女性の性被害を訴える「#MeToo」運動、国内外の映画界での動向は?【2018年最新】

2018年1月8日更新

2017年、ハリウッドの大物プロデューサーが女性へ性的暴行やセクハラ等を行ったとして、大問題となりました。同様の問題は世界中の映画界で起こっており、映画界でも大きく注目されています。この記事では、一連の事件をまとめて紹介していきます。

2017年、ハリウッドで起こった映画界最大の告発事件とは?

ハリウッド (フリー画像)

2017年は映画界で様々なニュースがありました。喜ばしい物も勿論たくさんありましたが、中には悲しいものも。 その一つが、数々の名作を世に送り出したハリウッドの大物プロデューサー、ハーベイ・ワインスタインによる女性へのセクハラ問題の告発と、それに端を発して始まった通称「#MeToo」運動ではないでしょうか。 2018年現在、「#MeToo」運動はハリウッドに止まらず、政界や世界中に広がる大きな問題となっています。この記事では、2018年の映画業界の動向にも大きく関わるこの問題について改めて紹介していきます。

発端となった大物プロデューサー、ハーベイ・ワインスタインって何者?

ハリウッドのセクハラ被害に関する事件を語る上で欠かすことが出来ないのが、プロデューサーのハーベイ・ワインスタインでしょう。映画製作配給会社ミラマックスの設立者でもある彼はこれまで、『恋に落ちたシェイクスピア』『シカゴ』などの作品をプロデュースを担当。 なおミラマックスでは、ハーベイが退社する2005年までの間に、249つのアカデミー賞ノミネート作品を発表しています。 プロデューサーとしての彼は、マット・デイモンやベン・アフレック、クエンティン・タランティーノといった若い才能の発掘にも長けた人物だったと言われています。 しかし、2017年10月に女優のアシュレイ・ジャッド、ローズ・マッゴーワンらに対するセクハラ問題が表面化します。その後、みるみるうちに映画界を追放されてしまいました。

決着は映画で、ハリウッドのセクハラ事件題材のドキュメンタリー映画も製作へ

ハーベイ・ワインスタインの事件に端を発し、ハリウッドではセクハラや性被害に対する問題が大きく取り上げられるようになっていきます。遂にはセクハラ事件を題材にしたドキュメンタリー映画が製作される事態に。 なお、同作やハーベイ、事件に関係する人々については、下記の記事でも詳細に解説していますので、興味のある方はそちらも合わせて読んでみて下さい。

今更聞けない……そもそも「#MeToo」運動って何?

「#MeToo」運動とは、女優のアリッサ・ミラノがTwitterに投稿したツイートに端を発して誕生した運動です。彼女は性的被害やセクハラにあった女性に対して、#MeTooとリプライすることで問題の大きさを訴えようとしたのです。彼女の投稿には1日で5万件を超えるリプライが寄せられ、今尚その投稿は増え続けています。

ケヴィン・スペイシー、ベン・アフレック、ダスティン・ホフマンに大統領まで、続々と告発される大物たち

ケヴィン・スペイシー (ゼータ)
©Hahn Lionel/Sipa USA/Newscom/Zeta Image

こうした女性への性被害が取り沙汰される中で、映画界の様々な著名人への告発も相次ぎます。 俳優のケヴィン・スペイシーは、過去の性的暴行事件への関与疑惑で自らが主演を務める人気ドラマ『ハウス・オブ・カード』から降板。アマゾン・スタジオズの社長ロイ・プライズはセクハラ疑惑で同社を解雇されました。 また、俳優のベン・アフレックやダスティン・ホフマンに加え、ジョージ・H・W・ブッシュ元米大統領もセクハラ被害を訴えられています。ケヴィン・スペイシーは事件への関与疑惑でスコットランドヤードの操作対象になった事も明らかにされていますが、彼のように今後も様々な俳優が訴えられる可能性は否めません。

男性から女性に、とは限らないのがセクハラ問題

先述のケヴィン・スペイシーですが、彼が性的暴行を行った相手は男性俳優のアンソニー・ラップ。 謝罪声明文の中で自らがゲイであることを告白したスペイシーに関しては、アンソニー・ラップ以外の男性への性的暴行などの余罪も明らかになっています。 セクハラ・性的問題は必ずしも男性から女性に対するものとは言い切れないのです。

