映画『シャッターアイランド』に張り巡らされた伏線を徹底考察!“火”と“水”の対比がカギに?
【ディカプリオ主演】『シャッターアイランド』を徹底考察!
孤立した不気味な島の精神病院を舞台にした、サイコスリラー『シャッターアイランド』。マーティン・スコセッシ監督とレオナルド・ディカプリオがタッグを組んだネオ・ノワール映画の難解なストーリーを考察します。映画館での二度見キャンペーンや、直訳字幕での公開キャンペーンも行われた伏線だらけの問題作を徹底的に解説しちゃいます!
ネタバレ注意!『シャッターアイランド』で何が起きたのか?
保安官のテディは、精神を患った犯罪者を収容するアッシュクリフ病院のあるシャッターアイランドを訪れます。病院で突然姿を消した患者のレイチェル・ソランドーの捜査を、相棒のチャックと共に始めます。そこで、テディは過去に妻を殺した犯人であるレディスの存在と病院の隠そうするロボトミー実験に迫るのでした。 映画のラスト付近で、アッシュクリフ病院の院長によって真実は明かされます。テディの本名は67番目の患者であるアンドリュー・レディスであり、3人の子どもを殺した妻、ドロレスを殺した罪で病院に収容されていたのでした。家族を失ったショックで、事件を否定し、保安官テディとしてレイチェルの捜査に来たという空想の世界に生きていたのです。
ロボトミー手術とは何か?
テディが、病院を調査しているうちに耳にするロボトミー手術とは、緊張や興奮を除去するために前頭葉の一部を切除する手術のことです。1936年に開始されたロボトミー手術は、『シャッターアイランド』の舞台である1954年にも頻繁に行われ、人格変化など多くの副作用の存在が確認されています。 テディは、シャッターアイランドでロボトミー手術によって、マインドコントロールの実験を行っていると思い込みます。そして、保安官である自分は、病院の陰謀にはめられており、病院の薬をタバコや食事に仕込まれていると考え始めていました。
コップの水が消える伏線は、テディの水への恐怖を意味している!
『シャッターアイランド』は、テディの妄想の部分と現実に起きている部分が混ざり合って構成されています。テディの妄想なのか、現実なのかを知るために本作で重要になってくる要素の一つが「水」です。 テディの妻、ドロレスが子供達を水死させたトラウマからテディは水に苦手意識を持っているのが分かります。そのため、船の上ではテディの具合が悪くなっていたり、患者の事情聴取では、女性患者が飲む水の入ったコップがコップごと消えるという場面がありました。 テディの苦手意識が妄想を作り出し、コップの水を消してしまっていたようです。よって、水が飲み干された空のコップは消えていませんでした。
洞窟で出会ったレイチェルは空想なのか?
テディにとって現実をほのめかす「水」と反対の存在が「火」です。妻ドロレスが子供達を殺害した時にびしょ濡れであった事に対して、テディの夢や妄想に現れるドロレスは常に火に囲まれています。ドロレスの偽の死因も火事でした。 この「火」の存在を追うことで、『シャッターアイランド』作中のテディの妄想部分を見抜くことが出来ます。C棟でのジョージ・ノイスとの会話シーンでは、ドロレスが現れたり、マッチの火が消えても部屋が明るいままであったりと、テディがマッチを擦った後から妄想を見始めています。 さらに、崖の洞窟で出会ったレイチェルと思われる女性との会話には、キャンプファイアーの炎が会話する二人にかぶさるように撮影されており、テディが妄想を見ていることを示しています。
テディが口にした最後の言葉、ラストシーンでの最後の謎とは?
テディは、灯台で院長と今まで相棒のチャックと思っていたシーアン医師に真実を受け入れるように説得されます。ロボトミー手術に反対している院長とシーアン医師によるロールプレイでの治療によって、テディは自身がアンドリュー・レディスであることを知るのです。 しかし、ラストシーンで、アンドリューはシーアン医師を再びチャックと呼び、院長とシーアン医師はロボトミー手術を行う判断をします。その様子を見たアンドリューは、”善人として死ぬか、モンスターとして生きるか、どちらがマシなんだろうか”という意味深な台詞を残します。 この台詞は、アンドリューが本当はテディの人格には戻っていないことを示しています。人格を消し去ってしまうロボトミー手術を受けることで、トラウマを抱えたアンドリューは、過去の自分を忘れ、善人として死ぬことを選んだと考えられます。
『シャッターアイランド』の高評価された俳優たちの演技にも注目!
多くの伏線が隠されている謎解き映画とも呼べる『シャッターアイランド』の魅力は、俳優達の演技力にもあります。レオナルド・ディカプリオの混乱したテディを演じる細かな演技や、精神的に限界を迎えたドロレスを演じたミシェル・ウィリアムズの演技にも注目したいです。 そして、シーアン医師を演じたマークラファロの表情は、謎解きの道標とも言えます。チャックとしてでなく、シーアン医師としてテディを心配する様子を映画全体を通して観ることが出来ます。2度3度見ても楽しめる作品と言えます。