2019年12月19日更新

「ハンニバル」全シリーズ解説 おすすめの順番や各作品の見どころとは?

このページにはプロモーションが含まれています

AD

映画「ハンニバル」全シリーズ解説 公開順と時系列順どっちがおすすめ?

1991年に公開され、アカデミー賞5部門で受賞した『羊たちの沈黙』に始まり、全4作が制作された「ハンニバル」シリーズ。2013年にはさらにドラマ版も制作され、話題となりました。 映画を観たこともない人でも、「ハンニバル」と聞けば人喰いを連想する人は多いのではないでしょうか。そもそもハンニバルというのはどういう人物なのか、なぜ人を食べるようになったのか。各シリーズをネタバレありで解説します。 ※本シリーズには、「ハンニバル」シリーズに関するネタバレ情報を含んでいます。未鑑賞の方はご注意ください。

「ハンニバル」シリーズの時系列と観るべきおすすめ順は?

映画「ハンニバル」シリーズの時系列を整理

           
 時系列 タイトル 公開年 おすすめ順
1944年〜1952年 『ハンニバル・ライジング』 2007年 4
1980年〜1983年 『レッド・ドラゴン』 2002年 3
1991年 『羊たちの沈黙』 1991年 1
2001年『ハンニバル』2001年2

映画「ハンニバル」シリーズの時系列は、公開順とほぼ逆になっています。 時系列で最初になっているのは、2007年に公開されたシリーズ4作目『ハンニバル・ライジング』。ハンニバル・レクター幼少期や、彼が殺人鬼となっていくまでの経緯を描いた作品です。 その次は、シリーズ3作目の『レッド・ドラゴン』(2002年)です。1作目『羊たちの沈黙』の10年前が舞台となっている本作では、ハンニバル・レクターが犯罪精神医学の権威として登場。FBIの捜査に協力するなかで、彼の犯行の数々が発覚していきます。 シリーズ1作目『羊たちの沈黙』は、『レッド・ドラゴン』終了直後から物語がスタート。そしてその事件解決から10年後を描いたのが2作目『ハンニバル』です。

AD

「ハンニバル」シリーズは公開順に観るのがおすすめ

2作目以降、どんどん時代をさかのぼっていく「ハンニバル」シリーズですが、観る順番は公開順がおすすめです。 なんといっても『羊たちの沈黙』でアンソニー・ホプキンスが演じたレクター博士はインパクト抜群で、その姿に魅了されるでしょう。そしてその10年後、FBIのベテラン捜査官となったクラリスにレクターが再び接触する『ハンニバル』(2001年)でも、その魅力を堪能することができます。 3作目『レッド・ドラゴン』(2002年)で描かれるのは、クラリスに出会う前のレクター博士。そして4作目『ハンニバル・ライジング』では、狂気の殺人鬼ハンニバル・レクターの悲しい過去と殺人に手を染めた経緯が明かされます。 『羊たちの沈黙』でレクター博士に魅了されてしまったひとは、ぜひ続編も鑑賞してみてください!

『羊たちの沈黙』(1991)

衝撃のシリーズ第1作

1991年に公開されたシリーズ第1作目。本作の魅力はなんといってもアンソニー・ホプキンス演じるハンニバル・レクターの不気味さです。 サイコスリラーとしてわかりやすく、多くの人が楽しめる作品である一方で、実はフェミニズムや人生に対する深いメッセージ性を持った作品であることにも注目したいですね。

『羊たちの沈黙』のあらすじ【ネタバレ注意!】

FBIアカデミーの実習生クラリス・スターリングは、ジャック・クロフォード主任捜査官からある任務を任されます。それは、ある殺人事件の捜査に関する助言を求めるため、収監されている元精神科医のハンニバル・レクター博士に面会してこいというものでした。

彼らが捜査していた事件とは、“バッファロー・ビル”と呼ばれる犯人による連続殺人事件で、若い女性ばかりが狙われ、殺害後に皮膚を剥がすという猟奇的な行為が特徴でした。レクターと面会したクラリスは、自身の過去を話すことを条件に、捜査に助言することを約束させます。そして、クラリスは幼い頃のトラウマ経験をレクターと共有しました。 一方、新たに上院議員の娘がバッファロー・ビルに誘拐される事件が発生。精神病院長のチルトンの売り込みにより、レクターは被害者の母親である議員と接触。彼女は捜査協力の対価として彼を警備の緩い刑務所へ移送すると約束します。しかし、移送の隙をつき、レクターは警備員を殺して脱走に成功。 クラリスは、レクターの助言によりバッファロー・ビルの自宅へ踏み込み、犯人を射殺して人質を助け出しました。その後正式なFBI捜査官となったクラリスのもとに、レクターから電話が入ります。逃亡先の異国から、レクターはクラリスの昇進に対する祝福の言葉を送り、チルトン殺害をほのめかして電話を切ります。

AD

『ハンニバル』(2001)

捜査官となったクラリスに再びレクターが接触!

