2018年6月25日更新

映画と本なしでは生きられない二人が語る、ポランスキー新作映画の秘密【風間賢二×滝本誠】

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映画『告白小説、その結末』の原作本『デルフィーヌの友情』が刊行されたことを記念して、英米文学翻訳家の風間賢二と映画評論家の滝本誠による対談が2018年6月22日にMARUZEN&ジュンク堂書店渋谷店にて行われました。

映画『告白小説、その結末』記念対談の様子をご紹介!

風間賢二×滝本誠
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2018年6月23日に日本公開されるロマン・ポランスキー監督の映画『告白小説、その結末』。 その原作本である『デルフィーヌの友情』(デルフィーヌ・ド・ヴィガン著)が水声社より刊行されたことを記念し、スティーブン・キングの翻訳で知られる英文学翻訳家の風間賢二(写真左)と、デヴィッド・リンチの研究で知られる映画評論家の滝本誠(写真右)の対談が、映画公開前日の2018年6月22日にMARUZEN&ジュンク堂書店渋谷店で開催されました。 今回は、その対談を踏まえ、映画『告白小説、その結末』をあらゆる映画や小説の文脈を交え、ネタバレギリギリで徹底考察! 映画のあらすじは、以下の記事で。

ネタバレなしでは語れない!?作者と読者の関係性の考察

ポランスキーとアロノフスキー

公開日の前日に行われたこともあり、本作のネタバレをすることができないという制約がある中、風間が本作の内容を「ほのめかす形で語ろう」と提案し、対談はスタート。 まず、滝本は本作が2017年にアメリカで公開されながらも、結局日本では公開中止となってしまったダーレン・アロノフスキー監督の映画『マザー!』との類似を指摘。 『マザー!』ではハビエル・バルデム演じる主人公が創作に悩む詩人を演じ、それを支える妻をジェニファー・ローレンスが演じていますが、監督のアロノフスキーも制作中からローレンスと交際し、映画の公開とほぼ同時期に破局しているのです。 これを滝本は、「創作者とそれを支える存在」というテーマを実践に移した例だと指摘。この「創作者とそれを支える存在」の関係性が、本作のデルフィーヌとエルの関係性を思わせると語ります。

創作者の苦悩は普遍的なテーマ?スティーブン・キングとの共通点も

それに対して風間は、詩人(作者)が作品を書けない(作れない)というのは、19世紀フランスの詩人・ステファーヌ・マラルメが扱って以来の現代文学における重大なテーマだと指摘。白いページに何かを書くという行為に対する葛藤が普遍的な創作者の苦悩として存在していると考察します。 そして本作の原作小説『デルフィーヌの友情』の各部のそれぞれの扉の裏に、スティーブン・キングの小説『ミザリー』や『ダーク・ハーフ』の引用があることを明かしました。 『ミザリー』は熱狂的な小説の愛読者が小説家を監禁してしまう物語。一方の『ダーク・ハーフ』は一人の純文学作家が暴力的な小説を書くもう一人の自分と対峙するという話です。 風間は「今の(説明)でどういう話かわかりました?」と本作の結末について観衆に問いかけましたが……この二つの小説が本作にどのようなヒントを与えたのかは、ネタバレに繋がりそうですね。

【ネタバレ注意!?】虚実入り混じった本作の構造

この物語は「実話」か?

本作の主人公・デルフィーヌは精神を病んで自殺した母との関係や親類との関係をさらけ出した小説を書き、ベストセラーになります。 実はこの経歴は、原作者であるデルフィーヌ・ド・ヴィガンの経歴と全く同じなのです。しかし、原作小説『デルフィーヌの友情』で描かれる物語のどこまでが実話なのかはわかっていません。ある程度は創作なのか、はたまたすべて実話なのか......。 こういった例は歴史的に見るといくつか存在します。例えば、1719年に発表されたイギリスのダニエル・デフォーによる小説『ロビンソン・クルーソー』は「Written by Himself(彼自身の筆による)」として発表されましたし、1726年の『ガリヴァー旅行記』も、アイルランド人のジョナサン・スウィフトが主人公のレミュエル・ガリヴァーを名乗って実際の話であるかのように発表されています。 ちなみに『デルフィーヌの友情』ならびに『告白小説、その結末』のフランス語の原題は『D'après une histoire vraie』、日本語で「実話に基づく』という意味です。

登場人物の名前「エル」の意味

告白小説、その結末
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さて、本作でデルフィーヌと接近する女性・エルですが、小説版では「L」というアルファベット一文字で表されています。小説などでよくアルファベット一文字の登場人物が出てくることがありますが、実はこの「L」という名前にも、深い意味があると考えられます。 フランス語で「エル」というとまず思い浮かぶのが、同じ発音の「ELLE(彼女)」という単語です。実際、本作のシナリオでは、「L」から「ELLE」に変更されているのです。 風間は、この「ELLE」という単語を真ん中で分けると「EL/LE」という具合にEとLが鏡のように分けられることを指摘。これは「E」と「L」のそれぞれが「分身」の関係にあるということを示唆していると考えられます。 つまり、デルフィーヌとエルの関係性は......おっと、これ以上の言及は避けておきましょう。

伏線がいたるところに!?映画『告白小説、その後』の魅力

「とても斜め読みになんかできない小説で、伏線がいたるところに散りばめられている」と原作本を絶賛する風間。解説を読み、二度読んで初めてわかったことがたくさんあったそうです。 そんな原作を忠実に映像化したと言われる映画『告白小説、その結末』は、2018年6月23日より公開。その驚くべき「結末」を、ぜひスクリーンでご覧ください。