『グリンチ』(2018)を過去作と比較&正直評価 ミニオン要素の小ネタも紹介!
イルミネーション版『グリンチ』(2018)の魅力を過去作と比較しながら紹介
「怪盗グルー」シリーズや『ミニオンズ』(2015)、『ペット』(2016)、『SING/シング』(2016)など、ヒットを連発しているイルミネーション・エンターテインメント。そんなイルミネーション製作のクリスマス映画『グリンチ』が、2018年12月14日に公開されました。 これまでに実写化もされてきた名作絵本を原作とした本作。クリスマスが大嫌いな緑色のアイツ、グリンチは、本作ではどんな描かれ方をしたのでしょうか。 この記事では、原作絵本や2000年に公開された実写版、そして本作のあらすじや声優キャスト、隠された小ネタなどを紹介。また、これまでの映像版との比較や本作の評価もお伝えします。
グリンチってどんなキャラクター?
『ザ・グリンチ(原題)』の原作は、1957年に発売された絵本『いじわるグリンチのクリスマス(原題:How the Grinch Stole Christmas)』です。日本では、2000年の実写映画公開に合わせて『グリンチ』のタイトルで、新訳版が発売されました。 体中が緑色の毛で覆われたグリンチは、人里離れた山の洞窟に住んでいます。彼はクリスマスが大嫌い。原作ではその理由は明かされませんが、グリンチがフーの村にクリスマスを盗みに行く、というあらすじは同じです。
これまでの映像化作品を紹介!
グリンチの物語は、1966年に一度テレビスペシャルとしてアニメ化されています。英語圏では、絵本と同様にこちらも世代を超えて愛されているようです。 1992年の映画『ホーム・アローン2』でも、マコーレー・カルキン演じるケヴィンがリムジンのなかでこのアニメを見ているシーンがあります。
ロン・ハワード監督、ジム・キャリー主演で2000年に公開された実写映画『グリンチ』は、ドクター・スースの絵に忠実な特殊メイクが話題になりました。 本作では、絵本では書かれていなかったグリンチがクリスマスを嫌いになった理由や、彼がクリスマスを盗んだ方法がしっかりと描かれました。また、絵本にはグリンチ以外のキャラクターはほとんど登場しませんが、本作では様々なキャラクターが登場しています。
イルミネーション版『グリンチ』はどんな作品?
『グリンチ』のあらすじ
あるところに、家族も友人もいない孤独な男、グリンチがいました。彼は愛犬のマックスと共に誰も来ないような山のてっぺんに住んでいました。そんな彼がこの世で最も嫌うのが、誰もが幸せな気分になるはずの“クリスマス”。そして、山の麓にはフーの村という、村人全員がクリスマスに命をかけるほど全力で楽しむ村があったのです。 過去のトラウマによって、とにかくクリスマスが嫌いなグリンチ。かくして、彼はこの村からプレゼントを、そしてクリスマスを台無しにすることを画策するのでした。
グリンチの声優を務めるのはベネディクト・カンバーバッチ!
グリンチの声優を務めるのは、テレビシリーズ『SHERLOCK』(2010〜2017)や映画『イミテーション・ゲーム/エニグマと天才数学者の秘密』(2014)などで、世界的な人気俳優となったベネディクト・カンバーバッチ。 カンバーバッチはこれまでにも、「ホビット」シリーズ(2012〜2014)のスマウグ/ネクロマンサー役や、アニメーション作品『ペンギンズ FROM マダガスカル ザ・ムービー』(2014)のシークレット役などで声の出演を務めてきました。 カンバーバッチは本作でもこれまでの経験を活かし、声だけでグリンチのキャラクターをうまく表現しています。
日本語吹替版では大泉洋をはじめとする豪華吹き替え陣が集結!
