2018年5月28日更新

サイコパスなキャラクターランキングTOP12(日本編)

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『その夜の侍』

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日本映画に登場するサイコパスなキャラクターたち

サイコパシーという言葉から派生したサイコパスとは、普通の常識では考えられない反社会的な異常精神病質を持った人間を指す心理学用語です。世界の人々を震撼させた実在のサイコパスはもとより、多くの映画や小説の中で彼らのもたらす恐怖や事件が描かれてきました。 『サイコ』のノーマンや『羊たちの沈黙』のレクター博士などアメリカのホラーやミステリー映画を思い浮かべる人も多いでしょうが、日本映画にも強烈な印象を残す様々なタイプのサイコパスたちが登場しています。 ここではそんなキャラクターをできるだけ広範囲に選りすぐり、サイコパス度合のランキング形式で12人をご紹介します。欧米とは少し異なる、日本的気質や風土ゆえの恐怖はまた独特! それゆえ、いくぶんのネタバレを含みます。

12位:木島宏/『その夜の侍』【2012年】

妻をひき逃げされた夫の復讐劇を描いた、赤堀雅秋による同名戯曲の映画化作品が『その夜の侍』です。5年前に妻を同事故で亡くして以来、復讐に燃える夫の中村を堺雅人、そして刑務所から出所してくる冷酷極まりない犯人の木島宏を山田孝之が演じました。 木島はひき逃げの事故現場でさえ、「サバみその匂いがする。今日どっかの家、サバみそだな」と呟いて同乗者をぞっとさせるような冷血の持ち主です。終盤、ついに狂気すら帯びた中村と対峙するシーンですら、いきなり携帯電話を取り出して友人とカラオケの話を始めるなど、結局最後までその異常さをひとかけらも失うことはありません。 派手な殺戮などを行うわけではありませんが、どんな状況ですら終始変わらぬ冷酷ぶりは、サイコパスの持つ底知れぬ恐怖以外の何物でもありません。

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11位:永松/『野火』【1959年・2014年】

原作は戦争文学の傑作として名高い大岡昇平の同名小説です。1959年市川崑監督により、2014年塚本晋也監督により2度映画化されました。敗戦が明白となった太平洋戦争終盤のフィリピンを舞台に、生死をさまよう日本兵の姿から人間の抱える根源的な闇が描かれます。 主人公は肺病を患ったことにより野戦病院からも部隊からも追い出されて原野をさまようことになる田村一等兵です。放浪の中、安田と永松という2人の仲間と再会しますが、やがて田村は極限に陥った人間の残酷過ぎる闇に向き合うことになるのです。 人を殺し合う戦場におけるぎりぎりの飢餓状態の中で、いわゆる「カニバリズム(食人)」が描かれます。平和な現代日本に生きる我々から見れば、血を滴らせて安田の肉を貪る永松の姿はまさに異常なサイコパスに映りますが、果たしてそれは本当に他人事なのかという究極の問いを投げかけているのです。

10位:森田正一/『ヒメアノ〜ル』【2016年】

古谷実の人気コミックを原作に、V6の森田剛がサイコパスの殺人鬼役で主演した実写映画版です。どこにでもいる男女の三角関係がコミカルに描かれる一方、その裏で残虐な殺人が次々と繰り広げられるという奇妙な物語が展開します。 ムロツヨシ扮する先輩のキューピット役となるはずが、相手女性のユカとつきあうことになってしまう岡田を濱田岳が演じ、岡田の高校時代の同級生でユカのストーカーをしていた森田正一を森田剛が演じました。 森田正一は次々と殺人を重ねて行く極悪人であることは間違いないのですが、そのサイコパスぶりが明らかになるのは、岡田を殺そうと企てた後です。岡田に借りていたゲームソフトを返そうと車内を探す姿、「また遊びに来てよ」と笑いながら警察に連行されていく姿はなんとも異様です。そして、ラストに描かれる高校時代の2人の回想シーンがなんともぞっとする余韻を残します。

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9位:竹内銀次郎/『天国と地獄』【1963年】

誰もが認める世界的映画監督である黒澤明が遺した数多くの名作の中で、珍しくサイコパスなキャラクターが登場するのが社会派サスペンスの傑作『天国と地獄』です。製靴会社重役の子息と間違えて誘拐されてしまった運転手の息子の緊迫した救出劇が描かれます。 身代金は奪われますが無事救出に成功したのち、映画の後半で犯人逮捕のプロセスと彼の陰湿な異常性が描かれます。誘拐犯は山崎努演じるインターン医師である竹内銀次郎でした。 シューベルトの『鱒』をBGMにようやく姿を現す竹内の不気味さは、単なる誘拐犯を超えたただならぬ狂気を漂わせています。異様な雰囲気のレストラン、奇怪な中毒者がうごめく麻薬街の様子が描かれ、ヘロイン中毒による別の殺人が発覚する段になって、次第に竹内のサイコパスぶりが明らかになってくるのです。本役柄により、当時まだ新人だった山崎努は一躍注目される俳優となりました。

