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【ラジー賞】映画人にはありがた迷惑!最低映画を決める「ゴールデンラズベリー賞」とは?

2018年3月6日更新

映画ファン注目の最大の祭典といえばアカデミー賞授賞式ですが、その式の前日に行われるもう一つの映画賞授賞式が、ゴールデンラズベリー賞(ラジー賞)です。その年で最低・最悪な映画を選出するという、映画人にとっては実にありがた迷惑な、この賞について解説します。

そもそもゴールデンラズベリー賞(ラジー賞)とは?

ゴールデンラズベリー賞(ラジー賞)は、映画製作者から宣伝マンに転身したジョン・ウィルソンにより、1981年に創設されました。「野次る、からかう」という意味の動詞「Razz(ラズ)」と、その名詞形にして「木イチゴ」の意味を持つ「Raspberry(ラズベリー)」が語源です。 選考は、「ゴールデンラズベリー賞財団」と名乗る会員の投票で決まりますが、会費の40ドル(約4,200円)を払えば誰でも参加可能。授賞式は基本的にアカデミー賞授賞式の前日に行われ、受賞者には、木イチゴと8mmフィルム缶のオブジェを金色に施したトロフィーが贈られます。

2017年度のラジー賞発表!トム・クルーズが最低男優賞に!

例年通り、アカデミー賞授賞式の前日となる3月3日(現地時間)に、2017年度(第38回)のゴールデンラズベリー賞が発表されました。最低作品賞は、スマホの中にある絵文字たちが活躍する3Dアニメーション『絵文字の国のジーン』が受賞。アメリカでは初登場1位のヒットとなったものの、『シュガー・ラッシュ』や『インサイド・ヘッド』などのディズニー映画のパクリだと酷評されていたのが響いたようです。 最低男優賞は、『ザ・マミー/呪われた砂漠の王女』のトム・クルーズが選ばれました。過去に『カクテル』『宇宙戦争』でノミネート歴がありましたが、ついに初受賞の不名誉に。女優賞は、女装した「マディアおばさん」が活躍するパロディシリーズ第2弾『タイラー・ペリーズ・ブー2!:ア・マディア・ハロウィーン(原題)』の男性俳優タイラー・ペリーが、二度目の受賞となりました。 なお今回は、その年に亡くなった映画関係者を偲ぶアカデミー賞のメモリアルイベントのパロディとして、「#Metoo」運動をめぐるセクハラ問題で告発された映画関係者たちへの「メモリアル映像」も発表しています。

ラジー賞ならではのユニークな部門

アカデミー賞やゴールデングローブ賞といった正当な賞にはない、独自の部門賞が設けられるのもラジー賞の特徴です。ここではそのいくつかを紹介。

最低前日譚・リメイク・盗作・続編賞

リメイクや続編映画が多く製作されるようになったことを踏まえて、1994年に「最低リメイク・続編賞」として新設。さらにはリメイクやスピンオフと称するに値しない、「盗作」と見なした作品なども含んでいき、2008年度に「最低前日譚・リメイク・盗作・続編賞」となりました。 この部門では『スピード2』、『GODZILLA』(1998年版)、『インディ・ジョーンズ/クリスタル・スカルの王国』、『ローン・レンジャー』などが選ばれています。

名誉挽回賞(ラジーの救い手賞)

2014年に新設された賞で、過去にラジー賞の常連だったものの、その後にアカデミー賞やゴールデングローブ賞を受賞したことで、“名誉を挽回した”と見なされた人物に与えられます。これまでにベン・アフレックやシルヴェスター・スタローン、メル・ギブソンが受賞し、ジェニファー・アニストンやM・ナイト・シャマラン監督、ウィル・スミスなどがノミネートされました。 特に、長らくラジー賞の常連で20世紀最低主演男優賞にも選ばれていたスタローンは、『クリード チャンプを継ぐ男』の名演技で見事に挽回した形に。もっとも、勝手にラジー賞の常連にしておいて、勝手に名誉が回復したと決めつけるのもおかしな話ではありますが……。

最低スクリーンカップル賞、最低スクリーンアンサンブル賞

MTVムービー&テレビ・アワードの「最優秀キス賞」のラジー賞版ともいえる、その年に公開された最低映画のカップルやコンビなどに贈られる賞です。ただしこちらは、回を重ねるごとに受賞対象者の規模がどんどん大きくなっています。 主な受賞者としては、デミ・ムーア&バート・レイノルズ(『素顔のままで』)、主演のジョン・トラボルタと一緒にスクリーンに映ってしまったキャスト(『バトルフィールド・アース』)、映画に出演した全キャスト(『セックス・アンド・ザ・シティ2』)などがいます。

こんな作品や人物がラジー賞を受賞しやすい?

歴代のラジー賞受賞作品及び受賞者を見てみると、いくつかの傾向が見受けられます。これを把握しておけば、あなたもラジー賞の予想屋になれる?

大ヒットしていても容赦ナシ!製作費をかけたSF超大作ほど選ばれやすい!

多額の製作費をかけてSFXやCG技術を駆使し、なおかつ超一流のキャストやスタッフを揃えた作品。ある程度の興行的ヒットが見込めるジャンルといえますが、それが逆に「あざとい」「中身がない」としてラジー賞に選ばれるケースが多いようです。 ざっと受賞タイトルを挙げただけでも『スタートレックV 新たなる未知へ』『ワイルド・ワイルド・ウェスト』『バトルフィールド・アース』『トランスフォーマー: リベンジ』『ファンタステイック・フォー』など。ノミネートにとどまった作品でも1年に最低1本は入っています。 このジャンルで常連なのがマイケル・ベイ監督作品。名だたるヒットメーカーとして知られる彼ですが、1999年の『アルマゲドン』以降、『パール・ハーバー』や「トランスフォーマー」シリーズなどで、ラジー賞には欠かせない人物となっています。

ナンセンスかつ下品なコメディ映画もターゲットに!