グリンチ/大泉洋
主役のグリンチを演じるのは、大泉洋。ひねくれものなキャラクターを軽快に演じています。 大泉洋は、『千と千尋の神隠し』(2001年)や『ハウルの動く城』(2004年)などのジブリ作品での声優もしていますが、本作で吹き替えの仕事に初挑戦しました。
シンディ・ルー/横溝菜帆
(画像左) ある願い事をするため、サンタクロースを捕まえようとしている少女シンディー・ルー。吹替版でシンディ・ルーを演じるのは横溝菜帆です。 横溝菜帆は、ドラマ『義母と娘のブルース』や『時をかける少女』で活躍する演技派子役です。吹き替え初挑戦ということで、注目が集めました。
杏/シンディのママ・ドナ
(上見出し画像右) シンディ・ルーのママ、ドナは3人の子供を抱えて大忙しの毎日を送っています。日本語吹き替え版では、人気女優の杏がドナを演じます。 杏は女優として大活躍していますが、実は過去にも『エクソダス:神と王』で吹き替えの経験が。やさしいママを熱演する杏に注目ですね!
秋山竜次(ロバート)/ブリクルバウム
クリスマスを盛り上げたいと思っている陽気なキャラクターをお笑いトリオ・ロバートの秋山竜次が演じます。役名は、ブリクルバウム。 秋山は声優として、アニメ映画『劇場版ポケットモンスター ダイヤモンド&パール アルセウス 超克の時空へ』(2009年)や『夜は短し歩けよ乙女』(2017年)などに出演した経歴を持っています。
宮野真守/ナレーター
"映画「グリンチ」ジャパンプレミア" https://t.co/Gjcv0qC94j
— 宮野真守公式 (@miyanomamoru_PR) November 26, 2018
本作のナレーターを務めるのは、宮野真守です。 宮野真守といえば、代表作がありすぎるほど有名な声優。近年では、アニメーション映画『打ち上げ花火、下から見るか? 横から見るか?』(2017年)や「ファンタスティック・ビースト」シリーズで、エディ・レッドメインが演じる主人公ニュート・スキャマンダー役の吹き替えなどで知られています。
【ネタバレ注意】2000年の実写版との違いは?
グリンチと村人の関係
実写版ではグリンチはフーヴィルの北にある山に引きこもって暮らし、フーたちからはまるで怪物のように恐れられています。特に村長は、グリンチのことを子供のころから嫌っていました。これは原作にはない実写版だけの設定です。 イルミネーション版でも、グリンチは山奥の洞窟で暮らしていますが、村人たちはグリンチのことを特別恐れているわけではありません。ブリクルバウムにいたっては、自分はグリンチの親友だと思いこんでいるほどです。
シンディの目的が変更されている
実写版でテイラー・モムセン演じるシンディ・ルー・フーは、機械に巻き込まれてしまい、危ないところをグリンチに助けられました。彼女は村人たちから恐れられているグリンチのやさしさを感じ、彼を村に迎えようと奮闘します。 イルミネーション版のシンディは、あるお願い事をするためにサンタクロースを捕まえようとしています。どうしてもサンタクロースに会いたい彼女は、クリスマスを盗むためサンタクロースに変装したグリンチに出会います。
グリンチがクリスマスを嫌いになった理由は?
原作では、グリンチが孤独な暮らしをしている理由やクリスマスを嫌う理由は明らかにされていません。それでは、実写版とイルミネーション版では、その理由にどんな違いがあるのでしょう。 ジム・キャリーが演じた実写版のグリンチは、子供のころ毛深かったためにいじめられていました。ある年、彼はクリスマスに身だしなみを整えようと毛を刈ったところ大失敗。顔にケガをしてしまったのです。それを見た同級生たちに大笑いされ、深く傷ついたグリンチは、洞窟に引きこもって暮らすようになります。 イルミネーション版では、グリンチは孤児で寂しい子供時代を送ってきたという設定になりました。クリスマスを誰とも祝ったことがなく、その寂しさからクリスマスを嫌うようになったのです。
大人向きから子供向きにシフト
また、実写版ではいじめに続いてグリンチの初恋の人が登場するなど、男女の色恋沙汰要素が随所に存在していました。「いじめの張本人である市長に彼女をとられてしまっていた」という描写がミソでもありましたが、今回はそういった色恋が一切排除されています。 あくまで、他人に優しくいること、いたわることに焦点を当てた本作は、イルミネーションスタジオが手がける作品のメインターゲット層である子供向きに改変されているように感じました。
声優の演技を正直評価!
