【ネタバレ解説】『ユージュアル・サスペクツ』あらすじ・ラストまでの伏線を考察!黒幕は誰だった?どこまでが本当かわからない難解映画

アカデミー賞・脚本賞を受賞した名作クライムサスペンス『ユージュアル・サスペクツ』(1996)。犯罪者のヴァーバルから明かされる真相、そしてその衝撃なラストに理解が追いつかない方もいるかもしれません。 そこで本記事では『ユージュアル・サスペクツ』(1996)のあらすじをネタバレありで解説!カイザー・ソゼの正体に迫ります。 ※『ユージュアル・サスペクツ』の重大なネタバレを含みます。
タップできる目次
- 映画『ユージュアル・サスペクツ』とは?
- 【ネタバレなし】『ユージュアル・サスペクツ』のあらすじ
- 【ネタバレ】『ユージュアル・サスペクツ』のラストまでのあらすじ
- 【ネタバレラスト】黒幕の正体に迫るどんでん返しの結末5分を解説
- カイザー・セゾの正体
- 【伏線】ヴァーバルの謎
- 【考察】原作・アガサ・クリスティーの『アクロイド殺し』との共通点は?
- 『ユージュアル・サスペクツ』の有名なシーン実はアドリブだった?
- 【秘話】そこまでするか!ケヴィン・スペイシーの一風変わった役作り
- 【キャスト】個性的な5人の犯人グループと相関を演じたのは誰?
- どこまでが本当?『ユージュアル・サスペクツ』のネタバレ解説で大逆転ストーリーをおさらい
映画『ユージュアル・サスペクツ』とは?
クライム・サスペンス映画の金字塔
タイトル | 『ユージュアル・サスペクツ』 |
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公開日 | 1996年4月13日(日本) |
監督 | ブライアン・シンガー |
キャスト | スティーブン・ボールドウィン , ガブリエル・バーン , チャズ・パルミンテリ , ケビン・ポラック , ピート・ポスルスウェイト , ケビン・スペイシー |
原題 | 『The Usual Suspects』 |
『ユージュアル・サスペクツ』は監督ブライアン・シンガーと脚本家クリストファー・マッカリーのタッグ2度目の作品です。「X-MEN」シリーズを担当した監督といえば、ピンとくる方も多いのではないでしょうか。 1995年の第68回アカデミー賞では、クリストファー・マッカリーがオリジナル脚本賞、俳優ケヴィン・スペイシーが助演俳優賞をそれぞれ受賞しました。 マフィアの密輸船が爆破された事件の黒幕は誰なのか。どんでん返しのクライマックスへ観客を導くクライム・サスペンス映画『ユージュアル・サスペクツ』の魅力をお伝えします。
【ネタバレなし】『ユージュアル・サスペクツ』のあらすじ
物語は多額の現金と麻薬を積んだ密輸船の爆破事件から始まります。この事件によって、首謀者である五人の犯罪者集団と密輸船のマフィアのメンバー双方に多数の死者が出たのでした。その五人の犯罪者集団で生き残ったのはヴァーバル・キントという詐欺師、ただ1人。 そこで警察の捜査員クラインは彼に事件の尋問をすることにします。彼の口から語られたのは、カイザー・ソゼと呼ばれる謎に包まれた人物の名前。果たしてカイザー・ソゼとは何者なのでしょうか。
【ネタバレ】『ユージュアル・サスペクツ』のラストまでのあらすじ

【起】5人の被疑者
サンペドロの港で多数の死傷者を出す船の爆破事件が起こります。怪我を負ったキートンは「カイザー」と呼ばれる、謎の男に射殺されました。 警察署にて、事件の生存者・ヴァーバルは仲間たち5人が船に集まった経緯を語り始めます。6週間前、銃を運搬するトラックのハイジャック事件の被疑者として、元刑事のキートン、足が不自由なヴァーバル、マクマナス、フェンスター、ホックニーが連れてこられます。しかし立件されず、釈放されたのです。 5人はエメラルド強奪を決行することに。実はこのエメラルドは、警察の関係者が運搬しており「警察への復讐」もできる一石二鳥な案件でした。
【承】依頼人の弁護士・コバヤシ