8位:蘇父道夫/『盲獣』【1969年】

江戸川乱歩のマゾヒズム小説を原作に、増村保造がメガホンをとった異色作です。全盲の彫刻家と彼の母、監禁されるモデルの異常な関係を描いて戦慄を与えました。ヒロインのアキを演じたのは緑魔子、女体を賛美するあまりアキを誘拐してアトリエに監禁する犯人の蘇父道夫を船越英二が演じています。 やがてアキは、蘇父が母親のしのと過剰な結びつきを持っていることに気づき、その関係を断ち切ろうと企てます。蘇父はしのを殺害し、その結果、2人は狂気の世界で自滅していくのです。 女体に異様なまでに執着し、アトリエに足や手、目鼻や乳房などの彫刻を無数に並べて歓喜する性癖は、サイコパスが持つ異常性の典型とも言えます。登場人物はたった3人。終盤、蘇父がアキをマゾヒズムの狂気の世界に導いていく姿は、ある種の官能すら帯びています。

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7位:夜神月/『DEATH NOTE デスノート』【2006年~2016年】

世界的な大ヒットコミック『DEATH NOTE』に登場する夜神月は、日本が生んだ新しいタイプのサイコパスだと言えるでしょう。映画版は2006年から2016年にかけてシリーズ化され、夜神月を藤原竜也が演じました。 名を書かれたら死ぬという死神の「デスノート」を手に入れ、次々と犯罪者らを粛清していく夜神月ですが、その正義はかなり歪んでいます。腐った人間は全員死ぬべきという理念に基づいて大量殺人を犯すうち、自らを神だと思うに至り、次第にサイコパスの様相を呈していくのです。 物語は、世界的な名探偵Lとの壮絶な頭脳戦が柱になります。容姿に秀でているばかりか、多才かつ天才的な知能を合わせ持つ夜神月は、これまでなかった異形ヒーローから転じるサイコパスとして、不思議な魅力を放っていることは否めません。

6位:西野昭雄/『クリーピー 偽りの隣人』【2016年】

前川裕の小説『クリーピー』を黒沢清監督が映画化した息詰るサスペンスです。引越先の隣人によって恐怖のどん底に突き落とされる夫婦の葛藤を描きます。犯罪心理学者である主人公の高倉を西島秀俊、その妻を竹内結子、そして不気味な隣人の西野昭雄を香川照之が演じました。 6年前に起きた一家失踪、そしてその隣人宅で遺体が見つかるという猟奇事件と関連があるのか? さらに西野の娘が自分は実は他人だと告白すると、いよいよ驚くべき真相と西野の異常性が明らかになってきます。 西野は他人の家に上がり込んで家族を支配下におさめ、見ず知らずの他人に成り代わって生活するというサイコパスだったのです。マインドコントロールを利用した犯罪は日常生活で誰にでも起こりうることであり、事実、似たような事件が頻発していることを考えると恐ろしいほどのリアリティがあります。

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5位:木村孝雄/『凶悪』【2013年】

社会を震撼させたノンフィクションの映画化作品です。一人の死刑囚から余罪の告白を受けた雑誌記者が真相追求にのめり込んでいく姿を描きます。記者の藤井を山田孝之、死刑囚の須藤にはピエール瀧が扮しました。 ヤクザだった須藤が告発したのは、警察もまだ知らないという複数の殺人とそれを首謀した木村孝雄の存在でした。須藤が「先生」と呼んでいた不動産ブローカーの木村をリリー・フランキーが不気味な雰囲気を漂わせながら熱演しています。 木村が首謀した3件の殺人はどれも残虐性に満ちており、その凶悪ぶりは言うまでもありませんが、やがて木村のただならぬ異常性が露呈します。例えば、殺した男を焼却する際に、肉が焼けるいい匂いがするから食べてみたい、などと呟くのです。その冷血ぶりはまさにサイコパスという他なく、しかもそれが実在の人物だというのはショッキングです。ちなみにモデルとなった人物は無期懲役となり、現在も服役しています。

