2018年5月2日更新

映画史に残る『ミザリー』の狂人アニー・ウィルクス

このページにはプロモーションが含まれています
『ミザリー』キャシー・ベイツ、ジェームズ・カーン
© CASTLE ROCK ENTERTAINMENT/zetaimage

AD

映画史に残る狂人アニー・ウィルクス(『ミザリー』)

スティーヴン・キング原作のサスペンス映画『ミザリー』(1990)。本作に登場するアニー・ウィルクスは、映画史に残る狂人のひとりです。 多くの悪役が見た目にも残酷さや異常性を強調されるなか、アニーは一見人間味のある普通の女性。しかし、その内にはらんだ狂気には、並みのヒーローも悪役も裸足で逃げ出すほど。少しずつ本性をあらわにしていく彼女は、人間の恐ろしさを描くのを得意とするキング作品のなかでも、突出した存在と言えます。 そんなアニー・ウィルクスの魅力を徹底解説。また、アニーを演じたキャシー・ベイツのその他の出演作もご紹介しましょう。

アニー大活躍?映画『ミザリー』のあらすじ

大人気ロマンス小説「ミザリー・シリーズ」の作者ポール・シェルダンは、大衆向けの小説を書くことに飽き飽きしていました。そこで、シリーズを終了させることに。しかし、最終編となる新作を書き上げ出版社に向かう途中、彼は交通事故にあい重傷を負ってしまいます。 そんなポールを助けたのは、彼のナンバーワンのファンだという中年女性アニー。彼女は自宅で彼を看病しますが、なかなか解放してくれません。 「ミザリー・シリーズ」の最新作を読んだアニーは、結末が気に入らないとポールに原稿を燃やすよう強要。シリーズがつづくように書き直すことを要求します。彼女が納得する結末の新作が書き上がるまで、ポールは監禁されてしまい……。

AD

愛ゆえの狂気……ヤンデレ女アニー

アニーはポールと彼の作品を心底愛し、その愛が一方的で歪んでいるとはいえ、ポールに献身的に尽くします。彼女がだんだんと狂気に身を任せていったのは「こんなに愛して尽くしているのに、どうしてわかってくれないの!?」という怒りと悲しみが原因でしょう。 また、人里離れた場所で家族も友人もなく孤独に暮らすアニーにとっては、ポールの書く小説「ミザリー・シリーズ」が唯一の慰めでした。それが終了し、2度と新作が出ないとなると彼女の生きがいがなくなってしまうのです。それは彼女にとって、絶対に阻止しなければいけないことでした。 ポールを愛しているから離れたくない、「ミザリー・シリーズ」が大好きだから書きつづけてほしい、そのためには手段をいとわないアニーのヤンデレぶりは強烈です。

誰もがアニーになる可能性がある!?

アニーの恐ろしさの根底にあるのは、ポールに危害を加えるほどの狂気を育てていった原因が誰でも持ち合わせている感情だということです。 彼女が狂気を生み出したのはポールと彼の作品「ミザリー・シリーズ」が“好き過ぎる”ため。また、彼女はポールのことはほんの些細なことまで知っているというストーカー気質も持ち合わせていました。 なにかを好きだという気持ち、好きなものや人をもっと知りたいをいう気持ちは、多くの人が持っているものではないでしょうか。また、愛する人のそばにいたいという気持ちが行き過ぎた結果、アニーはポールを監禁することにしたのです。

AD

アニーのような相手から逃げるにはどうすればいい?

アニーのような相手に対して、抵抗をつづけることは賢い選択ではありません。彼女の行動原理はあくまでも「愛」であり、相手がその気持ちを受け入れ、返してくれることを望んでいるのです。 彼女のような相手に監禁されてしまった場合は、作中でポールがしたように相手を受け入れる“フリ”をすることが大切です。大人しくしている限り、相手はあなたを傷つけようとすることはありません。そうして相手を安心させ、脱出の機会をうかがいましょう。 隙を見て助けを呼ぶこともできますが、“愛し合う”ふたりの邪魔をする者は殺されてしまう可能性があるので、助けに来てくれた人が殺されては困る場合はやめておく方がいいかもしれません。

アニー役で一躍スターに!実力派女優キャシー・ベイツ

アニーを演じたキャシー・ベイツは、本作でアカデミー主演女優賞を獲得しました。 一見普通の女性が愛ゆえに陥っていく狂気、それが全開になったときの恐ろしさを見事に表現したベイツの演技は絶賛され、一気に演技派として知られるようになります。 強烈な役で有名になった場合、それ以降も似たような役にキャスティングされる俳優が多いなか、ベイツはその翌年からも娼婦や退屈した主婦、若い新婚女性と中身が入れ替わってしまう老女、過保護な母親など幅広い役柄を演じ、その実力を見せつけました。 コメディからサスペンス、ヒューマンドラマまで多くの作品で独特の存在感を示すベイツは、まさに唯一無二の俳優と言えるでしょう。

AD

大ヒット映画からテレビシリーズまで!キャシー・ベイツの出演作

気のいい世話焼きの成金女性『タイタニック』(1997)

1997年の大ヒット作『タイタニック』に、キャシー・ベイツは成り上がりのモリー・ブラウン役で出演しています。 上流階級の他の乗客からバカにされながらも、実力で財を成した彼女は平然としていました。貧しい出自のジャック(レオナルド・ディカプリオ)がパーティに出席する際には息子の服を貸したり、テーブルマナーを耳打ちするなど、彼の面倒を見てくれます。 毅然とした態度で自分の信念を貫くモリーを、ベイツは堂々としながらも優しい演技で表現しています。

人生を見つめ直す中年女性『夢見る頃を過ぎても』(2002)

長年連れ添った夫から離婚を切り出され、大好きな英国人歌手ヴィクターは何者かに殺されるという二重のショックを受けた主婦グレイス(ベイツ)。傷心のなかヴィクターの故郷を訪れたグレイスは、彼の使用人ダークと知り合い、ヴィクターを殺した犯人を探すことになりますが……。 それまでの人生が崩れ、旅に出ることにしたグレイスをベイツがチャーミングに演じています。また、本作で披露している見事な歌声も必聴。

テレビシリーズ『アメリカン・ホラー・ストーリー』(2013〜)

『glee/グリー』(2009〜2015)のライアン・マーフィがプロデューサーを務めるテレビシリーズ『アメリカン・ホラー・ストーリー』に、ベイツはシーズン3から出演しています。 「アメホラ」は、シーズンごとに違うストーリーをほぼ同じキャストが演じるという一風変わったシリーズ。シーズン3の『アメリカン・ホラー・ストーリー:魔女団』(2013)で、ベイツは実在したアメリカ社交界の名士で奴隷使用者、差別主義者のマリー・デルフィーン・ラローリーを演じ、圧倒的な存在感を見せました。 シーズン4の「怪奇劇場」では悲しい過去をもつヒゲ女エセルを、シーズン5「ホテル」では、吸血鬼となった息子を溺愛するアイリスを演じるなど、ひとつのシリーズでベイツの様々な演技が楽しめます。

ただのサイコパスとは一味違った恐ろしさを持つ『ミザリー』のアニー・ウィルクス。ゴールデンウィークには、ぜひ彼女の狂気に触れてみてください! また、アニーを演じたキャシー・ベイツの他の出演作も楽しんでいただけるとうれしいです。