悲しい事件の裏で、あの超有名俳優のエピソードも話題に

愛する作品のスタッフやキャストが性的な問題で訴えられているのは、ファンなら誰しも胸が痛いものかと思います。そんな悲しいニュースの中でも、俳優、映画プロデューサーのブラッド・ピットに関するあるエピソードが別の視点で話題に上がっています。 先述の映画プロデューサー、ハーベイがプロデュースする映画に主演していたグウィネス・パルトローは、彼に言い寄られた際に、当時交際中だったブラッド・ピットに相談。その後、彼はハーベイの影響力を恐れず、二度とこんなことをするなと抗議したそうです。 また、彼の元妻であるアンジェリーナ・ジョリーも同様の被害を受けていた為、ブラッド・ピットはハーベイとは決して仕事をしないと誓い、ハーベイと仕事をしていた他の人たちにも彼の素行についての警告をしていたとのこと。 ブラッド・ピットの勇気ある行動はもちろん、彼自身のプロデュース作品がアカデミー賞などで高く評価されている点から見ても、痛快なエピソードと言えるでしょう。

ハリウッドだけじゃない!世界の映画界で起きている性被害の実態は?

問題にならないのが問題?日本での「#MeToo」運動は?

ハリウッドに端を発した「#MeToo」運動は、日本にも広がっています。国内の著名人だと男性歌手のぼくのりりっくのぼうよみが「#MeToo」に関するツイートを発信。また、芸能人に限らず、一般の女性たちの投稿も見受けられます。 その一方で、日本の映画関係者たちの中での「#MeToo」運動は決して活発なものではありません。ハリウッドでは被害にあっても口に出せなかったり、黙殺されたりというケースもあったと報じられている事から考えても、「#MeToo」運動がない=日本の映画界でセクハラ・性被害はない、とは言えません。 むしろ訴える事すら出来ないほどの状況、という可能性もあるのです。

韓国ではキム・ギドク監督が暴行で刑事告訴!

韓国の映画界では、『嘆きのピエタ』『メビウス』などで知られる映画監督のキム・ギドクが、女優に対する暴行及びベッドシーンの強要をしたとして刑事告訴されています。キム・ギドクが告訴されたのは、米国で「#MeToo」運動がスタートする直前の2017年8月ではありますが、世界各国の映画祭で高い評価を受ける彼のこの事件は、映画ファンにはショッキングなものだったのではないでしょうか。 また、キム・ギドク監督に限らず、韓国の芸能界では以前から性的被害者からの告訴が報じられるケースも多く、オーストリア紙DER STANDARDは韓国の芸能界には性接待によって番組出演等の機会が与えられる暗黙のルールがあるとも報じています。 なお、芸能界以外では、大学街を中心にした教授たちの性差別発言が問題になることがありました。 もちろんこれらの報道にはゴシップの可能性もあります。しかし、仮に一部でも本当に被害にあっている人がいるなら、「#MeToo」運動の浸透によって、辛い状況から抜け出す事が出来るようになればと思います。

他人事でない、「#MeToo」運動が映画界に与える影響とは?

徐々に映画界の枠を超えて浸透しつつある「#MeToo」運動ですが、ケヴィン・スペイシーの例を見てもわかるように、映画・ドラマ界にも当然大きな影響があります。国内の例をあげると、2016年にビジネスホテルの女性従業員に対する性的暴行で話題になった俳優の高畑裕太や、2017年に未成年者との飲酒や不適切な関係で話題になった小出恵介の出演作品にはそれぞれ大きな影響がありました。 高畑、小出両名の事件は、それぞれ直接「#MeToo」運動とは関係ありませんが、こうした不祥事によって作品がお蔵入りしたり、当初予定されていた出演者が急遽変更されるという事例は既にあります。「#MeToo」運動の浸透により、今後このようなケースが増える事も予想されます。

大きな問題を前に、スピルバーグやトム・ハンクスが立ち上がった!

