2018年6月8日更新

『パンズ・ラビリンス』キャラクターやラストについてを徹底ネタバレ解説!

『シェイプ・オブ・ウォーター』で知られるギレルモ・デル・トロ監督の異色のファンタジー映画『パンズ・ラビリンス』。この映画のネタバレやラスト、キャラクターや考察を含め、徹底的に解説していきます。

異色のファンタジー映画『パンズ・ラビリンス』

ギレルモ・デル・トロ監督のダーク・ファンタジー映画『パンズ・ラビリンス』。アメリカ・メキシコ・スペインが共同で製作し、日本では2007年10月に公開されました。 内戦直後のスペインを舞台に、現実と迷宮の間で生きる少女が主人公のストーリーです。「怖い」、「気持ち悪い」などと公開当初から話題になったこの映画。第79回アカデミー賞では撮影賞・美術賞など3部門を受賞しています。この記事では『パンズ・ラビリンス』のストーリーからキャラクター、考察まで徹底ネタバレ解説します。

『パンズ・ラビリンス』のストーリーあらすじ【ネタバレあり】

オフェリア、環境の変化

1944年内戦終結後、ゲリラ戦が繰り広げられているスペイン。内戦で父を失った少女オフェリアは、妊娠中の母と共に山奥に移住します。そこは、母の再婚相手であるヴィダルが主導権を握る独裁政権軍の、要塞でした。その周りには未だ彼らに抵抗する人々たちが潜んでおり、ヴィダルは彼らを徹底的に撃砕しようとしていました。 ヴィダルは生まれてくる息子のことしか配慮せず、オフェリアや彼女の母を冷遇します。母もヴィダルに逆らうことはしないため、オフェリアはその環境で生きにくさを感じていました。

パンとの出会い

オフェリアは、彼女の訪れた森に古くからある迷宮に、立ち入らないよう注意されていました。しかしある日、彼女の部屋に迷いこんでしまった虫が妖精に変身し、オフェリアを迷宮に導きます。 迷宮には番人・パンがおり、オフェリアがこの王国の姫君だと告げます。 地底の王国には、昔々美しい王女様がいたのですが、地上を夢見て王国を飛び出し、そのまま亡くなったのでした。王女様の魂はまた戻ってくると信じられており、その魂を持つのがオフェリアだと言うのです。 オフェリアが本物の姫君の魂を持つかを確かめるため、パンは彼女に三つの試練を与えます。パンはその試練を、満月の夜までにクリアしろと言い残して消えてしまいます。

パンからの試練

オフェリアは一つめの試練で、朽ちた樹の中で暮らす大ガエルから魔法の鍵を得ました。二つ目の試練では、豪華絢爛な食事が用意されている地下を訪れます。そこでオフェリアはその部屋にある物を食べるという禁忌を犯してしまい、目覚めたペイルマンに追いかけられてしまいます。なんとか自分の部屋に戻るも、パンは怒って二度と王国には戻れないとオフェリアに言い放ちます。 現実世界では独裁軍と抵抗軍の攻防が一層激しくなっていました。ヴィダルは独裁軍の中に抵抗軍のスパイがいることに気が付き、探し始めます。スパイはオフェリアの家政婦、メルセデスでした。彼女は弟のいる抵抗軍に食料や手紙を渡していたのでした。

オフェリアの魂は本物?

そんな中、パンがオフェリアの前に姿を現し、最後のチャンスとして、弟を迷宮に連れてくるように指示します。彼女はヴィダルの部屋から弟を連れ出しますが、ヴィダルに見つかり追いかけられます。なんとか迷宮にたどり着くも、そこにいたパンから、弟の純水な血が必要だから差し出せと言われます。 オフェリアは弟の血を渡すことを断り、逃げ帰ろうとしますが、息子のために追いかけてきたヴィダルと直面し、オフェリアは撃たれてしまいします。ヴィダルは息子を抱えて自分の部屋に戻ろうとしますが、抵抗軍によって殺されます。 オフェリアは亡くなるも、魂が地底の王国に導かれ、そこで王女の魂と認められるのでした。

