 『あまちゃん』のヒロインオーディションに落ちてしまい、悔しい思いをした有村にとっても、満を持しての主演抜擢となった本作。『あまちゃん』と『ひよっこ』の間に、数々の映画やドラマを経験し、実力をつけていきました。 有村は映画監督の廣木隆一から教えられた「引き算の芝居」を常に念頭に置いており、「台詞」だけではなく「眼」と「気持ち」で役を演じています。 そのため劇中、有村がまったく話していないシーンでも、メインの俳優を惹き立てながらも、きちんとその場に存在することが出来ていたのが印象的でした。 また有村は“おとなしそうな外見だけど芯が強い”役柄や相手が言ったことに反応する芝居を求められることが多いため、受けの芝居が抜群に上手いです。 有村の、どんな演技がきても受け止める姿勢がみね子のマイペースさに繋がり、周囲の登場人物たちがワチャワチャした中でも、ゆったりとした時間が流れる『ひよっこ』が出来上がりました。

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視聴率には左右されません!脚本家・岡田惠和の粘り勝ち!

『ひよっこ』の脚本を担当したのは、ドラマ『ビーチボーイズ』『最後から2番目の恋』、映画『いま、会いにいきます』『8年越しの花嫁 奇跡の実話』などさまざまなヒット作を手掛け、抜群の安定感を誇る岡田惠和。 朝ドラ『ちゅらさん』『おひさま』を手掛けてきた岡田にとって『ひよっこ』は、視聴率が重視され、SNS社会になってから初めて手掛けた朝ドラです。 これまで視聴率にきりきり舞いをした経験が少なかったからこそ、本作の視聴率が一時的に伸び悩んでも、自身の脚本を信じ、最後まで突っ走ることができたのかも知れません。 岡田いわく、当初は1964年から1974年くらいまでの10年間、つまり、みね子とヒデの結婚後も描く予定だったそうですが、登場人物たちに愛着が沸き、丁寧に描き過ぎた結果、4年間で終わってしまったのだとか。 それが功を奏し、毎日をせわしなく生き、忙殺される現代社会の中で、『ひよっこ』の中に流れる丁寧でゆったりした時間に癒された人も多いのではないでしょうか。 岡田の中ではまだまだ描きたかったエピソードがたくさんあるそうなので、パート2も期待したいですね。

何も目指さない普通の女の子を描く新しさ

『ひよっこ』のヒロイン・みね子は、茨城県の農家での生活に満足しており、都会への憧れもなく、漠然と「農業をして暮らしていけたらいいな。」と願うどこにでもいる普通の女の子です。 朝ドラでよく描かれる目標や大きな夢に向かって邁進する主人公だと、展開が目まぐるしく変化するので、どうしても主人公だけを描きがちになります。その点、『ひよっこ』ではみね子が良い意味で地味だったので、他の登場人物たちのキャラクターが見事に立っています。 物語序盤で、みね子は東京で就職しなければならない苦境に立たされますが、不安を覚えながらもすべてを受け入れ、上京します。東京でのみね子の目標は「すずふり亭のメニューを自分の給料で制覇すること」。 なんて小さく、でもその嬉しさがよくわかる素敵な夢なのでしょう。誰もが大きな夢や目標を持ち、何かを成し遂げるために生きているわけではありません。 みね子のマイペースだけれど、真面目で芯の通った性格や「今いるこの環境が幸せ。」という生き方は、選択肢の多い現代社会で、迷いながらも幸せを模索して生きる等身大の人々の心に響き、明日へのちょっとした活力になる人生賛歌になっています。

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『ひよっこ』もヒットの法則「Wヒロイン」制を踏襲

2013年の『あまちゃん』の能年玲奈(現・のん)と橋本愛の「Wヒロイン」スタイル以降、朝ドラではWヒロインを据えることが多く、それがヒットの秘訣になってきました。 『ひよっこ』でも「Wヒロイン」スタイルを踏襲しており、地味でマイペースなみね子と華やかで向上心の強い時子の親友コンビが魅力的に描かれています。また、東京で父を探しながら頑張るみね子と、夫の帰りを信じ、茨城の実家を守る美代子も対比的に描かれています。 みね子と時子はライバルというよりは互いを尊敬し合っているので、平凡でも上を目指していても、東京でも茨城でも、どこにいてもありのままの自分で生きることは素晴らしく美しいことなのだと、登場人物たちから教えられているような優しい気持ちになれるドラマに仕上がっています。