エメラルドの強奪は見事成功。依頼者のレッドフットに報酬を受け取りに行くと、次なる依頼「宝石の強奪」を任されます。しかし、この案件で手に入れたケースには宝石ではなく、麻薬が詰められていました。 レッドフットを問いただすと「コバヤシ」という弁護士からの依頼だと判明。5人が会いに行くとコバヤシは「麻薬を積んだ密輸船の爆破」をさらに依頼してきます。正確には依頼ではなく、ボスであるカイザー・ソゼからの命令でした。 5人の前にはこれまでの犯罪歴や盗撮された写真が並べられ、ソゼの手中にあることを思い知らされます。
【転】カイザー・ソゼの計画
さらに5人はソゼの銃や金品を奪った過去があり、6週間前に警察署で5人が顔を合わせたのもソゼが計画していたのです。また5人が警察署に連行された「銃強奪事件」犯人がホックニーであったことも判明します。 ソゼの命令を聞いたフェンスターは「幸運を」という置き手紙を残して去っていきました。しかし、翌日コバヤシが指定した場所に行ってみると、フェンスターが死体となって見つかります。 誰もソゼを見たことがないため、キートンは依頼主の弁護士・コバヤシがソゼだと推理。銃口を向けますがーー。
【結】船襲撃事件の真相
カイザー・ソゼは既に4人の恋人や親族が人質に取っていました。ソゼの正体を知ることはおろか、命令に背くことも危険だと察知します。 4人は船の襲撃を引き受け、現場に向かいました。キートンは足の不自由なヴァーバルに「なにかあったらお前だけは逃げろ」と伝えて、船に乗り込みます。 しかし伝えられていた麻薬は、船内のどこにも見当たりません。さらにホックニーとマクマナスが何者かに射殺されてしまいます。そして生き延びたヴァーバルは、カイザー・ソゼと思わしき人物が、キートンを射殺し船に火を放つ瞬間を目撃したのです。 ヴァーバルは船爆破事件を振り返り「キートンはカイザー・ソゼに殺された」と、捜査官クラインに主張しました。
【ネタバレラスト】黒幕の正体に迫るどんでん返しの結末5分を解説
捜査官クラインは唯一の生存者ヴァーバルの証言から、黒幕ソゼがキートンであると推理します。推理がひと段落してクラインはヴァーバルに警察の保護を要求しました。しかし、ヴァーバルはそれを拒否し警察署を出て行きます。 その後、クラインはヴァーバルの証言が嘘まみれだったことに気がつき後を追いますが、時すでに遅し。彼はコバヤシと名乗る人物の車に乗って街へと消えて行きました。 ソゼがヴァーバルだったのでは?!と思わせるどんでん返し。見事な演出ですが、実際のところ正体を決定的に裏付ける証拠は一つもありません。ヴァーバルの虚言で黒幕の存在は以前よりも謎に満ちたまま物語は終了したのです。
カイザー・セゾの正体
事件の黒幕と語れるカイザー・ソゼは裏社会マフィアのボスです。誰も直接会ったことや話したこと者はいません。だから実在しない架空の人物だと主張する人々もいます。キートンもその一人です。ですが、彼の右腕と名乗るコバヤシという人物は登場しました。 また、尋問でのヴァーバルの証言がいくつか彼の情報を明らかにしています。彼はトルコ人で、父親はドイツ人。性格は冷酷。ハンガリーでマフィアに自宅を襲われた際に、自分の家族ごと皆殺しにするほどです。
【伏線】ヴァーバルの謎
ラストの場面。ヴァーバルが街を歩き始め、引きずっていたはずの左足を自由に動かしています。そしてコバヤシが乗る車に乗り込み、彼は街の中へと消えていきました。最後にヴァーバルがペテン師だったことが明らかになりますが、それまでの場面には伏線がしっかりと張られています。 まず、クラインがコーヒーを飲んでいる場面。ヴァーバルがコップの底面を覗き込む描写に注目してみてください。彼はこの瞬間、ソゼの右腕コバヤシの名前となる単語を拾ったわけです。クラインは後にコーヒーを落として底面のコバヤシ陶器という字を知りますが、この場面は大事な伏線でしょう。 また、尋問の際にイライラしたクラインがヴァーバルの胸ぐらを掴み揺する場面がありますが、この時クラインの腕を払いのけるためにヴァーバルは麻痺しているはずの左腕を振っています。ヴァーバルが身体不自由者を演じていたラストの場面に繋がる細かい伏線です。
【考察】原作・アガサ・クリスティーの『アクロイド殺し』との共通点は?