スティーブン・スピルバーグ
Brian To/WENN.com

映画界のみならず、世界中で大きな問題となっている「#MeToo」運動。度重なるセクハラ告発を受けて、アカデミー賞を主催する映画芸術科学アカデミー(AMPAS)では、新たな行動規範を設けるという措置をとりました。 スティーブン・スピルバーグ、トム・ハンクス、そして「スターウォーズ」シリーズのプロデューサーとしても知られるキャスリーン・ケネディらが参加している同団体では、弁護士や政治家といったセクハラの専門家たちによる諮問機関を結成。この行動規範では、人種や年齢といったあらゆる差別を禁止し、問題の発覚時には懲戒処分を含む措置が取られるそうです。

LGBT、人種、配信型映画……映画界で訴えられてきた様々な差別や問題

「#MeToo」運動に端を発し、次々と明らかになるセクハラ問題ですが、映画界でこれまで問題になってきたのはこれらの性的な問題だけではありません。 2018年現在もまだ話題に上がる、映画界の差別問題の一部を紹介します。

LGBT問題

「X-MEN」シリーズのマグニートー、「ロード・オブ・ザ・リング」シリーズのガンダルフなど、映画界で様々な素晴らしい役を演じてきた俳優イアン・マッケラン。彼は自らをゲイだとカミングアウトしている俳優の一人です。 彼はLGBTを擁護する運動に参加している一方で、「映画産業は黒人だけでなく、女性やゲイも軽んじている」とアカデミー賞に対する批判的な発言しています。

Friday night in Paris, It's Only the End of the World took home Best Actor (Gaspard Ulliel), Best Editing and Best Director at the César Awards. It was a moment of sheer joy of course. That type of acknowledgement, these victories, these moments of exhilaration would be impossible without you all, and without the love and enthusiasm you have so generously shown to this film. It makes me think of Marcel Duchamp’s Creative Act. Two factors truly impact the fate of an artist, according to him. The first one is the artist himself, and the second one - to Duchamp’s own admission the most decisive denominator of the two - is the spectator "who later becomes the posterity". The audience alone acts as the instrument from which originates or not posterity, celebrating artists on one hand, and on the other, forgetting other meritorious ones. "Millions of artists create; only a few thousands are discussed or accepted by the spectator and many less again are consecrated by posterity", writes Duchamp. Considering all this, I want to thank you for your loyalty. On this film, but also from the very beginning of it all. What a comforting thought to know that cinema fosters connectedness that ripens into friendship over time. We lived, Friday night, a moment of validation that inspired us and propelled us forward, and towards other stories to tell with even more conviction and passion. That of It’s Only the End of the World saw one of its chapter come to a close on that night, but the adventure isn’t over. The film will live as long as you want it to! Photo : Rindoff/Charriau

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ただし、同じくゲイをカミングアウトしているカナダの俳優・映画監督のグザヴィエ・ドランは「若き天才」と称され、映画界でも高い評価を獲得しています。 この事から考えると、LGBT問題に関しては映画界全体の問題というよりも、ハリウッドでの根深い問題と言えるのかもしれません。

人種差別問題

アカデミー賞に対する批判の一つとしてしばしば取り上げられるのが、人種差別問題です。 2017年の第89回アカデミー賞では、『ムーンライト』 のマハーシャラ・アリをはじめとする6人の黒人俳優がノミネートされました。これはアカデミー賞最多となる数ですが、同賞は過去2年間にわたって白人俳優だけがノミネートされる「白すぎるオスカー」と揶揄される事もあったのです。人種差別問題は依然として映画界に残る差別問題の一つと言えるでしょう。

「映画館で上映しない映画」に対する問題

上記の2つは古くから映画界に残る問題ですが、近年、映画界には新たな差別が生まれています。それは、映画館で上映されない、ネットのみの配信作品に対する差別です。2017年のカンヌ国際映画祭では、ポン・ジュノ監督のNetflixオリジナル作品『オクジャ/ okja』を含む2作品をコンペディション部門に選出しました。 しかし、これに反発の声が上がったため、同映画祭では「2018年からフランス国内のスクリーンで上映される予定のない作品はコンペティション部門に出品できない」という異例の発表を行ったのです。個人に対する差別でこそありませんが、ネット配信の作品が増加している今、この配信型映画に関する問題は今後もクローズアップされることがあるのではないないでしょうか。

「#MeToo」運動により、2018年は映画界の改革の年になるか?

女優 フリー画像

セクハラ問題に代表される性差別はもちろん、LGBT、人種、配信型映画など、未だ様々な問題を孕む映画業界ではありますが、「#MeToo」運動に端を発し、徐々に業界全体が健全化に向けて動いているように思います。 2018年は、2017年に噴出した様々な問題を解決していき、映画業界全体の大きな改革の1年となるといいですね!