監督は『シェイプ・オブ・ウォーター』のギレルモ・デル・トロ

ギレルモ・デル・トロ
WENN.com

この映画の監督・脚本を手掛けたのはギレルモ・デル・トロです。彼はメキシコ出身の映画監督で、代表作としては世界中で大ヒットした怪獣映画『パシフィック・リム』や、アカデミー賞で作品賞など4部門を受賞した『シェイプ・オブ・ウォーター』が挙げられます。 ギレルモ・デル・トロ監督は映画製作をする以前に、特殊メイクの会社を立ち上げ、特殊メイクに長い間携わっていました。このことから『シェイプ・オブ・ウォーター』に登場する奇妙でややグロテスクな生物や、『パンズ・ラビリンス』に登場するパンやペイルマンなどの妖精たちなどは、この監督の得意分野と言えます。

トラウマになる?怖い?気持ち悪い?キャラクター紹介

『パンズ・ラビリンス』に登場するトラウマ級の恐ろしいキャラクターたちを紹介します。

ヴィダル (Vidal)

独裁軍の大尉ヴィダルは残酷な行動を繰り返しています。ウサギを狩ったと疑われた者たちを、その真相が明らかになる前に殺したり、家政婦メルセデスの弟に拷問したり、専属の医者が自分に従わないために殺したり。 しかし彼自身も散々な目に合っています。家政婦のメルセデスには口を切り裂かれていますし、最終的に顔を撃ち抜かれて亡くなります。これは残酷な行動をした当然の報いと言えるのかもしれません。 彼の見た目ではなく行いがグロテスクであり、この映画を観た人の多くは、彼の行動が原因でグロテスクな映画に感じたのかもしれません。

パン (Pan)

迷宮の番人・パン。ギリシャ神話に登場するパンは、羊飼いと羊の群れを見張る神です。しかしこの映画のパンは神だけでなく、羊の角を持つ悪魔のイメージも含まれているようです。 パンは、よく絵本に出てくるような、優しい案内役の妖精とは違い、オフェリアに怒ったり、弟の血を取ろうとしたりするため、良い部分だけを持った妖精とは言えません。そのため悪魔のイメージも彼に合っていると言えます。 パンの見た目に加えて怖いところが、オフェリアに出会った頃は優しくて、彼女を敬っているように見えるのに、段々と彼女に対して恐ろしくなっていくという点です。この態度の変化はオフェリアの心を映し出しているのではないかという考え方もあります。

ペイルマン(Pale Man)

オフェリアが地下室でであったペイルマン。ごちそうが用意されている食卓で眠っていた彼は、オフェリアが食べ物に手を出したことで目を覚まし、妖精を食べ、オフェリアを追いかけてきました。 そんな気持ちの悪い彼を演じたのは、ダグ・ジョーンズ。デル・トロ監督作品に引っ張りだこの俳優で『シェイプ・オブ・ウォーター』の半魚人役を演じたことでも知られています。彼はなんとパンも演じていたのです。ジョーンズは映画出演者の中で唯一スペイン語を話すことができなかったそうですが、デル・トロ監督たっての希望で出演したそうです。 ペイルマンのモデルは、デル・トロ監督の大好きな日本の妖怪です。江戸時代の画集『画図百鬼夜行』に登場する手の目という妖怪で、彼は両目が顔ではなく両手にあります。 ペイルマンは強烈なインパクトがあり、モノマネがしやすいことから、今でも時折SNSで話題になっている大人気のキャラクターなのです。少し意外ですね。

『パンズ・ラビリンス』の恐ろしいシーンTOP3

グロテスクなシーンや恐ろしい場面が多く登場するこの映画。その中でも特に恐ろしいシーンをランキング形式で紹介します。

第3位:ヴィダルの口がナイフで裂かれるシーン

家を飛び出した家政婦メルセデスを捕まえ、処罰しようとしたヴィダル。しかし彼はメルセデスが隠し持っていたナイフによって口を切り裂かれてしまいます。 彼が自室で自分の口を縫うシーンは、見ているだけでこちらの口もひりひりしてきてしまいます。

