名作『ユージュアル・サスペクツ』をネタバレ解説【絶対騙される】

2018年3月24日更新

1996年に公開されたブライアン・シンガー監督の2作目『ユージュアル・サスペクツ』。複雑かつ巧妙に練られたストーリー展開と衝撃のラストは必見です。今回はあらすじ・考察・トリビアを交えて、このサスペンス映画の名作を紹介していきます。

映画『ユージュアル・サスペクツ』とは?

クライム・サスペンス映画の金字塔

『ユージュアル・サスペクツ』は監督ブライアン・シンガーと脚本家クリストファー・マッカリーのタッグ2度目の作品です。「X-MEN」シリーズを担当した監督といえば、ピンとくる方も多いのではないでしょうか。 1995年の第68回アカデミー賞では、クリストファー・マッカリーがオリジナル脚本賞、俳優ケヴィン・スペイシーが助演俳優賞をそれぞれ受賞しました。 マフィアの密輸船が爆破された事件の黒幕は誰なのか。どんでん返しのクライマックスへ観客を導くクライム・サスペンス映画『ユージュアル・サスペクツ』の魅力をお伝えします。

『ユージュアル・サスペクツ』のあらすじ

物語は多額の現金と麻薬を積んだ密輸船の爆破事件から始まります。この事件によって、首謀者である五人の犯罪者集団と密輸船のマフィアのメンバー双方に多数の死者が出たのでした。その五人の犯罪者集団で生き残ったのはヴァーバル・キントという詐欺師、ただ1人。 そこで警察の捜査員クラインは彼に事件の尋問をすることにします。彼の口から語られたのは、カイバー・ソゼと呼ばれる謎に包まれた人物の名前。果たしてカイバー・ロゼとは何者なのでしょうか。

個性的な五人の犯人グループと捜査官を演じた俳優たち

キートン/演:ガブリエル・バーン(右から二人目)

ガブリエル・バーン演じるキートン。終始クールな雰囲気を醸し出し、5人の前科者の中ではリーダー的ポジションだと考えられます。女友達イーヴィのおかげで、最も社会的に更生しつつあった人物とも言えるかもしれません。

ヴァーバル/演:ケヴィン・スペイシー (右端)

ケヴィン・スペイシーは詐欺師ヴァーバルとして登場しました。5人の前科者の中では、参謀担当の頭脳派。また左半身の麻痺で足を引きずって歩きます。その立ち振る舞いから、犯罪者にしては弱々しいという印象を持った方も多いのではないでしょうか。

マクマナス/演:スティーブン・ボールドウィン (左から二人目)

スティーブン・ボールドウィンはマクマナス役です。彼を一言で語るなら威圧的ですぐにかっとなる短気な奴、だと思います。常に銃を持ち歩き、犯罪者集団の作戦中は実践担当として活躍していました。

フェンスター/演:ベニ・チオ・デルトロ (中央)

ベニ・チオ・デルトロはフェンスター役を怪演しました。この役はマクマナスと長年の犯罪コンビを組んでいたこともあり、非常に硬い絆を感じます。少し頭が狂っているキャラクターで、彼が話す英語の聞き取りにくさも彼のトレードマークでしょう。

ホックニー/演:ケヴィン・ポラック (左端)

ケヴィン・ポラックは爆破とハードウェアを得意とするホックニー役として登場しています。

クライン/演:チャズ・パルミンテリ

チャル・パルミンテリ演じるクライン。密輸船爆破事件を捜査する関税特別捜査官です。5人の犯罪者たちと並んで、物語の重要人物であることは間違いありません。

黒幕カイザー・ソゼという人物とは

事件の黒幕と語れるカイザー・ソゼは裏社会マフィアのボスです。誰も直接会ったことや話したこと者はいません。だから実在しない架空の人物だと主張する人々もいます。キートンもその一人です。ですが、彼の右腕と名乗るコバヤシという人物は登場しました。 また、尋問でのヴァーバルの証言がいくつか彼の情報を明らかにしています。彼はトルコ人で、父親はドイツ人。性格は冷酷。ハンガリーでマフィアに自宅を襲われた際に、自分の家族ごと皆殺しにするほどです。

