感動の名作アニメ『フランダースの犬』の謎を徹底解説!
『フランダースの犬』とは、1975年に世界名作劇場の枠にて放送されたアニメーション作品です。原作はイギリス人作家の同タイトルの小説で、基本的な部分は同じですがアニメではオリジナル要素がかなり多く含まれています。 主には主人公ネロが貧しく苦しい生活の中で健気に生きる姿が描かれており、悲劇的でありながら切なさを兼ね備えた物語に、多くの人がこのアニメを視聴しました。特に最終回はビデオリサーチの調べで視聴率30.1%という数値を記録し、世界名作劇場の枠内では最高記録となっています。
誰もが一度は涙を流した、『フランダースの犬』のあらすじ
1870年頃のこと。主人公のネロ少年はベルギーのとある村で祖父ジェハンと暮らしていました。貧しいながらも周りの人に助けられながら暮らしていた或る日、二人は金物屋の主人に捨てられた犬、パトラッシュと出会い引き取ることに。 パトラッシュが仕事を手伝うようになり、慎ましくも穏やかに暮らしていたのですが、そんなネロに度重なる不幸が襲いかかります。そして唯一の身内だった祖父を失い、最後の希望だった絵のコンテストにも落選したネロは、飢えと寒さの中、大聖堂でパトラッシュと共に静かに息を引き取ったのでした。
1.『フランダースの犬』の原作とは?
『フランダースの犬』は、イギリス人作家のウィーダが1871年に発行した児童小説で、日本では1908年に出版されています。悲劇的な物語であること、と基本的な部分は同じです。しかし、アニメでは8歳でパトラッシュと出会い、それから1年で亡くなっていますが、原作では2歳頃にパトラッシュと出会い、亡くなる15歳までの時を過ごした事になっています。 コンクールに出展した絵がアニメではおじいさんとパトラッシュの絵ですが、原作では木こりの絵、という相違点もあります。より感動的な話になるようにという演出があったようですね。原作ではネロが思春期の少年ということもあり、彼の将来の夢やアロアとの恋についても語られています。2017年現在も比較的手に入りやすいので、1度目を通してみるのも一興かもしれません。
2.物語の舞台となった場所はどこだったのか?
フランダースの犬の舞台となったのは、19世紀のベルギー北部のフランダース地方です。細かくはアントワープの近郊に位置する、ホーボーケンという地域にある村がモデルだと考えられています。 アントワープにはネロがパトラッシュと共に息を引き取った大聖堂があり、その中にネロが憧れた同郷の作家、ルーベンスの絵が飾られています。大聖堂は聖母マリア教会とも呼ばれる教会で、大きな建物に見事なステンドグラスが飾られ、アニメファンならずとも1度は訪れてみたい場所となっています。 近郊にはルーベンスの家があり、教会前にはトヨタ社が寄贈した記念塔などもありますので観光に訪れる際には聖地巡りをしてみてはいかがでしょうか。
3. ラストシーン、ネロの死因は何だったのか?
大聖堂で息を引き取ったシーンが象徴的な本作品ですが、ネロの死因は一体何だったのでしょうか?ネロ最期の言葉は「 パトラッシュ、疲れたろう。僕も疲れたんだ。なんだかとても眠いんだ、パトラッシュ」となっています。寒さに凍え、凍死によってなくなる場合体が冷えて眠くなる、という症状があることから、ネロの死因は凍死と考えるのが自然です。 また、それ以前にネロは風車小屋の放火の犯人だと疑われたことで牛乳配達の仕事を奪われており、極貧の生活が続いていました。そのため、飢えというのもあったのでしょう。共に亡くなったパトラッシュも老犬だったので、ネロを温めることも叶わず悲しい結末になってしまったのだと思われます。
4.意外と知られていないパトラッシュの犬種とは?
アニメではふんわりした豊かな毛を持つ、セントバーナードに近い見た目のパトラッシュですが、実際の犬種は明らかになっていません。原作では、「黄色っぽい毛並みをした大型の犬、耳はオオカミのように立っている、厳しい仕事で筋肉はもりもりで足はがっしり」と、シェパードを想像しそうな書き方になっています。ふわふわしたイメージはありませんね。 では、実際の犬種はというと、明らかになってはいないものの、ベルギーにはフランダース地方原産のブービエ・デ・フランダースという犬種がおり、これが一番の有力候補となっているようです。実際、ホーボーケンに建てられたネロとパトラッシュの像はこの犬になっています。この犬は硬くて荒い毛並みが特徴的で、牧羊犬など働く犬として活躍していたのだとか。 アニメ化するにあたってデフォルメ化されたので見た目のイメージは違いますが、働く犬はパトラッシュを彷彿とさせます。
5.ネロが最後に見た絵と、ネロの絵の関係性とは?
ネロが最期の場所に選んだ大聖堂にはルーベンスの絵が2枚飾られていました。その絵を見たネロは「これが見られただけで十分だ」と呟きます。同郷の作家としてルーベンスに憧れていたネロはルーベンスと同じく写実的な絵を好んでいたようで、実際アニメに登場する祖父とパトラッシュの絵も写実的です。 そして結果は落選、となっていますが2位という輝かしい記録に輝いていたのです。しかし、賞金が出たのは1位のみ。2位以下に賞金が出ていれば、と思ってしまう結末です。
6.ネロに辛く当たった人物や村人との関係は?
ネロに降りかかった不幸はいくつかありますが、実はネロにきつくあたったのは主にはアロアの父とコゼツ家に出入りする商人のハンスのみなのです。例えば風車小屋の火事。ネロは全くのぬれぎぬで犯人されたのですが、この時にネロを見かけたからと犯人扱いしたのはハンスです。 犯人扱いされた後は村人も彼に牛乳配達を頼まなくなってしまうなど、信用を失っています。子供のネロにとって1人で信用を勝ち取るのは難しかったのでしょう そしてコゼツ家の当主であるバース。彼はネロとアロアが親しくすることを快く思わず、最後の最後までネロを認めようとはしませんでした。コゼツ家は裕福な家でしたから、こちらもネロよりも村人の信頼は厚く、村人もネロよりもコゼツ家を信用していたのだと考えられます。
7.ネロの死は避けられなかったのか?
悲劇的な死を迎えてしまったネロですが、実は彼の死の直前、彼を救おうという声が多く寄せられたのです。大聖堂へ向かう前に訪れたアロアの家では、ネロが財布を拾って届けたことで今までネロに冷たく当たっていたバースが深く反省をし、ネロを受け入れたこと。有名な画家が、ネロにはルーベンスの跡継ぎになりえる、とネロを引き取ろうとしていたこと、などがそうです。 しかし、そんな事を知らないネロは1人大聖堂へと向かってしまいます。もし、あの行き違いがなければ、もっと早くネロのことを分かっていれば彼の死は避けられたはずで、それどころかネロには幸せな人生が待っていたはずなのです。そう考えると悲しみも倍増してしまいますね。
8.『フランダースの犬』の後日談が描かれたものがある?
実はフランダースの犬の後日談という本が発売されています。それは臼田夜半という人物によって書かれた著書で、ネロは何故自殺したのか、という衝撃の一言が添えられています。 この本ではネロが亡くなった後の話が書かれており、大人になったアロアが登場。父の葬儀の際にネロの死の真相を知ったアロアがネロの死について考えていく、という物語が綴られます。アニメでは自殺とは言われていませんので「もしこうだったら」という物語ですが、希望とは何なのかというテーマを元に、死について描かれた作品となっています。