『ハンニバル』では、前作から10年の時を経てレクター博士とクラリスの関係が描かれます。前作以上に残虐でグロテスクなシーンが見どころですが、R18指定となっていますので、前作で苦手だと感じた人は自己責任で鑑賞するようにしてください。 本作でもアンソニー・ホプキンスの怪演は健在。前作につづき、彼は本作でもアカデミー主演男優賞を受賞しています。また、クラリス役はジョディ・フォスターからジュリアン・ムーアに交代。彼女の人物像は前作から変化しているので、そこに注目してみるのも面白いでしょう。

『ハンニバル』のあらすじ【ネタバレ注意!】

バッファロー・ビルの事件から10年後、ベテランFBI捜査官となったクラリスは、ある事件の不始末の責任を問われていました。そんな彼女にレクターの元患者、メイスン・ヴァージャーが接触してきます。彼はレクターにより顔の半分を失い、車椅子生活になっていました。復讐を誓うメイスンは、レクターの居場所の手がかりを得るために司法省のスポークスマン、ポール・クレンドラーを使ってクラリスを呼び出したのです。

そのころレクターは、イタリアのフィレンツェで別人として暮らしていました。しかし、イタリアの刑事レオナルド・パッツィが彼の正体に気づきます。金が必要なパッツィ刑事は、FBIよりも高い懸賞金を掲げていたメイスンにレクターを売ろうと画策。 レクターを追うクラリスは、同じく彼を追っていたパッツィと接触しました。しかし策略がバレたパッツィはレクターに殺害されてしまいます。殺害直後、レクターがパッツィの携帯に応答すると電話の相手はクラリスでした。 クラリスの居場所を知ったレクターは、アメリカに渡ります。そこで彼は、メイスンの手下に拉致され豚に食わされそうになりますが、間一髪でクラリスが突入。レクターの拘束を解いたことで、逆にメイスンと手下が豚の餌食となってしまいます。 レクターは、被弾したクラリスを手術し助けます。そして、クラリスが麻酔から目覚めると、レクターは彼女の目の前でクレンドラーに自分の脳を食べさせました。クラリスは隙を見て、自分とレクターに手錠をかけますが、レクターは自分の手首を切って脱走してしまいます。 ラストシーン、レクターはどこかに向かう機内で自分用の特製弁当広げます。そして、それを物珍しそうに見ていた隣の席の少年に、スプーン一口分を差し出すのでした。

『レッド・ドラゴン』(2002)

クラリスと出会う前のレクターを描く

シリーズ時系列2番目となる『レッド・ドラゴン』では、凶悪殺人犯として逮捕される以前のレクター博士と、その逮捕の経緯が明かされます。また、クラリスと出会う以前に捜査協力したウィル・グレアムとの興味深い関係も。 本作でハンニバルに捜査協力を求め、期間限定で現場に復帰する元FBI捜査官ウィル・グレアムを演じるのは、エドワード・ノートン。彼らの連続一家惨殺事件の捜査から、『羊たちの沈黙』直前までが描かれます。

AD

『レッド・ドラゴン』のあらすじ【ネタバレ注意!】

1980年のアメリカ、ボルチモア。FBI捜査官のウィル・グレアムは、犯罪精神医学の権威レクター博士の助言を受けながら、ある連続殺人事件を追っていました。しかし、グレアムはレクターこそが真犯人であると気づきます。グレアムはレクターを乱闘のうえ逮捕に成功しますが、戦いの中で瀕死の重傷を負ってしまいました。