ブレイクの登竜門!ライダー&戦隊もの俳優を3人も起用

2013年に福士蒼汰が『仮面ライダーフォーゼ』に主演した後、『あまちゃん』で大ブレイクを果たし、そこから特撮ヒーローもの出身の若手俳優が朝ドラに出演し、注目されるという流れが出来始めました。 『ひよっこ』では、有村以外の若手俳優は全員オーディションで決められたのですが、その結果、竜星涼(『獣電戦隊キョウリュウジャー』)、竹内涼真(『仮面ライダードライブ』)、磯村勇斗(『仮面ライダーゴースト』)と、なんと3人も特撮ヒーローもの出身の俳優を起用することに! この理由として1つめに、朝ドラと特撮ヒーローものが俳優に求める素質がともに「爽やかな好青年」であること。 2つめに、特撮ヒーローもの出身の俳優は、熾烈なオーディションを勝ち抜き、アクションありのハードなドラマのメインキャラクターを演じた経験があるので、ハングリー精神があることなどが挙げられます。 『ひよっこ』では、特に島谷純一郎役の竹内涼真が大ブレイクをし、劇中でみね子と別れ、登場しなくなると、「島谷ロス」という言葉が生まれました。

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実はモテ女?恋多きヒロイン・谷田部みね子【ネタバレ注意】

『ひよっこ』では、同じあかね荘に暮らしみね子をモデルに漫画を描いている漫画家コンビに、「地味過ぎて盛り上がりにかける」などと言われてしまうみね子ですが、何気に4年間に3人もの男性と恋に落ちているのです。 1人目は同郷出身の警官・綿引正義に淡い恋心を抱くも想いを伝えることなく終わってしまいます。しかし、2人目の大学生・島谷純一郎と3人目の見習いコック・前田秀俊(以下、ヒデ)とはガッツリ付き合っており、最終的にヒデと結婚までしちゃいます。 脚本を担当した岡田は、書く段階からみね子が最終的に誰と結ばれるかを決めていて、有村だけが最初からそれを知らされていたそうです。 意識的に、最初からヒデがみね子を見るアングルで撮ることを心掛けていたと言い、ヒデがみね子を見つめる視線に「もしかして・・・・・・。」と思った方も少なくないのではないでしょうか? しかし本作のプロデューサーが綿引や島谷がみね子の元を去った後も、誰もクランクアップしていないという発言をしたため、彼らの再登場の可能性もあり、最後までみね子が誰と結ばれるのかわからないドキドキがあったのも事実です。 『ひよっこ』において、みね子以上に好きな相手が変わる登場人物は他にいなく、何気にモテ女、恋多きヒロインのみね子なのでした。

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そこら中で三角関係勃発!恋の嵐が吹き荒れる!

『ひよっこ』では、みね子の恋模様の他にも常に誰かが恋をしており、恋の嵐が吹き荒れていました。 切ない三角関係を繰り広げたのは、夢に一直線の時子×時子に想いを寄せる三男×三男を婿にしたいさおりと、実を愛し続ける美代子×記憶喪失の実×実に想いを寄せる女優の世津子の2組。 三男の方は切なくもコミカルな恋でしたが、実を巡る大人の女性二人の三角関係は、恋の火花がバチバチ散る緊張感溢れる恋模様でした。 他にも、すずふり亭のシェフの省吾と愛子の恋や、省吾の一人娘・由香と和菓子屋の一人息子・ヤスハルとの微妙な関係性など、物語ラストにかけて次々カップルが誕生していくので、朝からキュンキュンして幸せな気持ちになれました。

あの台詞はアドリブだった!?朝ドラ『ひよっこ』の撮影秘話

『ひよっこ』のヒロインを演じた有村は、憑依型の女優というわけではありませんが、役に入って気持ちで演じる部分とテクニカルで演じる部分を柔軟に使い分けるタイプの女優です。そんな有村が、気持ちで演じて出たアドリブの台詞がこちら。 バーで島谷と別れ、時子の胸で泣きじゃくるみね子の「私、まだありがとうって言ってない……。」という台詞。この台詞でますます泣けた視聴者も多いと思いますが、実は有村のアドリブなんです。 もう一つ、テクニカルで「遊んでみた。」というアドリブがこちら。ヒデと両想いになったみね子が公園のベンチでダンスをするシーン。 最後にみね子がヒデを可愛く抱きしめますが、この“ギュッ”も有村のアドリブなんです。 特にすずふり亭でのシーンは、元司役のお笑い芸人・やついいちろうと有村のアドリブが多かったらしく、それに即座に反応できる高子役の佐藤仁美まで揃っているので、真面目なヒデ役の磯村は大変だったそうです。 朝ドラの撮影は心身ともに大変だと聞きますが、現場の楽しさがそのまま画面から伝わってくるような素敵な朝ドラ『ひよっこ』でした。