2018年2月23日更新

結末はあなたの手に!リドル・ストーリーでモヤモヤしてみませんか

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『インセプション』

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小説や映画でこんな体験をしたことありませんか?

映画館

「えっ?ここで終わり? 」 小説や映画を観ていてこんな体験をしたことはありませんか?  もちろん、話がうまくまとめきれずに有耶無耶な結末を迎えてしまう作品も時にはあります。しかし、数ある作品の中にはわざと、結末や顛末をはっきりと描かずに終わりを迎えてしまう作品があります。 今回はそんな、「リドル・ストーリー」と称される作品を様々なジャンルから選出して紹介します。あなたもモヤモヤして見ては?

リドルストーリーとはなにか?

『インセプション』 (z)
©️Photofest/Warner Bros. Pictures/zetaimage

物語の中で発生する謎に関して、作中で結末が明確に描かない作品のことを、リドル・ストーリー(riddle story)と呼びます。「riddle」は謎、謎かけといった意味です。 作者が制作中に亡くなってしまうといったケースとは異なり、リドル・ストーリーと称される作品は、意図的に謎の答えが描かれていないという特徴があります。 また、その謎の答えには正解がなく、受取手によって思い描く結末や展開が答えとなるといった特徴があります。

女の選択とは?リドルストーリーの代名詞的作品

小説:『女か虎か?』

リドル・ストーリーの代名詞といっても過言ではない作品が1882年にフラック・ストックトンによって書かれた短編小説『女か虎か?』です。 一方の扉を開くとトラが襲い掛かり、もう一方の扉からは美女が現れ共に暮らすことになる、さてどちらの扉を開くか?という選択を迫られた男。そして、そのどちらの扉にトラが居るのかの答えを知る男の恋人の女性。 果たして女性は男を救うため美女がいる扉を開けさせるのか、それとも嫉妬のあまりトラがいる扉を開けさせるのか。どちらの扉を教えたのかが分からぬまま、女性が男に扉を導くところで物語は終わります。 鑑賞者にとっての恋や愛の在り方を問うシンプルで明快ながら、奥の深い物語となっています。

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藪の中の死体、証言が食い違う7人、果たして真相は?

小説:『藪の中』

芥川龍之介の言わずと知れた短編作品『藪の中』もリドル・ストーリーに類される作品のひとつです。 人気のない藪の中で発見された胸を刺された男の死体。それを巡って、第一発見者やその男の妻、目撃者など様々な立場の人間による証言が綴られます。ただし、不思議なことに登場する総勢7名の意見は、類似している点は多々あれど食い違っており、誰が真実を述べているのかは分からないようになっています。 果たして男はどういう経緯で亡くなったのか、読者を悩ませたまま終わりを迎えます。 本作は黒澤明の手によって『羅生門』というタイトルで映画化もされており、事件の真相までもが描かれています。小説を読んでモヤモヤが治まらないという人は、こちらを見るとその気持ちも晴れるかもしれません。

果たしてハッピーエンドなのか、バッドエンドなのか?

映画:『インセプション』

2010年に公開されたクリストファー・ノーラン監督による映画『インセプション』もリドル・ストーリーの代表と言えるような作品です。 主人公のドミニク・コブは、人間の無意識に侵入する軍の実験段階の技術を用いて、ターゲットの夢に潜り込んでは重要な情報を引き出すスパイ。とある会社の後継者に、会社の解体を促すために、夢の中を舞台にした壮大な戦いを繰り広げます。 この夢の世界という舞台が本作の肝。夢の中では、夢の中に入った人間の思考も強く反映するため、度々ドミニクは自分の理想の世界に飲み込まれそうになります。 そんな時、自分が夢の中に居るのか、現実の世界に居るのかを判断するキーアイテムとして独楽が登場します。ハッピーエンドかと思えたラスト、この独楽が夢か現実かを示す直前でこの映画は終わります。

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3人の名優の演技が光る!果たして事件の真相はーー?

