2018年7月13日更新

映画『サイコ』のサイコパス、ノーマン・ベイツという男

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サイコシャワー
出典 : amzn.asia

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ノーマン・ベイツという男

筆者が「深みのある悪役」と聞いて真っ先に思い浮かべたのが、このノーマン・ベイツという男です。 サスペンスの巨匠であるアルフレッド・ヒッチコックの代表作にして最高傑作『サイコ』(1960)で登場し、公開当時多くの観客に凄まじい恐怖を与えました。第一の被害者であるマリオン(ジャネット・リー)を襲ったシーンは、「サイコシャワー」として広く知られており、その後に続く映画業界に多大なる影響を与えました。 今回はそんな映画史上最も有名で最も猟奇的な悪役、ノーマン・ベイツについてご紹介します。

伝説的サイコスリラー『サイコ』

サイコ
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恋人のために会社のお金を横領してしまう主人公が繰り広げる逃亡劇かと思いきや、途中で休んだモーテルで突如殺されてしまうという衝撃的な展開で、公開当時世間を騒然とさせたサスペンスホラーの名作『サイコ』。前半と後半で内容がガラリと変わる「ジャンルスイッチムービー」の元祖として、映画史にその名を刻みました。 前述の「サイコシャワー」や精神病質(サイコパス)の心理状態を主軸においたミステリー展開で、今なお多くの映画小僧たちを魅了し続ける伝説的傑作となっています。 またその空間を切り裂くようなバーナード・ハーマンによる旋律は、多くの映画作品やバラエティ番組で引用されており、映画マニアでない方でも一度は耳にしたことがあるサスペンスホラーの象徴的な音楽としても有名です。

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アンソニー・パーキンスという俳優

アンソニー・パーキンス
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この歴史的悪役、ノーマン・ベイツを演じたのはアンソニー・マン監督『胸に輝く星』(1957)やメル・ファーラー監督『緑の館』(1959)などで好青年を演じてきたアンソニー・パーキンスです。 青春映画スターとしての粋を極めていた彼が、突如として猟奇殺人者の役を演じたことが当時非常にセンセーショナルなニュースとなったことは想像に難くありません。この『サイコ』への出演が彼の大きな分岐点となっており、その後役柄のバリエーションを大幅に拡大していきました。 その結果、ハリウッドを代表する俳優のひとりとして数えられるほどの成長を遂げたものの、その体質への嫌悪感を捨てきれず、活動の拠点をフランスに移しました。

映画史に残るその卑劣なる手口!

サイコシャワー
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心理的な異常性で多くの観客を震え上がらせたノーマン・ベイツが実行する非常に凄惨な犯行シーンによるトラウマで、筆者自身『サイコ』を初めて見た中学生の当時はしばらく安宿を嫌がり両親を困らせたものでした。 その手口はというとノーマン自身が経営する宿屋「ベイツ・モーテル」にやってくる客と親しくなり、その夜無残にも包丁で斬り刻むという卑劣を極めたものとなっています。時折モーテル近くのノーマンが住む家から聞こえる母親との言い合いも相まって、その人物像への謎は深まり、より強い恐怖として我々の脳裏に刻まれました。 しかし物語の最後で明かされる正体によって、さらなる戦慄を呼ぶことになるのでした。

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彼はなぜ異常殺人者となったのか

多くの宿泊客をその餌食としてきたサイコキラーであるノーマン・ベイツですが、その誕生には悲惨なる過去が隠されておりました。 幼い頃から母親に「異性との交流」を禁止されていたノーマンは、常に抑圧され女性と言えば母親しか知りませんでした。次第に母親への憧れを強めていった彼でしたが、そんな愛する母親が突如亡くなってしまいます。その強い喪失感から、ついに彼は母親に「なり」ました。 ノーマンとして宿屋を営み、そこで知り合った女性と親しくなる。それを知った彼の中の「母親」が、罪だ罰だと暴れまわり、その女性を猟奇的に殺害してくというループが繰り返されるようになったのです。 母親以外の女性との交流は罪という歪んだ教育と母親への異常なまでの執着が、これほどまでの凶悪で強烈な悪役を誕生させてしまったのでした。

映画『サイコ』の前日譚・ドラマ『ベイツモーテル』

ベイツモーテル
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そんな伝説的サイコキラー誕生の秘密に迫る映画『サイコ』の前日譚として、2015年にテレビドラマシリーズが開始されました。 その名も『ベイツ・モーテル』。『サイコ』でマリオン及びその他被害者を殺害し続けた現場を舞台に、少年ノーマン・ベイツがいかにして異常性を獲得していくに至るのかを描きます。 全世界で大ヒットしたドラマ『LOST』を手がけたクリエイター、カールトン・キューズが製作総指揮を務める本作は、偉大なる巨匠アルフレッド・ヒッチコックに敬意を表しながらも、独自の視点で彼の異常性にフォーカスしていきました。 2018年時点でシーズン2までが製作されており、NETFLIXなどの定額動画配信サービスでも見ることができますので、『サイコ』ファンはもちろん本記事でノーマン・ベイツに興味を持った方にもオススメの作品となっています。

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母親との歪んだ絆が生んだ悲しき殺人者、ノーマン・ベイツ

ジャネット・リー サイコ
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以上、今回は歪んだ愛情によって狂気を育んでいった異常殺人者、ノーマン・ベイツをご紹介させて頂きましたが、いかがでしたでしょうか。 その犯行の凶悪性や突如襲い来る恐怖とともに、ヒッチコックの代名詞である巻き込まれた人や当事者である犯人の「心」に焦点を当てて不安や焦燥を煽る演出で、歴史的名作となった映画『サイコ』。今でこそ増えた尋常ならざる犯行動機の数々ですが、公開当時の観客にノーマン・ベイツが与えた新しい衝撃は計り知れません。 そんな彼の誕生に隠された秘密に思いを馳せながら、このゴールデン・ウィークで『サイコ』を見返してみると新しい発見があるかもしれません。