ナンセンスなコメディ映画もラジー賞に選ばれやすいというのがあります。いくらヒットしていても、「内容がくだらない」「下品でバカバカしい」と忌み嫌われるようで、エディ・マーフィにベン・スティラー、ウィル・フェレルといったコメディ畑の俳優がよくターゲットにされます。 特に目の敵状態なのがアダム・サンドラー。「最も稼いだハリウッド俳優」ランキングにも名前が載るトップスターなのに、1999年の『ビッグ・ダディ』での最低主演男優賞の受賞以降はノミネートの常連に。双子の男女を演じた2011年の『ジャックとジル』では、最低男優賞と最低女優賞をダブル受賞してしまいました。 ちなみに、『ジャックとジル』はラジー賞史上初の全10部門を制覇すれば、サンドラーは同じ年にも『ウソツキは結婚のはじまり』で最低男優賞を受賞しています……。

お騒がせカップルの共演作も高確率で受賞!

私生活で交際や結婚しているカップルが関わった作品もラジー賞に選ばれがちです。ゴシップ誌を賑わせたことへの“見せしめ”としてだったり、「プライベートをスクリーンに持ち込むな」といったやっかみから選ばれているようです。 このケースでは、『スウェプト・アウェイ』(主演のマドンナと監督のガイ・リッチーが夫婦)、『ジーリ』(私生活で交際していたベン・アフレックとジェニファー・ロペスが共演)、『トワイライト・サーガ/ブレイキング・ドーン Part2』(クリステン・スチュワートとロバート・パティンソンのカップルが共演)が作品賞を筆頭とする主要部門を受賞。なおラジー賞が直接の原因ではないでしょうが、この3作品に関わったカップルは全員破局してしまいました。

本当にラジー賞作品は「最低最悪」なのか?

ここまでいくつかのラジー賞受賞作品を挙げてきましたが、そもそも本当に「最低最悪」なのでしょうか?公開時こそ酷評・悪評にまみれたものの、改めて見直してみるとなかなか味わい深かったり、製作者が持つ一貫したテーマが込められていたりと、新たな発見があったりするものです。

鑑賞の際はハリガネのハンガーと洗剤が必須!『愛と憎しみの伝説』

往年の大女優ジョーン・クロフォードの養女クリスティーナが、長年にわたり母親から受け続けた虐待を赤裸々に綴った暴露本『親愛なるマミー』を映画化。オスカー女優のフェイ・ダナウェイが歌舞伎の白塗りメイクを取り入れ、クロフォードを熱演しています。 しかしクリスティーナ本人から「私の母はあそこまでヒドい人じゃなかった」と言われるなど、その演技があまりに過剰すぎたせいか酷評を受けてしまい、第2回ラジー賞にて作品賞、脚本賞、女優賞など5部門を受賞。第10回には1980年代最低作品賞にも選ばれてしまいました。 しかし現在ではそのダナウェイの演技が逆に面白いとして、アメリカではハリガネ製のハンガーと洗剤を持参した観客による「絶叫応援上映」が行われるなどのカルト的人気を博しています。なぜハリガネハンガーと洗剤なのか?気になる方はすぐチェックしましょう!

ラジー賞受賞はある意味名誉?『ショーガール』

世界的ヒットとなった『氷の微笑』のポール・ヴァーホーヴェン監督と脚本家ジョー・エスターハスのコンビによる、トップダンサーの座を巡る女性たちの熾烈な争いを描くサクセス・ストーリー。そのあまりにも過激な性と暴力描写が酷評され、ラジー賞の主要6部門を制覇、後に1990年代最低作品賞も受賞。ヴァーホーヴェン自ら授賞式に登壇し、トロフィーを受け取ったことでも知られます。 しかし、一連のヴァーホーヴェン作品に共通しているのは「強い女性」。『氷の微笑』のミステリアスな女性作家しかり、『ブラックブック』でのナチスに入り込む女性レジスタンスしかりと、世相の抑圧に抗おうとする女性の逞しさを描いています。 浅はかな男性に屈することなく一流ダンサーとしてのし上がろうとする女性を描く『ショーガール』も、最新作の『エル ELLE』も、通底にあるテーマは全くブレていません。良識派の眉を常にひそめさせるヴァーホーヴェン作品は、良い意味で「ラジー(からかう、野次る)」賞向きかもしれません。

ラジー賞はあくまでも「お遊び」、本気にするべからず

以上、ラジー賞にまつわる事柄やエピソードに触れてきましたが、あくまでもこの賞は権威も何もない、ただの「お遊び」に過ぎません。自分が好きな映画がラジー賞に選ばれたからといって激怒する必要はありません。『愛と憎しみの伝説』のように後々再評価される作品もありますし、かたや名作といわれる作品を最低作品と見なす人だっているでしょう。 とある映画評論家の言葉「どんなヒドい映画にも必ず一つは良い点がある」ではないですが、ラジー賞作品にも良いと思える点はあったりするもの。ここはひとつ気軽な気持ちで一連のラジー賞作品を観てみて、思わぬ掘り出し物を見つけるのもいいかもしれません。