4位:村田幸雄/『冷たい熱帯魚』【2010年】

園子温監督が、実際に起きた埼玉県愛犬家殺人事件をモチーフに、事件に否応なく巻き込まれていく男の恐怖と闇を描いた衝撃作が『冷たい熱帯魚』です。吹越満演じる熱帯魚店オーナーの社本が、たまたま知り合うのがでんでん扮する同業者の村田幸雄です。 やたらおしゃべりで人当たりが良く親切な村田。実はそれは表の顔に過ぎず、その正体は人を殺すことなどなんとも思わない残虐な連続殺人鬼でした。 園監督らしい容赦ない演出で浮き彫りになる村田のサイコパスぶりは、そのスプラッターぶりにおいて突出しています。とりわけ、風呂場で笑いながら遺体を解体するシーンのグロテスクさは、血や肉片の散乱が苦手な人にとっては目を覆いたくなるような惨状でしょう。異様なテンションで村田を演じ切ったでんでんの怪演も大きな見どころです。

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3位:間宮邦彦/『CURE』【1997年】

黒沢清監督が手掛けたサイコ・ミステリーの傑作が『CURE』です。複数の奇妙な猟奇的殺人事件の繋がりを捜査する刑事・高部の姿を軸に、マインドコントロールがもたらす恐怖を描きます。事件の共通点は遺体の胸にXと刻まれていること、そしてどの犯人もすぐ逮捕される上、なぜか明白な殺意がないことでした。 やがてそれら事件と関わりがある人物として浮上するのが記憶喪失の青年・間宮邦彦です。かつて医学部で催眠療法を学んでいたという過去が明らかになり、高部は間宮による催眠暗示だとにらんで取り調べを続けますが、高部自身が間宮の独特の話術と不思議な力に翻弄されていくのでした。 精神病院から逃げた間宮は、最後、高部の手により死を迎えますが、その後再び同様の猟奇的殺人が頻発するというエンディングが、多くの謎と論争をよびました。高部刑事を役所広司、間宮を萩原聖人が演じています。

2位:蓮実聖司/『悪の教典』【2012年】

貴志祐介の同名ベストセラー小説を、三池崇史監督が得意とする過激なバイオレンス描写で実写化した作品が『悪の教典』です。誰からも慕われる模範的な高校教師が、裏で次々と殺戮を繰り返していく姿を描きます。 生徒ばかりか保護者や同僚たちからも慕われる理想の教師が蓮実聖司です。ところが、裏の顔は自身に降りかかった災難やトラブルなどを平然と殺人で解決するサイコパス。それがばれそうになったことから、クラスの教え子全員を抹殺することを企てます。 実は、蓮実には14歳のときに両親を惨殺したという過去があり、二重人格という生易しい言葉では説明しきれない極端な分裂性を持っています。蓮実を演じたのが、それまで好青年のイメージが強かった伊藤英明だったということもあり、衝撃の展開と主人公の異常ぶりが大きな話題を呼びました。

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1位:菰田幸子/『黒い家』【1999年】

貴志祐介の日本ホラー小説大賞受賞作を森田芳光監督が映画化した1999年版のほか、2007年には韓国でリメイクも製作されたという鮮烈のホラーミステリーです。保険金をせしめるために異常な行動をとる夫婦と保険員の恐怖の攻防を描きます。 保険会社に勤める若槻は、保険の説明に行ったその日にいきなり夫婦の息子の首つり現場に遭遇します。保険金のためには自らの指すら切り落とすことも厭わない菰田夫妻は、ついに専門家のプロファイリングによってサイコパスだと認定されますが、本物の恐怖はそこから始まります。 やがて夫の両腕を切断し保険金を得ようとしたことで、いよいよ本物のサイコパスは妻の菰田幸子であることが判明するのです。ようやく事件が解決し平穏が訪れたかに見えたとき、行方不明になっていた幸子が若槻を殺すために再び姿を現します。演じた大竹しのぶの凄まじい演技もあって強烈な印象を残した女サイコパスです。

サイコパスを演じた役者たちの名演技が光る!

日本映画に登場する12人のサイコパスなキャラクターを紹介しましたが、陰険さやねっとりとした湿度、執拗さや暗さなどは日本独特の特質かもしれません。 そして何より、彼らサイコパスたちが強烈な印象を残したのは、役者たちの名演技に支えられていることは言うまでもありません。大竹しのぶ、香川照之、山田孝之、萩原聖人など実力派が抜擢されているのは、特殊な人間の深い闇を表現するには並外れた演技力が必要だからでしょう。 紹介した12人はわずか一部です。今後も、これまでにいなかったタイプのサイコパスが映画の中に出現し、我々を震撼させるに違いありません。