映画:『三度目の殺人』

福山雅治『三度目の殺人』
(C)2017フジテレビジョン アミューズ ギャガ

2017年に公開された是枝裕和監督の映画『三度目の殺人』もリドル・ストーリーといえる謎を秘めた映画です。 主人公の重盛は凄腕の弁護士。ある日、金銭目的で殺人を犯したとされる容疑者の弁護を頼まれます。当初は本人も証言している通りだと考えていた重盛でしたが、殺害された男がその娘に性的虐待を与えており、娘がその容疑者と親しい間柄だったということから、容疑者は実は娘を救う為に罪を被ったのではないかと思うようになります。 そして迎える裁判。明確な真相が分からないまま、容疑者の死刑判決が決まります。果たして、容疑者は本当に殺人を犯したのか。もし殺したとしても、それはお金目的だったのか。その謎は明らかにされぬまま、容疑者は他者によって裁かれていくのでした。

岩井俊二の名作を大胆にアレンジした本作もリドル・ストーリーの1つ

アニメ映画:『打ち上げ花火、下から見るか?横から見るか?』

(C)2017「打ち上げ花火、下から見るか?横から見るか?」製作委員会
(C)2017「打ち上げ花火、下から見るか?横から見るか?」製作委員会

2017年に公開されたアニメーション映画『打ち上げ花火、下から見るか?横から見るか?』も、意味深なラストを迎える作品のひとつです。 中学生の島田典道は、自分より少し大人びた同級生の及川なずなと駆け落ちに出ます。不思議な玉の力を使って、度々失敗する駆け落ちをやり直しつづける典道となずな。少しずつ歪んでいく世界の中、2人はついにある結末を迎えます。 そして、舞台は変わって夏休みが明けた中学校の教室。本来転校するはずだったなずなの席はまだしも、典道の席も空席になっています。果たして典道となずなはどこへ行ってしまったのか。その答えが明かされぬまま、映画はエンドロールを迎えます。

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アニメファンのみならず、映画ファンからの支持も熱い名作

アニメ:『デス・ビリヤード』

「アニメミライ2013」内の企画にて制作されたリドル・ストーリーのアニメーション作品が『デス・ビリヤード』です。 登場するのはスーツを着た若い男と、目が見えているかも不明なお爺さん。二人は閉ざされたプールバーの外へ出るために、やむなくビリヤード対決をすることになるのですが、あまりのお爺さんのビリヤードの上手さやビリヤードの不可解な演出によって、若者はこの勝負に命が懸かっているのかと疑念を抱きます。 あまりのプレッシャーに若者は、勝負を無視してキューでお爺さんを襲い、強引に勝利を手にします。しかしその後、勝負を仕切るバーテンダーからこの勝負が、試合を行なった者が天国か地獄に行くのかを判別する試合であったことが告げられます。 目を覚ましたお爺さんと若者、それぞれが別のエレベーターに乗り扉が閉まる直前、おじいさんはニヤリと不気味な笑みを漏らしますーー。果たしてそれぞれの行く先はどこなのでしょうか。 散りばめられた謎が非常に難解で、25分という短い尺の作品とは思えない深みのある作品となっています。2015年には『デス・パレード』というタイトルで、テレビアニメも放送されました。

何が真実なのかは読者に委ねた、と作者が語る傑作ミステリーゲーム

ゲーム:『うみねこのなく頃に』

ゲームといったメディアでも、リドル・ストーリーは存在します。『ひぐらしのなく頃に』の制作でも知られる同人サークル07th Expansionが、2007年より発表した同人ゲーム『うみねこのなく頃に』も、意図的に謎が残された作品です。2009年にはアニメ版も放送されました。 舞台は魔女伝説が残る孤島の古びた洋館。魔女の伝説に見立てて、超常現象ともいうような奇怪な殺人事件が立て続けに発生します。果たしてこの殺人事件は、本当に魔女の仕業なのか。それとも人間の仕業なのか。 推理ミステリーかと思わせる物語でありながら、そのトリックは作中で語られることなく、作品を体験したユーザーにその真相が問いかけられます。

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リドル・ストーリーのおすすめの楽しみ方

(C)2017「打ち上げ花火、下から見るか?横から見るか?」製作委員会
(C)2017「打ち上げ花火、下から見るか?横から見るか?」製作委員会

人によっては、確固とした答えが示されないのでリドル・ストーリーにモヤモヤしてしまうということもあるでしょう。しかし、リドル・ストーリーの魅力はなんといっても、作品を体験した人それぞれで答えが必ずしも一致しないところにあります。 同じ作品を観た人でも、イメージした答えがまったく逆の顛末だったりするから面白いものです。ぜひこれらの作品を観たことがないという人も、この機会に他の誰かと一緒に体験してみてください。そして意見交換などしてみると良いでしょう。その人がイメージした作品の結末から、相手の思わぬ考え方などを知ることができるかもしれません。