クリストファー・マッカリーによる脚本、実はアガサ・クリスティーの長編推理小説『アクロイド殺し』をもとにしたと言われています。さて具体的にはどの点が共通しているのでしょうか。 『アクロイド殺し』の物語はシェパード医師の手記として書かれています。事件の犯人が実は医師本人であるため、いわゆる「信頼できない語り手」という叙述トリックです。この方法はまさに『ユージュアル・サスペクツ』の物語の構成に一致していると言えるでしょう。 つまり、『ユージュアル・サスペクツ』において、シェパード医師に当たる人物は、嘘の証言者であるヴァーバルなのです。
『ユージュアル・サスペクツ』の有名なシーン実はアドリブだった?
五人の前科者が警察署に面通しで集められ、壁に並び順にセリフを言っていくシーンは非常に有名です。フェンスター役のベニチオ・デル・トロの番の時は、他4人がアドリブの笑いを見せています。監督はこの場面をシリアスに取る予定でした。 しかしフェンスターはアドリブで変な発音の英語を話し、笑いのある場面になったのです。結局テイクは12回に及び、使われたのはNGシーンだったそうです。
【秘話】そこまでするか!ケヴィン・スペイシーの一風変わった役作り
カメレオン俳優と呼ばれるケヴィン・スペイシー。残忍な悪役から、コミカルな役まで幅広く優れた演技力でどんな役でもこなす才能の持ち主です。『ユージュアル・サスペクツ』と同時期に公開された『セブン』では、サイコな殺人鬼を狂気的に演じ話題になりました。 そのような役作りの徹底さは、『ユージュアル・サスペクツ』でも見られます。彼が演じた役、ヴァーバルは左半身が麻痺していて足を引きずるように歩くのが特徴的です。この役作りでは、自然な動きを再現するために医者の助言を求めたり、靴底を削り取って歩く、などの努力に務めました。
【キャスト】個性的な5人の犯人グループと相関を演じたのは誰?
キートン役/ガブリエル・バーン(右から二人目)
ガブリエル・バーン演じるキートン。終始クールな雰囲気を醸し出し、5人の前科者の中ではリーダー的ポジションだと考えられます。女友達イーヴィのおかげで、最も社会的に更生しつつあった人物とも言えるかもしれません。
ヴァーバル役/ケヴィン・スペイシー(右端)
ケヴィン・スペイシーは詐欺師ヴァーバルとして登場しました。5人の前科者の中では、参謀担当の頭脳派。また左半身の麻痺で足を引きずって歩きます。その立ち振る舞いから、犯罪者にしては弱々しいという印象を持った方も多いのではないでしょうか。
マクマナス役/スティーブン・ボールドウィン(左から二人目)
スティーブン・ボールドウィンはマクマナス役です。彼を一言で語るなら威圧的ですぐにかっとなる短気な奴、だと思います。常に銃を持ち歩き、犯罪者集団の作戦中は実践担当として活躍していました。
フェンスター役/ベニ・チオ・デルトロ(中央)

ベニ・チオ・デルトロはフェンスター役を怪演しました。この役はマクマナスと長年の犯罪コンビを組んでいたこともあり、非常に硬い絆を感じます。少し頭が狂っているキャラクターで、彼が話す英語の聞き取りにくさも彼のトレードマークでしょう。
ホックニー役/ケヴィン・ポラック(左端)
ケヴィン・ポラックは、爆破とハードウェアを得意とするホックニー役として登場しています。
クライン役/チャズ・パルミンテリ
チャル・パルミンテリ演じるクライン。密輸船爆破事件を捜査する関税特別捜査官です。5人の犯罪者たちと並んで、物語の重要人物であることは間違いありません。
どこまでが本当?『ユージュアル・サスペクツ』のネタバレ解説で大逆転ストーリーをおさらい
クライム・サスペンス映画の傑作『ユージュアル・サスペクツ』(1996)を紹介しました。 1周見ただけでは話がついていけない方もいるかもしれません。ただ2回、3回と見るとヴァーバルの意味深な行動や設定など、パズルが組み合わさるように見えてきて「こういうことだったのか!」と納得できるはず。 謎解きの興奮やラストでどんでん返しが起きる快感はやみつきになってしまいます。この気持ちに共感できるという方々、ぜひ他のサスペンス映画にも一度触れてみてはいかがでしょうか!