第2位:家政婦メルセデスの弟がヴィダルの拷問を受けるシーン

抵抗軍として活動するメルセデスの弟が、独裁軍の要塞に連れてこられて、拷問を受けるシーン。ヴィダルは独裁軍の中にいる抵抗軍のスパイの正体を明かすように彼に迫ります。 しかし彼は吃音で上手く話すことができないため、ヴィダルをイラつかせ、拷問を受けることになります。とても痛々しいシーンでした。

第1位:ペイルマンの登場シーン

ペイルマンが目覚めて、机上に置いてあった目玉を取り、顔にはめるのかと思いきや、手にはめるところがまず驚きでした。そしてオフェリアが連れてきた妖精を食べてしまうシーン。 ペイルマンの見た目や動きがグロテスクなうえに恐ろしい行動をするので、目を背けてしまった人も多いのではないでしょうか?

ヴィダルの父の時計は何を意味するのか

ヴィダルが父からもらった時計を大切に修理し、常に持ち歩いていました。しかし、鏡に映った自分を父と重ね、鏡に刃を向けるシーンや、父をかばう青年を必要以上に殴るシーンなどから、父親のヴィダルは父にコンプレックスを抱いていたと言えます。 父をかばう息子の様子を嫌っていたように見えるシーンから、彼は父とそのような信頼関係に無かったと推測できます。ヴィダルを冷酷な人間にしてしまったのは、彼の父なのかもしれません。 そして彼は大人になった今、父と同じような生き方をしており、それを周囲の人間には悟られまいと思い、父の時計を大切に持っていることを周囲の人には隠しているのかもしれません。

映画『パンズ・ラビリンス』製作の知られざる秘密

『パンズ・ラビリンス』の世界はギレルモ・デル・トロ監督の実体験に基づいてるシーンがいくつもあるのです。 まず、ウサギを殺したと疑いをかけられた男性が、ヴィダルに殴られるシーン。これはデル・トロ監督が実際に乱闘に巻き込まれた際に、友人が瓶で殴られているのを見たことからインスピレーションを受けています。 次に、ヴィダルが顔を撃ち抜かれて亡くなるシーン。これは、デル・トロ監督が精神病院でボランティア活動をしていた時にあった出来事に基づいています。 彼が、そこの墓地で昼食をとっていた時に、顔を撃ち抜かれた死体を目撃したのです。その死体は目の焦点が合っておらず、顔を撃ち抜かれると目玉が回転することを知ったデル・トロ監督は、映画内でもその体験をしっかりと生かしていました。 そして、迷宮の番人・パンもデル・トロ監督が実際に見たというのです。『パンズ・ラビリンス』のパンはギリシャ神話や悪魔、ピーターパンの要素を含んでいますが、デル・トロ監督が実際に目撃したパンからもインスピレーションを受けているのでしょう。 デル・トロ監督が祖母の家で洋服を盗もうとした際に背後からパンが現れたのだとか。

映画『パンズ・ラビリンス』が伝えたかったこととは?【考察】

気持ち悪いキャラクターやグロテスクなシーンが登場する映画『パンズ・ラビリンス』。この映画が伝えたかったことは何でしょうか。それは物語の存在意義です。 現実世界で独裁軍と抵抗軍の激しい争いが続き、父は冷酷で、母は理解してくれず、つらい状況に置かれていたオフェリア。彼女は厳しい現実から逃れ、つらいことを忘れることができるほどに夢中になれるものが必要でした。彼女にとってそれは迷宮の世界。試練に没頭することで、現実の辛さに直面することを回避していたのでした。 人間は現実世界から逃れたいときに、現実世界の苦しいことを忘れて没頭できるものが必要であり、その役割を物語は果たしてくれる、ということをこの映画は伝えたかったのではないでしょうか。

『パンズ・ラビリンス』を徹底的に解説してきましたがいかがでしたか。恐ろしいだけでなく、メッセージ性のある映画だったのです。怖いシーンだけでも十分面白いのですが、そのような側面にも目を向けると新しい面白さが見いだせるのではないでしょうか。