2018年5月28日更新

カンヌを受賞した犬たち!「パルム・ドッグ賞」って知ってる?

優れた映画人たちがパルム・ドールをはじめ様々な栄誉ある賞を手に入れる、映画の祭典カンヌ国際映画祭。受賞できるのは人間だけではありません!映画のなかの素晴らしき犬たち、歴代の受賞「犬」を振り返ります。

全ての犬たちに敬意を評して。「パルム・ドッグ賞」ってどんな賞?

世界3大映画祭の1つに数えられるカンヌ映画祭。プレ上映される最新作のレビュー、華やかなセレブの装い、賞の行方など毎年5月になると世界の注目を一挙に集めます。「ある視点」やクィア・パルムなど様々な部門が用意されていることでも有名ですが、映画界の犬たちに送られる賞もあるのです。 その名もパルム・ドールならぬパルム・ドッグ!映画ジャーナリストであるトビー・ローズ氏によって2001年に設立されました。受賞犬には「パルム・ドッグ」とデザインされたゴージャスな首輪が送られます。 驚くのは受賞対象の幅。これまでには実写映画の犬だけでなくアニメーション作品に登場する犬のキャラクターにもこの賞が贈られました。 単に犬たちの演技力を賞賛するだけでなく、映画業界を生きる犬たちの生活環境への関心を高め、ひいては全ての犬たちの権利を再認識させる。パルム・ドッグ賞にはそんな意味も込められている気がします。 では、これまでの受賞犬の一部を振り返ってみましょう!

『ドッグマン』のジョイ(2018)

2018年のカンヌ映画祭は、是枝裕和監督による『万引き家族』が最高栄誉賞パルム・ドールを受賞したことで話題でした。 その年のパルム・ドッグに選ばれていたのはマッテオ・ガローネ監督の『ドッグマン』に登場するチワワのジョイ。『ドッグマン』は犬のトリマーをしているマルセロという男がマフィア社会に立ち向かうストーリー。 主人公がトリマーなだけあって多くの犬が登場しますが、なかでもジョイの演技は目を引くものだったそう。同作に出演しているグレートデーンのジャックを差し置いて見事最優秀に輝きました。 ちなみにジョイは「女優」。女性の人権が訴えられた映画界の潮流に則って、犬の女優が受賞したことは栄誉あることだと関係者が語っています。

『パターソン』のネリー(2016)

『スター・ウォーズ』シリーズのカイロ・レン役で知られるアダム・ドライバーが主演を務めたことで注目を浴びた『パターソン』。 作品自体もカンヌで賞賛されましたが、主人公の愛犬ハーヴィンも注目を集めました。演じたのはイングリッシュブルドッグのネリー。 元保護犬だったネリーは、本作でみせた表情豊かな演技が評価され、2016年のパルム・ドッグを受賞しました。ところが、彼女は授賞式の数ヶ月前にこの世を去ってしまいます。 類い稀な演技力で映画史に素晴らしい作品を残したネリーをたたえて送られたパルムドッグ。犬たちは虹の橋の向こうで待っているなどと言いますが、賞が橋を渡って届けられたのはこれが初めてでした。

『アーティスト』のアギー(2011)

俳優犬としてひときわ著名な存在だといえるのがジャックラッセルテリアのアギー。 数多くのコマーシャルや映画に出演し、アギーにオスカーを授けるべく運動が起きたほどの名犬です。 オスカー受賞することはなかったわけですが、2011年には『アーティスト』への出演でパルム・ドッグ賞を獲得します。ほかに金の首輪賞も獲得、2012年には自叙伝が出版され、犬として初めてハリウッド・ウォーク・オブ・フェイムに肉球と名前を刻みました。 アギーのパルム・ドッグ受賞は、単に人気に押されたわけでも一時のブームに乗ったわけでもありません。犬を真の''アーティスト''として、1匹のキャストとして尊重してこその受賞だといえるでしょう。

『カールじいさんの空飛ぶ家』のダグ(2009)

2009年に受賞したのはアニメーションの犬。ピクサー『カールじいさんの空飛ぶ家』に登場したダグです。 本作には犬語翻訳機をつけた魅力的な犬たちがたくさん登場しますが、なかでもダグは大活躍でした。丸々としたフォルムと大きくて真っ黒な鼻が愛らしい彼。劇中では、頑固なカールじいさんの心を溶かす重要な役割を担っていましたね。犬が人間と人間を繋ぐ力を持っていることを示してくれたように思います。 のちに公開された短編では、ダグがカールじいさんやラッセルと出会うまでのエピソードが明かされました。また、コミック版『モンスターズインク』では、ブーのぬいぐるみとして登場したり、『レミーのおいしいレストラン』(2007)にカメオ出演していたり、ダグはピクサーが大切に扱ってきた人気キャラクター。堂々の受賞でした。

『ウェンディ&ルーシー』よりルーシー (2008)

パルム・ドッグ史上初めて、満場一致で最優秀の選ばれたのが『ウェンディ&ルーシー』でタイトルにもなっている犬のルーシーです。 夫ヒース・レジャーを亡くしたばかりのミシェル・ウィリアムズが主人公ウェンディを演じたことでも知られている本作は、アメリカの貧困層にある若い女性とその愛犬の物語。1人と1匹でアラスカを目指す道中、資金が底をつきウェンディはドッグフードを万引きする羽目に。その隙に失踪してしまったルーシーを探し求めます。まさに犬と人間のダブル主演といってもいい作品です。 映画のなかでさまざまな表情を見せてくれるルーシーですが、とくに背中で語る演技は必見です。

『ペルセポリス』のユキと『捨て犬マッカムの大冒険』に出演した犬たち(2007)

2007年は初めて2つの作品から同時に2つのパルム・ドッグ受賞犬が選ばれた年です。 賞が贈られたのは『捨て犬マッカムの大冒険』に出演した6匹の犬たち、そしてアニメーション作品『ペルセポリス』に登場するユキでした。 タイの映画『捨て犬マッカムの大冒険』はタイトル通り、捨てられた犬が主人公。飼い主の妻が犬嫌いなせいで捨てられてしまったマッカムが犬たちの仲間に加わろうと奮闘する物語です。 人間のエゴによる飼育放棄という深刻な問題に焦点を当てつつ、俳優犬たちのプロフェッショナルな演技もあって、「犬の世界」を見事に描いています。 またフランスのアニメ『ペルセポリス』は周囲の抑圧にも負けず自己を表現していこうとする少女のストーリー。ユキは少しイタズラ好きな犬のキャラクターで、政治的なメッセージを感じる本作に軽快さも加えていると思います。

犬たちは名作を届けてくれた

ついつい犬たちの可愛らしさや演技力にばかり目がいってしまいますが、映画に出演する犬をきちんと「キャスト」として尊重すること、それは映画を作るときも楽しむときも忘れてはいけないことだと思います。 パルム・ドッグ賞を設けることで、数々の名作を世に送り出してきた偉大な犬たちの存在を歴史に残すことができるでしょう。また、きらびやかな映画界を彼らの目線で見つめなおすことができるでしょう。 今後もたくさんの名犬が誕生するはず。今一度俳優犬たちの活躍に、そして映画に携わるすべての動物たちに注目したいものです。