2018年1月27日更新

「あの花」「ここさけ」を産んだ制作会社A-1 Picturesについて知ってる?

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A-1 Picturesというアニメ制作会社の歴史

A-1 Picturesは、ソニー・ミュージックエンタテインメント傘下であるアニプレックスが2005年に作ったアニメ制作会社です。当時、アニメ作品においてヒットに恵まれなかったアニプレックスが、アニメ部門の強化と品質向上を目的に設立しました。 設立当時の代表取締役社長には、「ガンダム」シリーズなどを手掛けていた元サンライズのプロデューサー・植田益朗が就任。 アニメ作りのノウハウを知り尽くした実力者の手腕によって早々にヒット作を輩出することに成功し、「あの花」「SAO」「冴えカノ」など大ヒットアニメを量産する人気メーカーになりました。

「おお振り」から始まった作画向上の旅

A-1 Picturesが単独で実制作全般を請け負った最初の作品は、2007年に放送された『おおきく振りかぶって』です。この作品は大ヒットを記録し、順風満帆の船出となりました。 ヒット作が生まれれば、次回作以降の予算を確保することができ、より高品質の作品を生み出しやすくなるという好循環が生まれます。A-1 Picturesもその流れに乗り、『かんなぎ』『黒執事』『WORKING!!』といった人気作を次々と輩出していきました。 特に作画面での向上はめざましく、2010年以降は劇場版アニメを手掛けるほどの急成長を遂げ、2015年公開の『心が叫びたがってるんだ。』では第19回文化庁メディア芸術祭アニメーション部門・審査委員会推薦作品に選出されるなど高い評価を得ました。

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埼玉県秩父市を聖地巡礼地に変えた「あの花」ブーム

たくさんのヒット作を生み出してきたA-1 Picturesは、2011年にフジテレビのノイタミナ枠でオリジナル作品を手掛けることになります。のちにドラマ化もされた『あの日見た花の名前を僕達はまだ知らない。』、通称「あの花」です。 1人の少女の死によって疎遠になってしまった幼なじみ達の苦悩と絆を描いたこの感動アニメは、単に商業的な成功を収めただけでなく、普段アニメをあまり観ない層にも受け入れられました。 舞台となった埼玉県秩父市には熱心なファンがつめかけ、秩父の自治体や鉄道会社も積極的に協力し、聖地巡礼地として定着。アニメを活用した地域活性化の成功例として多くのメディアで紹介され、A-1 Picturesはその地位を不動のものにしました。

「SAO」大ヒットの功罪?

「あの花」以降もA-1 Picturesの勢いは留まることを知りません。2012年には『ソードアート・オンライン』が記録的ヒットとなり、この「SAO」はのちに2期、更には劇場版も公開されるなど、いわゆる“お化けコンテンツ”となりました。 「SAO」のヒット以降、A-1 Picturesには大きな変化が訪れます。それまでは年間6~7作品だったテレビアニメの制作本数が、2013年には9作品に激増。2014~2016年には10作品を越え、そのあまりのハイペースに心配と懸念の声があがるようになりました。 そして遂に、アニメファンは業界の闇を知ることになります。

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社員の過労死、そしてアニメ業界の抱える闇

2010年、A-1 Picturesに所属していたある1人の社員が自ら死を選びました。その自死について2014年に労災認定が下り、その社員の過酷な労働実態が明らかになります。 月600時間労働で残業代も出ない、しかもそれが業界では決して珍しい例ではないという現実。にもかかわらず放送本数は増え続けるという状況は、「アニメ作り」という仕事そのものが自転車操業の状態にあり、いつ崩壊してもおかしくないパンク寸前の環境下にあることを示しています。 設立当初から順調と思われていたA-1 Picturesの抱えていた闇は、1つの会社に留まらずアニメ業界全体に蔓延する暗影でもあり、その事実は多くのアニメファンに衝撃を与えました。

A-1 Picturesが映し出すアニメの未来

2017年、A-1 Picturesのテレビアニメ制作本数は8本に減少し、『GRANBLUE FANTASY The Animation』をはじめ殆どの作品がヒットを記録しました。 この事実がアニメ業界に何をもたらすのか。結論が出るのはまだまだ先になるでしょうが、もしかしたら「粗製濫造」へと突き進んでいた業界全体の流れを「少数精鋭」へと軌道修正する為の第一歩になるのかもしれません。 業界のトップランナーであるA-1 Picturesの影響力は非常に大きく、日本におけるアニメの未来を象徴する存在の1つと言っても過言ではありません。その動向には今後も常に注目が集まるでしょう。