本作はグリンチの声優を、人気英国俳優ベネディクト・カンバーバッチが務めたことでも話題になりました。彼はこれまで「ホビット」シリーズや、『ペンギンズ FROM マダガスカル ザ・ムービー』でも声優を務めるなど、実は声だけの演技でも評価されています。 対して日本語の吹き替えを務める大泉洋も、カンバーバッチ同様演技力の高い俳優として知られています。それだけでなく、『千と千尋の神隠し』、『ブレイブ ストーリー』(2006年)や『思い出のマーニー』(2014年)、『バケモノの子』(2015年)など大作アニメ映画で声優としての実績も積んでいます。 話題の芸能人が起用されがちな日本語吹き替え問題。しかし、今回はそのクオリティが確実に保証されているのです。
ミニオン要素満載?『グリンチ』の小ネタを紹介!
本作は一見シンプルなストーリーでありながらも、一回見ただけでは全て見つけることがほぼ不可能と思われるほどの小ネタが満載だったりする点が面白いです。
1. グリンチが怪盗グルーの格好をしている
まず、イルミネーションスタジオの看板作品『怪盗グルーと月泥棒』に関連した小ネタ。グリンチがサンタに変装するために必要なソリを奪おうとする時、彼はグルーと同じ格好(黒とグレーのストライプ柄マフラーに、小さめな黒い帽子)をしています。
2. 「Happy」のファレル・ウィリアムズがナレーター
「ミニオン」ネタは他にもあります。『怪盗グルーの月泥棒』の主題歌でもあり、世界的に大ヒットした人気曲「Happy」を歌うファレル・ウィリアムズが本作でナレーションを務めているのです。ちなみに、「Happy」は本作のとあるシーンにも使用されているので要チェック!
3. 『ドクター・ストレンジ』ネタも登場?
これは何とグリンチの声を演じた俳優、ベネディクト・カンバーバッチネタ。彼がマーベル・シネマティック・ユニバースでドクター・ストレンジ役を務めていることを知っている人は多いと思いますが、本作ではグリンチの屋敷の窓に注目。 完全に同じ、とまではいかないものの、デザインがストレンジのサンクタム・サンクトラムの窓の模様と酷似しているのです!
4. 原作者の名前がこっそりと……
最後に、99%初見では気づけない細かいネタをご紹介。 それは、グリンチがサンタの衣装を作っている時のミシンの型名!“Theodor”と表記されたそれは、グリンチの生みの親でもあるドクター・スースの本名、Theodor Geisel(セオドア・ガイゼル)を意味しているのです。ロゴもかなり小さいので、これに気づいた人はすごい!
グリンチが知ったクリスマスの本当の意味とは?
その優しいストーリーと声優の演技力、小ネタなどを本作の魅力の一部として紹介してきましたが、何より大きいのは、そもそものアニメーションの質の高さにあります。シンディがサンタに手紙を出そうと急いで、すべりだいで滑っていくシーンのカメラワークは臨場感抜群!さらに、何と言ってもグリンチの毛の表現が凄まじいのです。ふわっふわ。一体どうやったらあんなにアニメで、ふわっふわ感を出せるのか。 「グリンチ、もう絶対触ったら気持ちいいじゃん!」と思いながら観進めていく中で、グリンチが孤独を感じるシーンが登場すれば、もう可哀想でたまらなくて私が抱きしめたくなる。“あの”いじわるで悪臭放つキャラクターをここまで可愛くできたのも、イルミネーションの手腕なのです。 また、本作では原作や実写版よりも「家族の大切さ」や「クリスマスの本当の意味」が描かれています。 かわいいキャラクターと心にしみるストーリーの『グリンチ』は、とくに家族での鑑賞におすすめです。