それから3年後。FBIを退職して家族と過ごしていたグレアムの元に、元上司のジャック・クロフォードが尋ねてきます。彼は連続一家惨殺事件を追っており、グレアムに協力を要請しにきたのです。彼はグレアムにレクターが再びタッグを組み、事件を解決して欲しいと依頼しました。 やむなくレクターと再会したグレアム。レクターは精神病院に監禁されており、彼をからかいつつも、“家族ビデオ”という犯人特定のヒントを与えます。グレアムは、犯人がビデオ編集会社の社員で、幼少期の虐待によりトラウマをおったダラハイドという人物であることを突き止めました。 密かにレクターと手紙で交流していたダラハイドは、グレアムのことを知り、最終的に彼とその妻子を襲います。息子を人質に取られたとき、おもらしをした息子を叱責することで、グレアムはダラハイドのトラウマを刺激し、自分に注意を向けさせます。そして彼は格闘の末、妻にダラハイドを撃たせて勝利をおさめました。 事件後、レクターからグレアム宛に手紙が届きますが、グレアムは読み終わると手紙を捨てました。そして独居房にいるレクターに面会予約が入ります。相手はFBIの若い実習生、クラリス・スターリングでした。

『ハンニバル・ライジング』(2007)

衝撃的なレクターの生い立ち

ハンニバル・レクターの衝撃的な生い立ちが明かされたシリーズ4作目『ハンニバル・ライジング』。時系列としては1番最初の物語となっています。若き日のハンニバルを演じるのは、『ロング・エンゲージメント』(2004年)や『たかが世界の終わり』(2017年)などで知られるフランスの俳優、ギャスパー・ウリエル。 無垢な少年がどのように食人鬼に成長したのか、成人後のレクター博士からも感じられた高貴な生まれと、過酷な生い立ちを解き明かします。

『ハンニバル・ライジング』のあらすじ【ネタバレ注意!】

ハンニバル・レクターは元々リトアニアの名門貴族の子息でした。1944年、第二次世界大戦の東部戦線が激しくなっています。ソ連軍とドイツ軍の戦闘に巻き込まれ両親を失った幼いハンニバルは、一家の隠れ家に妹のミーシャと2人きりで暮らしていました。 そこに、ドイツに協力していたリトアニア市民の男たちが逃げてきます。

男たちは2人を拘束し、隠れ家に立てこもりました。やがて食料が尽きると、彼らはミーシャを殺して食べます。そのときハンニバルは、ショックで当時の記憶を失いました。 それから8年後。孤児院に収容されていたハンニバルは、フランスの叔父を頼って亡命します。叔父はすでに他界していましたが、ハンニバルは彼の妻で日本人のレディ・ムラサキの元で暮らし始めます。 そこで彼は剣道や作法を学びつつ、日本刀の切れ味や戦国時代での首級などに強い興味を示し、その知識も得ていきました。ある日彼は、叔母を侮辱した肉屋のポールを惨殺し、首を斬って奪い取るという行動に出ます。 奨学医学生となりパリに移ったハンニバルは、人体解剖に勤しみながら、失われていたミーシャの記憶を辿ります。そして、犯人の顔を思い出した彼は復讐を誓い、かつて妹を食べた男たちをつぎつぎと殺害していきます。しかし同時に、彼自身もミーシャの肉を食べていたことを思い出し……。

AD

ドラマ『ハンニバル』

さらに深いハンニバル・レクターの世界へ……

ドラマ版は2013年から2015年にわたってシーズン3まで製作・放送されました。小説『レッド・ドラゴン』を原作としたオリジナルストーリーで、レクター博士とFBIアカデミー講師、ウィル・グレアムを中心に物語が展開します。 映画シリーズにもつながるおなじみのエピソードやキャラクターに加え、映画とは違うレクター博士とウィルの奇妙な絆を描き大人気に。また、殺人事件をめぐるサスペンスはもちろん、レクター博士の狂気に引きずり込まれるウィルの様子や、猟奇的ながらも芸術性が感じられる死体の遺棄方法、レクター博士の優雅な料理シーンにも注目です。 ドラマ版でハンニバルを演じるのは、“北欧の至宝”と呼ばれるデンマークの俳優マッツ・ミケルセン。妖艶な魅力で、若き日のハンニバル・レクターを見事に表現しています。

高貴かつ狂気の殺人鬼ハンニバル・レクターに魅せられる!

猟奇的で無慈悲な殺害方法が特徴の天才殺人鬼ハンニバル・レクター。被害者を「下等な生き物」として家畜と同等に扱い、その肉を食べることも彼の猟奇性を示しています。一方で、自分が認めた人物には敬意を払うといった紳士的な一面も。 そうした彼の多面性が、わたしたちを惹きつけてやまないのかもしれません。 また、「ハンニバル」シリーズに登場する人物はクラリス然り、歴代の犯人たちも過去にそういったトラウマを抱えるキャラクターが多いのも特徴。猟奇映画としてイメージが定着していますが、深いメッセージ性を持ったシリーズでもあり、そういった視点で観ると、また違った形で楽しめるかもしれません。