黒幕の正体に迫るどんでん返しのラスト五分を解説【ネタバレあり】

捜査官クラインは唯一の生存者ヴァーバルの証言から、黒幕ソゼがキートンであると推理します。推理がひと段落してクラインはヴァーバルに警察の保護を要求しました。しかし、ヴァーバルはそれを拒否し警察署を出て行きます。 その後、クラインはヴァーバルの証言が嘘まみれだったことに気がつき後を追いますが、時すでに遅し。彼はコバヤシと名乗る人物の車に乗って街へと消えて行きました。 ソゼがヴァーバルだったのでは?!と思わせるどんでん返し。見事な演出ですが、実際のところ正体を決定的に裏付ける証拠は一つもありません。ヴァーバルの虚言で黒幕の存在は以前よりも謎に満ちたまま物語は終了したのです。

二度目が見たくなる『ユージュアル・サスペクツ』の伏線

ラストの場面。ヴァーバルが街を歩き始め、引きずっていたはずの左足を自由に動かしています。そしてコバヤシが乗る車に乗り込み、彼は街の中へと消えていきました。最後にヴァーバルがペテン師だったことが明らかになりますが、それまでの場面には伏線がしっかりと張られています。 まず、クラインがコーヒーを飲んでいる場面。ヴァーバルがコップの底面を覗き込む描写に注目してみてください。彼はこの瞬間、ソゼの右腕コバヤシの名前となる単語を拾ったわけです。クラインは後にコーヒーを落として底面のコバヤシ陶器という字を知りますが、この場面は大事な伏線でしょう。 また、尋問の際にイライラしたクラインがヴァーバルの胸ぐらを掴み揺する場面がありますが、この時クラインの腕を払いのけるためにヴァーバルは麻痺しているはずの左腕を振っています。ヴァーバルが身体不自由者を演じていたラストの場面に繋がる細かい伏線です。

脚本の下敷きとされる推理小説との共通点について考察!

クリストファー・マッカリーによる脚本、実はアガサ・クリスティーの長編推理小説『アクロイド殺し』をもとにしたと言われています。さて具体的にはどの点が共通しているのでしょうか。 『アクロイド殺し』の物語はシェパード医師の手記として書かれています。事件の犯人が実は医師本人であるため、いわゆる「信頼できない語り手」という叙述トリックです。この方法はまさに『ユージュアル・サスペクツ』の物語の構成に一致していると言えるでしょう。 つまり、『ユージュアル・サスペクツ』において、シェパード医師に当たる人物は、嘘の証言者であるヴァーバルなのです。

『ユージュアル・サスペクツ』の有名なシーン実はアドリブだった?

五人の前科者が警察署に面通しで集められ、壁に並び順にセリフを言っていくシーンは非常に有名です。フェンスター役のベニチオ・デル・トロの番の時は、他4人がアドリブの笑いを見せています。監督はこの場面をシリアスに取る予定でした。 しかしフェンスターのアドリブな変な発音の英語で、笑いのある場面になったのです。結局テイクは12回に及び、使われたのはNGシーンだったそうです。

そこまでするか!ケヴィン・スペイシーの一風変わった役作り

カメレオン俳優と呼ばれるケヴィン・スペイシー。残忍な悪役から、コミカルな役まで幅広く優れた演技力でどんな役でもこなす才能の持ち主です。『ユージュアル・サスペクツ』と同時期に公開された『セブン』では、サイコな殺人鬼を狂気的に演じ話題になりました。 そのような役作りの徹底さは、『ユージュアル・サスペクツ』でも見られます。彼が演じた役、ヴァーバルは左半身が麻痺していて足を引きずるように歩くのが特徴的です。この役作りでは、自然な動きを再現するために医者の助言を求めたり、靴底を削り取って歩く、などの努力に務めました。

ケヴィン・スペイシー (ゼータ)
©Hahn Lionel/Sipa USA/Newscom/Zeta Image

『ユージュアル・サスペクツ』を鑑賞後見るべきサスペンス映画は?

クライム・サスペンス映画の傑作『ユージュアル・サスペクツ』を紹介しました。謎解きの興奮やラストでどんでん返しが起きる快感はやみつきになってしまいます。この気持ちに共感できるという方々、ぜひ他のサスペンス映画にも一度触れてみてはいかがでしょうか!